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医療法人の分院展開を成功に導く分院長の評価制度|売上至上主義を防ぐマネジメントとインセンティブ設計
医療法人の分院展開やサテライトクリニックの開設は、地域における経営規模を拡大し、より多くの患者様に質の高い医療を提供するための非常に大きな一歩です。多角的な経営基盤を確立することで、法人全体の安定性は飛躍的に高まります。
しかし、複数の拠点を統括する理事長先生を最も深く悩ませるのが、「分院長(雇われ院長)」のマネジメントです。「売上ばかりを追いかけて本院の理念を完全に無視する」「経営者としてのコスト意識が低く、いつまでも赤字体質から脱却できない」「スタッフへの当たりが強く、離職が止まらない」。これらの問題は、決して分院長個人の性格や資質だけが原因ではありません。多くの場合、法人が提示している「評価の物差し」や「インセンティブ(報奨金)の仕組み」に根本的な構造的欠陥が潜んでいるのです。
分院長は、優れた専門知識を持つ医師であると同時に、一つの拠点を預かり、スタッフの生活を背負う「経営層」でもあります。一般の勤務医を評価する基準で彼らを測ることは不可能です。本コラムでは、ガバナンス(組織統治)の強化と経営理念の浸透を両立させるための、「分院長特化型」の人事評価およびインセンティブ制度の設計方法を徹底的に解説します。売上至上主義の罠に陥ることなく、本院と同じクオリティの医療と接遇を提供し続ける自律的な分院体制をいかに築くか。経営基盤を強固にする仕組みづくりの極意を、専門家の視点から詳しくお伝えします。
1. 分院展開の成否は「分院長の評価と処遇」で9割決まる
医療法人が分院を展開する際、最新の医療機器を揃え、集患の見込める好立地の物件を選ぶことは確かに重要です。それ以上に経営の明暗を分けるのが「誰にその分院を任せるか」、そして「その分院長を組織としてどう評価し、処遇(給与や賞与)を決定するか」という人事戦略です。本院から離れた場所にある分院では、理事長先生の目がどうしても届きにくくなります。その独立した空間において、分院長がどのような意識で日々の診療や組織運営を行うかが、分院の命運、ひいては医療法人全体の社会的信用を決定づけます。
なぜ「売上連動型インセンティブ」だけで失敗するのか?
分院の立ち上げ初期や、新規拠点の売上を早期に軌道に乗せたい時期に、多くの医療法人が安易に導入しがちなのが「売上連動型インセンティブ」です。これは、「分院の医業収益(または自費診療の売上)の〇%を、そのまま分院長の給与や賞与に上乗せする」という極めてシンプルな仕組みです。
一見すると分院長のモチベーションを即座に高める合理的な方法に思えます。この指標単独に依存した処遇設計は、高確率で組織の内部崩壊を招きます。そこには大きく分けて3つの致命的なリスクが存在します。
- ① 医療の質の低下と患者離れ(レピュテーションリスク):
売上だけが自分の懐(ふところ)に直結する状態に置かれると、分院長は無意識のうちに「単価の高い自費診療や不要な検査を過剰に勧める」「患者様一人ひとりの丁寧な診察や説明よりも、とにかく効率重視で診察人数をこなす」といった行動に走りやすくなります。短期的な数字は上がりますが、長期的には患者様の不信感を買い、クリニックの評判(レピュテーション)を落とす最大の原因になります。 - ② スタッフの激しい不満と離職(マネジメント放棄):
分院長が売上という数値目標ばかりに執着すると、現場で働く看護師や医療事務スタッフに極度の無理を強いるようになります。「休憩時間を削ってでも予約を限界まで詰め込む」「スタッフへの丁寧な指示やケアを怠り、高圧的な態度で業務のスピードアップを迫る」といった事態が常態化します。結果として、分院のスタッフが次々とメンタル不調に陥り退職してしまい、現場は常に人手不足による機能不全に陥ります。 - ③ 突然の独立・顧客(患者)の引き抜き:
売上連動型インセンティブによって巨額の報酬を手にした分院長は、「この分院の売上は、法人ブランドではなく自分の実力だけで成り立っている」という過信を抱きがちです。ある日突然、「すぐ近くで自分で開業するので辞めます」と言い出し、分院の優秀なスタッフや、カルテに登録されている患者様を大挙して引き連れて独立してしまうという、理事長先生にとって最悪のシナリオを自ら誘発することになります。
本院と分院で生じる「経営理念のパラドックス」
分院展開におけるもう一つの大きな障壁が、「経営理念が分院の現場まで伝播しない」という問題です。本院では、理事長先生自身が背中を見せ、日常的にスタッフへ直接言葉をかけることで、「患者様に寄り添う」「地域に根ざした誠実な医療を提供する」といった理念が自然と組織文化として染み込んでいます。
分院長として外部から採用された医師は、それぞれ異なる医局や病院で独自の経験を積んできた強烈な「プロフェッショナル」です。彼らには、彼らなりの「医療観」や「仕事の流儀」がすでに確立されています。ここに明確な評価の枠組みがないと、分院長は本院の理念を軽視し、分院を「自分の好みの城」に作り変えてしまいます。本院と分院で、受付の接遇レベルが全く異なったり、診療の方針に矛盾が生じたりすると、医療法人グループとしての確固たるブランドイメージは一瞬で失墜します。
これを防ぐのが、人事評価制度という「組織の統治システム(ガバナンス)」の導入です。「当医療法人では、どのような価値観を持つ医師を高く評価し、どのような具体的な行動を求めているのか」を、評価制度を通じて揺るぎないメッセージとして伝え続けなければなりません。
2. 分院長に求めるべき「3つの評価軸」の緻密な設計方法
では、分院長が「経営者意識」を強く持ちつつ、本院の理念を厳格に守り、かつ安定した業績を継続的に上げるためには、どのような評価基準を構築すればよいのでしょうか。人事コンサルタントの視点から、絶対に外すことのできない「3つの評価軸」の設計方法を提案します。
【業績成果】医業収益だけでなく、リピート率やコスト管理の視点
分院長は一つの拠点を預かるトップですから、当然ながら業績に対する重い責任を持ちます。ただし、前述した「売上総額だけを見る」という危険な罠に陥らないよう、指標を多角化し、健全な経営努力を評価するバランス化を図ります。
- リピート率(再診率): 初診の患者様が、その後どれだけ継続して通院してくれているか。これは「分院長の診察内容や接遇が、患者様に心から支持されているか」を示す、最もごまかしのきかない誠実な数値指標です。
- 紹介数・口コミ評価: 既存の患者様が家族や友人にそのクリニックを紹介してくれた数、あるいはGoogle等のネット上での良好な口コミの状況。これらは、地域社会における信頼度の明確なバロメーターになります。
- コスト管理(経費抑制の意識): どれだけ高い売上を叩き出しても、医薬品や診療材料の無駄遣いが散見されたり、スタッフの不要な残業代(人件費)が野放図に膨らんでいたりしては、経営は全く成り立ちません。「分院が最終的に生み出した利益(売上マイナス各種経費)」に対する強い責任を持たせ、予算の範囲内で健全に組織を運営する視点を評価します。
【組織マネジメント】分院スタッフの定着率、1on1の実施状況
外部から招聘された分院長に最も欠けがちであり、かつ理事長が最も厳しく教育しなければならないのが「部下の管理と育成」というマネジメントスキルです。どれだけ手術や診断が上手い名医であっても、周りのスタッフを疲弊させ、組織をボロボロにしてしまう医師は、分院のリーダーとしては完全に不適格です。
- 分院スタッフの定着率(離職率の抑制): 自身の任期中に、看護師や事務スタッフが何名辞めたかを直視させます。離職率が低いということは、分院長がスタッフにとって心理的安全性の高い働きやすい環境を作り、強固な信頼関係を築けている明白な証拠として高く評価します。
- 1on1面談の実施状況と質: 分院長が、分院のスタッフ一人ひとりと定期的(月1回程度)に「1on1(ワンオンワン)」と呼ばれる対話の時間を設けているか。スタッフの個人的な悩みやキャリアの希望に真摯に耳を傾け、組織のトップとしての精神的なサポートを行っているかを、面談の実施記録などを通じて厳格に評価します。
【理念・コンプライアンス】本院の方針遵守、医療安全への取り組み
医療法人全体としてのブランド価値と患者様の安全を徹底的に守り抜くため、ガバナンスに関する項目を評価の最重要の柱に据えます。ここで機能するのが「人事制度運用マニュアルの作成」に基づく統一基準です。
- 本院の方針・決定事項の遵守度: 医療法人の理事会で決定されたルールや、グループ共通で導入されたシステム、診療プロトコルに分院長自らが率先して従い、分院のスタッフを正しい方向へリードしているか。「本院の決めたルールはうちの現場には合わない」などと批判し、独断でローカルルールに走る行動は、組織の統制を乱すものとして厳しくマイナス評価とします。
- 医療安全とインシデント報告の透明性: 分院内で起きた軽微なミスやヒヤリハットを隠蔽せず、本院の安全管理委員会へ迅速かつ正確に報告し、再発防止策を自らの責任で講じているか。ミスを完全にゼロにすることではなく、「オープンにしてみんなで仕組みを改善する姿勢」をこそ高く評価します。
3. 優秀な分院長を惹きつけ、定着させる「賃金・インセンティブ体系」
上記の評価基準を整えたら、それをどのように「給与」や「賞与」という目に見える報酬の形に結びつけるかが次の極めて重要なステップです。医師という高度な専門職であり、かつ経営者でもある彼らのモチベーションを長期的に最大化する処遇の仕組みを解説します。
基本給と変動給(賞与・インセンティブ)の黄金比率
分院長の給与体系を設計する際、極端な「成果主義(フルコミッションに近い不安定な形)」も、逆に「完全な固定給(どれだけ頑張っても報酬が変わらない形)」も、どちらも組織づくりにおいて失敗に終わります。生活の安心感を担保しつつ、経営努力が正当に報われる「黄金比率」を意識する必要があります。
人事コンサルタントとして私たちが医療法人にお勧めしている標準的な比率は、【基本給 70% : 変動給(業績・評価連動賞与) 30%】です。
- 基本給(7割): 医師としての一般的な市場価値や、これまでの臨床経験、預かる分院の規模(診療チェア数や病床数、スタッフの人数)に応じたベースとなる手厚い固定給です。ここが安定していることで、分院長は目先の売上増減に一喜一憂せず、落ち着いて腰を据えた本質的な医療を提供することができます。
- 変動給(3割): 半年に1回、あるいは1年に1回の「賞与」のタイミングで支給する、評価と完全に連動した報酬です。ここを計算する際、前述の「3つの多角的な評価軸」を掛け合わせます。
【新しいインセンティブの計算イメージ】
単なる「売上の〇%」ではなく、
『 分院の獲得利益(ベース額) × 「業績評価係数」 × 「マネジメント評価係数」 × 「理念・コンプライアンス評価係数」 』
というように、売上以外の組織貢献項目がすべて基準を満たして初めて、満額の高いインセンティブが支払われる算式にします。
この仕組みにより、分院長は「スタッフを大切に育成し、本院のルールを遵守しながら利益を上げることが、最終的に自分の報酬を最大化する唯一の方法だ」と理屈で正しく理解するようになります。
中長期的なロイヤルティを高める「退職金・キャリアパス」の提示
分院長が数年でノウハウだけを吸収して辞めてしまう、あるいは近隣で独立してしまうことへの最大の経営的防衛策は、「この医療法人グループに長く在籍し続けることの圧倒的なメリット(中長期的なロイヤルティ)」を、人事の処遇の中に深く組み込んでおくことです。
- 明確なキャリアパスの提示: 「一拠点の分院長」でキャリアが頭打ちになるのではなく、将来的に法人がさらに拡大した際には「統括院長(エリアマネージャー)」として複数分院を束ねるポジションや、医療法人の「理事・役員」として経営の中枢に参画できるシートが用意されていることを、人事制度運用マニュアルの作成を通じてキャリアの道筋として明文化します。
- 資産形成・退職金制度の手厚い優遇: 組織への在籍年数が長くなるほど、法人からの退職金の積立額が非線形に有利になる仕組み(企業型確定拠出年金や、医療法人特有の生命保険スキームの活用など)を強力に導入します。「今すぐ辞めてリスクを背負って独立するよりも、この法人で10年、15年とキャリアを積み、強固な経営基盤の上で高い役職に就く方が、人生全体の生涯年収と社会的ステータスがはるかに高くなる」というリアルなシミュレーションを明確に示すことが、優秀な医師の引き留め(リテンション)に絶大な効果を発揮します。
4. 事例:評価制度の標準化で3分院を軌道に乗せた医療法人
ここで、分院長向けの人事評価制度を抜本的に刷新したことで、複数拠点のガバナンス構築に見事に成功した実際の事例をご紹介します。
【近畿地方:医療法人G(皮膚科・美容皮膚科展開)のケース】
理事長先生は、本院の大成功をベースに、過去3年間で2つの分院を立て続けに開設しました。2つの分院の運営は、それぞれ対極の深刻な課題に直面していました。
- 分院A: 売上は非常に高く推移しているが、分院長が強烈な売上至上主義で、看護師やカウンセラーへの当たりが強くスタッフの離職が続出。患者様からの強引な勧誘に対する接遇クレームも多発。
- 分院B: 分院長が非常に温厚でスタッフ仲は良好だが、経営者としての意識が乏しく、新患を増やす工夫やコスト削減を全くしないため、毎月数十万円規模の赤字が継続。
理事長先生は、各分院の状況に一喜一憂し、休診日である毎週末にそれぞれの分院へ赴いては注意をして回るという、心身ともに限界に近い生活を送られていました。
【コンサルタントの介入と実施した施策】
当社のコンサルタントが伴走支援に入り、既存の「売上だけのインセンティブ」を全廃し、「分院長専用・多角評価マネジメント制度」を設計・導入しました。
- 評価項目の3軸化によるカスタマイズ: 分院Aの院長には「スタッフ離職率の徹底的な低下」と「クレーム件数の半減」が達成できなければ、どれだけ売上を上げても賞与が大幅にカットされるペナルティ要素の強い仕組みを適用。分院Bの院長には「ホームページ経由の初診予約数」「人件費率の適正化」といった具体的な業績目標(MBO)を数値で握り合わせました。
- 評価基準の「標準化」: 本院で長年培われた質の高い接遇や診療フローをすべてマニュアル化し、それが分院で厳格に実施されているかを、本院の事務長が定期的に「監査」する仕組みを作りました。これにより、分院長の主観や甘えを排除しました。
- 2年間の伴走サポート: 最初は「なぜ今さらこんな細かい評価ルールに従わなければならないのか」と猛反発した分院Aの院長に対し、当社のコンサルタントが何度も個別面談を重ね、「先生の医師としての素晴らしい技術を、より多くのスタッフに受け継ぐための組織的なステップなのです」と、根気強く意識改革を促しました。
【結果】
導入から1年半後、分院Aではスタッフの離職がピタリと止まり、チームワークが改善したことで、結果としてリピート率が飛躍的に向上し売上がさらに15%伸びるという想定以上の成果が出ました。分院Bでも、院長がコスト管理と積極的な増患対策に真剣に取り組むようになり、見事に単月黒字化を達成しました。
理事長先生は、週末に分院の見回りをすることから完全に解放され、本院での高度な専門診療と、法人全体の4つ目となる新しい分院の戦略立案に時間を集中できるようになりました。
5. 分院長評価制度の導入におけるメリット・デメリット
分院長向けの人事評価制度を整えることは、医療法人の成長にとって絶大なメリットをもたらしますが、同時に導入初期の負担や組織的なリスクも存在します。これらをしっかりと比較・理解しておくことが、制度を形骸化させないための前提条件となります。
| 視点・対象 | メリット(光の側面) | デメリット・リスク(影の側面) |
|---|---|---|
| 理事長 (経営層) |
・自分の目が届かない分院の状況を、客観的な数値と基準で把握し、リモートでもコントロールできるようになる。 ・売上至上主義による分院長の突然の独立や、スタッフの大量引き抜きリスクを大幅に激減できる。 |
・複雑な制度を設計・構築するための専門的な初期費用がかかる。 ・分院長一人ひとりと、目標設定や評価のフィードバック面談を行うための時間を定期的に確保する負担が生じる。 |
| 分院長 (当事者) |
・単なる「雇われ医者」ではなく、法人を支える「経営のパートナー」としての自覚と誇りが芽生える。 ・何を頑張れば自分の報酬やキャリアが上がるのかが論理的に明確になり、強い納得感を持って働ける。 |
・単に診察室で患者だけを診ていれば良いという、気楽な働き方ができなくなる。 ・スタッフの離職防止や経費削減など、組織全体の責任を負うプレッシャーが生じる。 |
| 組織・患者様 |
・本院と同じクオリティの医療と接遇がすべての分院で標準化され、法人のブランド価値が確固たるものになる。 ・スタッフの定着により医療安全が強化され、患者様がいつでも安心して通える環境が整う。 |
・制度の導入初期において、本院からの「縛り」が強くなったと感じた分院長から、一時的な反発や不満の声が出る可能性がある。 |
6. 人事コンサルタントが答える分院長マネジメントFAQ(5選)
対応策としては、まず「激変緩和措置(移行期間)」を十分に設けることです。「最初の1年間は、新しい制度での評価をテスト運用とし、実際の給与や賞与は従来の仕組みで全額保障する」という形で段階的に進めます。その期間中に、新しい評価の狙いを理事長から直接丁寧に説明し、「売上だけでなく、スタッフの育成やコスト削減を行えば、新しい制度でもこれだけの報酬が手に入る」という安心感を具体的な数字(シミュレーション)で見せることが、反発を抑え意識を変えさせる唯一の方法です。
基準が曖昧な医療法人では、「理事長の気分やその時々の匙加減で給与やボーナスが決まるのではないか」という強い不安を抱かせるため、かえって採用が難航します。面接の段階で堂々と、「当法人では、先生の医師としての技術だけでなく、チームをまとめる力、経営的な視点も人事制度運用マニュアルの作成を通じて正当に評価し、将来は理事としての道も用意しています」と評価シートとキャリアパスを提示することで、他院との圧倒的な差別化になり、志の高い優秀な医師を惹きつける最強の武器になります。
これを防ぐためには、事務長の役割を「評価を下す人」ではなく、あくまで「客観的な事実やデータを集める人(監査役)」として明確に位置づけることです。「事務長の主観で点数をつける」のではなく、「マニュアル通りに1on1が実施されているか」「インシデント報告の件数はいくつか」という事実だけを淡々と集計します。そして、それをもとに「最終的な評価の決定とフィードバック面談は、理事長先生(同じドクターであり経営トップ)が直接行う」というフローを徹底してください。この形であれば、分院長のプライドを傷つけることなく、スムーズに運用できます。
親族だからという理由で甘い基準で分院を任せていると、その分院長は「経営の本質」や「スタッフの泥臭いマネジメント」を学べないまま、やがて本院の理事長という重責を引き継ぐことになります。周囲の一般スタッフや他の勤務医から見て、「親族だから特別扱いされている」という不満(不公平感)が溜まると、医療法人全体の組織が内側から腐食していきます。将来の経営トップとして立派に育てるためという「大義名分」を持ち、客観的な基準で厳しく遇することが、本人のためであり法人の存続のためになります。
具体的には、「期限通りに部下の評価シートの提出を完了したか」「毎月の1on1を指定回数確実に実施したか」という「マネジメント義務の遂行度」という項目自体を評価(点数化)の対象にします。「どれだけ売上を上げていても、部下の管理という『分院長としての義務』を果たさなければ、自身の評価(賞与)が確実に下がる」というルールを徹底することで、サボる経済的な理由はなくなります。マネジメントは「時間が余ったらやる仕事」ではなく、「日々の診療と同じくらい重要な本業」であるという強烈な意識改革が必要です。
7. 医療法人の分院マネジメントに関わる用語集
- ガバナンス(組織統治): 医療法人が、経営理念やコンプライアンス(法令遵守)に則って不正を抑止し、健全かつ効率的な組織運営を法人全体に行き渡らせるための管理・統制の仕組みのこと。
- 売上連動型インセンティブ: あらかじめ設定した売上目標や、個人の医業収益の金額に応じて、比例的に報酬(給与や歩合給)が増減する仕組み。短期的な爆発力はあるが、医療の質の低下や組織崩壊のリスクも伴う。
- 1on1(ワンオンワン): 上司(分院長)と部下(スタッフ)が、職場の信頼関係構築や成長支援を目的に、定期的(月1回〜隔週など)に行う、1対1の対話の時間のこと。単なる業務報告ではなく、本人の悩みやキャリアプランを共有する重要な場。
- MBO(目標管理制度): 組織の経営目標と個人の目標を連動させ、半年や1年などの期間ごとに「達成すべき具体的な目標」を設定し、その達成度合いで客観的に人事評価を行うマネジメント手法。
- 激変緩和措置: 人事制度運用マニュアルの作成や賃金体系を大きく変更する際、スタッフの給与が急激に減少して生活やモチベーションに支障が出ないよう、一定の移行期間を設け、手当などで差額を補填・調整する制度上の配慮のこと。
8. まとめとご相談:盤石な組織体制で次なる飛躍を
医療法人の分院展開を成功させ、地域社会に貢献する永続的な経営基盤を築くための鍵は、分院長を単なる「売上を作る雇われ医師」として放置せず、明確な評価基準を持って「経営のパートナー」へと本気で育てることに他なりません。理事長先生の熱い思いが詰まった経営理念、そして本院が長年培ってきた医療の質を分院へ正しく受け継ぐためには、属人的な感情や力関係に頼らない、客観的で公平な「人事評価・賃金制度という名の堅牢なシステム」が不可欠です。
複雑に絡み合う医療現場の人間関係や、医師というプロフェッショナル特有の高いプライド、さらには法的な労務リスクをすべて考慮しながら、これほど高度な制度を理事長先生お一人で設計し、分院長を説得して運用していくのは、途方もない労力と孤独を伴う険しい道のりです。
私たちヒューマンリソースコンサルタント(HRC)は、医療機関に特化した人事制度構築の専門家として、貴法人のブランドを守り、分院長が自律的に成果を上げるための「分院長特化型マネジメント評価制度」を完全請負で設計いたします。
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そのような強い思いや経営への不安をお持ちの理事長先生、まずは一度、私たちにその胸の内をお聞かせください。貴院が築いてきた素晴らしい医療の価値を次の拠点へと広げ、医療法人全体の輝かしい未来を、共にデザインしていきましょう。
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