育児時短就業給付金とは?時短勤務の社員が出たときに中小企業が行う手続と賃金設計
この記事でわかること
- 育児時短就業給付金の対象者、受給要件、支給額
- 週20時間未満になる場合や、育児休業から時短勤務へ移行する場合の取扱い
- 事業主が行う受給資格確認・支給申請と提出期限
- 時短勤務中の給与・賞与・人事評価を設計する際の法的注意点
結論
育児時短就業給付金は、2歳未満の子を養育するために週所定労働時間を短縮して働く雇用保険の一般被保険者・高年齢被保険者について、一定の要件を満たす場合に支給される制度です。2025年(令和7年)4月1日に創設されました。
支給額は原則として支給対象月に支払われた賃金の10%ですが、賃金低下率や支給限度額などによって減額または不支給となります。申請は原則として事業主を経由して行います。企業は、雇用保険の手続に加え、時短勤務中の賃金・賞与・評価のルールを整備することが重要です。
育児時短就業給付金とはどのような制度か
育児時短就業給付金は、育児のために所定労働時間を短縮して働く雇用保険の被保険者に対し、賃金低下を補うために支給する給付です。育児・介護休業法上の短時間勤務制度と、雇用保険から支給される育児時短就業給付金は、根拠と役割が異なります。
| 項目 | 制度内容 |
|---|---|
| 制度開始 | 2025年(令和7年)4月1日 |
| 対象者 | 2歳未満の子を養育するため週所定労働時間を短縮して働く一般被保険者・高年齢被保険者で、受給要件を満たす人 |
| 賃金が開始時賃金月額の90%以下 | 原則として支給対象月に支払われた賃金の10% |
| 賃金が90%超・100%未満 | 賃金低下率に応じて支給率を調整 |
| 賃金が100%以上 | 不支給 |
| 支給限度額 | 484,121円(支給対象月に支払われた賃金と給付額の合計額に適用) |
| 最低限度額 | 算定した給付額が2,562円以下の場合は不支給 |
| 申請 | 原則として事業主経由。本人が希望する場合は直接申請も可能 |
※支給限度額484,121円、最低限度額2,562円は、2026年8月1日から2027年7月31日までの額です。これらの金額は毎年8月1日に改定されます。
なぜ中小企業の実務で重要なのか
従業員数が限られる中小企業では、育児時短勤務によって人員配置、業務分担、顧客対応の体制が変わることがあります。給付金制度を正しく案内できれば、従業員が短時間勤務を検討する際の判断材料になります。
一方、受給資格や申請期限を誤って説明すると、給付金が受けられると期待していた従業員とのトラブルにつながりかねません。また、時短勤務者の賃金と評価をあいまいにすると、制度利用者と周囲の社員の双方に不公平感を生じさせる可能性があります。
実務上起こりやすい課題
- 育児休業から引き続き時短勤務に移る場合と、それ以外の場合の受給資格確認方法を区別していない
- 11日以上の賃金支払基礎日数、または80時間以上の判定基準を確認していない
- 短縮後の週所定労働時間が20時間未満となった場合の雇用保険資格を確認していない
- 給与の締日・支払日の違いによって給付額が変わることを把握していない
- 育児短時間勤務を欠勤扱いとするなど、労働時間制度と就業規則の整合が取れていない
- 時短勤務者の基本給・手当・賞与・昇給・評価に関する取扱いが不明確
課題別の対応策
受給資格と支給対象月の条件を確認する
受給資格は、2歳未満の子を養育するために週所定労働時間を短縮して働く被保険者であることに加え、次のいずれかに該当する必要があります。
- 育児休業給付の対象となった育児休業から引き続き、同一の子について育児時短就業を開始する場合。育児休業終了後、14日以内に時短就業を開始した場合も含まれます。
- 育児時短就業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数11日以上の完全月が12か月以上ある場合。11日未満の月は賃金支払の基礎となった時間数が80時間以上かを確認します。
さらに、各支給対象月について、月初から月末まで継続して被保険者であること、時短就業をした期間があること、育児休業給付・介護休業給付を受けていないこと、高年齢雇用継続給付の受給対象月ではないことなどを確認します。
妊娠・出産・育児、傷病等により賃金が支払われなかった期間がある場合には、受給資格判定に用いる期間について特例があるため、個別にハローワークへ確認してください。
週20時間未満になる場合に注意する
短縮後の週所定労働時間が20時間未満となる場合、通常は雇用保険の被保険者資格を喪失し、給付の対象外となります。
ただし、子が小学校就学の始期に達するまでに週所定労働時間20時間以上の労働条件に戻ることを前提とし、そのことが就業規則などの書面から確認できる場合は、例外的な取扱いが認められます。労働条件の変更前に、雇用保険の資格を維持できるか確認してください。
フレックスタイム制・シフト制の場合の判断
フレックスタイム制の場合は、清算期間における総労働時間を短縮して働くことが必要です。総労働時間を変更せず、出勤しない時間について単に欠勤控除しているだけでは、原則として育児時短就業に該当しません。
シフト制の場合には、時短就業開始前後の実際の労働時間等から、週当たりの平均労働時間が短縮されているかを確認します。いずれも、就業規則、労使協定、勤務表、申出書、労働条件通知書等による確認が必要です。
申請の期限と必要書類を確認する
初回の支給申請は、育児時短就業を開始した日の属する月の初日から起算して4か月以内です。たとえば4月に時短勤務を開始した場合、初回申請期限は原則7月31日です。
主な書類は、次のとおりです。
- 育児時短就業給付受給資格確認票・(初回)育児時短就業給付金支給申請書
- 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書・所定労働時間短縮開始時賃金証明書(提出不要となる場合あり)
- 賃金台帳、出勤簿、タイムカード、育児短時間勤務申出書、労働条件通知書等
- 母子健康手帳など育児の事実を確認できる書類(省略できる場合あり)
育児休業給付を受けた育児休業から引き続き同一の子について時短就業を開始する場合、賃金証明書の提出は原則不要ですが、受給資格確認は必要です。2回目以降はハローワークが指定する期間内に申請します。
提出先は事業所所在地を管轄するハローワークです。電子申請も利用できます。提出様式と添付書類は最新の厚生労働省の案内に従ってください。
支給対象月に実際に支払われた賃金を確認する
給付額の計算では、原則として支給対象月に実際に支払われた賃金が基準になります。時短勤務を行った月の労働に対応する賃金が翌月に支払われる場合、勤務実績と給付額の算定に使う賃金の月が一致しないことがあります。
臨時に支払われる賃金や3か月を超える期間ごとに支払われる賃金は、原則として算定対象の賃金から除きます。通勤手当等の一括払いには別途取扱いがあります。給与計算担当者は、給与締日・支払日と支給対象月を照合してください。
賃金・賞与・人事評価の取扱いを決める
育児短時間勤務の利用により実際に働かなかった時間に相当する賃金を支払わないことは、通常、それ自体が違法な不利益取扱いとなるわけではありません。
しかし、実際に短縮した時間を超えて賃金・賞与を減額したり、育児短時間勤務の申出・利用のみを理由に不利な人事評価や昇進・昇格上の取扱いをしたりすることは、育児・介護休業法上問題になります。
基本給や手当の時間按分の対象、賞与の算定期間、評価対象とする成果・役割、昇給への反映方法を、業務実態と制度趣旨に照らして定めてください。会社が時短中の賃金を補填する場合は、給付額の減少や不支給につながる可能性も説明する必要があります。
具体的な対応ステップ
- 子の年齢と従業員の雇用保険被保険者資格を確認する
- 育児休業からの移行か、それ以外の時短就業かを確認する
- 受給資格に必要な被保険者期間・賃金支払基礎日数等を確認する
- 短縮前後の週所定労働時間、週20時間未満となる場合の例外要件を確認する
- 開始時賃金月額、給与支払日、時短後に支払う賃金を整理する
- 初回の受給資格確認・申請書類を準備し、申請期限を管理する
- 2回目以降の申請日を管理し、賃金台帳・勤務表等を保存する
- 基本給・賞与・昇給・評価に関する取扱いを規程と個別通知に反映する
賃金設計の試算例
以下は、育児時短就業開始時賃金月額を30万円とし、各支給対象月に表示額の賃金が実際に支払われた場合の参考例です。支給要件を満たし、限度額による減額が生じない前提で計算しています。
| 支給対象月に支払われた賃金 | 開始時賃金月額に対する割合 | 給付金の参考額 | 賃金と給付の合計 |
|---|---|---|---|
| 240,000円 | 80% | 24,000円 | 264,000円 |
| 270,000円 | 90% | 27,000円 | 297,000円 |
| 280,000円 | 約93.33% | 18,004円(調整後支給率6.43%の例) | 298,004円 |
| 300,000円 | 100% | 不支給 | 300,000円 |
※280,000円の例は厚生労働省の公表例に基づきます。賃金率や支給率、給付額には所定の端数処理があります。給付額は雇用保険から本人に支給されるもので、会社が支払う賃金とは異なります。
注意点・法的リスク
- 受給の確約はしない:育児時短就業給付金の受給資格・支給額はハローワークの審査で決まります。会社は見込額を確定額として案内しないことが重要です。
- 申請漏れを防ぐ:申請期限は時短開始月を基準に管理します。本人申請を希望する場合も、事業主による証明や資料提供の協力が必要です。
- 短縮時間を超える減額を避ける:育児短時間勤務を利用したことのみを理由とした不利益な賃金・賞与・昇進評価は避け、実際の勤務時間・成果・役割に即して判断します。
- 制度を区別する:育児・介護休業法上の短時間勤務措置を受けられることと、雇用保険の育児時短就業給付金が支給されることは別の問題です。
中小企業ならではの対応方法
時短勤務の対象者が少ない企業では、申請が必要になった段階で制度を調べることも少なくありません。育児短時間勤務の申出書、取扱通知書、給与計算・雇用保険申請のチェックリストを準備しておくと、対応漏れを防ぎやすくなります。
あわせて、短縮した時間に応じた仕事の再配分や目標設定を行い、時短勤務者と周囲の社員の業務負担・評価の公平性を確認することが重要です。
まとめ
育児時短就業給付金は、2歳未満の子を養育しながら所定労働時間を短縮して働く雇用保険の被保険者に、一定の要件のもとで支給されます。給付額は原則として賃金の10%ですが、賃金水準や限度額によって調整されます。
会社は、受給資格、週20時間未満となる場合の例外、申請期限と必要書類を確認するとともに、賃金・賞与・評価を適法かつ公平に設計する必要があります。
HRCへの相談案内
時短勤務の賃金や評価は、育児中の従業員だけの問題ではなく、周囲の従業員の納得感や、賞与・昇給の考え方とも関わります。給付金の手続は雇用保険の事務ですが、賃金制度や評価制度との整合は、自社だけでは判断しにくい場合があります。
時短勤務者の処遇の現状を整理するところから始めるのか、等級・評価・賃金制度の設計から見直すのかは会社の状況によって異なります。有限会社ヒューマンリソースコンサルタントでは、中小企業の人事制度の分析・設計・運用を支援しています。進め方を相談したい場合は、お問い合わせページよりご連絡ください。
関連するよくある質問
Q. 育児時短就業給付金は、いつ創設された制度ですか。
2025年(令和7年)4月1日に創設されました。出生後休業支援給付金と同じ時期に導入された雇用保険の給付です。
Q. 育児休業から復帰してすぐ時短勤務にしない場合も対象ですか。
育児休業給付の対象となった育児休業の終了後14日以内に、同じ子について時短就業を開始した場合は、引き続き開始したものとして扱われます。それ以外の場合も、被保険者期間等の要件を満たせば対象となる可能性があります。
Q. 時短後の週所定労働時間が20時間未満でも対象ですか。
通常は雇用保険の被保険者資格を喪失し、対象外になります。ただし、子が小学校就学の始期に達するまでに週20時間以上へ戻ることを前提とすることが就業規則等の書面で確認できる場合は、例外が認められます。
Q. 申請は会社と本人のどちらが行いますか。
原則として事業主を経由して申請します。被保険者本人が希望する場合は、本人が直接申請することも可能です。
Q. 時短後の賃金が下がらなかった場合はどうなりますか。
支給対象月に支払われた賃金が開始時賃金月額の100%以上となる場合、給付は支給されません。90%を超え100%未満の場合は、支給率が調整されます。
Q. 時短勤務を利用した社員の給与や賞与を減らしてもよいですか。
実際に働かなかった時間に相当する賃金を支払わないことは、通常、それだけで違法な不利益取扱いにはなりません。一方、短縮時間を超える減額や、時短勤務の申出・利用のみを理由とした不利益な評価などは問題になります。
Q. フレックスタイム制でも給付対象になりますか。
清算期間の総労働時間を育児のために短縮する場合は対象となり得ます。総労働時間を短縮せずに欠勤控除だけを行う場合は、原則として対象になりません。
関連記事・関連サービス
公的情報源・参考資料
- 厚生労働省「育児時短就業給付の内容と支給申請手続」(令和8年8月1日時点版)
- 厚生労働省「Q&A~育児休業等給付~」
- 厚生労働省「育児休業等給付について」
- 厚生労働省「育児・介護休業法に基づく指針」
- 厚生労働省「短時間勤務等の措置」
この記事は2026年10月18日時点に確認できる公的資料をもとに作成しています。支給額や具体的な受給資格・提出書類の最終的な確認は、事業所を管轄するハローワークで行ってください。
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