特定最低賃金(産業別最低賃金)とは?地域別最低賃金との違い
特定最低賃金とは、特定の産業や職種について、地域別最低賃金よりも高い賃金水準を確保する必要があると認められる場合に、関係労使の申出に基づき最低賃金審議会の調査審議を経て設定される最低賃金制度である。すべての産業に設定されているわけではない。
特定最低賃金が注目される背景
令和8年度は、中央最低賃金審議会が地域別最低賃金の引き上げ目安として全国加重平均で55円(+4.9%)を示したこともあり、最低賃金に関する関心が高まっている。もっとも、最低賃金には都道府県ごとに定められる地域別最低賃金のほかに、特定の産業や職種を対象とする特定最低賃金という別の制度が存在する。地域別最低賃金の改定にばかり目が向きがちだが、自社の業種や職種によっては特定最低賃金の適用の有無もあわせて確認しておく必要がある。
特定最低賃金の制度・仕組み・構成要素
特定最低賃金は、地域別最低賃金では基幹的な労働者の賃金の実態からみて必ずしも十分でないと認められる産業・職種について、関係する労働者または使用者の団体からの申出に基づき、最低賃金審議会が調査審議を行ったうえで設定される制度である。設定の可否や対象となる産業・職種、適用される都道府県は個別に決定されるため、すべての産業・職種に一律に設定されているわけではない。特定最低賃金が設定されている産業・職種と対象都道府県は、厚生労働省や都道府県労働局が公表する最新の一覧で確認する必要がある。
地域別最低賃金との違い
特定最低賃金と地域別最低賃金は、いずれも最低賃金法に基づく制度であるが、適用の考え方が異なる。地域別最低賃金はすべての労働者に適用される全国一律の枠組みであるのに対し、特定最低賃金は特定の産業・職種にのみ設定される、いわば上乗せ的な枠組みである。ある労働者について地域別最低賃金と特定最低賃金の両方が適用される場合は、いずれか高い方の金額以上を支払う必要がある。
| 項目 | 地域別最低賃金 | 特定最低賃金(産業別最低賃金) |
|---|---|---|
| 適用対象 | 都道府県内のすべての労働者 | 特定の産業・職種の労働者(設定がある場合のみ) |
| 設定単位 | 都道府県単位 | 産業・職種単位(対象都道府県も限定) |
| 決定プロセス | 中央最低賃金審議会の目安を踏まえ地方最低賃金審議会が答申 | 関係労使の申出に基づき最低賃金審議会が調査審議 |
| すべての産業への設定 | 設定される(全業種対象) | 設定されない産業・職種も多い |
| 両方が適用される場合 | 高い方の金額以上を支払う | 高い方の金額以上を支払う |
人事労務上のメリット
特定最低賃金が設定されている産業・職種に該当する企業にとっては、業界内の賃金水準の目安を把握できる点がメリットである。同業他社と比較した自社の賃金水準の位置づけを確認しやすくなり、採用活動や賃金制度の見直しを検討する際の参考情報としても活用できる。
実務上の課題・注意点
実務上の注意点として、まず自社の事業・職種に特定最低賃金の設定があるかどうかを確認する必要がある。設定がある場合は、地域別最低賃金と特定最低賃金の両方を確認し、高い方の金額を下回らないよう賃金額を管理しなければならない。また、特定最低賃金には、18歳未満または65歳以上の者、雇い入れ後一定期間未満で技能習得中の者等、一部の労働者について適用されない場合があるとされている。ただし、具体的な適用除外の要件は最低賃金ごとに個別に定められているため、自社での適用の有無は厚生労働省や都道府県労働局の最新情報で確認することが必要である。
中小企業における活用方法
中小企業においては、特定最低賃金の対象となる産業・職種に該当するかどうかを、まず賃金台帳や雇用契約の内容と照らして確認することが実務の出発点になる。該当する場合は、地域別最低賃金の改定時期とあわせて特定最低賃金の改定内容も確認し、両方の金額を比較したうえで賃金額を決定する仕組みを社内に整えておくと、確認漏れを防ぎやすくなる。
導入・対応手順
- 自社が属する業種・職種に特定最低賃金の設定があるかを厚生労働省・都道府県労働局の公表資料で確認する
- 設定がある場合は、対象となる労働者の範囲と適用除外の要件を確認する
- 地域別最低賃金と特定最低賃金の金額を比較し、いずれか高い方を基準額とする
- 賃金台帳等で、対象労働者の賃金額が基準額を下回っていないか確認する
- 地域別最低賃金・特定最低賃金の改定時期にあわせて、社内の確認・更新の仕組みを整備する
確認チェックリスト
| 確認項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 対象業種・職種の該当有無 | 自社の事業内容が特定最低賃金の対象産業・職種に含まれるか |
| 対象都道府県 | 事業場が所在する都道府県で当該特定最低賃金が設定されているか |
| 適用除外の該当有無 | 18歳未満・65歳以上・技能習得中の者等、適用除外に該当する労働者がいないか |
| 金額の比較 | 地域別最低賃金と特定最低賃金のいずれが高いか |
| 賃金台帳への反映 | 基準額以上の賃金が支払われているか |
よくある質問
特定最低賃金はすべての企業に適用されますか。
いいえ。特定最低賃金は、対象となる産業・職種として設定されている場合にのみ適用される。自社の事業がその対象に含まれるかどうかは、厚生労働省や都道府県労働局が公表する最新の一覧で確認する必要がある。
地域別最低賃金と特定最低賃金の両方が適用される場合、どちらを基準にすればよいですか。
いずれか高い方の金額以上を支払う必要がある。両方の金額を確認したうえで、高い方を基準額として賃金額を管理する。
特定最低賃金が適用されない労働者はいますか。
18歳未満または65歳以上の者、雇い入れ後一定期間未満で技能習得中の者等、一部の労働者には適用されない場合があるとされている。ただし、具体的な適用除外の要件は最低賃金ごとに定められているため、個別に確認することが必要である。
まとめ
特定最低賃金は、地域別最低賃金とは別に、特定の産業・職種について設定される最低賃金制度である。すべての企業に適用されるものではないため、まず自社の事業・職種が対象となっているかを確認することが実務の出発点になる。対象となる場合は、地域別最低賃金との比較や適用除外の確認を行いながら、賃金額の管理体制を整えることが重要である。
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