「労働者の健康保持増進」の在り方が検討中。中小企業が人事制度で備えるべきこと
2026年8月5日、厚生労働省の「事業場における労働者の健康保持増進の在り方に関する検討会」(第4回)で、報告書案について引き続き検討が進められました。まだ確定した制度ではありませんが、健康診断の実施だけでなく、職場全体での健康づくりを事業者の取り組みとして位置づける方向性が示されつつあります。人手不足が続く中、社員が心身ともに健康に働き続けられる職場かどうかは、採用力や定着率にも直結する経営課題です。本記事では、この検討の背景と、中小企業が人事制度の観点から今から準備できることを分かりやすく解説します。
労働者の健康保持増進措置とは?
労働者の健康保持増進とは、健康診断だけでなく、心身の健康づくりや職場環境改善を継続的に進める考え方です。
2026年8月5日、厚生労働省の「事業場における労働者の健康保持増進の在り方に関する検討会」(第4回)で報告書案が議論されました。この検討会は2026年6月から複数回にわたって開催されており、健康診断の事後措置にとどまらず、事業者が日常的な健康づくりにどう関わるべきかという、より広い視点での議論が重ねられています。第3回の検討会資料では、健診結果を踏まえた二次予防の推進や、事業者による自主的な取り組みを後押しする方向性も示されました。報告書はまだ案の段階ですが、今後の労働衛生行政の方向性を占ううえで、経営者や人事担当者が押さえておきたい動きといえます。
人事制度との関係
健康施策を福利厚生だけで考えるのではなく、残業時間、業務負荷、上司のマネジメント、休暇取得、人員配置などと合わせて確認することが重要です。健康診断の結果だけを見ていても、なぜ社員の体調不良や休職が増えているのかという根本的な原因までは見えてきません。健康診断はあくまで「結果」を測る仕組みであり、その結果が生まれる過程である働き方そのものに目を向けなければ、本質的な改善にはつながらないのです。
特に、慢性的な長時間労働や、特定の社員に業務が偏っている状態は、健康問題の温床になりやすい典型的なパターンです。人事制度の設計段階から、労働時間管理や人員配置の見直しを組み込むことで、事後対応ではなく予防的な健康管理へとつなげることができます。管理職の評価項目に部下の労働時間や休暇取得状況への配慮を含めることも、組織全体で健康を支える体制づくりの一助となります。
中小企業の実務対応
- 長時間労働の状況を把握する
- 有給休暇の取得状況を確認する
- 管理職が部下の業務負荷を確認する
- 健康問題が発生した場合の相談経路を明確にする
- 人事評価で過度な成果偏重になっていないか確認する
専任の産業保健スタッフを置くことが難しい中小企業でも、上記の項目は特別な設備投資をせずに着手できるものばかりです。まずは自社の現状を数値や事実で把握し、どこから手をつけるべきかの優先順位をつけることから始めることをお勧めします。既に把握している勤怠データや有給休暇の取得率を、部署別・役職別に見直すだけでも、これまで気づかなかった偏りが見えてくることがあります。
よくある質問
Q. 健康経営と同じですか?
関連しますが、同一の概念ではありません。健康経営は、社員の健康管理を経営的な視点から捉え、企業の成長戦略の一環として位置づける考え方として、経済産業省が主導する枠組みで広く使われています。一方、今回検討されている「労働者の健康保持増進」は、労働安全衛生法に基づく事業者の取り組みを軸とした、より実務的で広い概念として整理されています。両者は目指す方向性が近いものの、根拠となる法律や制度の枠組みが異なるため、自社がどちらの文脈で施策を検討しているのかを意識しておくと、社内での説明もしやすくなります。
Q. 小規模企業でも必要ですか?
はい、企業規模にかかわらず重要です。健康確保と働きやすい職場づくりは、人材の定着や採用競争力に直結する要素であり、従業員数の多い少ないで必要性が変わるものではありません。むしろ、一人ひとりの負担が経営に与える影響が大きい小規模企業ほど、体調不良による長期離脱や退職の影響は深刻になりがちです。産業医の選任義務がない小規模な事業場であっても、地域産業保健センターなどの外部資源を活用しながら、無理のない範囲で健康管理の仕組みを整えていくことが現実的な対応となります。
Q. 人事評価と関係がありますか?
あります。過度な成果目標の設定や、長時間労働そのものを暗に評価してしまう仕組みになっていないかを確認することが重要です。例えば、残業時間の多さや休日出勤を「頑張りの証」として評価に反映してしまうと、社員は健康を犠牲にしてでも働こうとする動機づけが生まれてしまいます。評価制度の設計段階で、成果だけでなく、業務の進め方や労働時間の適正さも合わせて確認する仕組みを組み込むことで、健康を損なわずに成果を出す働き方を後押しする評価運用につなげることができます。
まとめ
社員の健康管理は、健康診断だけで完結するものではありません。人員配置、労働時間、管理職のマネジメント、評価制度まで総合的に見直すことで、離職防止や生産性向上にもつながります。有限会社ヒューマンリソースコンサルタントでは、中小企業の実情を丁寧にヒアリングしたうえで、人事制度と職場運営を一体的に整理する支援を行っています。制度を導入して終わりにするのではなく、運用を続けながら課題を一つずつ解消していく伴走型のサポートを大切にしています。「健康管理まで手が回らない」「制度はあるが形骸化している」といったお悩みがあれば、お一人で抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。貴社の状況に応じた、無理なく続けられる仕組みづくりを一緒に考えてまいります。
情報確認日:2026年8月10日
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