「所定内賃金」「基準内賃金」とは?残業代計算を間違えないための実務は?

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「所定内賃金」「基準内賃金」とは?残業代計算を間違えないための実務は?

この記事でわかること

  • 所定内賃金・基準内賃金の意味と、割増賃金の算定基礎との関係
  • 法律で限定列挙されている、算定基礎から除外できる7つの手当
  • 手当の洗い出しからマニュアル化までの具体的な4ステップ
  • 「手当の名称」ではなく「実質」で判断される除外要件の落とし穴

結論:割増賃金の計算基礎となる賃金からは、労働基準法で限定列挙された7種類の手当のみを除外でき、それ以外の手当(多くの企業が独自に設けている手当を含む)はすべて計算に含める必要があります

所定内賃金とは、所定労働時間内の労働に対して支払われる賃金(基本給および諸手当のうち、時間外・休日・深夜労働に対する割増賃金部分を除いたもの)を指します。基準内賃金は、企業によって定義が異なりますが、一般的には割増賃金の算定基礎となる賃金(基本給+一定の手当)を指す社内用語として使われることが多い言葉です。いずれも法律上の厳密な定義があるわけではありませんが、実務上重要なのは、割増賃金(残業代)を計算する際の「算定基礎賃金」に何を含め、何を除外できるかを正しく理解することです。

なぜこの区分を正しく理解する必要があるのか

割増賃金の算定基礎から除外できる手当は、法律で限定列挙されている

労働基準法およびその施行規則では、割増賃金の計算の基礎となる賃金から除外できる手当を、以下の7つに限定しています。これ以外の手当(役職手当、資格手当、皆勤手当、技能手当など)は、名称にかかわらずすべて算定基礎に含めなければなりません。

割増賃金の算定基礎から除外できる7つの手当

  1. 家族手当
  2. 通勤手当
  3. 別居手当
  4. 子女教育手当
  5. 住宅手当
  6. 臨時に支払われた賃金
  7. 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)

「手当の名称」ではなく「実質」で判断される

例えば「住宅手当」という名称であっても、全従業員に一律の金額を支給している場合(住宅費用の負担状況に関係なく定額を支給している場合)は、実質的に基本給と変わらないとみなされ、割増賃金の算定基礎から除外できないと判断されることがあります。除外できる住宅手当は、住宅に要する費用に応じて算定される(賃貸か持ち家か、家賃額に応じて金額が変動する等)ものに限られます。

除外を誤ると、未払い残業代のリスクが発生する

役職手当や皆勤手当などを誤って算定基礎から除外して残業代を計算していた場合、労働基準監督署の是正勧告や、退職者からの未払い賃金請求の対象となるリスクがあります。過去2〜3年(賃金請求権の消滅時効期間、2020年4月以降に発生した賃金債権は原則3年)に遡って請求される可能性があるため、影響額が大きくなりがちです。

実務対応ステップ

ステップ1:自社の手当を洗い出し、割増賃金の算定基礎に含めるべきか整理する

支給しているすべての手当(役職手当、資格手当、皆勤手当、地域手当、寒冷地手当など)をリストアップし、上記7つの除外項目に該当するか、実質的な支給基準がどうなっているかを確認します。

ステップ2:給与計算システムの設定を確認する

給与計算ソフトやシステム上で、各手当が割増賃金の算定基礎に正しく含まれる設定になっているかを確認します。導入時の初期設定のまま長年運用しているケースでは、設定ミスが発覚することも珍しくありません。

ステップ3:過去の計算に誤りがあった場合の対応を検討する

誤りが発覚した場合は、影響範囲(対象者・期間)を特定し、未払い分の追加支給を検討します。早期に自主的に是正することで、労働基準監督署対応や訴訟リスクを最小化できます。

ステップ4:割増賃金の計算式を正しく理解し、社内マニュアル化する

基本の計算式

1時間あたりの賃金額 =(算定基礎に含める月給の合計額)÷ 1か月平均所定労働時間

割増賃金額 = 1時間あたりの賃金額 × 割増率(時間外1.25倍、法定休日1.35倍、深夜0.25倍加算等)× 時間外労働時間数

注意点・リスク

  • 家族手当・住宅手当であっても、一律定額で支給している場合は除外対象にならない点は特に見落とされがちです。自社の手当の支給基準を再確認してください。
  • 管理監督者(労働基準法上の管理監督者に該当する者)は時間外・休日労働の割増賃金の対象外ですが、深夜労働の割増賃金は対象となる点、また管理監督者の定義を誤ると多額の未払い残業代リスクが生じる点にも注意が必要です。
  • 月平均所定労働時間の計算を誤ると、1時間あたりの賃金額全体がずれてしまいます。年間の所定労働日数・時間から正しく算出されているか確認してください。

中小企業ならではの工夫

手当の種類が多く複雑な企業ほど、算定基礎の判断を誤りやすい傾向があります。手当を新設・変更する際には、その都度「割増賃金の算定基礎に含めるべきか」を確認するチェック体制を、給与規程改定のフローに組み込んでおくことをおすすめします。

まとめ

割増賃金の算定基礎から除外できる手当は法律で厳格に限定されており、多くの企業が独自に設けている手当は原則として算定基礎に含める必要があります。手当の棚卸しと給与計算システムの設定確認を行い、未払い残業代のリスクを未然に防ぎましょう。

よくある質問

Q. 役職手当は割増賃金の算定基礎に含めなくてよいですか?

A. 含める必要があります。割増賃金の算定基礎から除外できる手当は、家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当・臨時に支払われた賃金・1か月を超える期間ごとに支払われる賃金の7つに法律で限定されています。役職手当、資格手当、皆勤手当、技能手当などは、名称にかかわらずすべて算定基礎に含める必要があります。

Q. 住宅手当を支給していれば、常に算定基礎から除外できますか?

A. 常に除外できるわけではありません。除外できる住宅手当は、住宅に要する費用に応じて算定される(賃貸か持ち家か、家賃額に応じて金額が変動する等)ものに限られます。全従業員に一律定額で支給している場合は、実質的に基本給と変わらないとみなされ、算定基礎から除外できないと判断されることがあります。

Q. 割増賃金の計算方法に誤りが見つかった場合、どうすればよいですか?

A. 影響範囲(対象者・期間)を特定し、未払い分の追加支給を検討することが基本です。過去2〜3年(賃金請求権の消滅時効期間)に遡って請求される可能性があるため、早期に自主的に是正することで、労働基準監督署対応や訴訟リスクを最小化できます。

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