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外国人材・パート・シニアが混在する飲食店の「同一労働同一賃金」点検|外国人労働者204万人時代の処遇整合
情報基準日:統計情報は2026年8月31日時点、法令情報は2026年8月時点で確認できる内容に基づきます。
はじめに
ホールに外国人留学生アルバイト、キッチンにシニアの調理補助、フロアには子育て中のパートスタッフ、そして正社員の店長。多くの飲食店では、すでに一つの店舗の中に雇用形態も背景もさまざまなスタッフが混在しています。2026年8月31日、厚生労働省が公表した「令和7年外国人雇用実態調査」によると、外国人労働者数は約204万人(雇用保険被保険者5人以上の事業所ベース)となり、前年の約182万人から増加しました。外国人材の受け入れが進む一方で、正社員・パート・アルバイト・外国人材・シニアといった異なる立場のスタッフの間で、賃金や待遇に説明のつかない差がないかを点検する重要性も増しています。本記事では、この統計を手がかりに、スタッフ数100名以下の飲食店が専任の人事部門がなくても取り組める、多様な人材の評価・処遇の整合の進め方を解説します。
この記事の要点
- 令和7年外国人雇用実態調査(厚生労働省、2026年8月31日公表)で、外国人労働者数は約204万人と前年の約182万人から増加し、雇用理由は「労働力不足の解消・緩和のため」が68.2%で最多でした。
- 外国人一般労働者の月間給与は29万2,400円で前年比6.4%増となっており、賃金水準の底上げが進んでいます。
- パートタイム・有期雇用労働法では、正社員とパート・有期雇用労働者との間で、業務内容や責任の程度が同じであれば不合理な待遇差を設けてはならないとされており、外国人材にも同様の考え方が及びます。
- 雇用形態や国籍を理由に評価基準を分けるのではなく、職務・貢献度を基準にした共通の物差しで待遇を点検することが求められています。
- 待遇差について説明を求められた場合に備え、評価基準や賃金テーブルの根拠を整理しておくことが、単独店・小規模チェーンでも実務上の備えになります。
ニュース・統計の概要
厚生労働省が2026年8月31日に公表した「令和7年外国人雇用実態調査」の結果によると、外国人労働者数は約204万人(雇用保険被保険者5人以上事業所ベース、有効回答3,919事業所・14,248人)で、前年の約182万人から増加しました。在留資格別の構成比は「専門的・技術的分野」が42.1%(前年38.9%)と最も高く、「技能実習」は21.7%(前年20.2%)でした。事業所が外国人労働者を雇用する理由としては「労働力不足の解消・緩和のため」が68.2%(前年69.0%)で最も多く、「日本人と同等またはそれ以上の活躍を期待して」も56.2%(前年54.7%)と高い割合を占めています。外国人一般労働者の月間きまって支給する現金給与額は29万2,400円で、前年比6.4%の増加でした。なお、本調査結果のページ上では飲食サービス業に限定した内訳は明記されておらず、全産業を対象とした集計である点に留意が必要です。
飲食業界では、特定技能「外食業」や留学生のアルバイトなど、外国人材の受け入れが広がっています。今回の調査は飲食業に限定した数値ではありませんが、外国人労働者数の増加と賃金水準の上昇という全国的な傾向は、多くの飲食店にも当てはまるものと考えられます。
主対象となる飲食業態と中小飲食事業者への影響
本記事は、正社員・パート・アルバイト・外国人材・再雇用シニアなど雇用形態や背景が多様なスタッフを抱える飲食店を主な対象とします。レストラン、居酒屋、カフェ、ラーメン・麺類店、寿司店、焼肉店、ファストフードなど業態を問わず、ホール・キッチンの現場に外国人材やパート・アルバイトが多く関わる店舗ほど、待遇の整合性が経営上の論点になります。特に、深夜営業や早朝仕込みがある居酒屋・ラーメン店、学生アルバイトの比率が高いカフェ・ファストフード、シニア人材が活躍する食堂・定食店などでは、勤務時間帯や責任範囲の違いを踏まえた公平な評価・処遇の設計が求められます。多店舗展開やフランチャイズ加盟店の場合は、店舗ごとに評価基準がばらつかないよう、本部として最低限のルールを統一しておくことも重要です。
経営・人事・店舗運営で起こりやすい課題
「なんとなく」の賃金差
正社員だから、日本人だから、長く働いているから、といった曖昧な理由だけで時給や手当に差がついている場合、業務内容や責任の程度に見合った説明ができないと、不合理な待遇差とみなされるリスクがあります。
教育担当としての貢献が評価されにくい
外国人材や学生アルバイトへの「やさしい日本語」を使った指導、マニュアルの補足説明など、教育担当としての貢献は、個人売上のような分かりやすい指標には表れにくく、評価から抜け落ちがちです。
説明を求められたときの備えがない
待遇差について本人から説明を求められた場合に、根拠となる評価基準や賃金テーブルが整理されていないと、その場での説明が難しくなります。
言葉の壁によるコミュニケーションコスト
外国人材とのやり取りでは、マニュアルの読み合わせや評価面談の説明に、日本人スタッフ以上の時間がかかることがあります。この負担を店長や特定のスタッフだけが担っていると、教育担当者自身の離職や不満につながりかねません。やさしい日本語や図解を使ったマニュアル、通訳アプリの活用など、店舗全体で負担を分担する工夫が必要です。
等級・評価・賃金・採用・育成への反映方法
職務・貢献度を基準にした共通の物差しをつくる
正社員・パート・アルバイト・外国人材・シニアといった属性ではなく、担当する職務の範囲や難易度、貢献度を基準にした等級・評価の物差しを整えます。同じホール業務であれば、雇用形態にかかわらず同じ評価項目で確認し、責任範囲の違い(例えば開店・閉店作業の可否、後輩指導の有無)を賃金テーブルの段階として反映します。
多能工化とスキルマップで貢献を可視化する
ホール・キッチンの多能工化の進捗をスキルマップで管理し、外国人材やシニアが担っている教育・指導的な役割も評価項目に加えます。やさしい日本語での指導や、多言語対応など、属性を生かした貢献を正当に評価することで、納得感が高まります。
賃金テーブルと根拠資料を整理する
時給・給与の決定根拠(等級、勤続、担当業務、資格・技能検定の有無など)を賃金テーブルとして文書化し、説明を求められた際にすぐ確認できる状態にしておきます。
採用時の説明を丁寧にする
採用時に、昇給の条件やキャリアパスをやさしい言葉で説明することは、外国人材や学生アルバイトの定着にもつながります。特定技能「外食業」の人材については、受け入れにあたって求められる支援体制も踏まえた説明が必要です。
正社員登用という選択肢を示す
パート・アルバイトや外国人材の中にも、より責任のある仕事を任されたい、正社員として長く働きたいと考えるスタッフがいます。等級制度の中に正社員登用の基準を組み込み、雇用形態を理由に選択肢を狭めないようにすることは、意欲の高い人材の定着につながります。登用基準は、国籍や雇用形態ではなく、担当できる業務の幅や後輩育成の実績など、職務・貢献度に基づいて設定します。
実務対応の手順
手順1:現状の賃金・手当の一覧を作る
職種・雇用形態・勤続年数別に、時給や手当の一覧表を作成し、同じ業務内容にもかかわらず説明のつかない差がないかを洗い出します。
手順2:業務内容と責任の程度を整理する
開店・閉店作業、発注、在庫管理、後輩指導、クレーム一次対応など、業務ごとに誰がどこまで担っているかを整理し、賃金差の根拠として説明できる形にします。
手順3:評価項目に教育・多能工化の貢献を追加する
個人売上などの結果指標に偏らないよう、教育担当としての貢献や多能工化の進捗を評価項目に加えます。
手順4:説明のための資料を整える
賃金テーブルと評価基準をセットで文書化し、本人から説明を求められた場合にすぐ提示できるよう準備します。
手順5:店長・パートリーダーへの説明機会を設ける
制度変更の内容を店長会議やスタッフ説明会で共有し、現場での運用や質問対応にばらつきが出ないようにします。
手順6:定期的に点検する仕組みをつくる
一度整理して終わりにせず、半年〜1年に一度、賃金テーブルと評価記録を見直すタイミングを決めておきます。最低賃金の改定や新しいスタッフの雇用形態の変化に合わせて、説明のつく状態を保ち続けることが大切です。
比較表・チェックリスト
| 項目 | 令和7年(本調査) | 前年 |
|---|---|---|
| 外国人労働者数(雇用保険被保険者5人以上事業所) | 約204万人 | 約182万人 |
| 雇用理由「労働力不足の解消・緩和のため」 | 68.2% | 69.0% |
| 雇用理由「日本人と同等以上の活躍を期待」 | 56.2% | 54.7% |
| 外国人一般労働者の月間現金給与額 | 29万2,400円 | 前年比6.4%増 |
出典:厚生労働省「令和7年外国人雇用実態調査」(2026年8月31日公表)。飲食サービス業に限定した内訳はページ上に明記されていません。
多様な人材の処遇整合チェックリスト
| 確認項目 | はい/いいえ |
|---|---|
| 時給・手当の差について、業務内容や責任の程度に基づく説明ができる | |
| 外国人材・学生・シニアが担う教育的な役割を評価項目に含めている | |
| 賃金テーブルと評価基準を文書として整理している | |
| 店舗間・雇用形態間で評価基準がそろっている | |
| 採用時にキャリアパスや昇給条件をやさしい言葉で説明している |
架空のモデル事例:時給の説明がつかなかったカフェの見直し
以下は、複数の中小飲食事業者の事例をもとに再構成した架空のモデル事例です。客席20席のカフェB店では、留学生アルバイトと日本人学生アルバイトの時給に差があり、留学生スタッフから理由を尋ねられた際、店長がその場で答えられませんでした。そこで、開店準備・接客・レジ締めなど業務ごとの担当範囲を一覧化し、担当できる業務の幅に応じて時給の段階を設定し直したところ、同じ業務を担当していれば国籍にかかわらず同じ時給になる仕組みに整理できました。効果を保証するものではありませんが、業務範囲の可視化から着手する店舗は少なくありません。
人事コンサルタントからのアドバイス
多様な人材の処遇整合に取り組む際は、まず現状の賃金台帳と評価記録を、正社員・パート・アルバイト・外国人材別に並べて確認することから始めてください。売上や客単価といった店舗業績の数値だけでなく、職種別・雇用形態別の人員構成、シフトの偏り、教育担当者の負担、スタッフから寄せられている声も合わせて確認すると、どこに説明のつかない差があるかが見えてきます。制度を変更する際は、賃金そのものを一律に引き上げるのではなく、まず評価基準と業務範囲の整理を優先し、その結果として必要な賃金テーブルの見直しにつなげる順序をおすすめします。多国籍・多世代のスタッフが働く現場では、説明の言葉遣いや資料のわかりやすさも運用定着のカギになります。待遇差の合理性についての最終的な法的判断や、特定技能人材の受け入れ要件の確認は、都道府県労働局や出入国在留管理庁、社会保険労務士など専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
用語集
- 同一労働同一賃金
- 業務内容や責任の程度が同じであれば、雇用形態や国籍にかかわらず同じ待遇とすべきという考え方です。パートタイム・有期雇用労働法などに基づき、正社員とパート・有期雇用労働者との間の不合理な待遇差の是正が求められています。
- ペイ・エキティ(賃金の公平性)
- 性別や雇用形態、国籍などの属性にかかわらず、同等の職務内容・貢献度であれば同等の賃金水準とする考え方です。給与の透明性を高め、待遇差の説明責任を果たすための土台になります。
- 給与透明性(Pay Transparency)
- 賃金の決定基準や水準、昇給の仕組みを、社内外に対してどこまで開示するかという考え方です。待遇差について説明を求められた際に、根拠を示せる状態を保つ前提になります。
- 職務給・職能給
- 職務給は担当する仕事内容の価値に応じて、職能給は個人の能力や経験に応じて賃金を決定する考え方です。飲食業では、担当できる業務の幅と習熟度の両方を反映した設計が多く見られます。
- ダイバーシティ&インクルージョン
- 国籍、年齢、性別、働き方などが異なる多様な人材が、それぞれの強みを発揮しながら公平に活躍できる組織づくりの考え方です。人手不足が続く飲食店の現場でも重要性が高まっています。
- シニア・リスキリング
- 定年後再雇用者など、シニア層のスタッフが新しい業務スキルを学び直すことです。多能工化やホール・キッチンの人員配置の柔軟化を進める一環として、飲食現場でも幅広く活用できる考え方です。
- 特定技能「外食業」
- 外食業分野の人手不足に対応するために設けられた在留資格の一区分で、一定の技能水準を満たした外国人材が飲食店で就労できる制度です。受け入れにあたっては、事業者側に生活支援や日本語学習支援などの体制が求められます。
- 労働条件通知書
- 賃金、労働時間、就業場所、業務内容などの労働条件を、事業主が労働者に対して書面等で明示する法定の通知書です。雇用形態や国籍にかかわらず、採用時の交付が義務付けられています。
よくある質問(FAQ)
- 外国人材とパート・アルバイトで、評価基準を分けてもよいのでしょうか。
- 国籍や雇用形態そのものを理由に評価基準を分けることは、不合理な待遇差につながるおそれがあります。業務内容や責任の程度が同じであれば、評価の視点は共通にし、勤務時間や担当できる業務範囲の違いを、賃金テーブルの段階として反映する考え方が基本になります。まずは自社の評価項目を職務基準で整理し直すことから始めてください。
- スタッフ数10名程度の店舗でも、待遇差の説明を求められることはありますか。
- 企業規模にかかわらず、パートタイム・有期雇用労働法などの考え方は適用されます。小規模店舗であっても、時給や手当の差について業務内容や責任の程度に基づく説明ができるよう、担当業務の一覧や賃金テーブルの根拠をあらかじめ文書として整理しておくことを強くおすすめします。急に質問されても慌てずに答えられる状態にしておくことが実務上の備えになります。
- 特定技能「外食業」の人材を採用する際、評価制度はどう考えればよいですか。
- 特定技能人材にも、日本人スタッフと同様の職務基準で評価を行うことが基本です。国籍を理由に評価項目を変える必要はありません。あわせて、日本語でのコミュニケーション支援や生活支援、定期的な面談の実施など、受け入れにあたって求められる支援体制について、出入国在留管理庁の公表情報等で必ずあわせて確認してください。
- 賃金テーブルの見直しには、どのくらいの費用や期間がかかりますか。
- 店舗規模や現状の制度の有無によって大きく異なるため、一概にはお答えできません。まずは自社での賃金・評価の現状整理から無理なく着手でき、専任の人事担当者がいなくても取り組めます。具体的な支援内容や進め方については、飲食業向けの人事コンサルティングにご相談いただくと、自社の規模に合った進め方をご案内できます。
- シニアや子育て中のパートスタッフの評価で気をつけることはありますか。
- 勤務時間の制約や勤務可能な時間帯の違いを理由に、不当に低い評価をすることは避ける必要があります。育児・介護などの家庭の事情や、勤務時間の長さの違いを踏まえたうえで、実際に担当している業務の質や貢献度、教育への協力度などを公平に評価する視点が大切であり、評価者研修などで店長間の目線をそろえることも有効です。
出典・参考情報/留意事項
本記事は以下の一次情報に基づいています。個別の待遇差の適法性判断や、外国人材受け入れの要件確認については、都道府県労働局、出入国在留管理庁、社会保険労務士等の専門家にご確認いただくことをおすすめします。
- 厚生労働省「令和7年外国人雇用実態調査」(2026年8月31日公表)
まとめ
外国人労働者数が約204万人に達したという令和7年外国人雇用実態調査の結果は、飲食業を含む多くの現場で、多様な人材の受け入れが一段と進んでいることを示しています。正社員・パート・アルバイト・外国人材・シニアが同じ店舗で働く時代だからこそ、雇用形態や国籍にかかわらず、職務内容と貢献度を基準にした公平な評価・処遇の物差しを整えることが欠かせません。待遇差について説明を求められたときに備え、賃金テーブルと評価基準を文書として整理しておくことは、専任の人事担当者がいない単独店・小規模チェーンでも今日から着手できる取り組みです。業務範囲の可視化や賃金テーブルの整理は、一度にすべての店舗・全職種で進める必要はなく、まず1店舗・1職種で試し、運用しながら他店舗に広げる進め方が現実的です。有限会社ヒューマンリソースコンサルタント(HRC)では、飲食業に特化した評価制度・賃金制度づくりを支援しており、評価シートのサンプルもご提供しています。自社の賃金・評価の現状を整理するところから、処遇整合の第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
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