在籍型出向(雇用シェア)を導入したい|産業雇用安定助成金の活用ポイント

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在籍型出向(雇用シェア)を導入したい|産業雇用安定助成金の活用ポイント

目次

この記事でわかること

  • 在籍型出向(雇用シェア)とはどのような仕組みか
  • 産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)の対象となる要件
  • 助成率・助成額の考え方
  • 活用にあたって確認すべき実務ステップ

結論

在籍型出向とは、労働者が出向元企業との雇用契約を維持したまま、一定期間、出向先企業で働く仕組みです。労働者のスキルアップを目的とした在籍型出向を行う場合、厚生労働省の産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)を活用できる場合があります。同コースでは、出向元・出向先双方が負担する出向中の賃金の一部について、中小企業の場合は3分の2(1人1日あたりの上限額あり)の助成を受けられるとされています(令和8年8月1日時点)。

在籍型出向・産業雇用安定助成金とはどのような仕組みか

在籍型出向は、労働者が出向元との労働契約関係を維持しながら、出向先の指揮命令のもとで一定期間働く仕組みです。転籍(出向元との労働契約を終了させる)とは異なり、出向期間終了後は出向元に復帰することが前提となります。産業雇用安定助成金は、この在籍型出向を活用する事業主を支援する助成金で、そのうち「スキルアップ支援コース」は、労働者のスキルアップにより企業活動を促進し、雇用機会等の増大を目的とする出向を対象としています。

なぜ中小企業の実務で重要なのか

人手不足が続く中、自社だけで従業員のスキルアップの機会を十分に用意することが難しい中小企業にとって、在籍型出向は、他社での実務経験を通じて人材を育成しながら、雇用そのものは維持できる手段の一つになり得ます。また、繁閑の差が大きい業種では、一時的な人員の過不足を出向によって調整する手段としても注目されています。助成金を活用することで、出向にかかる賃金負担の一部を軽減しながら取り組める点も、中小企業にとってのメリットです。

実務上起こりやすい課題

  • 在籍型出向という仕組み自体を知らず、人材育成・雇用維持の選択肢として検討できていない
  • 出向元・出向先双方に助成金の対象要件があることを把握しておらず、申請段階で要件を満たせないことが判明する
  • 出向元・出向先の資本関係・組織関係が近く、独立性の要件を満たせない
  • 出向中の賃金負担割合や、出向後の処遇(賃金・評価)をどう扱うか、事前に取り決めていない

課題別の対応策

出向の目的・対象労働者の整理

スキルアップ支援コースは、労働者のスキルアップを目的とした出向を対象としています。誰を、何を目的に、どの企業へ出向させるのかを、助成金の対象要件と照らし合わせながら整理します。

出向元・出向先双方の要件確認

出向元には賃金上昇要件(出向復帰後6か月間の各月の賃金を出向前と比較していずれも5%以上上昇させること等)、継続雇用要件、解雇制限等があり、出向先にも解雇禁止・雇用量要件等があります。双方が要件を満たせるかを事前に確認する必要があります。

独立性要件の確認

出向元・出向先の間に、資本の50%超の出資や代表者の同一性など、独立性が認められない関係がある場合は対象外とされています。グループ会社間での出向を検討する場合は特に注意が必要です。

具体的な対応ステップ

  1. スキルアップを目的とした出向の対象者・出向先候補を検討する
  2. 出向元・出向先双方が、助成金の対象要件(賃金上昇要件、雇用量要件、独立性要件等)を満たせるかを確認する
  3. 出向契約・出向条件(賃金負担割合、出向期間等)を出向先と取り決める
  4. 出向期間(1か月以上2年以内)を設定し、対象労働者へ説明する
  5. 必要書類を準備し、助成金の支給申請を行う
  6. 出向終了後、復帰後の賃金・処遇の取り扱いを確認し、継続雇用要件を満たす体制を整える

産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)の主な要件

項目内容
出向期間1か月以上2年以内。支給対象期間は出向開始日から1年が経過する日まで(期間内終了の場合はその終了日まで)
出向元の主な要件スキルアップ目的の出向であること、出向復帰後6か月間の各月賃金を出向前比5%以上上昇させること、継続雇用要件、解雇制限等
出向先の主な要件解雇禁止、雇用量を大きく減少させていないこと等
独立性要件出向元・出向先間に資本の50%超出資、代表者の同一性等がないこと
助成率出向元・出向先とも中小企業は3分の2、大企業は2分の1(令和8年8月1日時点)
上限額1人1日あたり9,110円(令和8年8月1日時点)

上記は本記事作成時点で確認できたスキルアップ支援コースの要件の一部です。対象労働者の除外要件(有期契約労働者、被保険者期間6か月未満の労働者等)を含め、詳細かつ最新の要件は、公開前に厚生労働省の最新のガイドブックでご確認ください。

注意点・法的リスク

在籍型出向を行う場合、出向元・出向先との間で出向契約を締結し、賃金負担割合、出向期間、出向中の労働条件(就業場所、業務内容、労働時間等)を明確にしておく必要があります。出向は、労働者本人の同意(就業規則上の包括的な同意を含む)や、出向命令権の根拠が就業規則等に明記されていることが前提となる場合が一般的とされています。また、助成金の対象要件を満たさない出向を行った場合、助成金の不支給や返還を求められる可能性があります。個別の出向契約の設計や助成金の申請可否については、社会保険労務士等の専門家にご確認ください。

中小企業ならではの対応方法

出向の実務経験が少ない中小企業では、出向契約書の作成や助成金の申請手続きに不安を感じることがあります。まずは、自社が育成したい人材・出向させたい人材を明確にし、出向先候補(取引先、同業種の企業等)との関係性を整理するところから始めることが現実的です。産業雇用安定センター等の公的機関が出向のマッチング支援を行っている場合もあるため、活用を検討する価値があります。

まとめ

在籍型出向は、雇用を維持したまま人材のスキルアップを図る手段として注目されています。産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)を活用する場合、出向元・出向先双方に賃金上昇要件・雇用量要件・独立性要件等が定められています。要件を事前に確認したうえで、出向契約の内容を丁寧に整えることが重要です。

HRCへの相談案内

在籍型出向を人材育成の仕組みとして機能させるには、助成金の要件を満たすだけでなく、「出向によって得たスキル・経験を、復帰後の評価・処遇にどう反映するか」という制度設計の視点も欠かせません。出向前後の評価・処遇の連動をどう設計すべきかは、自社だけで判断するのが難しい場合があります。

まずは自社の人材育成・雇用維持の現状を確認するところから始めるのか、評価・賃金制度そのものを見直すところから着手するのかは、企業ごとの状況によって異なります。有限会社ヒューマンリソースコンサルタントでは、中小企業の人事制度の運用を支援しています。自社の状況に合わせた進め方について相談したい場合は、お問い合わせページよりご連絡ください。

関連するよくある質問

在籍型出向とパート・アルバイトの派遣は同じ仕組みですか。

異なる仕組みです。在籍型出向は出向元との労働契約を維持したまま出向先の指揮命令下で働く仕組みであるのに対し、労働者派遣は派遣元と労働者派遣契約を結んだ派遣先で働く別の制度です。混同しないよう注意が必要です。

グループ会社間での出向にも助成金を使えますか。

出向元・出向先の間に資本関係・組織的関連性等から独立性が認められない場合(資本の50%超出資、代表者の同一性等)は対象外とされています。グループ会社間の場合は特に慎重な確認が必要です。

有期契約社員を出向させることはできますか。

本記事作成時点で確認できた情報では、有期契約労働者等一定の労働者は助成金の対象労働者から除外されるとされています。詳細は最新のガイドブックでご確認ください。

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公的情報源・参考資料

本記事の情報確認日:2026年9月25日。助成率・上限額は令和8年8月1日時点の情報です。制度は改定される場合があるため、公開前に最新のガイドブックでご確認ください。

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