男女間賃金差異とは?女性活躍推進法の公表義務と見方をわかりやすく解説
用語が注目される背景
男女間賃金差異は、採用、配置、勤続年数、役職、労働時間などに関係する企業の雇用管理の状況を確認する指標です。従来、常時雇用する労働者が301人以上の一般事業主には男女間賃金差異の情報公表が義務付けられていました。2025年(令和7年)6月11日に公布された改正法と関係省令の改正により、2026年4月1日から、この義務が101人以上の一般事業主に拡大され、女性管理職比率も必須の公表項目となりました。
数値の大小だけで自社の女性活躍の状況を評価するのではなく、勤続年数、職種、管理職登用などの背景を分析し、必要に応じて説明を添えることが重要です。
制度・仕組み・構成要素
- 公表義務の対象:常時雇用する労働者が101人以上の一般事業主。100人以下は女性活躍に関する情報公表が努力義務です。
- 公表する3区分:全労働者、正規雇用労働者、非正規雇用労働者(パート・有期雇用労働者など)。
- 算定の基本:男女別の賃金総額を各区分の人員数で除して平均年間賃金を求め、女性の平均年間賃金を男性の平均年間賃金で除して100を乗じます。
- 対象となる賃金:原則として労働の対償として支払う基本給、手当、賞与などを含みます。退職手当や実費弁償的な通勤手当などは、男女共通の取扱いで除外できる場合があります。
- 公表の方法:厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」への掲載が推奨されます。自社ホームページ等への掲載も可能です。
- 初回の公表時期:2026年4月1日以降に最初に終了する事業年度の実績を、事業年度終了後おおむね3か月以内に公表します。その後もおおむね毎年1回以上、最新の数値を公表します。
男女間賃金差異の計算方法
例えば、男性の平均年間賃金が500万円、女性の平均年間賃金が400万円の場合、男女間賃金差異は80.0%です。公表する数値は小数点第2位を四捨五入し、小数点第1位まで表示します。これは男性と女性の平均賃金の割合であり、個人間の賃金差額そのものではありません。
公表項目数は企業規模によって異なる
| 常時雇用する労働者数 | 公表内容 |
|---|---|
| 301人以上 | 男女間賃金差異・女性管理職比率の必須2項目に加え、「機会の提供」と「両立環境の整備」の各区分から1項目以上ずつ。合計4項目以上。 |
| 101~300人 | 男女間賃金差異・女性管理職比率の必須2項目に加え、上記2区分の選択項目から1項目以上。合計3項目以上。 |
| 100人以下 | 女性活躍に関する情報公表は努力義務。 |
「常時雇用する労働者」の考え方
人数を判定する際は、正社員という名称だけでなく、期間の定めなく雇用される者、または有期雇用で過去1年以上継続雇用されている者・雇入れ時から1年以上継続雇用が見込まれる者などを含めます。パート・契約社員・アルバイトも条件に該当すれば含まれます。昼間学生のアルバイトなど、企業規模の判定に含まれない例があるため、対象者の確認が必要です。
なお、企業規模の判定に含まれない従業員であっても、実際の情報公表における賃金集計の対象となることがあります。人数判定と賃金差異の算定対象を混同しないようにしてください。
「管理職」の定義
女性管理職比率の対象となる管理職は、厚生労働省の基準による「課長級」および「課長級より上位の役職(役員を除く)」です。課長級は、通常「課長」と呼ばれる職位で2係以上の組織または本人を含め10人以上の組織の長などを指し、役職名が異なっても職務内容と責任が課長級に相当する者を含む場合があります。会社が独自の管理職呼称だけで集計対象を決めるのは適切ではありません。
初回公表時期の例
| 事業年度の終了日 | 初回公表の目安 |
|---|---|
| 2026年4月30日 | 2026年7月末ごろまで |
| 2026年12月31日 | 2027年3月末ごろまで |
| 2027年3月31日 | 2027年6月末ごろまで |
類似用語との違い
| 用語 | 内容 |
|---|---|
| 男女間賃金差異 | 男性の平均年間賃金を100としたときの女性の平均年間賃金の割合。女性活躍推進法の情報公表項目。 |
| 女性管理職比率 | 厚生労働省の基準に該当する管理職(課長級以上・役員除く)に占める女性労働者の割合。 |
| 同一労働同一賃金 | 正規雇用労働者と短時間・有期雇用労働者等との間の、不合理な待遇差の禁止に関するルール。 |
| 男女同一賃金の原則 | 労働基準法第4条に基づき、女性であることを理由とする賃金上の差別的取扱いを禁止する原則。 |
男女間賃金差異に開きがあることだけで、直ちに違法な性別差別が認定されるわけではありません。一方、性別を理由とする賃金の差別的取扱いは労働基準法第4条との関係で別途検討する必要があります。
人事労務上のメリット
- 男女別の賃金や職位の分布を可視化し、制度運用上の課題を発見しやすくなる
- 求職者や従業員に対し、女性活躍に関する状況と取組を客観的な指標で示せる
- 等級制度、評価制度、配置、育成、昇格・登用の基準を点検する機会になる
実務上の課題・注意点
賃金差異の計算には、男女別の賃金総額、人員数、雇用区分などのデータをそろえる必要があります。正規雇用労働者には短時間正社員も含まれます。また、派遣労働者の賃金差異は原則として派遣元事業主が算定し、派遣先事業主の対象には含めません。
集計対象の賃金には、原則として賞与・手当も含みます。退職手当や通勤手当等を除外する場合は男女共通の取扱いとし、除外した手当の名称等を注記することが望まれます。パート労働者の人員数を労働時間により換算する場合は、その旨を必ず注記します。
公表時には対象となる事業年度を記載します。該当者がいない区分では、厚生労働省の示す方法に従って「-」を記載します。公表する数値に差がある場合も、勤続年数、職種、雇用形態、管理職構成、労働時間などの背景を分析し、必要に応じて説明を加えることが有効です。
中小企業における活用方法
101人以上の企業では、義務としての数値公表にとどまらず、同じ等級・職種・勤続年数における処遇や管理職登用の実態も分析すると、人事制度の見直しに役立ちます。
100人以下の企業でも、採用や事業拡大で義務対象になる可能性があります。賃金台帳と社員情報の整合を早めに確認しておくことは、将来の情報公表や賃金制度の点検にもつながります。
導入・対応手順
- 常時雇用する労働者の数を確認し、公表義務の有無を判断する
- 公表対象の事業年度と初回公表時期を確認する
- 男女別・雇用区分別の賃金総額と人員数を集計する
- 厚生労働省の基準に従って管理職該当者を確認する
- 全労働者・正規雇用・非正規雇用の3区分で賃金差異を算出する
- 女性管理職比率と企業規模に応じた追加の公表項目を集計する
- 対象期間・必要な注記を添え、データベースや自社ホームページ等に公表する
- 数値の背景と改善課題を整理し、等級・評価・昇格制度の運用に反映する
確認チェックリスト
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 常時雇用する労働者が101人以上か、雇用形態と継続雇用期間から確認したか |
| 算定区分 | 全労働者・正規雇用・非正規雇用の3区分に分けているか |
| 賃金 | 基本給・手当・賞与を含め、除外項目の取扱いを男女共通にしているか |
| 人員数 | 男女共通の算定方法を使用し、労働時間換算を行った場合は注記しているか |
| 管理職 | 厚生労働省の課長級以上の定義に照らして集計したか |
| 公表 | 公表時期、対象年度、追加項目、必要な注記を確認したか |
よくある質問
Q. 男女間賃金差異があると、法律違反になりますか。
公表した割合に開きがあるだけで、直ちに法令違反となるわけではありません。ただし、女性であることを理由とした賃金の差別的取扱いは、労働基準法第4条で禁止されています。公表指標と個別の賃金差別は区別して確認してください。
Q. 男女間賃金差異は、いつから101人以上の企業に公表義務が生じましたか。
2026年(令和8年)4月1日です。301人以上の企業では、それ以前の2022年7月から男女間賃金差異の公表が義務化されていました。
Q. パート・有期雇用労働者の賃金差異も公表しますか。
はい。全労働者、正規雇用労働者、非正規雇用労働者の3区分で算出し、公表します。パート・有期雇用労働者は非正規雇用区分に含まれます。
Q. 女性管理職比率の「管理職」は、会社の役職規程で決めてよいですか。
いいえ。公表に当たっては、厚生労働省が示す「課長級以上(役員を除く)」の基準に従って判断します。役職名称が同じでも、組織構成や職務・責任により該当性の確認が必要です。
Q. 支店・営業所ごとに公表すればよいですか。
原則として、一般事業主である企業単位で公表します。本社だけでなく、支店・営業所の労働者も含めて集計します。企業グループの連結ベースのみの公表では代替できません。
Q. 公表する数値に説明を添えることはできますか。
はい。厚生労働省は、数値の背景や課題、改善への取組などの補足情報を説明欄に掲載することを推奨しています。ただし、法定の算定方法による公表を、独自の調整済み数値に置き換えることはできません。
まとめ
男女間賃金差異とは、男性の平均年間賃金に対する女性の平均年間賃金の割合です。2026年4月1日から、常時雇用する労働者が101人以上の一般事業主に、男女間賃金差異と女性管理職比率の公表が義務付けられました。
賃金差異は全労働者・正規雇用・非正規雇用の3区分で算出します。公表に当たっては、正式な算定方法、管理職の定義、公表時期と注記事項を確認し、数値の背景を分析して人事制度の改善につなげることが重要です。
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関連記事・関連サービス
公的情報源・参考資料
- 厚生労働省「女性活躍推進法特集ページ」(2026年改正後の情報公表・管理職の定義)
- 厚生労働省「男女の賃金の額の差異の算出及び公表の方法について」(2026年2月18日最終改正)
- 厚生労働省「男女間賃金差異の解消に向けて」(算定資料・解説・Q&A)
- 千葉労働局「女性活躍推進法について」(初回公表時期・必要項目数)
- 令和8年度民間企業における女性活躍促進事業「よくあるご質問」(対象人数・管理職・算定方法)
- e-Gov法令検索「労働基準法」第4条(男女同一賃金の原則)
※本記事は2026年10月18日時点の公的情報を基に作成しています。各社の公表対象年度、管理職該当者、算定の前提事項は、最新の厚生労働省資料と個別の実態に照らして確認してください。
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