シフト制で働く従業員を雇用する企業は、厚労省の改正留意事項にどう対応すべき?
この記事でわかること
- 厚生労働省が示す「シフト制」労働者の適切な雇用管理のための留意事項とは何か
- シフトを労働契約書・労働条件通知書にどう記載すべきか
- 確定したシフトを変更・キャンセルする際に注意すべき点
- 休業手当が発生する場合・発生しない場合の考え方
結論
厚生労働省は「いわゆる『シフト制』により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」を2022年1月に公表し、2026年6月19日に改正しています。シフト制で働く従業員を雇用する企業は、労働契約書・労働条件通知書における始業・終業時刻の明示方法、シフトの決定・変更手続きのルール化、確定後のシフト削減時の休業手当の考え方を、あらためて確認する必要があります。
シフト制とはどのような雇用管理上の留意事項か
「シフト制」とは、労働契約の締結時点では労働日や労働時間を確定的に定めず、一定期間ごとに作成される勤務割(シフト表)によって、具体的な労働日・労働時間が決まる勤務形態を指します。飲食業・小売業・介護事業など、繁閑に応じて柔軟な人員配置が必要な業種で広く用いられています。
厚生労働省の留意事項では、シフト制であっても、労働契約を締結する際には始業・終業時刻や休日について、単に「シフトによる」とするだけでなく、可能な限り具体的に定めることが求められています。あわせて、シフトの作成手続き(労働者の意見をどう反映するか)、シフトの確定後の変更・追加の手続き、シフトの通知方法・期限について、あらかじめルールを定め、労働者との間で共有しておくことが望ましいとされています。
なぜ中小企業の実務で重要なのか
シフト制勤務が多い業種では、「急な欠員が出たのでシフトを追加してほしい」「客足が少ないのでシフトを減らしたい」といった調整が日常的に発生します。こうした調整をルールなく行っていると、労働者との間で「言った・言わない」のトラブルや、確定していたシフトを一方的に削減したことによる休業手当をめぐる紛争につながりやすくなります。あらかじめルールを明確にしておくことは、労務トラブルの予防だけでなく、シフト制で働く従業員の生活設計への配慮にもつながります。
実務上起こりやすい課題
- 労働契約書・労働条件通知書に「シフトによる」とだけ記載し、具体的な始業・終業時刻のパターンを示していない
- シフトの決定・変更に関する手続きが口頭・慣行のみで、書面のルールがない
- 確定していたシフトを会社都合で削減した場合に、休業手当の支払いが必要かどうかを判断できていない
- 無期転換した従業員のシフト量を、他の従業員より一方的に減らしてしまっている
課題別の対応策
労働契約書・労働条件通知書の記載の見直し
始業・終業時刻について、シフトパターンの例を示す、シフト表の交付時期を明記する等、可能な限り具体的な記載に見直します。
シフト作成・変更ルールの明文化
シフトの作成にあたって労働者の希望をどう聴取するか、確定したシフトをいつまでに通知するか、確定後に変更が必要になった場合の手続き(労使双方の合意が必要であること等)を、就業規則または個別のルールとして明文化します。
休業手当の要否の判断基準の整理
会社の都合で確定していたシフトを削減・キャンセルする場合、休業手当(平均賃金の60%以上)の支払いが必要となる場合があります。どのようなケースで休業手当の対象となるかを、あらかじめ整理しておきます。
具体的な対応ステップ
- 現在の労働契約書・労働条件通知書の始業・終業時刻の記載を確認する
- シフトの作成・通知・変更に関する自社の運用実態を洗い出す
- 厚生労働省の最新の留意事項を確認し、自社の運用とのギャップを把握する
- シフト作成・変更のルールを就業規則または個別規程として明文化する
- 確定後のシフト削減時に休業手当が必要となるケースの判断基準を整理する
- 店舗責任者・シフト作成担当者へ新しいルールを周知する
シフト制運用の確認チェックリスト
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 契約書の記載 | 始業・終業時刻をシフトパターン等で可能な限り具体的に示しているか |
| シフト作成手続き | 労働者の希望を聴取する方法・頻度を定めているか |
| シフト通知 | 確定したシフトをいつまでに、どのように通知するかを定めているか |
| シフト変更手続き | 確定後の変更・追加・削減について労使双方の合意手続きを定めているか |
| 休業手当の判断 | 会社都合でのシフト削減時に休業手当が必要なケースを整理しているか |
注意点・法的リスク
厚生労働省の留意事項自体は行政指導・助言としての位置づけであり、留意事項そのものに違反したことに直接の罰則が科されるわけではありません。ただし、留意事項が示す内容の多くは労働基準法上の労働条件明示義務や、休業手当の支払い義務(労働基準法第26条)といった既存の法律上の義務を踏まえたものです。確定していたシフトを会社都合で一方的に削減した場合、休業手当の支払い義務が生じるかどうかは、休業の理由が「使用者の責に帰すべき事由」に当たるかによって個別に判断されるため、判断に迷う場合は社会保険労務士・労働基準監督署にご確認ください。
中小企業ならではの対応方法
店舗ごとに店長・現場責任者がシフトを作成している中小企業では、シフトの作成・変更ルールが店舗ごとに異なり、本部が実態を把握できていないケースが見られます。まずは全店舗共通のシフト作成・通知・変更ルールのひな形を整備し、店舗責任者向けに周知することで、店舗間のばらつきとトラブルを防ぎやすくなります。
まとめ
厚生労働省の「シフト制」に関する留意事項は2026年6月19日に改正されています。シフト制勤務者を雇用する中小企業は、労働契約書の記載、シフトの作成・変更・通知のルール、休業手当の判断基準を確認し、必要に応じて就業規則や運用を見直すことが重要です。
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シフト制の雇用管理を見直す取り組みは、単に留意事項に沿った書面を整えるだけでなく、「自社のシフト運用の実態に合った就業規則になっているか」「賃金制度・評価制度と整合しているか」という制度運用全体の課題につながっています。店舗ごとに異なる運用をどう統一するかは、自社だけで判断するのが難しい場合があります。
まずは自社の就業規則・シフト運用の現状を確認するところから始めるのか、就業規則そのものを見直すところから着手するのかは、企業ごとの状況によって異なります。有限会社ヒューマンリソースコンサルタントでは、飲食業・小売業をはじめとする中小企業の人事制度の運用を支援しています。自社の状況に合わせた進め方について相談したい場合は、お問い合わせページよりご連絡ください。
関連するよくある質問
シフト制であれば、労働条件通知書に具体的な労働時間を書かなくてもよいですか。
「シフトによる」とだけ記載するのではなく、シフトパターンの例やシフト表の交付時期など、可能な限り具体的に明示することが求められています。詳細は厚生労働省の最新の留意事項でご確認ください。
確定したシフトを会社都合で減らす場合、必ず休業手当が必要ですか。
休業の理由が使用者の責に帰すべき事由に当たるかどうかによって判断が分かれます。すべてのケースで一律に休業手当が必要となるわけではないため、個別の状況に応じて社会保険労務士・労働基準監督署にご確認ください。
無期転換した従業員のシフト量を、他の従業員より減らしてもよいですか。
無期転換したことを理由に不利益な取り扱いを行うことは望ましくないとされています。シフト量の決定は、他の合理的な理由に基づいて行う必要があります。
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本記事の情報確認日:2026年9月18日。
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