【飲食業向け】飲食店の離職率23.7%をどう読むか|令和7年雇用動向調査からみる中小飲食事業者の定着施策

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    飲食店の離職率23.7%をどう読むか|令和7年雇用動向調査からみる中小飲食事業者の定着施策

    情報基準日:統計・行政情報は2026年8月31日時点の公表情報に基づきます。

    目次

    はじめに

    「求人を出しても応募が来ない」「採用してもすぐ辞めてしまう」。スタッフ数100名以下の飲食店経営者や店長から、こうした声を日常的にうかがいます。2026年8月31日、厚生労働省が「令和7年雇用動向調査結果の概況」を公表し、宿泊業,飲食サービス業の離職率が23.7%と、全産業平均13.7%を大きく上回る水準にあることが改めて示されました。本記事では、この最新データを手がかりに、なぜ飲食業で離職率が高止まりしやすいのか、そしてスタッフ数100名以下の単独店・小規模チェーンが専任の人事担当者がいなくても取り組める定着施策を、評価制度・キャリアパスの観点から具体的に解説します。

    この記事の要点

    • 令和7年雇用動向調査(厚生労働省、2026年8月31日公表)で、宿泊業,飲食サービス業の離職率は23.7%、一般労働者に限っても21.5%と、全産業平均13.7%を大きく上回っています。
    • この統計区分は宿泊業と飲食サービス業をまとめた集計であり、飲食店単独の数値ではない点に注意が必要です。
    • 令和8年7月の一般職業紹介状況(厚生労働省、2026年8月28日公表)では、宿泊業,飲食サービス業の新規求人数が前年同月比10.7%減少しており、採用の間口も業種として縮小気味です。
    • 「採用を増やす」だけでは人手不足は解消しにくく、今いるスタッフの定着率を高める評価制度・キャリアパスの整備が経営上の優先課題になっています。
    • 専任の人事部門がない単独店・小規模チェーンでも、既存の勤怠・売上データを使った簡易診断から着手できます。

    ニュース・統計の概要

    厚生労働省が2026年8月31日に公表した「令和7年雇用動向調査結果の概況」によると、令和7年1年間の宿泊業,飲食サービス業の入職率は27.8%、離職率は23.7%でした。全産業平均は入職率14.7%、離職率13.7%であり、飲食サービス業を含むこの区分は、入職・離職ともに全産業の中でも高い水準にある業種として位置付けられています。パートタイム労働者を除いた一般労働者に限定しても、宿泊業,飲食サービス業の離職率は21.5%であり、正社員を含めても高い流動性がうかがえます。

    あわせて、厚生労働省が2026年8月28日に公表した「一般職業紹介状況(令和8年7月分)」では、全国の有効求人倍率(季節調整値)は1.18倍で前月と同水準でした。産業別では、宿泊業,飲食サービス業の新規求人数が前年同月比10.7%減少しており、企業側の採用意欲が業種として弱含んでいる可能性がうかがえます。この減少は人手が足りているという意味ではなく、原価・人件費の上昇を背景に採用より定着を優先する動きとも解釈できますが、統計のみからは断定できません。

    主対象となる飲食業態と中小飲食事業者への影響

    今回取り上げる統計は、レストラン、居酒屋、カフェ・喫茶店、ラーメン・麺類店、寿司店、焼肉店、ファストフード、テイクアウト・デリバリー専門店など、業態を問わず宿泊業,飲食サービス業全体に及ぶ集計です。ただし、離職率の背景となる働き方は業態によって大きく異なります。深夜の酒類提供を伴う居酒屋・バーではシフトの深夜化、ランチ主体のカフェや食堂では短時間勤務のパート・アルバイト比率の高さ、宅配・テイクアウト専門店では配達員の稼働の波、複数店舗を展開するファストフードやフランチャイズ加盟店では店舗間の人員融通など、それぞれ離職の起こり方が違います。したがって、本記事で紹介する考え方も、業態や立地、営業時間、直営・フランチャイズの別に応じて、自社・自店舗の状況に置き換えて確認することが前提になります。

    スタッフ数100名以下の中小飲食事業者にとって、離職率の高さは単なる採用コストの増加にとどまりません。新人教育に充てるベテランの時間、QSC(品質・サービス・清潔さ)の維持、繁忙期のシフト確保、既存スタッフの負担増加など、店舗運営全体に影響が広がります。特に店長・料理長が1人で複数店舗を兼務するような小規模チェーンでは、離職の連鎖が起きると店舗運営そのものが立ち行かなくなるリスクがあります。

    経営・人事・店舗運営で起こりやすい課題

    離職率の高さの背景には、一つの原因ではなく複数の要因が重なっていることが少なくありません。中小飲食事業者でよく見られる課題を整理すると、次のような点が挙げられます。

    評価とキャリアの見えにくさ

    「頑張っても給料が変わらない」「何年働けば時給や役職が上がるのか分からない」という声は、パート・アルバイトだけでなく正社員からもよく聞かれます。評価制度や等級制度が整備されていない、あるいは店長の裁量だけで昇給が決まる状態では、スタッフは自分の成長と処遇のつながりを実感できません。

    店舗間・職種間の不公平感

    ホールとキッチン、正社員とパート・アルバイト、直営店とフランチャイズ加盟店の間で評価基準がばらばらだと、「隣の店舗の方が時給が高い」「同じ仕事なのに評価が違う」といった不満につながります。

    負担の集中と初期教育の手薄さ

    人手不足の店舗ほど、新人教育に十分な時間を割けず、早期離職を招く悪循環に陥りがちです。特に、開店・閉店作業や仕込み、発注、在庫管理など、正確性が求められる業務を教育未了のまま任せてしまうと、本人の負担感が増すだけでなく、食品衛生や現金管理の面でもリスクが高まります。

    等級・評価・賃金・採用・育成への反映方法

    離職率データを経営課題として受け止め、制度に落とし込むには、次の視点が有効です。

    等級制度でキャリアの道筋を示す

    ホール、キッチン、パートリーダー、副店長、店長、エリアマネージャー・SVといった役割ごとに、求められる知識・技能・行動を等級として整理し、昇給・昇格の条件を明文化します。正社員だけでなく、パート・アルバイトにも「時給が上がる基準」を等級的に示すことで、将来像が見えやすくなります。

    評価はプロセスと結果の両面で

    個人売上や客単価などの「結果」だけでなく、衛生行動、接客の丁寧さ、ピークタイムでのホール・キッチン連携、後輩指導への貢献といった「プロセス」も評価項目に含めます。結果だけを追う評価は、天候や立地、本部施策など本人の努力では動かせない要因の影響を強く受けるため、公平感を損ないやすい点に注意が必要です。

    採用と定着をセットで考える

    新規求人が全国的に減少傾向にある状況では、採用単価をかけて人を集めるだけでなく、今いるスタッフが辞めない職場をつくることの投資対効果が相対的に高まります。定着率の高い店舗ほど、教育コストが下がり、QSCも安定しやすくなります。

    育成はOJTとスキルマップで見える化

    ホール・キッチンの多能工化を進めるスキルマップを作成し、「どこまでできるようになったか」を本人と店長が共有できるようにします。学生・外国人材・シニア・子育て中の人材など、働き方が多様なスタッフにも、それぞれのペースで習熟度を確認できる仕組みが有効です。

    実務対応の手順

    専任の人事担当者がいない単独店・小規模チェーンでも、次の順番で着手できます。

    手順1:自社の離職状況を数値で把握する

    直近1年の入職者数・離職者数を、正社員・パート・アルバイト別、職種別(ホール・キッチン・店長候補等)に集計します。既存の勤怠・給与データがあれば十分です。

    手順2:離職のタイミングと理由を分類する

    入社3か月以内、6か月以内、1年以上と時期を区切り、退職面談やアンケートで把握できた理由を「教育・負担」「評価・処遇」「人間関係」「勤務条件」などに分類します。

    手順3:等級・評価制度の有無と運用状況を点検する

    制度自体がない場合は簡易な等級表と評価シートから着手し、既にある場合は形骸化していないか(評価がフィードバックされているか、昇給基準が守られているか)を確認します。

    手順4:店長・パートリーダーへの権限とサポートを整理する

    評価・教育の実務を担う店長・パートリーダーの負担を確認し、評価会議やフィードバック面談の進め方を簡単なマニュアルとして共有します。

    手順5:小さく試して広げる

    まずは1店舗・1職種で評価シートや等級表を試験運用し、反応や運用のしやすさを確認したうえで展開します。

    比較表・チェックリスト・モデル事例

    令和7年雇用動向調査・一般職業紹介状況にみる宿泊業,飲食サービス業の動向(全産業平均との比較)
    指標宿泊業,飲食サービス業全産業平均出典・公表日
    入職率(令和7年)27.8%14.7%厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概況」(2026年8月31日公表)
    離職率(令和7年、全労働者)23.7%13.7%
    離職率(令和7年、一般労働者)21.5%―(本記事内では未使用)
    新規求人数の前年同月比(令和8年7月)▲10.7%―(全産業計は別集計)厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年7月分)」(2026年8月28日公表)

    重要:この統計区分は「宿泊業,飲食サービス業」であり、宿泊業を含んだ数値です。飲食店単独の離職率ではない点にご注意ください。

    定着課題セルフチェックリスト

    中小飲食事業者向け・定着課題の簡易セルフチェック
    確認項目はい/いいえ
    入社3か月以内の離職者数を、直近1年で把握できている
    ホール・キッチン・店長候補それぞれに求める役割と昇給条件を文書で示している
    個人売上や客単価だけでなく、衛生行動や連携・育成への貢献も評価している
    直営店・フランチャイズ加盟店・複数店舗間で評価基準がそろっている
    評価結果を本人にフィードバックする面談の場を設けている

    架空のモデル事例:離職の連鎖を止めた小規模居酒屋の例

    以下は、複数の中小飲食事業者の事例をもとに再構成した架空のモデル事例です。特定の企業の実績を示すものではありません。客席30席・スタッフ8名の居酒屋A店では、新人アルバイトの多くが入社2〜3か月で離職していました。原因を分類すると「仕込みや発注を教わらないまま任され、負担が大きかった」という声が目立ちました。そこで、ホール・キッチンにスキルマップを作成し、習熟度に応じて時給が段階的に上がる仕組みを導入したところ、教育担当の負担も可視化されました。

    人事コンサルタントからのアドバイス

    離職率の高さに向き合うとき、最初に確認していただきたいのは、売上・粗利益・食材原価・人件費・FLコスト比率といった経営数値と、職種別・雇用形態別の人員構成、シフトの偏り、残業・休憩・有給休暇の取得状況、そして退職者へのヒアリング記録です。これらを店長任せにせず、経営者自身が定期的に確認できる形にすることが出発点になります。制度を変更する際は、いきなり全店舗・全職種に評価制度を導入するのではなく、離職が集中している職種や店舗から優先的に着手し、小さく試して運用しながら広げることをおすすめします。多店舗・シフト勤務が中心の飲食現場では、評定会議や店長会議のタイミングをあらかじめ決めておかないと、制度が形だけのものになりがちです。食品安全やQSC、事業継続とスタッフの納得感は対立するものではなく、両立させる視点を持つことが重要です。なお、労働時間管理や賃金制度の設計は労働基準法など法令に関わるため、判断に迷う場合は労働基準監督署や都道府県労働局、社会保険労務士への確認をおすすめします。

    用語集

    離職率
    一定期間の始めに在籍していた労働者数に対して、その期間中に退職した労働者数の割合を示す指標です。厚生労働省の雇用動向調査では、常用労働者数を分母として算出され、業種別・企業規模別の比較にも使われます。飲食店では店舗単位・雇用形態別に独自集計すると実態がより見えやすくなります。
    入職率
    一定期間中に新たに雇い入れられた労働者数を、期首の常用労働者数で割った割合を示す指標です。離職率とあわせて確認することで、人の出入りがどの程度活発な業種・企業かを把握でき、採用計画や定着施策の優先度を判断する材料になります。
    リテンション戦略
    採用した人材の定着を高めるための一連の施策を指します。評価制度、教育、コミュニケーション、処遇、キャリアパスなど複数の要素を組み合わせて設計するもので、離職率が高い業種ほど採用戦略以上に重視すべき考え方とされています。
    ステイ・インタビュー
    退職者ではなく在籍中のスタッフに、働き続ける理由や日頃の不満、将来の希望などを聞き取る面談手法です。離職の予兆を早期に把握し、制度や職場環境の見直しに活かす目的で、定期的に実施されます。
    有効求人倍率
    公共職業安定所(ハローワーク)に登録された求職者数に対する求人数の割合を示す指標で、労働市場の需給バランスを表します。倍率が高いほど企業側にとって採用が難しい、いわゆる「売り手市場」の状態にあることを示します。
    スキルマップ(インベントリ)
    スタッフ一人ひとりが習得している業務スキルを一覧化した表です。ホール・キッチンの多能工化の進捗確認や、次に何を教育すべきかの計画立案に活用でき、時給や昇給の判断基準としても使いやすい仕組みです。
    OJTとOff-JT
    OJTは実際の業務を通じて行う教育、Off-JTは業務を離れた場で行う研修を指します。飲食現場では、日々の実務で覚えるOJTを中心にしつつ、衛生管理や接客の基本などをOff-JTで補う組み合わせが一般的です。
    等級制度
    役割や能力、貢献度に応じて社員やスタッフを段階分けする仕組みです。ホール、キッチン、店長といった役割ごとに等級を設定することで、昇給・昇格の基準を明確にし、キャリアの見通しを持てる土台になります。

    よくある質問(FAQ)

    飲食店の離職率23.7%という数値は、すべての飲食店に当てはまりますか。
    この数値は厚生労働省「令和7年雇用動向調査」における「宿泊業,飲食サービス業」という区分の平均であり、宿泊業を含む集計である点にまず注意が必要です。業態、立地、営業時間、正社員・パート・アルバイトの構成比、直営・フランチャイズの別によって実際の離職率は大きく異なります。全国平均を自社にそのまま当てはめるのではなく、まず自社・自店舗の入職者数・離職者数を数値で把握したうえで、参考値として活用することをおすすめします。
    専任の人事担当者がいない個人経営の店舗でも、評価制度は作れますか。
    作成できます。スタッフ数10名前後の単独店であれば、ホール・キッチンそれぞれ数項目程度の簡易な評価シートと、時給・昇給の目安表から始める方法が現実的です。最初から完璧な制度を目指す必要はなく、まず1店舗・1職種で試験的に運用し、スタッフの反応や運用のしやすさを確認しながら少しずつ改善していく進め方をおすすめします。
    新規求人が減っているのに、なぜ定着に力を入れる必要があるのですか。
    令和8年7月の一般職業紹介状況では、宿泊業,飲食サービス業の新規求人数が前年同月比10.7%減少しています。これは採用の間口そのものが狭まっている可能性を示しており、新たに人を集めるコストと難易度が相対的に上がっていることを意味します。今いるスタッフの定着率を高めるほうが、教育コストの抑制やQSCの安定という点で、投資対効果が高くなりやすいと考えられます。
    パート・アルバイトと正社員で評価基準を分けるべきですか。
    雇用形態にかかわらず、業務内容や役割が同じであれば評価の視点をそろえることが望ましいとされています。一方で、勤務時間の長さや任される責任範囲が異なる場合は、その違いを賃金テーブルや等級の段階として反映する必要があります。パートタイム・有期雇用労働法との整合も踏まえ、判断に迷う場合は社会保険労務士に確認しながら制度を設計してください。
    離職率を下げるために、まず何から手をつければよいですか。
    まず直近1年の離職者数を、入社からの経過期間別(3か月以内、6か月以内、1年以上)と職種別に分類し、離職理由の傾向をつかむことから始めてください。原因が教育体制の不足なのか、評価・処遇への不満なのか、勤務条件やシフトの偏りなのかによって、優先して取り組むべき対策の順番や内容は大きく変わってくるためです。

    出典・参考情報/留意事項

    本記事は以下の一次情報に基づいています。数値は各公表資料の集計条件・対象期間に沿ってご確認ください。制度設計や労務管理の個別判断については、労働基準監督署、都道府県労働局、社会保険労務士等の専門家にご確認いただくことをおすすめします。本記事中の「架空のモデル事例」は、複数事例をもとに再構成した仮の例であり、特定企業の実績を示すものではありません。

    • 厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概況」(2026年8月31日公表)
    • 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年7月分)」(2026年8月28日公表)

    まとめ

    令和7年雇用動向調査が示した宿泊業,飲食サービス業の離職率23.7%という数値は、宿泊業を含む集計とはいえ、多くの飲食店経営者が現場で感じている人手の課題を裏付けるものといえます。新規求人数が減少傾向にある今、採用だけに頼るのではなく、今いるスタッフが辞めずに育っていける評価制度・キャリアパスを整えることが、経営の安定に直結します。離職の背景は、教育不足、評価・処遇への不満、勤務条件など店舗によってさまざまであり、まず自社のデータを分類して把握することが遠回りのようで最も確実な出発点です。等級制度や評価シートの整備は、専任の人事担当者がいない単独店・小規模チェーンでも、1店舗・1職種からの試験運用で着手できます。有限会社ヒューマンリソースコンサルタント(HRC)では、飲食業に特化した人事評価・賃金制度づくりを支援しており、評価シートのサンプルもご用意しています。自社の離職状況を数値で振り返るところから、制度の見直しを検討してみてはいかがでしょうか。まずは資料で具体的なイメージをご確認いただき、必要に応じて無料相談もご利用いただけます。

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