介護に直面した従業員への個別周知・意向確認とは?中小企業の対応手順と40歳への情報提供

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仕事と介護の両立支援・実務解説

介護に直面した従業員への個別周知・意向確認とは?中小企業の対応手順と40歳への情報提供

公開日:
法令・制度情報の確認日:2026年10月18日

この記事でわかること

  • 2025年4月1日施行の育児・介護休業法改正による事業主の義務
  • 介護に直面した従業員に周知する内容と、利用意向の確認方法・時期
  • 40歳前後の従業員への早期の情報提供と、その実施期間
  • 雇用環境整備、介護休暇の要件緩和、テレワークに関する義務・努力義務の違い
  • 中小企業が規程・労使協定・社内様式を点検する手順
目次

結論

2025年(令和7年)4月1日から、介護に直面した旨を申し出た従業員に対して、事業主は介護休業や仕事と介護の両立支援制度等の内容、申出先、介護休業給付金について個別に周知し、制度利用の意向を確認する義務があります。

また、40歳前後の従業員への早期の情報提供と、介護休業等を利用しやすい雇用環境の整備も事業主の義務です。これらは企業規模を問わず対応が必要です。一方、介護のためのテレワーク等の導入は努力義務です。

介護に関する育児・介護休業法の改正とは

2025年4月1日施行の改正では、介護離職を防止するため、制度を必要とする従業員に情報を届ける仕組みと、申し出やすい職場環境の整備が強化されました。

改正・対応項目内容法令上の位置づけ
雇用環境の整備研修、相談体制の整備、自社事例の収集・提供、利用促進方針の周知から、いずれか1つ以上を実施する。事業主の義務
介護に直面した従業員への個別周知・意向確認制度の内容・申出先・介護休業給付金を個別に周知し、介護休業の取得や両立支援制度等の利用意向を確認する。事業主の義務
40歳前後での早期の情報提供法定の期間に制度の内容・申出先・介護休業給付金を情報提供する。事業主の義務
介護休暇の取得要件の緩和労使協定による「継続雇用期間6か月未満」の除外を廃止する。施行済みの法定制度の変更
介護のためのテレワーク等要介護状態の対象家族を介護する従業員が選択できるよう、措置を講じる。事業主の努力義務

雇用環境整備は、複数の措置を実施することが望ましいとされています。また、介護休暇の取得要件の見直しは、個別周知とは別に、就業規則や労使協定の点検が必要な事項です。

なぜ中小企業の実務で重要なのか

家族の介護は突然始まることがあり、従業員が仕事との両立方法を十分に知らないまま退職を検討することもあります。中小企業では、従業員が一人欠けるだけでも業務分担への影響が大きいため、介護の相談を受けた段階で制度や相談先を案内できる体制が重要です。

法改正に対応するには、育児・介護休業規程を整えるだけでなく、相談を受ける管理職や人事担当者が、必要な説明と意向確認を実施できるようにしておく必要があります。

実務上起こりやすい課題

  • 介護の相談を受けた管理職が、人事担当者への連絡や個別周知の手順を知らない
  • 介護休業と介護休暇、短時間勤務等の制度の違いを説明できない
  • 個別周知に必要な制度・申出先・介護休業給付金の3項目が様式にそろっていない
  • 40歳前後の従業員への情報提供を人事の年間予定に組み込んでいない
  • 介護休暇について、旧来の「勤続6か月未満を除外する」規定が残っている
  • 家族の病気や介護状況に関する情報が、本人の意向に反して社内に広がる

課題別の対応策

介護の申出を受けたら、個別に周知し意向を確認する

従業員が、対象家族について介護・支援が必要になった旨を申し出た場合、会社は次の3項目を個別に周知します。

  1. 介護休業制度と、介護休暇・所定外労働の制限・時間外労働の制限・深夜業の制限・介護のための所定労働時間の短縮等の措置
  2. 介護休業・両立支援制度等の申出先(人事担当部署や相談窓口など)
  3. 介護休業給付金に関すること

そのうえで、介護休業の取得や介護両立支援制度等の利用について本人の意向を確認します。周知・意向確認の方法は、面談(オンライン面談を含む)、書面交付、FAX、電子メール等のいずれかです。ただし、FAXと電子メール等は、従業員が希望した場合に限られます。

介護休業等の取得・利用を控えさせるような説明は認められません。また、家族の介護に関する情報の共有範囲は、本人の意向を踏まえ、必要最小限とするなどの配慮が求められます。

個別周知・意向確認は適切な時期に実施する

法令解説では、従業員が希望する時期から制度を利用できるよう、適切な時期に対応する必要があるとされています。厚生労働省が示す具体例は次のとおりです。

申出の状況個別周知・意向確認の実施時期の考え方
介護休業開始希望日の1か月以上前に介護に直面した旨の申出介護休業開始希望日の2週間前まで
介護休業開始希望日の1か月以内に申出できる限り早い時期(1週間以内など)
両立支援制度等の利用開始希望日の2か月以上前に申出利用開始希望日の1か月前まで
両立支援制度等の利用開始希望日の2か月以内に申出できる限り早い時期(2週間以内など)

上記は厚生労働省の解説に示された具体例です。開始希望日がまだ決まっていない場合も、介護の申出を受けたら早めに制度を案内し、本人の希望を確認する運用が望まれます。

40歳前後の従業員への情報提供を年間予定に組み込む

介護に直面する前の早期の情報提供は、従業員から介護の申出がなくても実施する義務があります。情報提供の期間は、次のいずれかです。

  • 40歳に達する日(誕生日の前日)が属する年度の初日から末日まで
  • 40歳に達する日の翌日(40歳の誕生日当日)から1年間

例えば、1986年9月1日生まれの従業員について、誕生日を基準に管理する場合の情報提供期間は、2026年9月1日から2027年8月31日までです。

情報提供事項は、介護休業・両立支援制度等の内容、申出先、介護休業給付金の3項目です。介護保険制度についてもあわせて説明することが望ましいとされています。

40歳時点の情報提供は、面談、書面、FAX、電子メール等から選べます。介護に直面した際の個別周知と異なり、FAXや電子メール等の利用に本人の希望は必要ありません。

雇用環境整備の措置を実施する

会社は、介護休業等に関する研修の実施、相談体制の整備、自社の利用事例の収集・提供、利用促進方針の周知から、いずれか1つ以上を実施する必要があります。

小規模な企業では、相談窓口を設け、その担当者と利用方法を全従業員に周知する方法が考えられます。ただし、形式的に窓口名を決めるだけでなく、実際に相談を受け付け、必要な案内ができる体制にしておくことが重要です。

介護休暇の規定と労使協定を点検する

2025年4月1日以降、介護休暇について労使協定で取得対象から除外できるのは、週の所定労働日数が2日以下の労働者です。従来認められていた「継続雇用期間6か月未満」の除外は廃止されました。

この改正は介護休暇に関するものであり、介護休業や介護のための短時間勤務等の措置とは、対象者の除外要件が異なります。制度を混同せず、それぞれの規程と労使協定を確認してください。

介護休業・介護休暇・両立支援制度等の違い

制度主な内容役割
介護休業対象家族1人につき通算93日、3回まで分割取得可能。要件を満たす雇用保険被保険者には介護休業給付金の対象となる場合がある。介護体制を整えるためのまとまった休業
介護休暇対象家族1人なら年5日、2人以上なら年10日。原則として1日または時間単位で取得できる。通院の付き添い、介護手続などスポット的な対応
所定外・時間外労働、深夜業の制限法令所定の条件に基づき、請求により残業や深夜業を制限する制度。仕事を続けながら介護時間を確保
所定労働時間の短縮等の措置短時間勤務、フレックスタイム、時差出勤、介護サービス費用の助成等から所定の措置を設ける。継続的な介護と仕事の両立

介護休業給付金は、雇用保険の受給要件を満たす場合、原則として休業開始時賃金日額に支給日数と67%を乗じる方法で算定されます。支給には上限や、休業中の賃金額による調整があります。介護休暇の有給・無給は会社の規程によります。

具体的な対応ステップ

  1. 育児・介護休業規程と労使協定を確認し、介護休暇の取得対象から「継続雇用6か月未満」を除外する旧規定が残っていないか点検する
  2. 雇用環境整備の4つの措置から1つ以上を選び、実際に利用できる状態にする
  3. 介護の申出を受ける窓口と、個別周知・意向確認の担当者を決める
  4. 介護休業・両立支援制度等、申出先、介護休業給付金を記載した周知資料と意向確認様式を用意する
  5. 申出から説明までの社内対応手順と、実施内容の記録方法を決める
  6. 40歳前後の対象者の抽出方法、情報提供期間、配布方法を年間予定に組み込む
  7. 管理職に、制度利用を控えさせない対応と、介護情報の適切な取扱いを説明する
  8. 必要な規程改定と従業員への周知を行い、実施状況を定期的に確認する

対応状況のチェックリスト

確認項目チェック内容
雇用環境整備研修、相談体制、事例提供、方針周知のうち1つ以上を実施しているか
申出時の個別周知介護休業・両立支援制度等の内容、申出先、介護休業給付金の3項目を説明できるか
利用意向の確認制度利用を控えさせず、本人の希望を確認しているか
連絡方法個別周知をFAX・メールで行う場合、従業員の希望を確認しているか
40歳時の情報提供対象期間内に情報提供できる仕組みがあるか
介護休暇旧来の勤続6か月未満の除外規定が残っていないか
情報管理家族の介護に関する情報を必要な範囲で取り扱っているか
実施記録周知日、周知内容、意向確認の状況を社内で管理しているか

実施記録の保存方法を整えることは、対応漏れの防止や事後確認に役立ちます。上表は実務管理のためのチェック項目であり、すべてが独立した法定の記録義務であることを意味しません。

注意点・法的リスク

個別周知・意向確認、40歳前後での早期の情報提供、雇用環境整備は、すでに施行されている事業主の義務です。介護休業等の取得・利用を控えさせる説明や、介護休業等の申出・取得を理由とする解雇、雇止め、降格などの不利益取扱いは禁止されています。

また、介護休業等に関するハラスメントを防止するための措置も必要です。家族の病気、障害、介護状況などについては、本人の意向と業務上の必要性を踏まえ、社内での情報共有を適切に管理することが重要です。

介護のためのテレワーク等は努力義務ですが、仕事と介護を両立するための選択肢として、業務内容や職場環境に応じて導入を検討するとよいでしょう。

中小企業ならではの対応方法

従業員数が少ない企業では、介護休業の申出が頻繁に発生するとは限りません。そのため、いざ相談を受けたときに説明が漏れないよう、周知資料と意向確認の様式をあらかじめ用意しておくことが有効です。

厚生労働省は、介護の個別周知・意向確認書や40歳情報提供の記載例を公開しています。これらを自社の制度内容に合わせて活用し、管理職が相談を受けたら人事担当者へつなぐ仕組みを整えましょう。

あわせて、本人の希望に応じた業務分担や引継ぎ方法を検討することで、介護する従業員と周囲の従業員の双方にとって、無理のない運用につながります。

まとめ

2025年4月1日から、介護に直面した従業員への個別周知・意向確認、40歳前後での早期の情報提供、介護休業等を利用しやすい雇用環境整備が事業主の義務となっています。

個別周知では制度内容・申出先・介護休業給付金を伝え、利用の意向を確認します。40歳時の情報提供は、40歳に達する日の属する年度、または40歳の誕生日から1年間のいずれかの期間に実施します。

相談窓口や社内様式、育児・介護休業規程、労使協定を点検し、従業員が介護によって離職せずに働き続けられる体制を整えることが重要です。

HRCへの相談案内

仕事と介護の両立支援は、規程の整備だけではなく、管理職の対応、業務の引継ぎ、働き方の調整、評価・賃金制度との整合まで含めて運用することが重要です。

有限会社ヒューマンリソースコンサルタントでは、中小企業の人事制度の分析・設計・運用を支援しています。現在の制度や運用上の課題を整理し、仕事と介護を両立できる職場づくりを進めたい場合は、お問い合わせページよりご相談ください。

関連するよくある質問

Q. 介護に関する個別周知・意向確認は、いつから義務になりましたか。

2025年(令和7年)4月1日から、事業主の義務となっています。介護に直面した旨の申出を受けた従業員に、制度内容・申出先・介護休業給付金を周知し、制度利用の意向を確認する必要があります。

Q. 個別周知・意向確認は、メールだけで行えますか。

電子メール等でも行えますが、介護に直面した旨の申出を受けた際の個別周知・意向確認では、従業員が希望した場合に限られます。面談(オンラインを含む)または書面交付による方法も認められています。

Q. 40歳への情報提供も、メール送付には本人の希望が必要ですか。

いいえ。40歳前後での早期の情報提供は、面談、書面、FAX、電子メール等の方法で実施でき、FAXや電子メール等の利用に本人の希望は必要ありません。

Q. 40歳への情報提供は、誕生日の翌日から1年間ですか。

いいえ。40歳に達する日は40歳の誕生日の前日であるため、誕生日を基準とする場合は、40歳の誕生日当日から1年間です。もう一つの選択肢として、40歳に達する日が属する年度に実施する方法があります。

Q. 介護休業と介護休暇は同じ制度ですか。

異なる制度です。介護休業は対象家族1人につき通算93日・3回まで取得でき、主に介護体制を整えるために利用します。介護休暇は通院の付き添いなどに活用する制度で、対象家族1人なら年5日、2人以上なら年10日まで取得できます。

Q. 介護休業給付金はいくら支給されますか。

一定の雇用保険の受給要件を満たす場合、原則として休業開始時賃金日額に支給日数と67%を乗じて算定します。支給には上限や、休業中の賃金による調整があるため、個別の支給額はハローワークで確認してください。

Q. 介護のためのテレワーク導入は義務ですか。

法令上は努力義務です。事業主は、要介護状態の対象家族を介護する従業員がテレワーク等を選択できるよう、措置を講じることに努める必要があります。

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