HR NEWS / 2026.07 第2号
【2026年7月前半】中小企業の賃上げ・採用・助成金 最新ニュース3選+よくある質問5選
2026年7月前半、中小企業の経営者・人事担当者にとって特に関心が高い「賃金制度」「採用」「助成金」の分野から、代表的な調査結果・制度動向を3件厳選してお届けします。あわせて、実務でよく寄せられる疑問をFAQ形式で5つまとめました。
📌 この記事でわかること
- 2026年5月時点の中途採用市場の実態と、中小企業が採用競争で意識すべきポイント
- 日本商工会議所の調査から見える中小企業の賃上げの実態と「防衛的賃上げ」の高止まり
- 2026年9月に申請受付が始まる業務改善助成金(令和8年度)の変更点と、今すぐ準備すべきこと
1. 2026年5月の中途採用実施率は44.2%。転職市場は高水準で推移
🗓 公表日時:2026年6月30日(株式会社マイナビ「中途採用・転職活動の定点調査」2026年5月度)
株式会社マイナビは、全国の企業・個人を対象に毎月実施している「中途採用・転職活動の定点調査」の2026年5月度結果を公表しました。企業の中途採用活動実施率は44.2%となり、依然として高水準で推移しています。正社員の転職活動実施率は3.9%で、年代別では30代が5.5%と最も高く、次いで40代が4.2%となりました。今回の調査では「Uターン・Iターン」がテーマとして取り上げられ、直近1年間でUターンを実施した人材を採用した企業は31.0%、Iターンを実施した人材を採用した企業は25.8%にのぼることが分かりました。エリア別では、UターンもIターンも「東北」で実施率が最も高く、地方における人材還流の動きが引き続き注目されています。都市部の人材獲得競争が激化する中、地方の中小企業にとっても、Uターン・Iターン人材の採用は検討の価値があるテーマといえます。
🎯 中小企業向け・3つのポイントと解説
中途採用市場は「高止まり」が前提。母集団形成の工夫が必須
解説:中途採用実施率が4割を超える水準で推移していることは、多くの企業が同時に中途採用を行っており、応募者の奪い合いが続いていることを意味します。求人媒体に掲載するだけで応募が集まる時代ではありません。中小企業は、リファラル採用(社員紹介)やアルムナイ採用、ハローワークとの連携など、複数のチャネルを組み合わせて母集団を形成する工夫が求められます。自社の魅力を言語化した求人票の見直しも並行して進めましょう。
Uターン・Iターン人材は地方中小企業にとって有力な選択肢
解説:今回の調査で、Uターン・Iターンを実施した人材を採用した企業が3割前後にのぼることが分かりました。都市部の大企業と同じ土俵で採用競争をするのではなく、「地元に戻って働きたい」「自然の多い環境で働きたい」というニーズに応えることは、地方の中小企業にとって独自の強みになります。地元出身者向けの採用広報や、移住支援制度の周知など、Uターン・Iターン人材向けの導線を整備することを検討してみてください。
転職活動実施率の年代差を踏まえたリテンション策を
解説:転職活動実施率は30代・40代のミドル層で高い傾向にあります。ミドル層は家庭の事情や住宅ローンなど生活基盤が固まりつつある一方で、キャリアの停滞感から転職を意識しやすい年代でもあります。採用に力を入れると同時に、既存のミドル社員が「このまま働き続けたい」と思える評価制度やキャリアパスの提示を行うことが、採用コストの抑制にもつながります。
2. 日本商工会議所調査、賃上げ実施率7割超も「防衛的賃上げ」が高止まり
🗓 公表日時:2026年6月8日(日本商工会議所・東京商工会議所「中小企業の賃上げ・賃金改定に関する調査」)
日本商工会議所と東京商工会議所は、全国47都道府県の会員企業2,260社を対象に実施した「中小企業の賃上げ・賃金改定に関する調査」(2026年4月7日〜5月18日実施)の結果を公表しました。賃上げを「実施済」または「実施予定」と回答した企業は7割を超え、昨年並みの高水準を維持し、賃上げの定着傾向がうかがえます。賃上げ率は全体で4%を超えましたが、2025年の集計結果(4.73%)と比較するとやや低い水準にとどまりました。一方で、業績が伴わないまま人材確保のためにやむを得ず行う「防衛的賃上げ」は引き続き高止まりしており、5月以降に賃上げを実施予定と回答した企業が32.2%、現時点で「未定」とする企業も23.0%にのぼるなど、今後の動向を注視する必要がある結果となりました。
🎯 中小企業向け・3つのポイントと解説
「防衛的賃上げ」が続く企業ほど、原資の裏付けを可視化すべき
解説:業績が伴わない防衛的賃上げが高止まりしているという結果は、多くの中小企業が「賃上げをしないと人材が採れない・辞めてしまう」という危機感から、無理をしてでも賃上げを行っている実態を示しています。防衛的賃上げを継続すると財務体質を圧迫しかねません。人件費の増加分を粗利のどこから捻出しているのかを可視化し、価格転嫁や業務効率化とセットで賃上げ計画を立てることが、持続可能な賃金制度の前提となります。
「未定」企業は早めの意思決定と社内への説明を
解説:調査時点で賃上げ方針が「未定」の企業が2割以上存在することは、中小企業の間で判断が分かれていることを示しています。方針を決めかねている場合でも、従業員に対して「検討中である」ことと「いつ頃までに方針を示すか」を伝えるだけで、不安や不満を和らげる効果があります。何も説明がないまま時間が経過すると、優秀な人材から先に離職を検討し始めるリスクがあるため、早めの意思決定と社内コミュニケーションが重要です。
賃上げ率の「昨年比較」だけでなく自社の支払能力を基準に
解説:全体の賃上げ率が前年(4.73%)をやや下回ったという結果は、世間相場に流されて無理な賃上げをするのではなく、自社の支払能力に見合った水準を見極める企業が増えていることの表れとも解釈できます。他社の賃上げ率と単純に比較するのではなく、自社の粗利率・労働分配率を基準に、持続可能な賃金カーブを設計することが、結果的に従業員の定着にもつながります。
3. 業務改善助成金(令和8年度)、申請受付は9月1日開始。30円コース廃止など大幅見直し
🗓 公表日時:令和8年4月9日 予算成立・交付要綱確定(申請受付は2026年9月1日開始予定)
中小企業の賃上げと設備投資をセットで支援する「業務改善助成金」について、令和8年度(2026年度)の制度内容が確定しました。これまで最も利用しやすかった「30円コース」が廃止され、「50円・70円・90円」の3コースに再編されたため、助成を受けるには最低でも時給50円以上の賃上げが必要になります。あわせて、申請受付の開始時期が例年の4月頃から「2026年9月1日」に後ろ倒しとなり、申請期限は「地域別最低賃金の発効日前日」または「11月末日」のいずれか早い日とされました。助成率が4/5となる基準額も、事業場内最低賃金「1,000円未満」から「1,050円未満」に引き上げられています。一方で、対象事業場の要件は「事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内」という従来の制限が撤廃され、「地域別最低賃金未満であること」に一本化されるなど、対象範囲は拡大しました。予算規模も前年度の当初予算から20億円増の35億円となっています。
🎯 中小企業向け・3つのポイントと解説
申請期間が9月〜11月末の短期集中型に。今から準備を始める
解説:従来は通年に近い形で募集されていた業務改善助成金が、令和8年度からは9月1日〜11月末日(または最低賃金発効日前日)というわずか3か月弱の短期決戦に変わります。設備投資の内容を検討し、見積もりを取得し、交付申請書を整えるには一定の時間がかかるため、申請開始を待ってから動き出すのでは間に合わない可能性があります。導入したい設備やITツールの選定は、夏のうちに済ませておくことをお勧めします。
賃金引き上げは「交付決定後」に実施。事後申請はできない点に注意
解説:令和8年度は、賃金の引き上げを必ず交付申請より後に行う必要があり、すでに賃上げを実施してから申請する「事後申請」は認められません。最低賃金の引き上げに合わせて先に賃金を上げてしまうと、助成の対象外になってしまう可能性があります。最低賃金改定のスケジュールと、業務改善助成金の交付決定スケジュールを照らし合わせ、賃金改定のタイミングを慎重に計画することが重要です。
対象範囲が広がった今こそ、自社が対象になるか再確認を
解説:従来は「事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内」という企業しか対象になりませんでしたが、令和8年度からは「事業場内最低賃金が地域別最低賃金未満であること」のみが要件となり、対象企業の裾野が広がりました。これまで「うちは対象外だろう」と諦めていた企業も、改めて自社の事業場内最低賃金を確認する価値があります。あわせて、対象労働者は雇用保険被保険者に限定される点も忘れずに確認してください。
【経営者・人事担当者向け】今回のおさらいFAQ 5選
実務でよくいただくご質問をまとめました。気になる項目をタップして開いてください。
中途採用がなかなか決まりません。求人媒体を増やす以外に何ができますか?
賃上げを検討していますが、業績が伴っていません。それでも賃上げすべきでしょうか?
業務改善助成金は「30円コース」がなくなったとのことですが、少額の賃上げでは活用できませんか?
業務改善助成金の申請はいつから準備を始めればよいですか?
中小企業の賃上げ率が「全体で4%超」とのことですが、これは十分な水準ですか?
中途採用の強化、賃金制度の見直し、助成金の活用はいずれも独立したテーマではなく、「人材を確保し、定着させる」という一つの経営課題につながっています。自社の賃金制度や採用戦略の見直しについて具体的なアドバイスを必要とされる場合は、ぜひ一度ヒューマンリソースコンサルタントへご相談ください。貴社の現状を丁寧にヒアリングし、現実的で効果的な運用プランを伴走支援いたします。

