【介護事業所のM&A・多拠点展開】事業承継での「人事制度一本化」と職員離職リスクの回避法

介護業界のM&A、事業承継、多拠点・サテライト展開で多発する「人事制度・給与の不一致」による職員の大量離職を防ぐ!不利益変更の法的リスクを回避する調整手当の設計、評価の甘辛調整、人事制度運用マニュアルの作成など、人事統合(PMI)のノウハウをコンサルタントが徹底解説します。

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    【M&A・多拠点展開】事業承継・法人統合での「人事制度一本化」と職員離職リスクの回避法

    近年、介護業界を取り巻く経営環境は劇的な変化を遂げています。小規模法人の経営難や後継者不足問題、そしてバックオフィス業務やケアの効率化を目的とした法人同士のM&A(合併・買収、事業譲渡)や、サテライト展開による多拠点化が爆発的に増えています。2026年現在、生き残りをかけたこの「規模の拡大」は、スケールメリットを活かすための経営戦略として非常に正しく、不可避な選択と言えます。

    しかし、複数の拠点を傘下に収めた経営者や人事担当者の皆様が、統合直後に必ず突き当たる巨大な壁があります。それが、「それぞれの拠点で全くバラバラだった人事制度や給与ルールの統合問題」です。

    新しくグループに引き受けた施設の職員と、もともと自社にいた職員との間で生じる摩擦は深刻です。「あっちの施設の方が基本給のベースが高い」「こちらの施設の方が処遇改善加算の配分が手厚い」「資格手当の金額が違う」「評価の基準が違っていて不公平だ」……。こうした買収先と自社の間の給与水準やルールのズレを放置すると、現場に深刻な不信感と不公平感が急速に広がり、最も恐れていた「引き受けた直後の優秀な職員の大量離職」を引き起こすことになります。せっかく多額の資金を投じてM&Aを行ったにもかかわらず、中核となる人材が抜けてしまえば、残るのはハコ(施設)と莫大な負債だけです。

    M&Aや多拠点化における最大の成功条件は、単なる財務やシステムの統合ではありません。最も難易度が高い「人の統合(人事面のPMI:ポスト・マージ・インテグレーション)」をいかに成し遂げるかです。特に、労働法における「不利益変更」という致命的な法的リスクを完全に回避しつつ、現場の職員に不満を持たせずに一つの人事制度へ一本化していくプロセスには、非常に繊細かつ専門的な実務の技術が求められます。

    本記事では、経営規模の拡大に伴う人事制度一本化のノウハウを、専門知識のない経営者様でもすぐに理解し実践できるよう、7,000文字を超える圧倒的なボリュームと具体的なステップで分かりやすく解説します。

    1. 介護業界のM&A・拠点拡大の裏に潜む「人事制度の不一致」という爆弾

    M&Aや事業譲渡によって新しい施設や法人をグループに迎えた際、経営陣は「これでドミナント戦略(地域集中展開)が加速し、地域でのシェアが取れる」「事務部門のスケールメリットで経費が大幅に削減できる」と、未来の明るい数字に目を向けがちです。しかし、現場で働く職員にとって法人のM&Aは、「会社が自分たちの頭越しに勝手に決めた、生活を脅かしかねない大事件」でしかありません。

    1-1. 買収後に職員の半分が辞める?統合プロセスで絶対にやってはいけないこと

    経営統合後に現場が混乱し、職員が次々と辞めていく法人には、共通する「絶対にやってはいけないNGアクション」が存在します。それは、「自社のルールが正しいのだから」という経営側の一方的な理屈で、事前の準備や丁寧な説明もなく、買収先の給与体系や評価ルールを『自社基準へ強制的に一発変更すること』です。

    介護現場の職員は、自分たちの現在の給料(特に基本給や各種手当、入職の決め手となった夜勤手当の額など)をベースに、毎月のローンや子どもの教育費といった生活設計をギリギリのところで立てています。そこに経営者が突然現れ、「これからは統合法人として当法人の賃金テーブルを適用するので、来月から基本給が一律で2万円下がります。その代わり、新しい評価制度で頑張れば賞与が増えますから納得してください」などと、一方的なルール変更(これを人事用語で不利益変更と呼びます)を強行すれば、現場は一瞬にしてパニックに陥ります。

    「だまされた」「買収されて安い給料で使い捨てにされるのではないか」という恐怖と怒りは、職員同士のLINEやSNS、口コミを通じて瞬く間に広がり、気がつけば現場を支えていたユニットリーダーやケアマネジャーといった替えの効かない中核人材が、ごっそりと他法人へ転職してしまう事態を招くのです。

    1-2. 経営理念や組織文化の「目に見えない壁」を人事制度で融和させる

    人事制度の規定や給与の額といった「目に見える数字」のズレ以上に、M&Aにおいて厄介なのが、法人ごとに長年培われてきた「経営理念や組織文化(ケアに対する姿勢)の違いという目に見えない壁」です。

    • 旧法人A(買収された側)の文化: 「とにかくアットホームで、利用者様との時間を何より大切にする。書類の整備や業務の効率化は二の次で、残業してでも寄り添うのが正義」
    • 新法人B(買収した側)の文化: 「介護DXやICTを積極的に活用し、記録や報告を徹底して効率化する。残業は厳禁であり、生産性の高さが正義」

    このような真逆の2つの文化が、事前のすり合わせや融和なしに出会うと、現場ではどのような摩擦が起きるでしょうか。「A施設の職員は効率が悪くサボってばかりいる」「B施設の職員はパソコンばかり見ていて冷たく、マニュアル通りにしか動かない」といった、深刻な派閥争い(確執)が直ちに始まります。

    人事制度の統合とは、単に給与計算の数字を合わせるだけの事務作業ではありません。「これからの拡大法人として、私たちはどのようなケアの価値観を大切にし、どのような行動・プロセスを踏む職員を高く評価するのか」という新しい共通の物差し(評価基準)を作り、お互いの長所となる文化をリスペクトしながら一つの組織へと融和させていく、極めてクリエイティブな経営改革なのです。

    2. 法的リスクを完全回避する「不利益変更」への実務対応

    M&Aや拠点拡大で人事制度を一本化する際、経営者が感情論以上に最も厳重に注意しなければならないのが、法律(労働契約法)の厚い壁です。

    日本の法律(労働契約法第9条および第10条)では、労働者と個別の合意をすることなく、会社側が一方的に就業規則を変更し、労働条件を労働者の不利益になるように変更すること(不利益変更)は、原則として固く禁止されています。これを破れば、職員からの損害賠償請求や、労働基準監督署からの是正勧告という致命的なダメージを受けます。

    2-1. 給与テーブルが異なる場合、激変緩和措置(調整手当)をどう設計するか

    買収した施設の職員の基本給ベースが、自社の基本給よりも高かった場合、全体のバランスを取るため、あるいは人件費を圧縮するために「自社の低い基本給テーブル」へすぐに引き下げようとすることは、法的に極めてリスクが高く、高確率で労務トラブルに発展します。

    この重大な法的リスクを完全に回避しながら、時間をかけて給与水準を1つのテーブルに一本化していくための実務テクニックが、「激変緩和措置(げきへんかんわそち)」としての「調整手当」の設計です。

    【具体例:基本給に2万円の差がある場合の調整法】
    買収した施設の優秀な介護職・鈴木さんの現在の基本給が24万円、自社の同じ等級の基本給テーブルが22万円だったと仮定します。鈴木さんの基本給をいきなり22万円に下げるのではなく、差額の2万円を「調整手当」という形で独立して支給し、「総額としての支給額(手取り)を統合前と変えない」工夫をします。

    • 変更前の給与(旧法人):
      基本給 24万円
    • 変更後の給与(新法人):
      基本給 22万円 + 調整手当 2万円 = 総額 24万円(維持)

    しかし、この調整手当をずっと永遠に払い続けるわけではありません。それでは統合の意味がなくなります。新たな「人事制度運用マニュアル」や賃金規程の中に、「調整手当は、今後の人事評価による昇給分や、資格取得による手当の増額分、あるいはベースアップ等の手当増額分と相殺し、段階的に減額・消滅させる」という漸減(フェーズアウト)のルールを明確に明記しておくのです。

    例えば1年後、鈴木さんが新しい人事評価制度で成果を上げ、基本給が5,000円アップして22万5,000円になった場合、調整手当をその分だけ削り1万5,000円に減額します。総額24万円を維持したまま、あるいは少しずつ増やしながら、数年(おおむね3年〜5年)をかけて自然に自社の基本給テーブルへと軟着陸(一本化)させていくのです。
    この方法であれば、職員の生活基盤を守りつつ、法的な「不利益変更」の指摘を受けるリスクを実質的にゼロにすることができます。

    2-2. 人事制度運用マニュアルの作成と、職員一人ひとりへの「個別同意」の進め方

    激変緩和措置を用いたとしても、人事制度や退職金制度、休日数などのルールを根本から変更する「人事制度運用マニュアルの作成・変更」を行う場合、適切な「手続きのプロセス」を踏まなければ、せっかく作った新制度そのものが法的に「無効」となってしまいます。

    【制度移行における正しい実務プロセス】

    1. 労働者代表からの意見書受領:
      法人内の過半数を代表する職員(または労働組合)に対し、新しい人事制度運用マニュアル(および関連する各種規程)の案を提示し、それに対する「意見書」をもらいます。
    2. 労働基準監督署への届出:
      意見書を添付した新しい規程類(就業規則等)を、管轄の労働基準監督署へ速やかに提出(届出)します。
    3. 職員全員への「個別同意書」の回収:
      ここが最も重要であり、かつ労力がかかる部分です。同一労働同一賃金や不利益変更に関する将来のトラブルを完全に防ぐため、「新しい人事・賃金制度の内容を理解し、移行することに同意します」という内容の個別同意書(サインと捺印)を、買収先の全職員から「一人残らず」回収します。

    「全体説明会をやったし、誰もその場で反対しなかったから全員納得しているはずだ」という経営者の思い込みは、労使トラブルの場では一切通用しません。一人でも同意書を出さない職員がいれば、その職員に対しては旧法人の古い労働条件がそのまま適用され続け、組織内に「2つのルールが永久に混在する」という、人事管理上の大混乱(セグメンテーション)が発生してしまいます。丁寧な個別面談を繰り返し、全員の同意を勝ち取ることが統合の要です。

    3. 2つの制度を1つにする「人事制度一本化」の3ステップ

    では、実際に2つの異なる人事制度をどのようにして1つの強固な制度にまとめ上げていくのか。HRCが数々のPMI(統合プロセス)で実践している「失敗しないための一本化・3ステップ」を具体的に解説します。

    3-1. ステップ1:両法人の評価項目・賃金水準の「マッピング(対比)」

    最初のステップは、自社と買収先の法人の人事・給与データを机の上にすべて広げ、客観的に比較・分析する「マッピング(対比表作成)」の作業です。

    【比較すべき主なポイント】

    • 基本給の構造: 年齢とともに自動的に上がる「年齢給・勤続給」の要素が強いか、職務や能力で決まる「職能給・職務給」か。
    • 各種手当の条件と金額: 夜勤手当、資格手当、家族手当、住宅手当の金額と支給要件の違い。特に入職の決め手となりやすい「夜勤手当(1回〇円)」に大きな差がある場合は、統合時に最も不満が出やすいため要警戒です。
    • 処遇改善加算の配分ルール: 毎月基本給や手当に組み込んで支給しているか、それとも賞与の時期に一時金としてまとめて出しているか。
    • 評価項目と昇給のロジック: 誰が、いつ、どのような基準で評価を行い、それがどう基本給の昇給額や賞与の掛け率に反映されているか。

    これらをエクセル等の詳細な一覧表(マッピングシート)にし、「どの項目がどれくらいズレているのか」の全体像を完全に可視化します。この緻密な現状把握(現状分析)なしに、経営陣の理想論だけで「明日から新しい統一制度だ」と発表しても、必ず現場の激しい拒絶反応に遭うことになります。

    3-2. ステップ2:自社の基準に合わせるための「新等級への格付け判定」

    全体像を把握し、新しい人事制度の骨格が固まったら、次に買収先の職員一人ひとりを、自社の「等級(ランク)」のどこに配置(格付け・レイティング)するかを決定する、非常に重要かつデリケートな作業に入ります。

    【格付け判定(マッピング実務)の手順】
    単に「前の会社で主任という肩書きだったから、うちでも自動的に主任にする」という雑な決め方は絶対にしません。旧法人の役職名に騙されず、「実際の業務内容と保有資格、経験年数、マネジメントの有無」をベースに、自社の等級定義に照らし合わせます。

    • 例:旧法人の「フロアリーダー(月給25万円)」の格付け
      • 自社の基準でヒアリングしたところ、現場の夜勤対応はしているが、シフトの作成や部下の評価・育成面談は一切行っていないことが判明。
      • そのため、自社のマネジメント職である「主任(第3等級)」ではなく、実務能力が高い「中堅プロ介護職(第2等級)」として格付け判定を行う。
      • ただし、給与総額(25万円)は前述の「調整手当」を使って全額保証し、将来的にシフト作成や後輩指導などの役割を覚えてもらうことで、名実ともに自社の「主任(第3等級)」へとステップアップしてもらうストーリーを描き、本人に提示する。

    この格付け判定のプロセスを、買収側の経営陣だけで密室で行うのではなく、買収先の施設長や幹部を交えて一緒に行うことで、買収先の管理職層に対しても「こちらの職員を不当に貶めることなく、公平に見ようとしてくれている」という安心感を与えることができます。

    3-3. ステップ3:新制度の移行説明会における、不満を抑えるプレゼン技術

    マッピングと格付け、そして人事制度運用マニュアルの作成が完了したら、いよいよ現場の職員に向けた一斉説明会です。ここでの経営者の発言や態度のひとつで、職員が残るか辞めるかの命運が決まります。不満や反発を最小限に抑え、期待感を持たせるための、HRC直伝のプレゼン技術をご紹介します。

    【説明会での「黄金のトークスクリプト」】

    • NGな説明: 「この度、M&Aに伴い、経営効率化のために全社の制度を統一することになりました。一部、給料の手当項目が廃止されたり変わったりする人がいますが、法律に則って不利益にならないよう対応しますので、ご理解とご協力をお願いします」
      ※これでは職員は「自分たちは経営効率化の道具だ」「会社の都合で犠牲にされる」としか感じません。
    • OKな説明: 「今回、2つの法人が1つになったのは、地域で最も質の高いケアを持続的に提供し、ここで働く皆様全員が安心して長く働ける『強い経営基盤』を作るためです。今回の新しい人事制度は、『誰がどの施設で働いていても、頑張った人が正当に報われる公平な仕組み』にするために、半年間かけて全職員の生活を守る工夫(激変緩和措置)を施して慎重に作りました。資格を取れば、そして新しい役割に挑戦すれば、今よりも確実にステージが上がる明確なキャリアパスを用意しています。これからの新しい法人を、一緒に作っていきましょう」

    説明会の場では、難しい就業規則の条文や計算式を延々と読み上げるのではなく、「この統合によって、職員の皆様の未来(キャリアと生活)が具体的にどう良くなるのか」というポジティブなビジョンを、経営者自身の言葉で、情熱を持って語りかけることが成功の絶対条件です。

    4. 多拠点展開における「エリア間格差」と「評価のブレ」の是正

    法人が順調に成長し、同一県内のみならず、全国に複数の拠点(サテライト)を持つようになると、M&Aによる統合とはまた異なる「多拠点展開特有の人事の課題」が発生します。

    4-1. 都市部と地方拠点で基本給・地域手当をどう分けるべきか

    拠点が都市部と地方など複数の地域にまたがる場合、全拠点で完全に同じ基本給テーブルを適用することは、経営上の大きなリスクになります。なぜなら、東京などの「都市部」と、物価や最低賃金が低い「地方」では、採用市場における労働力の価格(相場)が全く異なるからです。

    地方の給与水準に全社を合わせれば、都市部では他社に競り負けて一人も採用できず拠点が崩壊します。逆に、都市部の高い給与水準に全社を合わせれば、地方拠点の性質上、売上に対する人件費率(コスト)が異常に高騰し、赤字を垂れ流すことになります。

    【解決策】基本給の一本化 +「地域手当(エリア手当)」の導入
    全社共通の「基本給テーブル(能力や等級にのみ応じて決まるもの)」をベースにしつつ、地域の労働相場や物価に応じた「地域手当(エリア手当)」を外付けで加算する仕組みを導入します。

    • 東京拠点の介護職(第2等級): 基本給 21万円 + 地域手当 3万円 = 月給 24万円
    • 地方拠点の介護職(第2等級): 基本給 21万円 + 地域手当 0円 = 月給 21万円

    このように、基本の「能力評価の物差し(基本給)」は一つに統一しておくことで、将来的な拠点間の異動(転勤や応援)をしやすくしつつ、人件費の総額は地域の経済実態(最低賃金や家賃相場)に合わせて最適化する。これが、多拠点経営における最もスマートで破綻しない給与設計です。

    4-2. 施設長(評価者)ごとの甘辛を無くす、全社一括の評価調整会議の仕組み

    多拠点展開でもう一つ必ず起きる組織の歪みが、「施設長(評価者)によって人事評価の基準がバラバラ(甘辛のブレ)」という問題です。

    A施設の施設長は大変優しく、部下に嫌われたくないため普通に働いている職員全員に「A(大変良い)」をつける。一方で、B施設の施設長は非常に厳格で、どれだけ頑張って実績を出している職員にも「B(普通)」しかつけない。これが放置され、そのまま賞与や昇給に反映されると、「どの施設長の配下に配属されるかで自分の給料が変わる」という、職員にとって最大の不公平(エンゲージメントの致命的な低下)が生まれます。

    これを是正するために、期末の評価が全拠点から集まった段階で、経営陣、人事部長、そして各施設長が一堂に会する「全社一括評価調整会議(甘辛調整会議)」を、「人事制度運用マニュアル」の中で必須の制度として仕組み化します。

    会議では、各拠点の評価の分布(例:A施設はA評価が80%、B施設はA評価が20%など)をグラフで可視化し、経営陣が「A施設の施設長、なぜあなたの拠点はこんなに突出して評価が高いのですか? 客観的な実績(離職率の低下や稼働率の向上)と見合っていますか?」と厳しく追及し、説明責任を果たさせます。その上で、全社で「S・A・B・C」の配分割合(例:A評価以上は全社の20%以内にするなど)の枠(相対評価の要素)をはめ込み、全体ですり合わせを行うことで、どの拠点にいても公平な評価が受けられる環境を担保するのです。

    5. 2年間の無償サポートで完全定着させる、HRCのM&A人事統合プラン

    M&Aや多拠点展開における人事制度の統合は、法人の命運を左右する超大型プロジェクトです。机の上の計算だけで強引に進めれば、必ずどこかで綻び(ほころび)が生じ、大量離職という最悪の結末を迎えます。私たちヒューマンリソースコンサルタント(HRC)は、介護業界の泥臭い現場感覚と、緻密な労務実務の双方を兼ね備えた専門家として、この統合プロセスを「完全請負」でサポートします。

    • デューデリジェンス(労務リスク診断)から伴走:
      M&Aの契約前の段階から、相手方の法人の賃金台帳や就業規則、隠れた残業代リスク(未払い残業)がないかを専門家の目で徹底的に調査し、統合の阻害要因を洗い出します。
    • マッピング・格付けの完全代行:
      複雑を極める両法人の給与対比や、職員数十人〜数百人分の新等級への格付けシミュレーション、そして1円単位での調整手当の計算を、弊社のコンサルタントがすべて手を動かして作成・納品します。経営者様の実務負担を極限まで減らします。
    • 2年間の無償運用サポートによる定着:
      制度の統合後、現場で必ず生じる「細かい手当の計算ミス」「旧法人職員からの不満や質問のケア」「施設長ごとの評価のブレの是正」など、運用が完全に自走するまで2年間、無償で徹底的に伴走し続けます。

    6. 介護経営者が知っておくべきFAQ

    Q1:M&Aで引き受けた法人の職員の中に、明らかに能力が低く、トラブルばかり起こす人がいます。新しい人事制度を適用するタイミングで、給料を大幅に下げるか解雇することはできますか?

    A: 新制度への移行を「口実」にして、特定の職員を狙い撃ちして給与を下げたり、解雇したりすることは、法律上(労働契約法の不利益変更や権利の濫用)絶対にできません。不当解雇で訴えられれば確実に敗訴します。まずは全員一律で「総額保証(調整手当)」のルールを適用し、同じスタートラインに立たせます。その後、新しい人事評価制度の運用の中で、その職員の「客観的な問題行動(マニュアル違反や遅刻、暴言など)」を事実として記録(減点評価)し、正当なプロセスを経て、数期かけて降格・減給、あるいは退職勧奨へと進めるのが、法人を守るための正しい労務実務です。

    Q2:買収した法人の退職金制度が「中退共(中小企業退職金共済)」でした。当法人は退職金制度がないのですが、コスト削減のために中退共を勝手に解約しても大丈夫ですか?

    A: 中退共の解約や、退職金制度そのものの廃止は、職員にとって極めて大きな「不利益変更」となります。職員の同意なく勝手に解約することは違法となる可能性が非常に高いです。解決策としては、買収した法人の職員に対してのみ(既得権として)中退共の加入をそのまま引き継ぐか、あるいは退職金口座の積立額を清算(退職金の前払い)し、その分の原資を今後の「基本給」や「確定拠出年金(iDeCo等)」へ上乗せする形で、職員全員の個別同意を得て移行する等の煩雑な手続きが必要です。HRCではこうした複雑な退職金統合の実務もすべてサポートします。

    Q3:サテライト拠点を増やしているのですが、新しい施設長たちに人事評価を任せるのが不安です。どのような訓練が必要ですか?

    A: 評価シートや人事制度運用マニュアルを渡すだけでは、施設長は正しく評価できません。年に2回、実際の評価期の前に、HRCが講師を務める「評価者研修(ハラスメント・甘辛防止研修)」の受講を必須にしてください。研修では、架空の介護職の「良い行動・悪い行動」のビデオや事例を見せ、参加者全員で実際に評価シートをつけさせるロールプレイングを行います。お互いの点数のズレをその場で議論させることで、「法人の共通の評価の目」を養うことができます。

    Q4:不利益変更の「個別同意書」を提出してほしいとお願いしても、どうしてもサインしてくれない職員が1人だけいた場合、経営としてどう対応すべきですか?

    A: 「サインしないとクビだ」などと無理に迫れば「強要罪」やパワハラになります。その1人に対しては、説得を続けつつも、当面の間は「旧法人の古い労働条件(古い給与・古い休日数)」をそのまま適用し続けるしかありません。ただし、組織内で浮いた存在(特別扱い)になり、新しい処遇改善の恩恵も受けにくくなるため、多くの場合は周囲の職員の目や、丁寧な個別面談での説明(新制度のメリットの解説)を重ねることで、数ヶ月から半年以内には同意に応じてもらえるケースがほとんどです。

    Q5:M&Aの後、どれくらいの期間(タイムスケジュール)で人事制度を一本化するのが理想ですか?

    A: 買収後、「最短でも6ヶ月、理想的には1年後」の本運用スタートを目指します。最初の3ヶ月は、現場の混乱を避けるために「旧法人の給与ルール」をそのまま維持し、その間にマニュアル作成やマッピング、格付け判定を裏で進めます。4ヶ月目〜5ヶ月目に全体説明会と個別同意の回収を行い、半年が経過したキリの良いタイミング(期初など)で新制度へ一斉移行するのが、最も離職リスクが低く、かつスピード感を損なわない黄金スケジュールです。

    まとめ:規模の拡大を、全職員の「誇り」に変えるために

    介護法人のM&Aや多拠点展開は、経営者にとって「組織を大きく躍進させる最大のチャンス」であると同時に、「一歩間違えれば、現場の信頼と人材をすべて失う最大のピンチ」でもあります。

    経営統合(PMI)の現場で、私たちがいつも経営者の皆様にお伝えするのは、「数字の計算(財務統合)の前に、現場の職員の『感情の計算』をしてください」ということです。職員は、法人が大きくなること自体を拒否しているのではありません。「組織が大きくなる過程で、自分たちのこれまでの頑張りや生活基盤が、無視されてしまうのではないか」という強烈な不安と戦っているのです。

    その不安を先回りして解消し、「この法人に統合されて良かった。自分のキャリアの道(梯子)がさらに明確になり、評価されるチャンスが増えた」と確信させるための最強のインフラが、丁寧に設計された統合型の人事評価制度です。

    法人の規模が大きくなることは、利用者様にとっても、地域社会にとっても、そして働く職員にとっても、本来は素晴らしい恩恵をもたらすはずのものです。その未来を、「人事制度の不一致と強引な統合」というボタンの掛け違いだけで台無しにしてしまうのは、あまりにももったいないことです。買収先の職員も、自社の職員も、すべての拠点のスタッフが「私たちは一つの理念のもと、公平な基準で評価されている」という強い安心感を持ったとき、法人の成長スピードは無限大になります。

    「近くM&Aを控えているが、相手方職員への給与の説明をどう進めるべきか悩んでいる」
    「拠点が広がり、施設長ごとの評価の甘辛(不公平感)に限界を感じている」
    「法的リスク(不利益変更)を完全にクリアした、新しい全社共通の賃金テーブルを作りたい」

    私たちヒューマンリソースコンサルタント(HRC)は、介護現場の生々しい人間関係と、高度な労務実務の双方を完璧にコントロールできる、業界特化の人事コンサルタント集団です。私たちは、経営者様のビジョンに徹底的に寄り添い、買収プロセスの裏方(マッピング、人事制度運用マニュアル作成、同意書回収の手配など)を完全請負で遂行します。

    さらに、統合後2年間の無償サポートをお約束し、現場のあらゆる労務トラブルや運用のブレに対しても、常にあなたの隣で伴走し続けます。規模の拡大を、職員全員が「この法人で働けて良かった」と心から誇れる強固な組織への転換点にするために。まずは、貴法人のこれからの拡大計画や、現在の拠点間の悩みについて、無料相談でじっくりとお聞かせください。

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    【用語集】

    不利益変更(ふりえきへんこう)
    労働者の個別の同意を得ることなく、会社側が一方的に就業規則や賃金規程を変更して、労働条件(給与の減額、休日の削減、手当の廃止等)を今よりも悪化させること。労働契約法第9条で厳しく制限されている。
    激変緩和措置(げきへんかんわそち)
    人事制度の変更や統合によって生じる急激な変化(給与の減少など)によるショックや生活への影響を和らげるために、数年間の期限付きで設ける一時的な救済ルールや「調整手当」のこと。
    マッピング(対比)
    2つの異なる法人の給与体系や評価項目、手当の条件などを、項目ごとに並び替えてエクセル等の一覧表にし、どこにどれだけの差(ズレ)があるかを客観的に可視化する分析手法。
    格付け(レイティング)
    新しい人事制度・等級制度へ一斉に移行する際、職員一人ひとりの能力や過去の実績、現在の役割の重さを査定し、新しいランク(第1等級、第2等級など)に当てはめて配置する実務作業。
    PMI(ポスト・マージ・インテグレーション)
    M&A(合併・買収)が成立した後に、当初計画したシナジー(相乗効果)を最大限に発揮させるために行う、組織・業務・人事・システムの一連の統合プロセスのこと。この成否がM&Aの成功を決定づける。
    介護業向け人事戦略連載コラム

    連載:介護業の人事制度・評価制度改善

    慢性的な人材不足や複雑な処遇改善加算への対応など、介護業界特有の課題を解決する人事戦略を公開。職員のモチベーションを高め、離職を防ぐための公平な評価制度やキャリアパスの構築法とは?加算要件を確実に満たしつつ、経営と現場の双方が納得できる賃金体系の設計について、数多くの施設を支援してきた専門コンサルタントが実例を交えて解説します。

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      はじめての人事制度・制度設計サポート

      制度設計サポート(はじめての人事制度)

      社員数50名以下の中小企業様へ。本サービスでは、評価制度と賃金制度をトータルで設計し、一貫性のある「はじめての人事制度づくり」を支援します。何をどうすれば評価され、処遇に反映されるのかが一目瞭然となる、シンプルで分かりやすい仕組みを構築。採用に強い賃金表や、社員の強みを活かすキャリアコースの設計を通じ、人材の定着と育成を後押しします。

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      制度運用サポート(はじめての人事制度)

      制度運用サポート(はじめての人事制度)

      「制度を作ったものの、正しく運用できるか不安…」そんなお悩みを解決します。本サービスでは、評価のバラつきを防ぎ、部下の育成につなげる「評価者研修」と、評価集計から昇給・賞与の資料作成までを丸ごと任せられる「運用アウトソーシング」の2本柱で手厚くサポート。人事担当者の負担を大幅に削減しながら、納得感の高い制度の定着を実現します。

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      中小企業の経営者に向けて、人事制度に関する役立つ記事を発信しています。
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