3種類の賃金表について解説|段階号俸表・複数賃率表・賃金ゾーン表
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3種類の賃金表について解説!段階号俸表・複数賃率表・賃金ゾーン表
多くの方が「賃金表」という言葉を聞いたことあると思います。しかし、賃金表に種類があることはご存知でしょうか?それぞれメリットがありますので、自社にあったものを採用すれば、会社経営がしやすくなったり、社員の納得感が得られます。今回は、賃金表の中でも、段階号俸表、複数賃率表、ゾーン型賃金表という3種類の賃金表について解説します。
賃金表とは
賃金表とは、社員に支給する賃金の金額を一覧にした表を指します。
多くの場合は、賃金表は号俸表を用いて表されます。号俸表とは、等級と号俸(1号、2号…)で構成される表のことで、特に最初の号俸(1号)を初号と呼び、その等級の一番最初の賃金となります。また、1号当たりの昇給金額をピッチと呼びます。
賃金表は必ず作らなければならないものではありませんが、賃金表があることで賃金の基準が明確になり、公平な賃金となります。また、社員は自分の賃金が今後どのように推移するか見通しを立てることができるようになり、安心感につながります。そのため、社員の離職率の低下やモチベーション向上が期待できます。
したがって、賃金表の作成は賃金制度の導入や改定する上で必須であるといえます。
段階号俸表
段階号俸表とは
段階号俸表とは、等級と号で構成された号俸表を用いて、評価ランクによって昇給号数を決定し、処遇するものです。多くの企業で採用されています。賃金表と言われると、この段階号棒表をイメージする方も多いのではないでしょうか?
段階号俸表の縦軸は、1号から始まり下に行くほど号数が大きくなります。一番下に来る号数が上限号俸となり、上限に達した社員は昇格するまで昇給できない状態となります。上限が小さすぎると上限に達するまでの年数が短くなり複数社員が昇給できないという状況になりやすく、上限が大きすぎれば社員が昇給し続け人件費の高騰につながります。また、縦軸で見ると上下の賃金の差がピッチとなっています。
横軸は等級を表します。各等級の1号の賃金がその等級のスタートラインの賃金となっています。
上の表は、段階号俸表の例です。号俸表との大きな違いは、号棒表は毎年1号俸ずつ昇給するのに対して、段階号俸表は評価によって昇給号数が異なり高評価者ほど昇給額が大きくなることです。そのため、段階号俸表は号俸表と比較してピッチ額が細かく、縦長の表となります。
例では、1つ下位の等級のちょうど真ん中の15号の賃金が上位等級の初号の賃金となるように設計しています。各等級の賃金に重複が少ないと昇格に伴う昇給が大きくなり、賃金水準が高くなります。例えば、重複が全くない場合だと、2等級の初号は300,000円となり1等級の20号の社員が2等級に昇格した場合、昇給額は101,000円となります。反対に重複が多すぎると、昇格してもすぐに上限に達してしまい、昇給しにくくなり賃金水準は低くなります。
この表でA評価を取ると4号昇給します。したがって、1等級1号の社員がA評価取ると4号昇給し、賃金は180,000円から184,000円になります。
昇格する際の昇給は2つのパターンが考えられます。
①昇格前の等級で昇給させてから昇格後の等級の直近上位の賃金に当てはめて賃金を決定するパターン
➁昇格前の賃金を昇格後の等級の直近上位の賃金に当てはめてから昇給させて賃金を決定するパターン
上の表で1等級20号の社員がA評価を取って昇格すると仮定して比較します。①の場合だと、まず昇格前の1等級で4号昇給させるため、20号の199,000円から24号の203,000円に昇給させます。次に、203,000円を昇格後の等級である2等級の賃金の直近上位に当てはめます。この場合は、2等級の9号の203,600円が該当します。したがって、①のパターンでの昇給金額は、4600円となります。➁の場合は、まず昇給前の199,000円を昇格後の2等級の賃金の直近上位に当てはめます。この場合は、2等級の6号の200,000円となります。次に4号昇給させるので、昇格後の賃金は10号の204,800円となります。したがって、➁のパターンの昇給金額は、5800円となります。①では昇格前の1等級の水準で昇給するのに対して、➁では昇格後の2等級の水準で昇給するため、昇給額に差が生じます。
また、上位等級に相当する課長職や部長職には役職手当がつくことが多いのに対して、下位等級の一般職に該当する社員は、昇格しても通常の昇給と変わらない場合があるため、昇格するときのルールとして1等級から2等級に昇格する際は、2号昇給するといったルールを設定することもあります。
メリット
段階号棒表のメリットは、社員にとって分かりやすい賃金表であることです。賃金表と自分の評価結果を照らし合わせることで、評価に対する処遇が明確となり、賃金に対する納得感が得られるだけでなく、「次の評価でA評価をとれば○○円昇給できる!」「△年後に昇格すればこれぐらいの収入になるのか…」といったように、賃金に対して具体的にイメージを描くことが可能となり、モチベーションの向上します。また、自分の賃金の見通しがつくことで社員は安心して働けるようになり、離職率の低下が期待できます。
また、企業にとっても社員の賃金を実額管理しやすくなるというメリットがあります。
デメリット
段階号棒表のデメリットは、毎年の評価による昇給が累積され続けることです。段階号俸表は積み上げ式の賃金表のため、毎年の昇給が蓄積され、勤続年数の長い社員の人件費が高騰する可能性があります。また、勤続年数の長い人ほど賃金が高くなるので、年功序列的な賃金になりやすいです。
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ゾーン型賃金表
ゾーン型賃金表とは
ゾーン型賃金表は、号俸表を用いて、賃金ゾーンごとに評価による昇降給パターンを設定するものです。ゾーン型賃金表は、欧米で一般的に使用されているものです。
同じ等級でも、ゾーンによって、評価による昇給または降給の額や有無が変わります。したがって、毎年同じ評価を受けていても、昇降給の額や有無が変わることになります。
また、低ゾーンにいる社員は比較的昇給しやすいのに対し、高ゾーンの社員は昇給しにくく、さらに降給する可能性もあります。
ゾーン型賃金表は、段階号俸表の昇給のルールがさらに細かくなったものであると考えるとイメージしやすくなります。上の表を例にすると、各等級の1号から7号がゾーン1、8号から15号がゾーン2、16号から23号がゾーン3、24号から30号がゾーン4となり、各ゾーンによって評価による昇給号数が異なります。例えば同じ1等級でも1号の社員がA評価をとると5号つまり5,000円昇給するのに対して、24号の社員がA評価を取った場合は2号つまり2,000円の昇給となります。
段階号俸表では、昇格しない評価の悪いベテラン社員の人件費が高騰するというデメリットがありましたが、ゾーン型賃金表は昇格しない評価の悪い社員は一定水準を超えると昇給しづらくなり、場合によっては降給します。評価の良い優秀な社員は昇格していくため、どんどん昇給する仕組みとなっています。
メリット
ゾーン型賃金表は、賃金の低い社員は昇給しやすいので昇給を励みに、賃金の高い社員は賃金を維持できるように緊張感をもって、仕事に対するモチベーションを維持しやすくなります。
また、ゾーン型賃金表は賃金が一定の水準を超えると昇給しにくくなる仕組みのため、水準を満たした社員が賃金を上げるためには昇格する必要があります。そのため、社員が昇格を目指すようになり、人材育成につながります。
デメリット
積み上げ式の賃金からゾーン式の賃金に移行すると、高ゾーンの社員は昇給しにくくなったと感じ、不満を感じる可能性があります。賃金表を改定する場合は、社員に納得してもらうために事前に社員への説明を行いましょう。社員の意見を聞いたり、納得のいく説明があることで、不満の解消やモチベーション向上が期待できます。
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複数賃率表
複数賃率表とは
複数賃率表は、号俸表を基準としつつ、1つの号に複数の基準額のランクを設定するものです。1年で1号ずつ昇号し、評価ランクによって、基準額ランクのどれに該当するか決まります。
複数賃率表の縦軸は、号俸表と同じく下に行くほど号が大きくなります。号俸表と異なるのは横軸です。複数賃率表の横軸は、等級ではなく評価ランクとなります。そのため号俸表のように全等級を1つの表であらわすのではなく、各等級に1つずつの表であらわします。
上の表は、複数賃率表の例です。複数賃率表の最大の特徴は、いわゆる洗い替え方式と呼ばれる方式で、前回の評価に関わらず、今回の評価のみで賃金が決定します。わかりやすい例をあげると、前回A評価を取った社員①さんと前回E評価を取った社員➁さんが2人とも1等級の2号で今回の評価がE評価だったと仮定すると、昇給後の賃金は二人とも3号のE評価に当たる183,000円となります。昇給金額は、前回A評価だった社員①さんは-3,000円となり、前回E評価だった社員➁さんは3,000円となります。
複数賃率表では、2段階一致方式または4段階一致方式を取られることが多いです。2段階一致方式では、該当賃金の1つ下の号で評価が2段階高くなると賃金額が一致します。上図では、2段階一致方式のため、2号のB評価と3号のD評価の賃金額が一致しています。4段階一致方式の場合は、2号のA評価と3号のE評価の賃金額が一致します。上の表では、昇給金額の最高は9,000円で最低は-3,000円となります。
メリット
複数賃率表のメリットは、過去の評価結果が影響しないことです。複数賃率表は洗い替え方式の賃金表のため、前回の評価がAランクの人もDランクの評価の人も今回の評価でCランクとなれば、同じ基準額となります。そのため社員は、一度失敗して悪い評価を得たとしても挽回が可能となります。挽回が可能であれば評価の低い社員も良い評価を目指すようになり、社員のモチベーションアップだけでなく、社員の人材育成にもつながります。
デメリット
複数賃率表のデメリットは、人件費のコントロールが難しいことです。号俸、評価ごとの賃金を明示するため、毎年の昇給額を調整することができず、昇給にかかるコストが想定より高くなってしまう可能性があります。
また、先述したように毎年E評価を取り続けている社員でも昇給し続けるため、低評価を取り続けている社員には工夫して指導する必要があります。
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3つの賃金表を比較!
段階号俸表 | ゾーン型賃金表 | 複数賃率表 | |
---|---|---|---|
昇給号数 | 評価による | 評価による | 毎年1号 |
昇給方式 | 積み上げ方式 | ゾーン方式 | 洗い替え方式 |
特徴 | 年功序列になりやすい | 新入社員や若手社員でも 賃金が上がりやすい | 過去の評価に関係なく 処遇される |
段階号俸表は、日本で従来から多くの企業が取り入れてきた賃金表なので、社員にもわかりやすく、運用しやすいというメリットがあります。また、年功序列的な賃金になりやすいので、社員に長く働いてほしいという企業におすすめの賃金表です。
ゾーン型賃金表は、新入社員や若手社員が昇給しやすい賃金表なので、若い人に入社して活躍してほしいとお考えの企業におすすめの賃金表です。また、昇格しなければ昇給しにくくなるため、成果主義的な賃金体系を目指している企業にもおすすめです。
複数賃率表は、社員が何か失敗をして悪い評価を受けてしまっても、頑張り次第ですぐに挽回が可能なため、社員のモチベーションを上げたいと考えている企業におすすめです。
まとめ
このページでは、3種類の賃金表について解説しました。
- 段階号棒表
- ゾーン型賃金表
- 複数賃金表
- 3つの賃金表を比較!
日本では段階号俸表を取り入れている企業が多かったですが、近年では大企業を中心に複数賃率表やゾーン型賃金表を取り入れる企業が増えてきています。賃金表にはそれぞれ特徴があり、どの賃金表を選択するかによってメリット・デメリットがあります。賃金制度の導入・見直しで賃金表を作成する際は自社にあった賃金表を検討してください。
また、賃金制度を見直すことで人件費のコントロールがしやすくなったり、社員の定着率の上昇が期待できます。当社では賃金制度などの制度設計サービスを取り扱っているので、賃金制度の見直し(人事制度の見直し)を検討されている方は、下記お問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。