「執行役員制度」を導入する際の労務上の位置づけと契約設計は?

人事労務に関するFAQ

HOME人事労務FAQ > 「執行役員制度」を導入する際の労務上の位置づけと契約設計

「執行役員制度」を導入する際の労務上の位置づけと契約設計は?

この記事でわかること

  • 執行役員が会社法上の「役員」とは異なる存在である理由
  • 雇用契約か委任契約かで、適用される法律がどう変わるのか
  • 制度設計から契約書・規程整備までの具体的な4ステップ
  • 「執行役員だから残業代は不要」という誤った運用のリスク

結論:執行役員は会社法上の役員(取締役)とは異なり、労働者として雇用契約を結ぶケースと、委任契約に近い形で処遇するケースがあり、どちらの位置づけにするかによって労働法の適用の有無が大きく変わります

執行役員制度とは、会社法上の取締役会が担う経営の意思決定機能と、実際の業務執行機能を分離する目的で、多くの企業が独自に導入している制度です。執行役員は会社法上の「役員」ではなく、あくまで企業が任意に設けた社内呼称・役職であるため、法律上一律に定義された地位ではありません。そのため、執行役員を「労働者」として雇用契約に基づき処遇するのか、取締役に準じる「委任契約」に基づく地位として処遇するのかは、各社の制度設計次第であり、この位置づけを誤ると、労働基準法・労働契約法の適用の有無をめぐって深刻なトラブルに発展するリスクがあります。

なぜ執行役員の位置づけを明確にする必要があるのか

労働者に該当するかどうかで、適用される法律が大きく変わる

執行役員が実質的に「労働者」(会社の指揮命令を受けて労務を提供し、その対償として賃金を受け取る者)に該当すると判断される場合は、労働基準法・労働契約法が適用され、時間外労働の割増賃金、解雇に関する厳格な規制(解雇権濫用法理)などの対象になります。一方、実質的に経営を担う立場として委任契約に基づく地位と整理される場合は、これらの労働法の適用を受けません。

「委任契約」として扱うには、実態が伴っている必要がある

執行役員という肩書きを付けただけで、実際には他の管理職と同様に上司の指揮命令を受けて働き、労働時間の管理も受けているという実態があれば、契約書の形式にかかわらず「労働者」と判断される可能性が高くなります。形式(契約書の名称)ではなく実態で判断される点が、この論点の最大の注意点です。

執行役員への降格・退任の扱いにも影響する

労働者としての執行役員であれば、役職を解いて元の労働者としての地位に戻すことは基本的に人事権の行使として可能ですが、委任契約に基づく執行役員の場合、契約の終了(解任)に関する取り扱いを契約書上で明確にしておく必要があります。

実務対応ステップ

ステップ1:執行役員の位置づけ(雇用型か、委任型か)を制度設計の段階で決定する

自社の執行役員に、どの程度の経営上の裁量・独立性を持たせるか(労働時間管理の対象とするか、指揮命令を受ける立場のままとするか)を明確にし、それに応じて雇用契約とするか、委任契約とするかを決定します。多くの中小企業では、実態として労働者性が強いケースが多く、雇用契約を維持したまま「執行役員」という社内呼称・役職手当を付与する設計を取ることが一般的です。

ステップ2:委任型を選択する場合は、労働者性が否定される実態を整える

委任契約として整理する場合は、労働時間の拘束を行わない、業務遂行の方法について具体的な指揮命令を行わない、報酬が労働の対価ではなく職務執行の対価として設計されているなど、実質的にも労働者性が認められにくい実態を整える必要があります。

ステップ3:契約書・規程を整備する

契約書に明記すべき事項の例

  • 契約の性質(雇用契約か、委任契約か)
  • 職務内容と権限の範囲
  • 報酬(固定報酬、業績連動報酬の有無)
  • 契約期間と更新・解任に関する取り扱い
  • 秘密保持・競業避止に関する事項
  • 社会保険・労働保険の適用の有無(委任型の場合は原則として労働保険の対象外になる点に注意)

ステップ4:執行役員規程の整備

執行役員の選任・退任の手続き、報酬の決定プロセス、退任後の処遇(役職を解かれた後の労働者としての地位への復帰の有無)などを定めた執行役員規程を整備します。

注意点・リスク

  • 「執行役員だから残業代は不要」という誤った運用が中小企業で散見されますが、実態として労働者性が認められる限り、管理監督者に該当しない執行役員には割増賃金の支払い義務があります。管理監督者に該当するかどうかも、役職名ではなく、経営者との一体性、労働時間管理の実態、権限の程度など実質で判断されます。
  • 委任契約として設計したにもかかわらず、実態が労働者と変わらない場合、後に労働者性が認められ、未払い残業代や不当解雇の慰謝料等を請求されるリスクがあります。
  • 執行役員への就任・退任にあたって、賃金・処遇が大きく変動する場合は、労働条件の変更として本人への十分な説明と同意取得が必要です。

中小企業ならではの工夫

執行役員制度を導入する主な目的が「意思決定の迅速化」「幹部人材のモチベーション向上(対外的な肩書きの付与)」である場合、無理に委任契約への切り替えを目指す必要はありません。雇用契約を維持したまま、役職手当や権限の拡大によって処遇面での違いを設ける設計の方が、労務リスクを抑えながら制度の目的を達成しやすいケースが多くあります。

まとめ

執行役員制度は、契約書の形式ではなく実態によって労働者性の有無が判断される、労務リスクの高い制度です。導入にあたっては、自社が執行役員にどのような役割・裁量を期待するのかを明確にしたうえで、雇用契約か委任契約かを慎重に選択し、専門家の助言を得ながら契約書・規程を整備することをおすすめします。

よくある質問

Q. 執行役員は会社法上の役員(取締役)と同じ扱いですか?

A. 異なります。執行役員は会社法上定義された「役員」ではなく、企業が任意に設けた社内呼称・役職です。経営の意思決定機能を担う取締役会とは別に、業務執行機能を担う立場として位置づけられることが一般的です。

Q. 執行役員には残業代を支払わなくてよいですか?

A. 実態として労働者性が認められる限り、管理監督者に該当しない執行役員には割増賃金の支払い義務があります。「執行役員だから残業代は不要」という運用は誤りであり、管理監督者に該当するかどうかは役職名ではなく実質で判断される点に注意が必要です。

Q. 執行役員は雇用契約と委任契約のどちらにすべきですか?

A. 自社が執行役員にどの程度の経営上の裁量・独立性を持たせるかによって判断します。多くの中小企業では実態として労働者性が強いため、雇用契約を維持したまま役職手当等で処遇面の違いを設ける設計が一般的です。委任契約とする場合は、労働時間の拘束を行わない等、実質的にも労働者性が認められにくい実態を整える必要があります。

なぜ中小企業にHRCが選ばれるのか?

完全請負制で追加費用なし・月額分割も可能

自社専用オリジナル人事制度構築:総額 900,000円(税込990,000円)〜

コンサルティング期間(標準6ヶ月)での月額分割払い(月額15万円〜)に対応。
契約後の追加費用は一切発生いたしません。

定着するまで絶対に投げ出さない「2年間の無償サポート」

制度は「作って終わり」ではなく「運用してから」が本番です。HRCでは導入後2年間、以下の運用サポートを無償でご提供します。

  • 評定会議への同席・アドバイス: 評価のブレをプロの目線で補正します。
  • 昇給・賞与検討用資料の作成支援: 経営を圧迫しない適正な配分をアドバイスします。
  • 制度メンテナンス・微修正: 運用で見えた課題を随時調整します。

※上記を超える実務作業(評価シートの全面改訂、新たな研修の企画・代行登壇など)が発生する場合は、必ず事前にお見積りをご提示し、ご納得いただいた上での対応となります。

はじめての人事制度・制度設計サポート

制度設計サポート(はじめての人事制度)

社員数50名以下の中小企業様へ。本サービスでは、評価制度と賃金制度をトータルで設計し、一貫性のある「はじめての人事制度づくり」を支援します。何をどうすれば評価され、処遇に反映されるのかが一目瞭然となる、シンプルで分かりやすい仕組みを構築。採用に強い賃金表や、社員の強みを活かすキャリアコースの設計を通じ、人材の定着と育成を後押しします。

サービス詳細を見る
制度運用サポート(はじめての人事制度)

制度運用サポート(はじめての人事制度)

「制度を作ったものの、正しく運用できるか不安…」そんなお悩みを解決します。本サービスでは、評価のバラつきを防ぎ、部下の育成につなげる「評価者研修」と、評価集計から昇給・賞与の資料作成までを丸ごと任せられる「運用アウトソーシング」の2本柱で手厚くサポート。人事担当者の負担を大幅に削減しながら、納得感の高い制度の定着を実現します。

サービス詳細を見る
目次