中小企業向け|ストレスチェック初期導入完全マニュアル
社員数50名未満の中小企業においても、2028年4月1日からストレスチェックの実施が義務化されることが法令上確定しています。本コラムでは、初めて制度を導入する経営者・人事担当者様に向けて、実施に向けた具体的なステップや準備すべき事項、担当者の負担を最小限に抑えるポイントを完全マニュアルとしてわかりやすく解説します。施行までの準備期間を見据えた早めの対策にお役立てください。
コラムを読む就活セクハラ対策は2026年10月1日から義務に?中小企業が採用現場で整えること
この記事でわかること
- 求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止措置が、いつから誰に義務づけられるのか
- 「求職者等」にはどのような人が含まれるのか
- 事業主が講ずべき4つの措置の内容
- 面接・インターンシップ・OB/OG訪問などの採用現場で、中小企業が準備すること
結論
2026年10月1日から、事業主は、就職活動中の学生やインターンシップ参加者などの求職者等に対するセクシュアルハラスメントを防ぐための措置を講じることが義務づけられます。方針の明確化と周知、相談体制の整備、事後対応、プライバシー保護と不利益取扱いの禁止という4点を、採用活動のルールとして整えておく必要があります。
求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止措置とは
厚生労働省の案内によると、この制度は2025年(令和7年)6月11日に公布された「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律(令和7年法律第63号)」に基づくものです。施行日は2026年(令和8年)10月1日で、すでに施行が決まっている制度であり、検討段階の話ではありません。
あわせて、事業主が講ずべき措置の具体的な内容を示す指針として、「事業主が求職活動等における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第52号)が、2026年2月26日に公表されています。対象は、求職活動中の学生、インターンシップに参加する人、その他の求職者等です。
これまで、自社の従業員に対するセクシュアルハラスメントの防止措置は事業主の義務でしたが、まだ従業員ではない求職者は、その対象に含まれていませんでした。今回の改正で、採用活動の場面にも同様の防止措置が求められることになります。
なぜ中小企業の実務で重要なのか
中小企業の採用活動では、経営者や現場の責任者が面接を直接担当することが少なくありません。採用担当者が専任ではなく、面接の進め方が個人の裁量に任されている会社ほど、面接官ごとの言動のばらつきが生じやすくなります。
また、中小企業にとって採用は、人材確保だけでなく自社の評判を左右する場面でもあります。求職者に不適切な言動があったという情報は、学生や転職希望者の間で広まりやすく、その後の応募数に影響するおそれがあります。法令対応と採用ブランドの両面から、あらかじめルールを整えておくことが大切です。
厚生労働省の案内では対象を「事業主」としており、本記事で確認した範囲では、企業規模によって適用開始時期が異なるという記載は確認できていません。従業員数が少ない会社も、2026年10月1日に備えて準備しておく必要があります。
実務上起こりやすい課題
- 面接官が個人の経験や感覚で質問しており、どこまでが許される質問かを会社として決めていない
- インターンシップや会社説明会、OB/OG訪問が「採用活動」の一部であるという認識がなく、社内の行動ルールの対象外になっている
- 求職者が相談できる窓口が用意されておらず、問題が起きても会社に伝わらない
- 就業規則や社内のハラスメント防止規程が、従業員だけを対象とした内容にとどまっている
- 面接官が個別に連絡先を交換し、面接後に個人的なやり取りをしている
課題別の対応策
方針の明確化と社内への周知
厚生労働省の案内では、事業主が講ずべき措置の1つ目として、求職者等に対するセクシュアルハラスメントを行ってはならないという方針を明確にし、管理監督者を含む労働者に周知・啓発することが示されています。既存のハラスメント防止方針に、求職者等も対象に含まれる旨を追記し、面接官を担当する従業員に説明する運用が基本になります。
相談・苦情に対応する体制の整備
2つ目は、相談や苦情に対応するための体制の整備です。求職者が連絡しやすい窓口を決め、募集要項や会社の採用サイトなど、求職者の目に触れる場所に案内することが考えられます。窓口の担当者は、採用担当者本人ではなく、別の担当者や外部の窓口とするほうが、相談しやすいという考え方も専門家の解説で紹介されています。
問題が起きたときの事後対応
3つ目は、問題が発生した場合の迅速かつ適切な対応です。事実関係の確認、被害を受けた人への配慮、行為者への対処、再発防止策の検討という流れをあらかじめ決めておくと、実際に起きたときに慌てずに済みます。
プライバシーの保護と不利益取扱いの禁止
4つ目は、相談者や行為者のプライバシーを守ることと、相談したことを理由に不利益な取扱いをしないことを定め、周知することです。たとえば、相談した求職者を選考で不利に扱うことは認められません。
具体的な対応ステップ
- 自社の採用活動の場面(面接、会社説明会、インターンシップ、OB/OG訪問、オンライン面談など)を洗い出す
- 既存のハラスメント防止方針・規程に、求職者等も対象に含まれることを追記する
- 面接官や採用に関わる従業員に、方針と禁止される言動の例を説明する
- 求職者向けの相談窓口を決め、案内文を作成する
- 相談を受けた後の事実確認、被害者への配慮、行為者への対処の流れを文書にしておく
- 相談者や行為者のプライバシー保護、不利益取扱いの禁止を社内に周知する
- 面接の場所・時間帯、連絡手段(私的なSNSの使用可否)など、運用面のルールを決める
採用場面別の確認チェックリスト
| 採用の場面 | 確認する点 |
|---|---|
| 書類選考・面接 | 性的な話題や私生活への不必要な質問をしないルールがあるか。面接官への事前説明を行っているか |
| 会社説明会・インターンシップ | 参加者が不快に感じたときに伝えられる窓口があるか。現場の従業員にも方針を共有しているか |
| OB/OG訪問・懇親の場 | 採用活動の一部として行動ルールの対象に含めているか。個別の連絡先交換や二人きりでの面会について、会社としての考え方があるか |
| 相談窓口 | 求職者が見つけやすい場所に案内しているか。採用担当者以外の人が対応できるか |
| 事後対応 | 事実確認、被害者への配慮、行為者への対処、再発防止の流れを文書にしているか |
上記は、厚生労働省が示す4つの措置を、実務の場面に当てはめて整理したものです。具体的な運用ルールは、会社の規模や採用の進め方に合わせて検討してください。
注意点・法的リスク
求職者等へのセクシュアルハラスメント防止措置は、2026年10月1日以降、事業主に求められる法的な義務です。措置を講じていない場合の行政上の対応や、個別の事案で損害賠償の責任が問われるかどうかは、事案ごとに異なります。本記事では、罰則や行政指導の具体的な内容は確認できていないため、厚生労働省や都道府県労働局の資料でご確認ください。
また、セクシュアルハラスメントに当たるかどうかは、言動の内容や状況によって判断が分かれることがあります。個別の事案への当てはめは、弁護士や社会保険労務士に確認してください。
中小企業ならではの対応方法
採用に関わる人数が少ない会社では、大がかりな仕組みよりも、数ページの運用ルールと面接官への説明から始めるのが現実的です。経営者が面接に出る会社では、経営者自身が方針を確認し、率先してルールを守る姿勢を示すことも重要です。
相談窓口を社内に置きにくい場合は、社会保険労務士など外部の専門家を窓口とする方法も考えられます。窓口の設置方法に決まった形があるわけではないため、自社が無理なく運用できる方法を選んでください。
まとめ
求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止措置は、2026年10月1日から事業主に義務づけられます。方針の明確化と周知、相談体制の整備、事後対応、プライバシー保護と不利益取扱いの禁止という4点を、面接やインターンシップなどの採用現場のルールとして整えることが対応の出発点になります。
HRCへの相談案内
採用現場でのハラスメント防止は、方針をつくるだけで終わらず、面接官を担当する管理職の教育や、ハラスメントの相談を受けた後の運用まで一体で考える必要があります。自社の就業規則や社内規程のどこを直すべきか、誰が相談窓口を担うのかは、自社だけで判断するのが難しい場合があります。
まずは自社の規程と採用の流れの現状を確認するのか、管理職向けの教育を含めて制度の運用を見直すのかは、企業ごとの状況によって異なります。有限会社ヒューマンリソースコンサルタントでは、中小企業の人事制度の分析・設計・運用を支援しています。自社の状況に合わせた進め方を相談したい場合は、お問い合わせページよりご連絡ください。
関連するよくある質問
採用面接で、家族構成や結婚の予定を聞いてもよいですか。
求職者等へのセクシュアルハラスメント防止措置とは別の論点ですが、応募者の適性や能力に関係のない事項を尋ねることは、公正な採用選考の観点から望ましくないとされています。質問項目は、あらかじめ会社として決めておくことをおすすめします。
インターンシップの参加者も、防止措置の対象になりますか。
厚生労働省の案内では、求職活動中の学生やインターンシップに参加する人が対象に含まれています。インターンシップを実施している会社は、現場の従業員にも方針を伝えておく必要があります。
派遣会社を通じて受け入れた人や、社外の人が行為者になった場合はどうなりますか。
本記事では、指針本文を直接確認できていないため、社外の人が行為者になった場合の取扱いの詳細は記載していません。公開前に、厚生労働省の指針本文でご確認ください。
関連記事・関連サービス
公的情報源・参考資料
本記事の情報確認日:2026年10月2日。指針の本文、罰則・行政指導の内容については、公開前に厚生労働省の最新資料でご確認ください。
中小企業向け|ストレスチェック初期導入完全マニュアル
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