育児時短就業給付金とは?対象者・支給額・育児休業給付との違いをわかりやすく解説
用語が注目される背景
育児休業から職場に戻る際、育児と仕事を両立するために勤務時間の短縮を希望する従業員がいます。短時間勤務によって賃金が減少する場合の経済的支援として、雇用保険に育児時短就業給付金が設けられました。出生後休業支援給付金とともに、2025年4月1日から始まった制度です。
事業主にとっては、法令に基づく育児短時間勤務制度の運用だけでなく、対象者の受給資格確認、賃金台帳などの整備、申請期限の管理も重要になります。
制度・仕組み・構成要素
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度開始 | 2025年(令和7年)4月1日 |
| 対象となる子 | 原則として2歳未満の子 |
| 対象となる労働者 | 子を養育するため1週間の所定労働時間を短縮して働く、雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者で、受給要件を満たす人 |
| 基本の支給率 | 支給対象月に支払われた賃金が育児時短就業開始時賃金月額の90%以下の場合、その賃金の10% |
| 賃金が90%超100%未満 | 給付金と賃金の合計が時短開始前の賃金を超えないよう、支給率を調整 |
| 賃金が100%以上 | 原則として不支給 |
| 支給限度額 | 484,121円(2026年8月1日から2027年7月31日までの適用額)。支給対象月の賃金と給付額の合計が限度額を超える場合は調整 |
| 最低限度額 | 算定した支給額が2,562円以下の場合は不支給(同期間の適用額) |
| 申請手続 | 原則として事業主を経由して申請。被保険者本人が希望する場合は本人による申請も可能 |
| 提出先 | 事業所の所在地を管轄するハローワーク。電子申請も可能 |
支給限度額や最低限度額は原則として毎年8月1日に改定されます。実際の給付額は賃金や支給対象月の要件などによって異なります。
受給資格の基本条件
2歳未満の子を養育するために所定労働時間を短縮して働くことに加え、次のいずれかの条件を満たす必要があります。
- 育児休業給付の対象となる育児休業から引き続き、同じ子について育児時短就業を開始したこと
- 育児時短就業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数11日以上の完全月(11日以上の月がない場合は賃金支払基礎時間80時間以上の完全月)が12か月以上あること
「育児休業から引き続き」には、育児休業終了後の復職日から時短就業を開始する場合だけでなく、育児休業終了日と時短就業開始日の間が14日以内の場合も含まれます。
各月の支給要件
受給資格があるだけでは、毎月必ず支給されるわけではありません。原則として、支給対象月の初日から末日まで被保険者であること、その月に育児時短就業した期間があること、その月の全期間について育児休業給付・介護休業給付を受給していないこと、高年齢雇用継続給付の受給対象となっていないことなどが必要です。
週20時間未満の取扱い
短縮後の週所定労働時間が20時間未満となる場合は、原則として雇用保険の被保険者資格を喪失するため、給付の対象になりません。ただし、子が小学校就学の始期に達するまでに週20時間以上へ復帰することが、就業規則や労働条件通知書などの書面で確認できる場合には、例外的に被保険者資格を継続できる取扱いがあります。口頭の約束だけでは足りません。
類似用語との違い
| 用語 | 制度の目的・対象 | 主な違い |
|---|---|---|
| 育児時短就業給付金 | 2歳未満の子を養育するために所定労働時間を短縮して働く被保険者への給付 | 就業しながら受ける経済的支援。賃金額に応じて支給額が変わる |
| 育児休業給付金 | 要件を満たす育児休業を取得した被保険者への給付 | 休業中の所得保障が中心。原則として休業開始前賃金の67%、所定の期間経過後は50%などの仕組み |
| 出生後休業支援給付金 | 一定の出生直後の期間に、本人と配偶者の育児休業取得などの要件を満たす場合の追加給付 | 要件を満たす育児休業等について、所定の期間を上限に休業開始時賃金日額の13%相当額を追加支給 |
| 育児短時間勤務制度 | 3歳未満の子を養育する労働者について、事業主が原則1日6時間の措置を含めて設ける制度(法定の例外等あり) | 会社が設ける勤務制度。給付金はこれとは別の雇用保険制度で、対象は原則2歳未満 |
育児短時間勤務制度を利用している全員が給付金の対象になるわけではありません。また、パートタイム労働者や短時間正社員への転換であっても、子の養育のために従前の週所定労働時間を短縮したことなどが確認でき、受給要件を満たせば対象になる場合があります。
支給額の計算例
育児時短就業開始時賃金月額が30万円で、ほかの支給要件を満たす場合の単純な例です。
| 支給対象月に支払われた賃金 | 開始時賃金に対する割合 | 給付額の例 |
|---|---|---|
| 200,000円 | 約66.7% | 20,000円 |
| 240,000円 | 80% | 24,000円 |
| 270,000円 | 90% | 27,000円 |
| 300,000円以上 | 100%以上 | 原則として不支給 |
90%を超え100%未満の場合は支給率が調整されます。また、支給限度額・最低限度額等による調整があります。なお、賃金の判定では、原則として支給対象月に実際に支払われた賃金を用います。給与の締日・支払日、時間外手当なども確認が必要です。
人事労務上のメリット
- 短時間勤務による収入減少の一部を補い、従業員の復職と継続就業を支援できる
- 育児中の従業員への制度案内を通じて、離職防止と人材定着を進めやすくなる
- 短時間勤務の賃金・評価・賞与の取扱いを見直す機会になる
実務上の課題・注意点
実際の就業時間ではなく所定労働時間の短縮を確認する
単に欠勤・早退した結果、実際の労働時間や賃金が減っただけでは、原則として育児時短就業には該当しません。フレックスタイム制では、清算期間の総労働時間を短縮しているかが重要です。総労働時間を変えずに勤務しなかった時間を欠勤控除するだけの場合は、対象になりません。
賃金・賞与・評価の取扱いを適正にする
育児短時間勤務により実際に働かなかった時間に対応する賃金を支払わないことは、原則として禁止される不利益取扱いには該当しません。一方、短縮した時間を超える賃金・賞与の減額や、制度を利用したことのみを理由とする不利益な人事評価・昇進上の取扱いは、育児・介護休業法上の問題となります。
給付金の額と会社の賃金を区別する
育児時短就業給付金は雇用保険から支給されるもので、会社が支払う賃金ではありません。会社が賃金を補填すると、支給対象月の賃金額によっては給付額が減少し、または不支給となる場合があります。
中小企業における活用方法
育児短時間勤務に関する申出窓口を明確にし、制度利用開始前に、週所定労働時間、時短開始日、賃金の取扱い、給付金の申請方法を従業員と確認しておくことが重要です。人員配置や業務分担を調整しながら、他の従業員も含めて公平な評価ルールを運用できるようにします。
導入・対応手順
- 従業員の子の年齢、雇用保険の被保険者資格、育児休業取得状況を確認する
- 時短前後の週所定労働時間、時短開始日、復帰予定を確認し、書面に記録する
- 育児休業からの継続要件、または開始前2年間の被保険者期間等の要件を確認する
- 週20時間未満の場合は、雇用保険の資格継続に関する例外要件を確認する
- 必要に応じて「雇用保険被保険者休業開始時・所定労働時間短縮開始時賃金証明書」などの書類を準備する
- 「育児時短就業給付受給資格確認票・(初回)育児時短就業給付金支給申請書」などを提出する
- 初回の支給申請は、最初の支給対象月の初日から起算して4か月以内を目安に期限管理し、以後も指定された期限までに申請する
- 時短勤務中の賃金・賞与・評価の取扱いを、就業規則・賃金規程等と照合する
提出書類は、育児休業給付から引き続き時短就業を開始したかどうかなどによって異なります。2026年8月以降の手続見直しも踏まえ、最新の厚生労働省パンフレットと管轄ハローワークの案内を確認してください。
確認チェックリスト
| 確認項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 対象者 | 2歳未満の子を養育する一般被保険者または高年齢被保険者か |
| 受給資格 | 育休からの継続要件、または過去2年間の賃金支払基礎日数・時間数の要件を満たすか |
| 所定労働時間 | 育児のために週所定労働時間を短縮していることを確認できるか |
| 週20時間未満 | 資格喪失の原則と、復帰予定を書面で確認できる例外を検討したか |
| 支給対象月 | 月ごとの被保険者資格、他の雇用保険給付の受給状況などを確認したか |
| 賃金 | 支給対象月に実際に支払った賃金、給与の締日・支払日を把握したか |
| 申請 | 必要書類と初回申請期限を確認し、担当者を決めたか |
| 人事制度 | 基本給・賞与・評価で違法な不利益取扱いが生じないか |
よくある質問
Q. 育児時短就業給付金は、いくら支給されますか。
支給対象月に支払われた賃金が育児時短就業開始時賃金月額の90%以下なら、原則としてその賃金の10%です。90%を超え100%未満の場合は支給率が調整され、100%以上の場合は不支給となります。支給限度額・最低限度額等も適用されます。
Q. 何歳までの子が対象ですか。
原則として2歳未満の子を養育するための時短就業が対象です。育児・介護休業法上の短時間勤務制度は原則として3歳未満の子を対象とするため、給付金の対象年齢とは異なります。
Q. パートタイム労働者や短時間正社員も対象になりますか。
なり得ます。雇用区分だけで決まるのではなく、雇用保険の被保険者資格、子の養育のための所定労働時間の短縮、受給資格などを満たすかで判断されます。
Q. 週所定労働時間を20時間未満に短縮した場合も対象ですか。
原則として対象外です。ただし、子の小学校就学の始期までに週20時間以上に戻る前提が就業規則等の書面で確認できる場合は、例外的に対象となる余地があります。
Q. 育児休業終了後、少し時間を空けて時短勤務を開始しても対象ですか。
育児休業給付の対象となる育児休業を終えた後、同じ子について14日以内に育児時短就業を開始した場合は、育児休業から引き続き開始したものとして扱われます。
Q. 育児休業を取得せずに時短勤務を始めた場合も対象ですか。
育児時短就業開始前2年間の賃金支払基礎日数・時間数などの受給資格要件を満たす場合は、対象になり得ます。育児休業の取得そのものがすべての場合の必須条件ではありません。
Q. フレックスタイム制で労働時間が減った場合は対象ですか。
清算期間の総労働時間そのものを育児のために短縮した場合は対象になり得ます。総労働時間を変更せず、働かなかった時間を欠勤控除するだけでは原則として対象になりません。
まとめ
育児時短就業給付金は、2歳未満の子を養育するために週所定労働時間を短縮して働く雇用保険の被保険者への経済的支援です。給付額は原則として賃金の10%ですが、受給資格、月ごとの支給要件、賃金額による調整、支給限度額などを確認する必要があります。
事業主は、短時間勤務の申出内容と賃金データを整え、申請期限を管理するとともに、育児・介護休業法に反しない賃金・評価制度を運用しましょう。
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関連記事・関連サービス
公的情報源・参考資料
- 厚生労働省「育児休業等給付について」(2026年8月改訂の資料、各種様式への案内)
- 厚生労働省「育児時短就業給付の内容と支給申請手続」(2026年8月1日時点版)
- 厚生労働省「Q&A~育児休業等給付~」(2026年8月版)
- 厚生労働省「短時間勤務等の措置」
- 厚生労働省「育児・介護休業法に関する指針」(不利益取扱いに関する説明)
制度説明は2026年10月18日時点の公表資料に基づきます。支給限度額・最低限度額は毎年8月に見直されるため、申請時点の最新額をご確認ください。
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