「降格・降職」を行う際の法的リスクと正しい手続きは?

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「降格・降職」を行う際の法的リスクと正しい手続きは?

この記事でわかること

  • 「人事権の行使としての降格」と「懲戒処分としての降格」の違い
  • 賃金減額を伴う降格が権利濫用と判断されるケース
  • 降格の種類の整理から通知までの具体的な5ステップ
  • 妊娠・出産等を理由とした降格が法律で明確に禁止されている点

結論:降格には「人事権の行使としての降格」と「懲戒処分としての降格」があり、種類によって求められる要件・手続きが異なります。特に賃金の減額を伴う降格は、慎重な検討が必要です

降格・降職とは、従業員の役職・等級・職位を現在より低いものに変更することを指します。降格には大きく分けて、業務上の必要性や人事評価に基づいて行う「人事権の行使としての降格」(役職の解任、等級の引き下げ等)と、懲戒処分の一種として行う「懲戒処分としての降格」の2種類があり、それぞれ求められる法的な要件が異なります。特に、降格に伴って基本給や役職手当が減額される場合は、従業員の生活に直接影響するため、権利濫用や不当な労働条件の変更として争われるリスクが高い分野です。

なぜ降格・降職の手続きに注意が必要なのか

人事権の行使としての降格でも、無制限に行えるわけではない

役職の任免や等級の変更は、原則として使用者の人事権の範囲内にあるとされていますが、その行使が著しく合理性を欠く場合や、嫌がらせ目的など不当な動機・目的による場合は、権利の濫用として無効と判断されることがあります。

等級制度上の降格(降給を伴うもの)は就業規則上の根拠が必要

役職の任免による降格(役職手当の減少にとどまるもの)とは異なり、職能資格や等級そのものを引き下げる降格(基本給の引き下げに直結するもの)を行うには、就業規則にその制度と要件(どのような場合に降格するか、降格の判定基準)が明確に定められていることが前提となります。就業規則に根拠がないまま等級の引き下げを行うと、無効と判断されるリスクが高くなります。

懲戒処分としての降格は、懲戒解雇・諭旨解雇と同様の厳格な手続きが必要

懲戒処分として降格を行う場合は、就業規則上の懲戒事由への該当性、処分の相当性、本人への弁明機会の付与など、懲戒手続き全般の要件を満たす必要があります。

実務対応ステップ

ステップ1:降格の種類(人事権行使か、懲戒処分か)を明確にする

まず、今回の降格が業務上の必要性・評価に基づくものか、懲戒処分としてのものかを整理します。この整理があいまいなまま進めると、後に手続きの適法性を争われた際に、どちらの要件で判断すべきかが不明確になります。

ステップ2:就業規則・等級制度上の根拠を確認する

等級の引き下げを伴う場合は、就業規則・等級制度規程に降格の要件(評価基準、降格の判定プロセス)が明記されているかを確認します。定めがない場合は、まず制度整備から着手する必要があります。

ステップ3:降格の理由を客観的な事実・評価に基づいて整理する

「能力不足」「業績不振」といった抽象的な理由だけでなく、具体的にどのような事実・評価結果に基づいて降格に至ったのかを、評価記録・面談記録等の客観的な資料で裏付けます。

ステップ4:本人への説明と改善機会の提供(懲戒処分でない場合)

人事評価に基づく降格の場合、いきなり降格を通告するのではなく、事前に課題を指摘し、改善のための指導・支援を行った経緯があることが望ましいとされています。改善の機会を与えずに突然降格させると、手続きの相当性を欠くと判断されるリスクが高まります。

ステップ5:降格通知書の作成と、賃金への影響の説明

降格の理由、新しい役職・等級、それに伴う賃金の変更内容を書面で通知します。賃金減額を伴う場合は、減額幅が著しく大きくならないよう配慮することも、権利濫用と判断されないための重要な要素です。

注意点・リスク

  • 降格に伴う賃金の減額幅が大きすぎる場合、降格自体は有効であっても、減額幅の相当性が別途問題になることがあります。就業規則に定めた等級ごとの賃金テーブルとの整合性を確認してください。
  • 妊娠・出産・育児休業等を理由とした降格は、男女雇用機会均等法・育児介護休業法で明確に禁止されています。降格の真の理由がこれらに関連していないか、慎重に確認する必要があります。
  • 降格の判断が特定の従業員を狙い撃ちしたものと受け取られないよう、評価・降格の基準を全社的に統一して運用することが重要です。

中小企業ならではの工夫

評価制度が未整備な中小企業では、降格の判断基準があいまいになりがちです。降格を検討する前に、まず等級制度・評価制度における降格の要件を明文化しておくことが、後のトラブルを防ぐ最も確実な対策です。制度整備が難しい場合は、個別のケースごとに社会保険労務士に相談しながら進めることをおすすめします。

まとめ

降格・降職は人事権の範囲内であっても無制限に行えるものではなく、種類に応じた要件と手続きを踏む必要があります。特に賃金減額を伴う降格は、就業規則上の根拠、客観的な理由、本人への説明を丁寧に積み重ねることが、権利濫用と判断されないための鍵です。

よくある質問

Q. 役職を外すだけの降格にも就業規則の根拠が必要ですか?

A. 役職の任免(役職手当の減少にとどまるもの)は原則として使用者の人事権の範囲内とされ、等級の引き下げほど厳格な根拠は求められない傾向にあります。ただし、著しく合理性を欠く場合や不当な動機・目的による場合は、権利の濫用として無効と判断されることがあります。

Q. 評価が低い社員の等級を下げることはできますか?

A. 等級そのものを引き下げる降格(基本給の引き下げに直結するもの)を行うには、就業規則にその制度と要件が明確に定められていることが前提です。根拠がないまま等級を引き下げると無効と判断されるリスクが高いため、客観的な評価記録に基づいて理由を整理することが重要です。

Q. 産休・育休取得を理由に降格させることはできますか?

A. できません。妊娠・出産・育児休業等を理由とした降格は、男女雇用機会均等法・育児介護休業法で明確に禁止されています。降格の真の理由がこれらに関連していないか、慎重に確認する必要があります。

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