年次有給休暇の計画的付与はどう導入する?労使協定の手順と中小企業の運用ポイント

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年次有給休暇の計画的付与はどう導入する?労使協定の手順と中小企業の運用ポイント

目次

この記事でわかること

  • 10月が「年次有給休暇取得促進期間」とされている背景と、年5日の取得義務の基本
  • 計画的付与制度の仕組みと、対象になる日数
  • 労使協定で定める内容と、導入までの手順
  • 時間単位年休との違いと、中小企業が運用で決めておくこと

結論

年次有給休暇の計画的付与は、労使協定を結ぶことで、年休のうち5日を超える部分について会社が取得日をあらかじめ割り振れる制度です。厚生労働省は毎年10月を年次有給休暇取得促進期間とし、導入を呼びかけています。付与日数の確認、労使協定の締結、就業規則の整備、周知の順に進めます。

年次有給休暇の計画的付与とはどのような制度か

厚生労働省は、毎年10月を「年次有給休暇取得促進期間」と位置づけ、取得促進の機運を高める取組みを行っています。その中で、「計画的付与制度」と「時間単位年休」の導入・活用が効果的であるとして、労使が一体となって検討するよう呼びかけています。

前提として、2019年4月から、年10日以上の年次有給休暇が付与される全労働者について、使用者が年5日を確実に取得させる義務があります。この義務は、正社員かパートタイム労働者かといった区分に関係なく、要件を満たす労働者が対象です。

計画的付与は、この年5日とは別に、会社が休暇の取得日を割り振る仕組みです。厚生労働省の資料では、次のように整理されています。

  • 対象となる日数:年次有給休暇のうち5日を超える部分(前年度からの繰越分がある場合は、繰越分を含めた日数から5日を引いた日数)
  • 必要な手続:書面による労使協定で、休暇を与える時季を定めること
  • 協定の相手方:労働者の過半数で組織する労働組合。ない場合は、労働者の過半数を代表する者
  • 根拠:労働基準法第39条第6項

付与の方法は、事業場全体で同じ日に休む一斉付与、班やグループごとに交替で休む方式、個人ごとに日を決める方式などが、一般に紹介されています。企業や事業場の実態に合わせて選びます。

なぜ中小企業の実務で重要なのか

従業員数が少ない会社では、1人が休むと業務が止まりやすく、年休の取得がどうしても個人の判断や遠慮に任されがちです。その結果、取得が進む人と進まない人に分かれ、年5日の取得義務を満たせない従業員が出るおそれがあります。

取得日をあらかじめ決めておけば、会社側は業務の繁閑を見ながら人員の調整ができ、従業員も予定を立てやすくなります。取得しにくい雰囲気を、個人の努力ではなく会社の仕組みで解消できる点が、計画的付与の大きな利点です。

実務上起こりやすい課題

  • 年5日の取得状況を把握しておらず、年度の終盤になって取得を促している
  • 繁忙期と取得日が重なり、現場の判断で休暇が取りにくくなっている
  • 入社して間もない従業員やパートタイム労働者は付与日数が少なく、計画的付与の対象にできるか分からない
  • 労使協定を結ぶ過半数代表者の選び方があいまいで、協定が形だけになっている
  • 就業規則に計画的付与の根拠となる定めがない

課題別の対応策

付与日数と繰越日数を従業員ごとに確認する

計画的付与の対象は、付与日数のうち5日を超える部分です。そのため、付与日数が5日以下の従業員には、計画的付与で取得日を割り振ることができません。まず従業員ごとの付与日数と繰越日数を一覧にして、対象になる日数を確認します。

付与方式を業務の実態に合わせて選ぶ

事業場全体で休める業種では一斉付与が運用しやすく、シフトで稼働する部署や、取引先対応で全員が休めない会社では、班別の交替付与や個人別の付与が考えられます。年末年始やお盆など、すでに休業日になっている時期の前後に付与日を置く方法もあります。

労使協定で付与の時季を明確に定める

労使協定には、休暇を与える時季に関する事項を書面で定めます。対象となる従業員の範囲、付与する日数と日付、付与日数が少ない従業員の取扱いなど、運用で迷いやすい点を協定に書いておくと、後の混乱を防げます。

就業規則を整え、従業員に周知する

計画的付与を行う旨は、就業規則にも定めておくのが一般的です。協定を結んだら、取得日と対象者を従業員にわかりやすく伝えます。

具体的な対応ステップ

  1. 従業員ごとの年次有給休暇の付与日数、繰越日数、これまでの取得日数を一覧にする
  2. 年5日の取得状況を確認し、未取得の従業員を把握する
  3. 事業場の繁閑や休業日を踏まえ、計画的付与の方式と日数を決める
  4. 過半数労働組合、または過半数代表者と協議し、労使協定を書面で締結する
  5. 就業規則に計画的付与の根拠規定を設ける、または見直す
  6. 付与日と対象者を従業員に周知する
  7. 実施後に取得状況を確認し、翌年度の計画に反映する

制度の比較表

年休に関する3つの仕組みは、役割が異なります。混同しないように整理しておきましょう。

項目計画的付与時間単位年休使用者による時季指定(年5日)
根拠労働基準法第39条第6項労働基準法第39条第4項労働基準法第39条第7項(条文はe-Govで要確認)
労使協定必要必要不要(就業規則への記載が必要とされる)
対象日数年休のうち5日を超える部分年5日以内年5日
年5日の取得義務との関係年5日を超える部分に対する制度(取得した日数の数え方は条文で要確認)年5日の取得に含まれない年5日の取得義務そのもの

時間単位年休は、通院や子どもの学校行事、家族の介護などに使える柔軟な制度ですが、年5日の取得義務を満たす日数には数えられません。

導入前のチェックリスト

確認項目内容
付与日数従業員ごとの付与日数と繰越日数を把握しているか
対象日数5日を超える部分だけを計画的付与の対象にしているか
労使協定過半数労働組合、または過半数代表者と書面で協定を結んでいるか
就業規則計画的付与に関する定めがあるか
付与日数が少ない人対象にできない従業員への取扱いを決めているか
周知付与日と対象者を従業員に伝えているか

注意点・法的リスク

年次有給休暇のうち5日分は、従業員が自由に請求できる日数として残す必要があります。計画的付与は5日を超える部分に限られるため、会社が付与日を決める範囲を広げすぎないようにしてください。

また、労使協定がないまま会社が一方的に取得日を割り振ることはできません。年5日の取得義務を果たしていない場合の罰則の内容を含め、条文は公開前にe-Gov法令検索でご確認ください。個別の運用は、社会保険労務士など専門家に確認することをおすすめします。

中小企業ならではの対応方法

従業員数が少ない会社では、大がかりな制度を作るよりも、まず年間カレンダーに「会社として休みたい日」を書き込むところから始めるのが現実的です。取引先の休業日や、仕事量が落ち着く時期が分かれば、その前後に計画的付与の候補日を置けます。

従業員の人数が少なく、過半数代表者を選ぶことが難しい場合でも、協定の締結は省略できません。誰が従業員の意見を代表するのかを、全員が納得できる方法で決めておきましょう。

まとめ

年次有給休暇の計画的付与は、労使協定を結ぶことで、5日を超える部分の取得日を会社が割り振れる制度です。10月の年次有給休暇取得促進期間は、年5日の取得状況を確認し、自社に合う付与方式を検討する良い機会です。付与日数の確認、労使協定、就業規則、周知の順に整えていきましょう。

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年次有給休暇の取得を促す仕組みは、休暇制度だけで完結せず、人員配置や評価のあり方とも関わります。取得しにくい職場の要因が、制度の不備なのか、仕事の進め方や評価の仕組みにあるのかは、自社だけでは切り分けにくいことがあります。

まずは就業規則や休暇の運用状況を確認するのか、人事制度の運用面から見直すのかは、会社の状況によって異なります。有限会社ヒューマンリソースコンサルタントでは、中小企業の人事制度の分析・設計・運用を支援しています。進め方を相談したい場合は、お問い合わせページよりご連絡ください。

関連するよくある質問

パートタイム労働者にも計画的付与は使えますか。

厚生労働省は、年次有給休暇は正社員やパートタイム労働者などの区分に関係なく、要件を満たす全労働者に付与されるとしています。ただし、計画的付与の対象は5日を超える部分のため、付与日数が少ない人には使えない場合があります。

時間単位年休を使えば、年5日の取得義務は満たせますか。

厚生労働省は、時間単位年休で取得した分は、年5日の取得義務の日数に含まれないとしています。

労使協定の相手は誰ですか。

労働者の過半数で組織する労働組合があればその組合、ない場合は労働者の過半数を代表する者です。過半数代表者の選び方の細目は、本記事では確認できていないため、労働局などの案内でご確認ください。

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