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【保育園向け】10月1日施行「待遇差の説明」義務化と社会保険の賃金要件撤廃|パート・短時間職員の待遇を説明できる園になる点検手順
情報基準日:2026年10月16日時点(厚生労働省・日本年金機構・こども家庭庁の公表資料に基づく)
はじめに
2026年10月1日、パートタイム・有期雇用労働者に関するルールの改正と、社会保険における短時間労働者の賃金要件の撤廃が、同じ日に施行されました。早番・遅番を支えるパート保育士、保育補助、調理員、延長保育の短時間職員を雇う園にとって、「正規職員となぜ待遇が違うのですか」と聞かれたときに答えられるかどうかが、実務として問われる局面です。
この記事は、スタッフ100名以下の社会福祉法人・学校法人・株式会社等の理事長、園長、事務長を主な読者としています。専任の人事担当者がいなくても進められるよう、何が変わったのか、どこから点検するのか、評価や賃金表にどう反映するのかを順に整理します。
この記事の要点
- 10月1日から、雇入れ時の労働条件明示に「待遇差の説明を求めることができる旨」が加わりました。明示しない場合は10万円以下の過料の対象です。
- 求められたときは、正規職員との待遇差の内容と理由を、資料を使った口頭説明か、資料の交付で説明する必要があります。
- 社会保険の月額8.8万円の賃金要件は撤廃されましたが、週20時間以上、事業主の規模、学生でないことなどの要件は残っています。
- 最短の対応は、手当・賞与・退職金の「支給の目的」を言葉にし、職務内容・責任・配置の範囲で整理することです。
パート職員の評価基準を、正規職員の基準と並べて見たい方は、保育園向けの評価シートサンプルが参考になります。役割と行動の書き方を、自園の様式づくりの出発点として確認できます。
1.10月1日に何が変わったのか
結論から言うと、今回の改正は「パート職員の待遇を、理由とともに説明できる状態にしておく」ことを、園に求める内容です。厚生労働省と日本年金機構の資料によると、2026年10月1日に施行された改正と関連する制度は、次の表のとおりです。
| 項目 | 内容の要点 | 園への影響 |
|---|---|---|
| 労働条件の明示事項の追加 | 雇入れ時に、昇給・退職手当・賞与の有無、相談窓口に加え、待遇差の説明を求めることができる旨を明示する。明示しない場合は10万円以下の過料の対象 | パート・有期職員の労働条件通知書の様式を改める |
| 同一労働同一賃金ガイドラインの改正 | 賞与の記載が充実し、退職手当、無事故手当、夏季冬季休暇、褒賞などが新たに加わった。住宅手当・家族手当にも考え方が示された | 手当・休暇・賞与・退職金の「目的」を整理する |
| 待遇差の説明方法の明確化 | 資料を使った口頭説明、または説明事項をすべて記載した資料の交付のいずれかで行う | 説明用の資料と担当者を決めておく |
| 社会保険の賃金要件の撤廃 | 短時間労働者の加入要件のうち、月額8.8万円以上という賃金要件がなくなった。週20時間以上などの要件は残る | 週20時間前後で働く職員の加入可否を再確認する |
なお、地域別最低賃金も10月1日から12月2日までの間に都道府県ごとに順次改定されます。厚生労働省が2026年9月3日に公表した資料では、全国加重平均は1,177円で、47都道府県で54円から65円の引き上げです。発効日は地域で異なるため、自園の所在地の発効日を都道府県労働局のページで確認してください。
注意
待遇差があること自体が、直ちに違法になるわけではありません。問われるのは、その差に合理的な理由があるか、そして求められたときに説明できるかです。個別の判断は、社会保険労務士や弁護士にご相談ください。
2.主な対象施設と、他の施設類型への影響
本記事の主な対象は、民間の認可保育所、認定こども園、小規模保育事業所です。パートタイム・有期雇用労働法は民間の事業主に広く適用されるため、幼稚園、企業主導型保育事業、認可外保育施設の運営法人も、パート・有期職員を雇う限り同じ考え方が当てはまります。
一方で、整理が必要な点が3つあります。第一に、公立園の会計年度任用職員は別の法体系で処遇が定められるため、本記事の対象外です。第二に、学校法人立の幼稚園や認定こども園では、教職員の年金・医療の加入先が私学共済となる場合があるため、社会保険の要件は加入先の窓口で確認してください。第三に、社会保険の「事業主の規模」の要件は、園単位ではなく事業主単位で見ます。複数園を運営する法人は、法人全体の人数で判断することになります。数え方の詳細は年金事務所にご確認ください。
スタッフが100名以下の法人では、51名から100名の規模が最も影響を受けます。50名以下の園でも、待遇差の説明は規模に関係なく必要です。
3.保育現場で起こりやすい課題
パート職員の待遇をめぐる不満は、金額の大小よりも「理由が見えないこと」から生じやすいものです。保育現場では、次のような場面が典型です。
- 同じ早番に入り、同じ乳児クラスを支えているのに、手当の有無が正規職員とパート職員で違う。
- 調理員や保育補助が、行事の準備や急な欠員対応で貢献しているが、評価の対象になっていない。
- 週20時間前後の職員が、扶養の範囲に収めるために勤務を調整し、シフトに穴があく。
- 賞与や夏季休暇の取り扱いが、就業規則に書かれておらず、園長ごとの慣行になっている。
ここで注意したいのは、子どもの安全に関わる役割の扱いです。パート職員に、資格や配置基準の上で認められていない責任を負わせることは避けなければなりません。短時間職員を配置基準にどう算入できるかは、施設類型や自治体の運用で異なるため、所管の保育担当部署に確認してください。
4.等級・評価・賃金への反映方法
待遇差を説明できるようにする近道は、職務と責任の違いを等級に表すことです。パート職員向けには、複雑な制度を作る必要はありません。次の3段階程度の「役割特化型」の整理から始められます。
| 段階 | 主な役割の例 | 評価で見る行動の例 | 賃金への反映の考え方 |
|---|---|---|---|
| 補助 | 決められた手順に沿った保育補助、配膳、清掃、見守り | 報告・連絡・相談、安全確認の手順の遵守、挨拶と協力 | 時給テーブルの基礎部分 |
| 標準 | 担当業務を自分で判断して進める。後輩への声かけ | 子どもへの関わり、保護者への取り次ぎの正確さ、ヒヤリハットの共有 | 基礎部分に経験・役割に応じた加算 |
| 指導 | 行事・シフト調整への貢献、新人パートへの助言 | 園内研修への参加、後輩支援、業務改善の提案 | 役割に応じた手当や時給の上位区分 |
評価項目には、結果だけでなく、安全確認や連携といった行動も入れてください。保護者からの人気や行事の見栄えだけを個人の評価に直結させると、チーム保育に悪影響が出るおそれがあります。育児や介護の事情で勤務時間に制約がある職員を、不当に低く評価しないことも重要です。
役割特化型の評価の考え方は、HRCの過去のコラム「保育園の「同一労働同一賃金」完全対応|パート・男性・ベテランの不公平感をなくす評価制度の作り方」でも解説しています。今回の記事は、10月1日の施行を受けた実務の点検に焦点を当てています。
パート職員の手当や評価の整理は、自園だけでは判断に迷いやすい部分です。賃金や評価の見直しの進め方を、保育園の事情に詳しい専門家に無料で相談できます。
5.実務対応の手順
10月以降、次の6つの順で進めると、無理なく整えられます。最初の2つは、今月中にも着手できます。
- 雇用契約書・労働条件通知書の確認:パート・有期職員の様式に、待遇差の説明を求められる旨を加えます。2024年4月から追加された「変更の範囲」などの明示事項も、あわせて確認します。
- 待遇の一覧化:基本給(時給)、賞与、各種手当、休暇、退職金、福利厚生について、正規職員とパート職員の取り扱いを一覧にします。
- 差の「目的」を言語化:手当や賞与は何のために支給しているかを書き出し、パート職員にも当てはまる目的か、職務内容や配置の範囲の違いで説明できるかを確認します。
- 説明資料と担当者の決定:求められたときに使う説明資料を作り、園長以外にも対応できる担当者を決めます。
- 就業規則・賃金規程への反映:慣行になっていた取り扱いを文書にします。常時10人以上を使用する事業場では、変更の届出と周知も必要です。
- 社会保険の再確認と本人面談:週20時間前後の職員について、加入要件を確認し、希望する勤務時間と手取りの見込みを面談で共有します。
| 点検項目 | 確認の問い | 見直しの方向 |
|---|---|---|
| 労働条件通知書 | 説明を求められる旨を記載しているか | 様式を改訂し、新規採用から適用 |
| 手当 | 支給の目的を一言で説明できるか | 目的が不明な手当は、廃止や統合を検討 |
| 賞与・退職金 | パート職員への取り扱いの理由を説明できるか | 職務や責任に応じた均衡のとれた設計を検討 |
| 休暇 | 夏季休暇などの付与基準が文書になっているか | 就業規則に明記 |
| 評価 | パート職員にも役割と行動の基準があるか | 役割段階の評価シートを作成 |
| 社会保険 | 週20時間前後の職員の加入可否を確認したか | 年金事務所や社会保険労務士に確認 |
6.社会保険の計算例と、運用で注意すること
賃金要件が撤廃されたことで、週の所定労働時間が20時間以上であれば、賃金額を理由に加入要件から外れることはなくなりました。厚生労働省は、最低賃金が1,016円以上の地域では、週20時間働けば月額8.8万円の水準を満たすと説明しています。
| 時給 | 週の所定労働時間 | 月額換算 | 旧賃金要件(月額8.8万円)との関係 |
|---|---|---|---|
| 1,016円 | 20時間 | 約88,053円 | 8.8万円を上回る水準 |
| 1,100円 | 20時間 | 約95,333円 | 8.8万円を上回る |
| 1,250円 | 20時間 | 約108,333円 | 8.8万円を上回る |
この計算は、基本給のみを対象にした目安です。実際の加入判定には、手当の扱いや所定労働時間の定め方が関わるため、年金事務所での確認が欠かせません。最低賃金法の減額特例の許可を受けた職員で月額8.8万円未満の場合は、原則として対象外で、本人の希望による任意加入となります。
運用面では、本人への説明が最も重要です。加入すると手取りが一時的に減る一方、将来の年金や保障が手厚くなる面があります。勤務時間を延ばす希望がある職員には、シフトの組み方を一緒に考えてください。
実務ポイント(架空のモデル事例)
たとえば、職員数70名の園が、週20時間勤務のパート調理員6名の通知書を点検したところ、手当の目的が書かれていないことが分かったとします。この場合、手当の目的を整理し、通知書を改訂したうえで、一人ずつ面談を行うという流れが考えられます。これは複数の事例をもとに再構成した説明用の例であり、成果を保証するものではありません。
人事コンサルタントからのアドバイス
最初に確認していただきたいのは、パート職員の人数、週ごとの所定労働時間、時給の分布、そして手当と賞与の支給実績の4点です。加えて、園長や主任が口頭で伝えてきた取り扱いも、すべて書き出してください。慣行は、書き出して初めて、説明できるかどうかを判断できます。
優先順位は、①通知書の改訂、②待遇の一覧化、③手当の目的整理、④評価基準の整備の順です。一度にすべてを変えようとすると、現場が疲弊します。早番・遅番や土曜保育で勤務時間が不規則な職場では、説明資料を職員の休憩時間に読める短さにするなど、運用の工夫が定着を左右します。
また、手当の見直しは、職員にとって実質的な不利益変更になる場合があります。子どもの安全や保育の質を守る人員体制を保ちながら、職員の納得感を得られる順序を設計してください。就業規則の変更、社会保険の判断、過料に関わる点は、社会保険労務士や弁護士に早めにご相談いただくことをおすすめします。
もう一つ大切なのは、職員の声を聞くことです。パート職員が何に納得できていないのかを、簡単なアンケートや個別面談で把握すると、説明資料に書くべき内容が具体的に見えてきます。評価会議やフィードバック面談の場で、パート職員の役割も取り上げる習慣をつくると、制度が形だけにならずに定着します。
用語集
- 待遇差の説明請求権
- パート・有期雇用労働者が、正規職員との待遇の違いとその理由について、事業主に説明を求められる仕組みです。2026年10月1日からは、この権利があることを雇入れ時に明示することも求められます。説明は、資料を使った口頭または資料交付で行います。
- 同一労働同一賃金
- 正規職員と非正規職員の間の不合理な待遇差をなくす考え方です。全く同じ賃金にする意味ではなく、職務内容や責任、配置の範囲の違いに見合った均衡のとれた待遇が求められます。2026年10月にガイドラインが改正されました。
- 年収の壁対策
- パート職員が扶養の範囲に収めようと勤務を抑える問題への、国の支援策と事業所の労務対策を指します。社会保険の適用拡大に伴い、勤務時間の管理と手当の設計が論点になります。2026年10月に賃金要件が撤廃されました。
- 労働条件明示の追加ルール
- 2024年4月から、就業場所や業務の変更の範囲、有期契約の更新上限などの明示が必要になったルールです。通知書や契約書の様式を見直して、記載漏れがないかを確認します。
- 就業規則
- 職場のルールを定めた文書です。常時10人以上を使用する事業場では、作成と労働基準監督署への届出が必要で、パート職員を含む全従業員に周知します。手当や休暇の取り扱いを明文化する土台になります。
- 特定減額特例(最低賃金法の減額特例)
- 最低賃金法に基づき、都道府県労働局長の許可を受けた場合に、最低賃金を下回る額で働く職員を認める制度です。社会保険では、月額8.8万円未満の場合は原則として加入の対象外となり、本人の希望による任意加入の扱いです。
よくある質問(FAQ)
Q1. パート職員から待遇差の説明を求められたら、必ず書面で答える必要がありますか。
A. 書面は必須ではなく、資料を使った口頭説明でも構いません。ただし、説明すべき事項をすべて記載した資料を交付する方法も認められています。口頭の場合も、資料の交付が望ましいとされています。待遇差の内容と理由を、職務内容や配置の範囲に沿って整理し、園長以外の担当者も同じ説明ができるようにしておくと、どちらの方法でも落ち着いて対応できます。
Q2. 職員数が50名以下の園でも、10月の改正への対応は必要ですか。
A. 待遇差の説明と労働条件の明示は、規模に関係なく必要です。一方、社会保険の加入要件には事業主の規模があり、現時点で51人以上とされています。数え方は事業主単位のため、法人全体の人数で判断します。複数園を運営する法人は、園ごとではなく法人全体で見る点に注意してください。判断に迷うときは、年金事務所または社会保険労務士に確認してください。
Q3. 正規職員だけに支給している手当を、パート職員にも払う必要がありますか。
A. 手当の目的によります。目的がパート職員にも当てはまるのに、職務内容などの違いに応じた均衡のとれた取り扱いをしない場合は、不合理と判断される可能性があります。今回のガイドライン改正では住宅手当や家族手当にも考え方が示されました。支給目的と対象者の範囲を整理し、迷う場合は社会保険労務士などの専門家に相談してください。
Q4. 処遇改善等加算は、パート職員の賃金にも使えますか。
A. 加算の賃金改善の対象は全職員とされていますが、区分や施設類型で要件が異なります。区分3は副主任保育士や職務分野別リーダー等が対象です。自園への適用は、自治体の保育担当部署が示す最新の算定要領で確認してください。企業主導型保育事業や認可外保育施設は別の制度で運営されるため、実施機関や自治体の資料で確認してください。
Q5. 社会保険に入ると、勤務時間を減らしたいと言う職員が出そうです。どう対応しますか。
A. まず、加入による手取りの変化と将来の保障を、試算を示して丁寧に説明します。そのうえで、本人の希望と人員配置の両方を踏まえて、シフトに穴をあけない体制を話し合います。短時間勤務の職員が増えても、子どもの安全を守る配置が保てるかも確認します。勤務時間の調整を理由に不利益な評価をしないことも大切です。個別の判断は、社会保険労務士など専門家と進めてください。
出典・参考情報/留意事項
- 厚生労働省・都道府県労働局「パートタイム・有期雇用労働者に関するルールが変わります(令和8年10月1日施行)」 https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001698017.pdf
- 厚生労働省 Webマガジン「2026年10月からパートタイム・有期雇用のルールが変わります―3つの改正ポイント」(2026年8月3日) https://www.mhlw.go.jp/web_magazine/column/20260803.html
- 日本年金機構「2026(令和8)年10月に社会保険の短時間労働者に係る賃金要件が撤廃されました」(2026年10月1日更新) https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/jigyosho/2026/202610/100104.html
- 厚生労働省「厚生労働省関係の主な制度変更(令和8年10月)について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_76324.html
- 厚生労働省「全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました」(2026年9月3日) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_75950.html
- こども家庭庁「令和7年度以降の処遇改善等加算について」(2025年10月6日付資料) https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/3a1576c7-071d-4325-8be8-edced6d12ee1/e9e424a2/20251006_policies_kokoseido_146.pdf
- 留意事項:本記事は行政上の確定事項(施行済みの改正)と、HRCの提案を区別して記載しています。法令の個別判断、社会保険の加入判定、税務は、社会保険労務士・弁護士・税理士・年金事務所・自治体の保育担当部署にご確認ください。表中の計算は説明用の単純計算であり、成果や金額を保証するものではありません。
まとめ
2026年10月1日の改正により、パート・有期職員を雇う園には、待遇差の説明を求められる旨の明示と、求められたときの説明が義務として加わりました。社会保険の賃金要件も撤廃され、週20時間前後で働く職員の加入可否の再確認が欠かせません。
対応の基本は、手当・賞与・休暇・退職金の目的を言葉にし、職務内容と責任の違いを役割段階として等級や評価に表すことです。通知書の改訂から始め、待遇の一覧化、規程への反映、本人面談へと進めれば、専任の人事担当者がいない園でも整えられます。
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