【IT企業向け】フリーランス(業務委託)依存からの脱却と正社員化・内製化|2026年10月の制度変更を踏まえた評価・インセンティブ設計

中小IT企業の外注費高騰と技術流出を解決する内製化の実務ガイド。2026年10月のインボイス経過措置の縮小、フリーランス新法・取適法の発注者義務、偽装請負リスクを整理し、正社員化のための評価・インセンティブ設計と移行手順を解説。

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    ITフリーランス(業務委託)依存からの脱却と正社員化・内製化|2026年10月の制度変更を踏まえた評価・インセンティブ設計

    『人事コンサルタントからの視点』 法令・税制・助成金情報:2026年7月時点

    中小IT企業では、慢性的なエンジニア不足を背景に、外部のITフリーランス(業務委託)に大きく依存する開発体制が定着してきました。プロジェクト単位で人員を確保できる柔軟さは、確かに大きなメリットでした。

    しかし現在、外注単価の高騰、社内にノウハウが蓄積しない技術的空洞化、そして発注者側に課される法的義務の急速な強化により、この外部依存モデルは見直しの時期を迎えています。2024年11月のフリーランス新法施行に続き、2026年1月には下請法が「中小受託取引適正化法(取適法)」として施行され、発注者側の管理責任はさらに重くなりました。

    2026年10月1日、外注コストに直接影響する制度変更が重なります
    • インボイス制度の経過措置が縮小:免税事業者への支払について仕入税額控除できる割合が、80%から70%へ引き下げられます(令和8年度税制改正により、当初予定の50%から緩和されたうえで2031年9月まで段階的に縮小)。
    • 社会保険の適用拡大:短時間労働者の加入要件のうち、いわゆる「106万円の壁」と呼ばれる賃金要件(月額8.8万円以上)が撤廃され、週20時間以上の勤務が主要な判定基準になります。

    免税事業者の外注先が多い企業ほど、10月以降の実質コストは静かに上昇します。いまが外注と内製のコスト構造を再計算すべきタイミングです。

    一方、受注するフリーランス側も安泰ではありません。国民健康保険・国民年金の全額自己負担、インボイス制度による消費税負担、そして年齢を重ねるにつれ強まる案件継続の不確実性。将来のキャリアに不安を抱える人材が増えています。

    いま中小IT企業に求められているのは、この双方の課題を同時に解決する一手、すなわち外部人材の正社員化(内製化)を促すための、魅力的で法令に適合した評価・インセンティブ設計です。本記事では、その具体的な移行ステップと制度設計のロジックを解説します。

    この記事の要点(3分でわかるまとめ)

    • 2026年10月1日から、免税事業者への外注は実質コストが上がります。仕入税額控除の割合が80%→70%へ。税込110万円の支払なら1名あたり年12万円の負担増です。
    • 発注者側の法的義務は2段階で強化されました。フリーランス新法(2024年11月)に加え、取適法(2026年1月)が施行。2026年1月以降は合意があっても振込手数料をフリーランス負担にできません
    • フリーランス新法は現実に執行されています。2026年3月末までに勧告事例が10件公表され、施行から2025年9月までに441件の指導が行われています。
    • 「業務委託から直接正社員化」にキャリアアップ助成金は使えません。対象は有期雇用労働者等の非正規雇用労働者です。有期雇用を経由するルートには要件があります。
    • 過去の成果物の著作権は、契約に譲渡条項がなければフリーランス側に残ります。著作権法15条の職務著作は雇用関係が前提。内製化の前に権利関係の確認が必須です。
    • インセンティブは年3回以下の支給が実務上簡明です。年4回以上支給すると社会保険上「報酬」として標準報酬月額に算入されます。

    第1章:なぜ今、中小IT企業は「フリーランス頼み」を見直すべきなのか

    IT人材の不足は構造的な課題です。経済産業省の「IT人材需給に関する調査」(2019年)では、2030年にIT人材が最大で約79万人不足するという試算が示されました。中小IT企業の多くが「自社採用では正社員が集まらず、エージェント経由でフリーランスを活用している」という実態にあります。

    短期的にはプロジェクトを回せても、中長期では経営を圧迫します。見直しが必要な5つの理由を整理します。

    1. 外注単価の高騰と収益の空洞化

    優秀なITフリーランスの獲得競争は激化し、単価は上昇傾向にあります。上流工程(要件定義・アーキテクチャ設計)を担えるシニアエンジニアやPMクラスでは、1人月あたり100万円を超える水準が一般的になり、AIやクラウドの高度案件ではそれ以上になることもあります。

    売上は伸びていても、その大部分が外注費として流出し、営業利益がほとんど残らない——この「収益の空洞化」に悩む中小IT企業は少なくありません。

    2. 技術資産が社内に残らない(権利関係の問題も含む)

    業務委託契約(請負・準委任)は「成果物の納品」または「業務の遂行」を目的とするものです。優秀なフリーランスが高品質なシステムを構築しても、「なぜその設計にしたのか」という設計意図や開発過程の知見は、契約終了とともに社外へ去ります。次に不具合や仕様変更が発生した際、社内の誰も対応できず、再び外注に頼るという循環に陥ります。

    見落とされがちな論点:成果物の著作権が自社にない可能性

    契約書に著作権の譲渡条項がない場合、ソースコードや設計書の著作権は創作したフリーランス側に残るのが原則です。著作権法第15条の職務著作は雇用関係を前提とする規定であり、業務委託には適用されません。

    権利が自社に移転していないと、システムの改修・再利用・他案件への転用に法的リスクが残ります。内製化を検討する際は、まず過去の契約書に著作権の譲渡条項と著作者人格権の不行使条項があるかを点検してください。

    3. 2026年10月から、免税事業者への外注は実質コストが上がる

    インボイス制度では、適格請求書発行事業者以外(免税事業者など)からの課税仕入れについて、一定割合を仕入税額控除できる経過措置が設けられています。この控除割合が2026年10月1日から縮小します。

    免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置(令和8年度税制改正後)
    期間控除できる割合
    2023年10月 〜 2026年9月30日80%
    2026年10月1日 〜 2028年9月70%
    2028年10月 〜 2030年9月50%
    2030年10月 〜 2031年9月30%
    2031年10月以後控除不可

    当初は2026年10月に80%から50%へ一気に下がる予定でしたが、令和8年度税制改正により70%という段階が新設され、廃止時期も2031年10月へ延期されました。緩和されたとはいえ、負担増であることは変わりません。

    前提免税事業者に月110万円(税込)を支払う場合
    消費税相当額10万円
    2026年9月まで(80%控除)控除不可額 2万円/月
    2026年10月以後(70%控除)控除不可額 3万円/月
    1名あたりの年間コスト増約12万円(外注先15名なら年間約180万円)

    なお、免税事業者から適格請求書発行事業者になった小規模事業者向けの「2割特例」は、令和8年9月30日を含む課税期間で終了し、一定の個人事業者について「3割特例」が新設されます。受注側の税負担も同時期に変化するため、単価交渉が持ち込まれる可能性も想定しておく必要があります。

    4. 発注者側の法的義務とコンプライアンスリスクの増大

    業務委託に関する法規制は、この2年で大きく強化されました。詳細は第2章で整理しますが、概要は次のとおりです。

    • フリーランス新法(2024年11月1日施行):取引条件の明示、給付受領日から原則60日以内の報酬支払、ハラスメント対策の体制整備、6か月以上の継続的業務委託における中途解除の30日前予告など、発注者側に複数の義務が課されました。
    • 取適法(2026年1月1日施行):下請法が「中小受託取引適正化法」として改正・施行。適用判定に従業員数基準が追加され、手形払いの禁止、価格協議に応じない一方的な代金決定の禁止などが新設されました。

    5. フリーランス側が抱える将来不安(=正社員化のチャンス)

    高収入に見えるエンジニア側にも、フリーランスを続けることへの不安があります。

    • 社会保障の自己負担:国民健康保険・国民年金は全額自己負担で、厚生年金に比べ将来の年金額も低くなります。傷病手当金や出産手当金といった保障も原則ありません。
    • 消費税負担:インボイス登録による納税負担、2割特例の終了など、税務面の環境が変化しています。
    • 案件継続の不確実性:30代後半以降、「いつまで高単価案件を得られるか」「病気や怪我で稼働できなくなったらどうするか」という不安が強まります。有給休暇や休業補償はありません。

    企業側がこの不安を解消できる条件を提示できれば、即戦力の外部人材を自社の中核メンバーとして迎える大きな機会になります。

    用語の整理:「年収の壁」はフリーランスの話ではありません

    「年収の壁」は、主にパート・アルバイト等が扶養の範囲内で働く際に意識される税・社会保険の基準を指す用語です。所得税については2025年分から基礎控除等の見直しにより、年収160万円まで所得税がかからない水準に引き上げられました。社会保険については、短時間労働者の加入要件のうち賃金要件(月額8.8万円)が2026年10月に撤廃され、週20時間以上の勤務が主な判定基準になります(企業規模要件は2027年10月から段階的に撤廃予定)。130万円の被扶養者認定基準はこれとは別の制度です。

    一方、フリーランス(個人事業主)が直面するのは扶養の壁ではなく、国保・国民年金の全額自己負担と所得増加に伴う税・保険料負担です。混同すると議論がずれるため、社内での説明時には区別してください。

    第2章:発注者が負う法的義務の全体像(フリーランス新法・取適法・労働者性)

    内製化を検討する前提として、「そもそも現在の業務委託が適法に運用できているか」を点検する必要があります。ここが崩れていると、正社員化のプロセス自体が過去の問題を掘り起こすことになります。

    1. フリーランス新法:義務は「契約期間」によって変わる

    フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)の保護対象は、従業員を使用しない個人、または代表者以外の役員がなく従業員を使用しない法人(特定受託事業者)です。法人化しているフリーランスも、この要件を満たせば対象になります。

    フリーランス新法における発注者側の主な義務と適用範囲
    義務の内容適用される契約期間
    取引条件の明示(業務内容、報酬額、支払期日等)すべての業務委託
    報酬の支払期日(給付を受領した日から原則60日以内)すべての業務委託
    7つの禁止行為(受領拒否、報酬減額、返品、買いたたき、購入・利用強制、不当な経済上の利益の提供要請、不当な給付内容の変更・やり直し)1か月以上の業務委託
    募集情報の的確表示(虚偽・誤解を生じる表示の禁止)募集を行う場合
    ハラスメント対策に係る体制整備(方針の明確化、相談窓口の設置等)すべての業務委託
    育児・介護等との両立に対する配慮6か月以上の継続的業務委託(未満は努力義務)
    中途解除・不更新の30日前までの予告と、請求があった場合の理由開示6か月以上の継続的業務委託
    よくある誤解:30日前予告はすべての契約に必要ではありません

    中途解除の事前予告義務は6か月以上の継続的業務委託が対象です。逆に言えば、取引条件の明示・報酬支払期日・ハラスメント対策は契約期間にかかわらず義務です。「短期の単発案件だから関係ない」という理解は誤りです。

    この法律は実際に執行されています

    フリーランス新法の施行後、公正取引委員会からは2026年3月末時点で10件の勧告事例が公表されており、施行(2024年11月)から2025年9月までの間に441件の指導が行われたことが公表されています。勧告事例の多くは「取引条件の明示義務違反」と「報酬支払期日の違反」です。契約書(発注書)を業務委託後直ちに交付していない、記載内容に不備がある、支払期日が適切に定められていない——といった基本的な事務不備が原因になっています。

    2. 取適法(2026年1月1日施行):下請法の改正で何が変わったか

    従来の下請法が改正され、「中小受託取引適正化法(取適法)」として2026年1月1日に施行されました。IT企業に関係する主な改正点は次のとおりです。

    • 適用判定に従業員数基準が追加:従来の資本金基準に加え、製造委託等は従業員300人、役務提供委託等は従業員100人を基準とする判定が加わりました。資本金が小さくても従業員数で適用対象になる場合があります。
    • 手形払いの禁止:支払手段として手形は認められなくなりました。電子記録債権やファクタリングについても、支払期日までに満額を得ることが困難なものは認められません。
    • 価格協議に応じない一方的な代金決定の禁止:受託側から価格協議の求めがあったにもかかわらず、協議に応じない、必要な説明をしない、協議を繰り返し先延ばしにするといった行為が禁止されました。
    • 振込手数料の取扱い:フリーランス法の解釈ガイドラインの改正により、2026年1月1日以降は、合意があっても振込手数料をフリーランス側の負担としたり報酬から差し引くことは「報酬の減額」に該当します。慣行として続けている企業は直ちに見直してください。

    なお、相手方がフリーランス法上の特定受託事業者にも該当し、両法に違反する行為が行われた場合は、原則としてフリーランス法が優先適用されます。

    3. 偽装請負・労働者性のリスクと、認定された場合の影響

    業務委託契約であっても、実態として使用従属関係があれば「労働者」と判断されます。労働者性は契約の名称ではなく実態で判断され、判断要素は概ね次のとおりです。

    • 仕事の依頼・業務従事の指示に対する諾否の自由があるか
    • 業務の内容や遂行方法について具体的な指揮監督を受けているか
    • 勤務時間・勤務場所が拘束されているか
    • 本人以外の者による代替が認められているか
    • 報酬が労務の提供そのものへの対償としての性格を持つか
    • (補強要素)機械・器具の負担、報酬の額、専属性の程度、事業者としての独立性など
    労働者性が疑われる運用の例
    • 朝会・定例会への参加を義務づけ、始業時刻を実質的に指定している
    • 稼働時間を管理し、月160時間などの時間数で報酬を算定している
    • 作業手順を細かく指示し、本人の判断の余地がない
    • 他社案件の受注を事実上禁止し、専属化している
    • 自社の指揮命令系統に組み込み、正社員と同様に業務指示を出している
    労働者と判断された場合に生じ得る影響
    • 未払い残業代の請求:賃金請求権の消滅時効は当分の間3年です。過去分がまとめて請求される可能性があります。
    • 社会保険料の遡及適用:健康保険・厚生年金の保険料が遡って徴収される場合があります。
    • 労働関係法令の全面適用:解雇規制、年次有給休暇、労災保険、最低賃金などが適用対象となります。

    正社員化はこのリスクを解消する有効な手段ですが、「合意解約書を交わせば過去の労働者性が消える」わけではありません。実態に問題がある場合は、専門家を交えて移行設計を行ってください。

    第3章:なぜフリーランスは正社員化を拒むのか|失敗するオファーの共通点

    「付き合いの長い優秀なエンジニアに正社員化を打診したが、やんわり断られた」という声をよく聞きます。原因は、企業が提示する条件とフリーランス側のニーズがずれているからです。典型的な3つの失敗パターンを分析します。

    失敗理由1:既存の給与テーブルに無理に当てはめる

    月額70万〜80万円(年換算840万〜960万円相当)を得ているエンジニアに対し、「当社の規定では30代中途の基本給は月38万円が上限です。でも正社員だから安心です」と提示しても、受け入れられません。

    社会保険料の会社負担、有給休暇、雇用の安定といった見えない価値は確かに存在します。しかし、可視化された年収ベースで300万〜400万円の開きがあれば、「自分の価値を低く見られている」と受け取られ、検討にすら至りません。

    失敗理由2:「自由な働き方」が失われることへの抵抗

    独立した理由の多くは「働く時間と場所の自由」です。正社員化の打診と同時に「毎日9時に出社してください」「副業は全面禁止です」といった旧来のルールを適用しようとすると、強い拒否反応が生じます。

    失敗理由3:評価基準の不透明さへの不信

    フリーランスは「納品した成果物」や「提供したスキル」という明確な基準で報酬を得てきました。そのため、正社員になった途端に「日々の姿勢を上司が総合的に判断して賞与に反映する」という不透明な運用に入ることへ、強い不信感を抱きます。自分の成果がどのロジックで報酬に還元されるのか——この計算式が見えないことが、最大の障壁です。

    つまり、必要なのは「金額」「自由度」「透明性」の3点を同時に満たす条件設計です。次章で具体的に解説します。

    第4章:正社員化を進める「評価制度」と「インセンティブ設計」の実務

    フリーランスを迎え入れ、長く活躍してもらうには、「雇用の安定」と「成果に応じた報酬」を両立させる賃金制度が必要です。

    1. 「基本給+成果インセンティブ」の二層構造

    【内製化を推進する二層構造の賃金モデル】
    • ■ 成果インセンティブ(変動給/年2〜3回支給):プロジェクトの利益還元、内製化によるコスト削減への貢献、技術導入による効率化への貢献など。
    • ■ 基本給(固定給/毎月支給):スキル等級に応じた固定給。社会保険、有給休暇、各種保障の土台となる部分。
    基本給を低く抑えすぎる設計は、かえって逆効果です

    変動給の比重を高めれば会社のリスクは下がりますが、基本給が低いと次の不利益が生じ、「安定を求めて転換する」という動機と矛盾します。

    • 割増賃金の単価、休業手当(平均賃金)、年次有給休暇取得時の賃金が低くなる
    • 傷病手当金・出産手当金・育児休業給付など、社会保険給付の水準が下がる
    • 退職金や住宅ローン審査など、生活設計に影響する

    また、出来高払制その他の請負制で使用する場合、労働基準法第27条により労働時間に応じ一定額の保障給を定める必要があります。基本給は「生活が成り立つ水準」を確保したうえで、上乗せとしてインセンティブを設計してください。

    2. プロジェクト利益還元型インセンティブの計算モデル

    受託開発で機能しやすい還元モデルの例です。ここで重要なのは、還元原資の計算に担当者自身の人件費(直接労務費)を必ず含めることです。外部原価だけを差し引いた「粗利」で計算すると原資を過大に見積もり、制度が数年で破綻します。

    売上(受注額)1,000万円
    外部原価(外注・ライセンス・クラウド費用等)△200万円
    直接労務費(担当メンバーの人件費・法定福利費を含む)△400万円
    プロジェクト貢献利益400万円
    目標貢献利益(社内基準)300万円
    超過額100万円
    インセンティブ(超過額 × 還元率20%)20万円

    この形にすると、「見積工数より短い期間で、品質を保って完了させれば、直接労務費が減り貢献利益が増え、その一部が自分に還元される」という因果が明確になります。品質を犠牲にした短縮を防ぐため、不具合件数や検収一次通過などの品質条件を支給要件に組み込むことも忘れないでください。

    3. 外注費削減分を原資にする「内製化貢献ボーナス」

    これまで外部に流出していた業務を自社チームで担えるようになった場合、削減額の一部を還元する仕組みも効果的です。

    【還元ロジックの例】

    外注していたモジュール開発を内製化し、年間で外注費600万円を削減。うち30%(180万円)を「内製化貢献原資」としてプールし、貢献度に応じて賞与として分配する。

    会社側には差額(この例では420万円から社会保険料等の増加分を差し引いた額)が残り、エンジニア側には賞与が入ります。ただし、内製化により自社側で増える工数・採用コスト・教育コスト・社会保険料の会社負担を必ず算入したうえで、削減額を算定してください。

    4. インセンティブ設計で必ず確認したい6つの法務・税務チェック

    • 賃金規程への明記:賞与・インセンティブは労働基準法第89条第4号の相対的必要記載事項です。支給条件・算定方法・支給時期を規程に定めてください。
    • 社会保険上の取扱い:賞与は年3回以下の支給なら標準賞与額として扱われますが、年4回以上支給すると「報酬」として標準報酬月額に算入されます。四半期ごと(年4回)の設計は、この点を踏まえて判断してください。
    • 割増賃金の算定基礎:1か月を超える期間ごとに支払われる賃金は算定基礎から除外できます。毎月支給の「効率化手当」形式にすると、割増賃金の計算基礎に算入が必要です。
    • 決算賞与の損金算入要件:事業年度末までに各人別の支給額を通知し、翌事業年度開始から1か月以内に支払い、通知した事業年度で損金経理する等の要件を満たす必要があります。
    • 保障給と最低賃金:変動給の比重が高い場合、労働基準法第27条の保障給と最低賃金の充足を確認してください。
    • 不利益変更への備え:業績悪化時にインセンティブを縮小・廃止する可能性があるなら、支給が業績条件に連動することを規程上明確にしておきます。既に確定した支給基準を事後に引き下げる運用は、不利益変更の問題となります。

    5. 「自由度」を制度として明文化する

    • フレックスタイム制:コアタイムを設けない設計も可能です。清算期間を1か月超とする場合は労使協定の労働基準監督署への届出が必要です。フレックスでも深夜割増・法定休日割増は発生します。
    • リモートワーク:適用条件、費用負担(通信費・光熱費)、労働時間の管理方法を規程に定めます。
    • 副業の許可制:競業避止・秘密保持の観点から許可制とし、他社で雇用される形態の副業は労働時間の通算(労働基準法第38条)と健康確保の問題が生じます。業務委託形態の副業なら通算対象外である点も含め、届出制の運用ルールを整えてください。
    • スキルアップ支援:技術書籍、セミナー参加費、クラウド利用料等の会社負担を規程に明記します。業務命令として参加させる研修の時間は労働時間になる点に留意してください。

    第5章:業務委託から正社員への移行ステップと法的チェックポイント

    移行の手続きを誤ると、後から労務トラブルが生じます。実務上のステップを整理します。

    1. 条件提示書(オファーシート)の作成と提示
      基本給・手当の額、インセンティブの算定式と支給時期、想定年収のシミュレーション(好調時・標準時の2パターン)、勤務形態(フレックス・リモートの適用条件)、副業の可否、社会保険加入による保障の内容を、書面で一覧化します。数字が可視化されることで、家族への相談も進みます。
    2. 業務委託契約の適正な終了
      業務委託契約を残したまま一部を雇用契約にする二重契約状態は、労働時間管理や税務上の所得区分の面で問題が生じます。合意解約書によって契約を終了させ、雇用関係へ明確に切り替えます。フリーランス法第16条の30日前予告義務は「発注者側による中途解除・不更新」に適用されるもので、双方合意による終了はこれにあたらないと解されますが、終了日・未払報酬の精算・機密情報の返還を書面で明確にしておいてください。
    3. 【重要】知的財産と秘密保持の承継
      業務委託期間中に作成された成果物の著作権が自社に移転しているかを確認します。譲渡条項がなければ権利は受託者に残るのが原則です。不足がある場合は、合意解約書または新たな確認書で、著作権の譲渡(著作権法第27条・第28条の権利を含む)と著作者人格権の不行使を明記します。あわせて、雇用後の職務著作の帰属を就業規則・雇用契約で定めておきます。
    4. 雇用契約の締結と労働条件の明示
      労働基準法第15条に基づき労働条件通知書を交付します。2024年4月からは、就業場所・従事すべき業務の「変更の範囲」の明示が必要です(客先常駐が想定される場合は特に重要)。有期契約とする場合は更新上限や無期転換に関する明示も必要です。
    5. 労働・社会保険の加入手続き
      健康保険・厚生年金保険の資格取得届は入社日から5日以内、雇用保険の資格取得届は資格取得日の属する月の翌月10日までが期限です。労災保険は加入手続き不要で当然に適用されます。フリーランス時代に全額自己負担だった保険料が労使折半となり、傷病手当金や厚生年金の給付が加わる点は、本人にとって大きなメリットです。
    6. 試用期間の設定とオンボーディング
      就業規則に基づき3〜6か月程度の試用期間を設定するのが一般的です。ただし試用期間中でも、解雇には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です(労働契約法第16条)。また、14日を超えて引き続き使用した後の解雇には解雇予告等が必要になります(労働基準法第20条・第21条)。試用期間は「見極めの期間」ではなく自社の開発ルールとカルチャーに適応してもらう期間と位置づけ、1on1で支援してください。
    正社員化の打診が「不当な圧力」と受け取られないように

    継続的に業務を委託している相手に対し、正社員化に応じなければ契約を打ち切るかのような伝え方をすると、フリーランス法上の禁止行為(不当な経済上の利益の提供要請等)や優越的地位の濫用を問われるおそれがあります。あくまで本人の自由な選択であることを明示し、応じない場合も従来の取引を継続する姿勢を示してください。

    第6章:【事例】外注費を圧縮しながら内製化を進めたI社

    業務委託依存から脱却し、評価・インセンティブ制度の見直しによって組織を強化した企業の事例です(※複数の事例をもとに再構成しています)。

    1. 見直し前の課題

    都内で受託開発と自社Webサービスを展開するI社(従業員25名)は、社内エンジニアの不足を補うため、常時15名前後のフリーランスに業務を委託していました。

    • 年間の外注費が高水準に達し、売上は伸びているのに営業利益率が数パーセントに低迷していた。
    • 中心的に開発を担っていたフリーランス数名が他社案件へ移り、ノウハウが社内に残っていなかったため、後続対応にさらなる外注費が必要になった。
    • 過去の契約書に著作権の譲渡条項がなく、既存システムの改修可否に法的な不安があった。
    • 朝会への参加を求め、稼働時間ベースで報酬を算定していたため、労働者性を指摘されるリスクを抱えていた。

    2. 実施した施策

    1. 契約実態の点検:まず社労士・弁護士とともに業務委託の運用を点検し、指揮命令や時間拘束にあたる運用を是正。あわせて著作権の帰属を確認書で整理した。
    2. 個別の条件提示書による正社員化オファー:中核メンバーに対し、固定基本給に加え「プロジェクト貢献利益の超過分の一定割合を還元」する条件を、年収シミュレーション付きで書面提示した。
    3. 内製化推進手当の新設:外注業務を自社チームで吸収した際、削減額の一定割合をチーム賞与へ還元するルールを賃金規程に明記(社会保険料の会社負担増を算入したうえで還元率を設定)。
    4. 働き方の制度化:フレックスタイム制とリモート勤務を就業規則に明記し、副業を許可制で解禁。労働時間の通算と健康確保のルールも同時に整備した。
    5. 全社への制度適用:新しい等級制度とインセンティブを既存社員にも同時適用し、社内説明会で算定式を公開した。

    最も効果があったのは、インセンティブの算定式を数字で示したことでした。「成果が報酬に反映され、かつ社会保険で将来の保障も得られる」という説明により、打診した中核メンバーの多くが正社員への移行に応じました。

    3. 結果

    • 主要モジュールの内製化が進み、年間の外注費を大幅に削減。営業利益率が改善した。
    • 正社員化したエンジニアの年収は、インセンティブを含めてフリーランス時代と同水準を確保できた。
    • コードレビューとドキュメント化が習慣化し、技術ノウハウが社内に蓄積される体制ができた。
    • 契約実態と権利関係が整理され、労務・知財の両面でリスクが低減した。

    ※本事例は複数企業の取組みをもとに再構成したものです。記載の効果は一例であり、同様の成果を保証するものではありません。

    第7章:正社員化・人材育成に使える助成金の最新情報(2026年度)

    最重要:業務委託から「直接」正社員化する場合、キャリアアップ助成金は使えません

    キャリアアップ助成金(正社員化コース)の対象は、有期雇用労働者・短時間労働者・派遣労働者といった「非正規雇用労働者」を正社員に転換する取組みです。業務委託(個人事業主)はそもそも労働者ではないため、業務委託から直接正社員化するケースは対象外です。この点を誤解して制度設計を進める企業が少なくありません。

    1. キャリアアップ助成金(正社員化コース)を活用する場合の条件

    いったん有期雇用契約で雇い入れ、通算6か月以上雇用したうえで正社員へ転換するルートであれば、対象になり得ます。ただし次の要件を満たす必要があります。

    • キャリアアップ計画を、取組みの前日までに管轄労働局へ提出し認定を受けていること
    • 就業規則等に正社員転換制度(要件・手続・実施時期)を定めていること
    • 転換前6か月と転換後6か月を比較して、賃金が3%以上増額していること
    • 転換後6か月分の賃金を支払った日の翌日から2か月以内に支給申請すること
    • 雇用保険・社会保険の加入、36協定、労働条件通知書など基本的な労務管理が適正であること

    助成額は中小企業の場合、第1期40万円・第2期40万円が基本で、第2期満額の受給は重点支援対象者に限られます。2026年4月8日の改定では、正社員転換等に関する情報を自社サイトや職場情報総合サイトに公表した場合の加算(中小企業20万円)が新設されています。

    注意:助成金の受給を目的とした形式的な契約設計は避けてください

    「助成金を得るために、まず有期雇用で採用してから正社員化する」という発想が先に立つと、本人の希望や実態と乖離した契約になりがちです。要件を満たさず不支給になるだけでなく、不正受給と判断されれば返還・企業名公表・以後5年間の受給停止といった重い措置の対象になります。あくまで自社に必要な雇用設計が先で、助成金は後という順序を守ってください。

    2. あわせて検討したい助成金

    • 人材開発支援助成金:正社員化後のスキル研修、リーダー育成研修、AI・DX関連の訓練などが対象です。2026年3月2日から支給対象訓練の拡充と分割支給申請が可能となり、2026年4月8日改正で事業展開等リスキリング支援コースに設備投資加算が新設されました。計画届は原則として訓練開始日の1か月前までに提出が必要です。
    • 人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース):人事評価制度、諸手当等制度、健康づくり制度などの導入と離職率の低下に取り組む場合に活用できます。1制度導入につき20万円〈25万円〉または40万円〈50万円〉(上限80万円〈100万円〉、〈 〉は賃金要件を満たす場合)。なお「人事評価改善等助成コース」は2025年3月31日で廃止されています。
    • 働き方改革推進支援助成金:労働時間の削減や勤務間インターバル制度の導入に取り組む場合。情報通信業は「業種別課題対応コース」の対象業種です。

    いずれも取組み前の計画届提出・交付決定が原則で、要件は年度ごとに見直されます。着手前に管轄の都道府県労働局へ必ずご確認ください。

    第8章:人事コンサルタントが答えるFAQ(よくある質問10選)

    業務委託のフリーランスを正社員化するとき、キャリアアップ助成金は使えますか?
    業務委託から直接正社員にする場合は対象になりません。同助成金の正社員化コースは、有期雇用労働者・短時間労働者・派遣労働者を正社員に転換する取組みを対象とする制度です。いったん有期雇用契約で雇い入れ、通算6か月以上雇用してから正社員へ転換するルートであれば対象になり得ますが、取組みの前日までのキャリアアップ計画の提出、就業規則への正社員転換制度の明記、転換前後6か月の賃金3%以上の増額などの要件があります。要件は年度ごとに見直されるため、必ず管轄の都道府県労働局にご確認ください。
    2026年10月のインボイス経過措置の変更で、外注コストはどれだけ増えますか?
    免税事業者への支払について仕入税額控除できる割合が、2026年9月30日までの80%から、2026年10月1日以後は70%に縮小します。税込110万円を支払う場合、控除できない消費税相当額は月2万円から3万円へ増え、1名につき年間約12万円のコスト増です。免税事業者の外注先が15名なら年間約180万円の負担増となります。控除割合は2028年10月に50%、2030年10月に30%、2031年10月に廃止と段階的に引き下げられる予定のため、中長期の予算計画に織り込んでください。
    業務委託期間中にフリーランスが書いたソースコードの著作権は誰のものですか?
    契約で譲渡や利用許諾を定めていない場合、著作権は創作したフリーランス側に残るのが原則です。著作権法第15条の職務著作は雇用関係を前提とする規定であり、業務委託には適用されません。内製化を進める前に、過去の契約書に著作権の譲渡条項と著作者人格権の不行使条項があるかを点検し、不足があれば正社員化のタイミングで書面で整理してください。権利関係が不明確なままでは、改修や再利用のたびに法的リスクが残ります。
    業務委託契約でしたが「実態は労働者だった」と後から主張されるリスクはありますか?
    あります。労働者性は契約の名称ではなく実態で判断され、仕事の依頼に対する諾否の自由、業務遂行上の指揮監督、時間・場所の拘束性、代替性、報酬の労務対償性などを総合して判断されます。労働者と判断されると、未払い残業代の請求(時効は当分の間3年)、社会保険料の遡及適用、解雇規制の適用などが生じ得ます。朝会参加の義務づけ、稼働時間による報酬算定、細かな作業指示といった運用がある場合は、正社員化の検討と同時に契約実態の見直しが必要です。
    インセンティブは年に何回支給するのが有利ですか?
    社会保険の取扱いに注意してください。賞与のうち年3回以下の支給は標準賞与額として扱われますが、年4回以上支給されるものは「報酬」として標準報酬月額に算入されます。また割増賃金の算定基礎からは1か月を超える期間ごとに支払われる賃金を除外できるため、四半期または半期ごとの支給とするほうが計算は簡明です。毎月支給の手当形式にすると、割増賃金の計算基礎に算入する必要があります。支給条件・算定方法・支給時期は必ず賃金規程に明記してください。
    フリーランスに正社員化を打診したら断られました。どう提案すべきですか?
    口頭の打診ではなく、条件を数値化した書面(条件提示書)を示すことが有効です。多くのフリーランスは正社員化を「収入減と自由の喪失」と受け取ります。基本給と想定インセンティブを合わせた年収シミュレーション(標準時・好調時の2パターン)、社会保険料の会社負担や有給休暇の金銭換算価値、フレックス・リモートの適用条件、副業の可否までを一覧にして提示してください。なお、応じなければ契約を打ち切るかのような伝え方は、フリーランス法上の問題を生じさせるおそれがあるため避けてください。
    インセンティブ制度を入れると、担当案件によって不公平感が生じませんか?
    個人・チームの成果に連動する部分と、全社業績や組織貢献に連動する部分を組み合わせることで緩和できます。たとえば原資の7割を担当プロジェクトの成果、3割を全社利益の達成度や社内ナレッジへの貢献に連動させる設計です。これにより、利益が出にくい社内基盤の整備や保守を担当するエンジニアにも還元が行き渡ります。案件アサインの決定権は会社側にあるため、アサインによる有利不利を制度で補正する視点が重要です。
    正社員化で社会保険料の会社負担や固定費が増え、経営を圧迫しませんか?
    外注費の削減額の範囲内で設計すれば、通常は総人件費を抑制できます。フリーランスへの支払単価には相手方の経費やリスクプレミアムが含まれているためです。ただし、社会保険料の会社負担のほか、賞与、有給休暇、労働保険料、退職金原資、労務管理の間接コストも発生します。単価と基本給の差額だけで判断せず、これらを含めた総額で比較してください。また、稼働の変動に応じた調整余地が小さくなる点もあらかじめ織り込む必要があります。
    元フリーランスと既存の正社員の間で給与格差が生じて揉めませんか?
    等級制度とインセンティブの仕組みを全社共通のルールとして適用することが前提です。元フリーランスのみを優遇する個別対応は、既存社員の不満を招き制度が破綻します。等級ごとの役割と報酬レンジ、インセンティブの算定式を全社に公開し、既存社員にも同じ基準で高い報酬を得る道があることを示してください。なお、原資確保のために既存社員の処遇を引き下げる方法は、不利益変更として労働契約法上の問題が生じます。
    フリーランスとの契約を終了して正社員化する場合、30日前の予告は必要ですか?
    フリーランス法第16条の事前予告義務は、6か月以上の継続的な業務委託を発注者側が中途解除または更新しない場合に適用されます。双方の合意による契約終了はこの「解除」にはあたらないと解されますが、後の紛争を避けるため、合意解約であること、終了日、未払報酬の精算、成果物の権利帰属、機密情報の返還を書面で明確にしておくことが重要です。なお報酬は、給付を受領した日から原則60日以内に支払う必要があります。

    第9章:人事コンサルタントからのアドバイス

    外部のITフリーランスを活用する経営は、創業期や急成長期のリソース補強としては有効な手段でした。しかし会社を持続的に成長させるには、自社で技術をコントロールし、自社で人材を育てる「内製化」への舵切りが避けられません。

    経営者の皆様に押さえていただきたいのは、人事制度(評価・賃金・就業規則)は給与計算のルールではなく、経営戦略を実現するための手段であるということです。「外注費を減らしたい」という経営課題は、突き詰めれば「人が自社に定着し、知見が蓄積する仕組みをつくる」という人事課題に帰着します。

    そして今年は、制度環境が大きく動く年でもあります。2026年1月に取適法が施行され、2026年10月にはインボイス経過措置の縮小と社会保険の適用拡大が重なります。外注と内製のコスト構造を再計算し、契約実態と権利関係を点検する——この作業は、法令対応であると同時に、次の成長に向けた経営判断の材料になります。

    「中小企業では優秀な正社員は集まらない」「フリーランスは正社員になりたがらない」と諦める必要はありません。金額・自由度・透明性の3点を同時に満たす条件を、法令に適合した形で設計して提示できれば、優秀なエンジニアは応えてくれます。

    まずは、直近1年の外注費の内訳と、免税事業者への支払額を一覧にしてみてください。そこから見える数字が、制度改定の出発点になります。

    用語集

    • 内製化(インソーシング):外部に委託していた開発や業務を、自社の人材・組織で行えるように移行すること。技術蓄積とコスト構造の改善が目的。
    • フリーランス新法:2024年11月1日施行の「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」。従業員を使用しない個人・一人法人を保護対象とし、発注者側に取引条件の明示、60日以内の報酬支払、ハラスメント対策等を義務づける。
    • 取適法(中小受託取引適正化法):下請法が改正され2026年1月1日に施行された法律。適用判定への従業員数基準の追加、手形払いの禁止、価格協議に応じない一方的な代金決定の禁止などが新設された。
    • 偽装請負:形式は業務委託(請負・準委任)でありながら、実態として発注者が受託者に直接の指揮命令や勤務管理を行っている状態。
    • 労働者性:契約の名称にかかわらず、実態として使用従属関係があるかにより労働者と判断されるかどうかの評価。諾否の自由、指揮監督、時間・場所の拘束性などから総合的に判断される。
    • インボイス制度:適格請求書等保存方式。免税事業者等からの課税仕入れについては経過措置により一定割合の控除が認められており、その割合は2026年10月から段階的に縮小する。
    • 職務著作:法人等の業務に従事する者が職務上作成した著作物の著作者を法人等とする制度(著作権法第15条)。雇用関係を前提とし、業務委託には適用されない。
    • 保障給:出来高払制その他の請負制で労働者を使用する場合に、労働時間に応じ一定額の賃金を保障する制度(労働基準法第27条)。
    • 標準賞与額・標準報酬月額:社会保険料の算定基礎。年3回以下の賞与は標準賞与額として、年4回以上支給される賞与は報酬として標準報酬月額に算入される。
    • フレックスタイム制:始業・終業時刻を労働者が決定できる制度(労働基準法第32条の3)。清算期間が1か月を超える場合は労使協定の届出が必要。
    • 合意解約:当事者双方の合意により契約を将来に向けて終了させること。一方的な解除とは法的な位置づけが異なる。

    出典・参考情報/ご留意事項

    【主な参照法令・公的情報(2026年7月時点)】
    • 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和5年法律第25号/2024年11月1日施行)および同法の考え方(公正取引委員会・厚生労働省)
    • 中小受託取引適正化法(旧・下請代金支払遅延等防止法/2026年1月1日施行)、公正取引委員会・中小企業庁の周知資料
    • 労働基準法(第15条、第20条、第21条、第27条、第32条の3、第37条、第38条、第89条、第143条)
    • 労働契約法(第16条ほか)
    • 厚生労働省「フリーランスとして働く人及び発注者のためのガイドライン」(2021年3月)
    • 厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」
    • 国税庁「適格請求書等保存方式に関するQ&A」、令和8年度税制改正関係資料(免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置の見直し)
    • 年金制度改正法(2025年6月成立/短時間労働者の適用拡大)
    • 厚生労働省「キャリアアップ助成金」令和8年度版パンフレット・支給要領(令和8年4月8日付)
    • 厚生労働省「人材開発支援助成金」「人材確保等支援助成金」「働き方改革推進支援助成金」各コース(令和8年度)
    • 経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年)
    • 著作権法(第15条、第27条、第28条)

    ※本記事は2026年7月時点の情報に基づく一般的な解説であり、個別の事案に対する法的・税務的助言ではありません。法令・税制・助成金の要件は改正される場合があります。制度の導入・変更にあたっては、必ず最新の情報をご確認のうえ、社会保険労務士・弁護士・税理士等の専門家、または所轄の労働基準監督署・都道府県労働局・税務署にご相談ください。
    ※事例に記載した効果は取組みの一例であり、同様の成果を保証するものではありません。

    まとめ

    「高騰する外注費を抑えたいが、フリーランスにどう正社員化を提案すればよいか分からない」「自社の収益構造に合ったインセンティブ制度と評価規程をつくり直したい」「業務委託の契約実態や権利関係に不安がある」

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