従業員から退職代行の連絡が来たら?中小企業がとるべき対応の流れ

人事労務に関するFAQ

従業員から退職代行の連絡が来たら?中小企業がとるべき対応の流れ

目次

この記事でわかること

  • 退職代行から連絡が来た場合の基本的な考え方
  • 民法上、退職はどのようなルールで成立するのか
  • 退職代行の種類(弁護士型・労働組合型・民間業者型)による対応の違い
  • 企業として確認すべき事項と、避けるべき対応

結論

退職代行から連絡があった場合でも、企業は基本的に退職そのものを止めることはできません。民法上、期間の定めのない労働契約では、労働者が退職を申し入れてから原則2週間が経過すれば契約は終了します。企業がすべきことは、退職を拒否することではなく、退職代行の種類を見極めたうえで、給与精算・離職票の交付など必要な手続きを法令に沿って淡々と進めることです。

退職代行とはどのような仕組みか

退職代行とは、労働者本人に代わって、退職の意思を勤務先に伝えるサービスの総称です。厚生労働省の解説によれば、期間の定めのない労働契約を結ぶ労働者は、民法上、退職の申し入れから原則2週間が経過すれば、使用者の承諾がなくても契約を終了させることができ、使用者は労働者の任意の退職を強行的に止めることはできないとされています。退職代行は、この労働者本人の退職の意思表示を、本人に代わって(あるいは本人の意思を伝える形で)勤務先に届ける役割を担うサービスです。

なぜ中小企業の実務で重要なのか

退職代行サービスの利用は、近年、新入社員を含め幅広い年代で広がりが報じられており、企業側が準備なく連絡を受けて戸惑うケースも少なくありません。特に中小企業では、退職に関する対応マニュアルが整備されておらず、担当者ごとに対応が異なってしまうことがあります。誤った対応(退職の拒否、感情的な対応、給与の留保など)を取ってしまうと、かえって労務トラブルや法令違反のリスクを高めてしまうため、あらかじめ基本的な対応の流れを理解しておくことが重要です。

実務上起こりやすい課題

  • 退職代行からの連絡を受けて、感情的に退職を拒否してしまう
  • 連絡してきた業者が弁護士・労働組合・民間業者のどれに当たるかを確認せずに対応してしまう
  • 本人と直接話をさせてほしいと繰り返し要求し、かえってトラブルを大きくしてしまう
  • 退職手続き(給与精算・離職票の交付等)を、感情的な反発から遅らせてしまう

課題別の対応策

退職代行の種類の見極め

退職代行には、弁護士が行うもの、労働組合が行うもの、それ以外の民間業者が行うものがあります。弁護士による代行は法律に基づく適法な代理として機能し、労働組合による代行は団体交渉権に基づく正当な行為とされています。一方、資格を持たない民間業者が、有給休暇の取得交渉や未払い残業代の請求といった「法律事務」を報酬を得て行うことは、弁護士法72条が禁止する非弁行為に該当するおそれがあるとされています。連絡してきた相手がどの立場かを、書面で確認することが対応の出発点になります。

労働組合を名乗る場合の確認事項

労働組合を名乗って連絡があった場合は、その場で応諾・拒否を即決せず、組合規約、当該従業員が組合員である事実、団体交渉申入書の3点を書面で求めるといった、実態を確認するプロセスを踏むことが望ましいとされています。

退職手続きの淡々とした実施

退職の意思表示を受け取った以上、給与精算や離職票の交付といった法令上の手続きは、通常の退職と同様に進める必要があります。手続きを遅らせることは、賃金の全額払いの原則など別の法令違反につながるおそれがあります。

具体的な対応ステップ

  1. 連絡してきた相手が本人・弁護士・労働組合・民間業者のいずれかを確認する
  2. 弁護士からの連絡であれば、代理権の範囲を確認しつつ、法律に基づく手続きとして対応する
  3. 労働組合を名乗る場合は、組合規約・組合員資格・団体交渉申入書を書面で確認する
  4. 民間業者からの「交渉」要求がある場合は、非弁行為に当たらないかを踏まえて、必要に応じて弁護士に相談する
  5. 退職日・有給休暇の消化・貸与物の返却等、通常の退職と同様の事務手続きを進める
  6. 離職票の交付、社会保険・雇用保険の資格喪失手続きを法令に沿って行う

退職代行の種類と対応の考え方

種類対応の考え方
弁護士による代行法律に基づく適法な代理として対応。退職条件等の交渉にも応じる必要がある場合がある
労働組合による代行団体交渉権に基づく正当な行為。実態を伴う組合からの団体交渉を拒否すると不当労働行為となるおそれがある
民間業者による代行意思表示の伝達(使者)としての役割にとどまるとされる。条件交渉を求められた場合は非弁行為に当たらないか注意が必要

注意点・法的リスク

退職代行を利用されたことを理由に、退職を拒否したり、給与や離職票の交付を留保したりすることは、賃金の全額払いの原則など労働関係法令上の義務に反するおそれがあります。また、就業規則に「退職代行の利用を全面的に禁止する」といった規定を設けても、労働者の退職の自由(民法上のルール)に反する部分は無効と解される可能性があるとされています。退職を思いとどまらせる目的での違約金・損害賠償額を予定する規定も、労働基準法が禁止する賠償予定に該当し無効となるおそれがあります。具体的な就業規則の規定ぶりや、個別の対応については弁護士・社会保険労務士にご確認ください。

中小企業ならではの対応方法

退職手続きの担当者が明確に決まっていない中小企業では、退職代行からの連絡に対して場当たり的な対応をしてしまいがちです。まずは「誰が」「どのような手順で」退職代行からの連絡に対応するかという標準的なフローをあらかじめ整備しておくことで、感情的な対応やトラブルの拡大を防ぎやすくなります。あわせて、そもそも退職代行に頼らざるを得ない状況(相談しにくい職場の雰囲気等)がなかったかを振り返ることも、再発防止の観点から有効です。

まとめ

退職代行から連絡があった場合でも、企業は退職そのものを止めることはできません。連絡してきた相手が弁護士・労働組合・民間業者のいずれであるかを見極めたうえで、必要な退職手続きを法令に沿って淡々と進めることが基本的な対応です。あらかじめ標準的な対応フローを整備しておくことが、労務トラブルの予防につながります。

HRCへの相談案内

退職代行への対応は、個別の連絡への対処にとどまらず、「そもそも従業員が相談しやすい職場になっているか」「就業規則の退職に関する規定が適切に整備されているか」という、より広い制度運用の課題につながっています。標準的な対応フローや就業規則をどう整えるべきかは、自社だけで判断するのが難しい場合があります。

まずは自社の就業規則・退職手続きの現状を確認するところから始めるのか、離職防止につながる評価・処遇の仕組みそのものを見直すところから着手するのかは、企業ごとの状況によって異なります。有限会社ヒューマンリソースコンサルタントでは、中小企業の人事制度の運用を支援しています。自社の状況に合わせた進め方について相談したい場合は、お問い合わせページよりご連絡ください。

関連するよくある質問

退職代行からの連絡は無視してもよいですか。

本人からの退職の意思表示として扱う必要があるため、無視することは適切ではないとされています。相手の立場を確認したうえで、必要な手続きを進めることが基本です。

退職代行を使われた従業員に、直接会って話をさせてほしいと要求できますか。

本人が直接のやり取りを避けたいという意思を示している場合、過度に本人との接触を求めることは、かえってトラブルを招くおそれがあるとされています。まずは代行者を通じたやり取りに応じることが望ましいとされています。

退職代行の利用を理由に、退職金や未払い賃金の支払いを拒否できますか。

退職代行の利用自体は、賃金や退職金の支払い義務に影響を与えるものではないとされています。通常の退職と同様に、法令・就業規則に基づいて支払う必要があります。

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公的情報源・参考資料

本記事の情報確認日:2026年9月25日。弁護士法72条との関係、企業側の具体的な確認事項は法律事務所の解説(二次情報)に基づく部分を含みます。個別の事案については弁護士・社会保険労務士にご確認ください。

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