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保育園・認定こども園向け 労務管理コラム
保育園の男性育休・産後パパ育休対応ガイド
育児・介護休業法への対応、代替職員の確保、残された職員の評価・手当設計まで、園長・経営者・人事担当者が押さえるべき実務をわかりやすく解説します。
この記事の結論
保育園で男性育休を円滑に運用するには、制度説明だけでなく、取得者本人・代替職員・残された職員の3者を同時に守る仕組みが必要です。
- 法対応: 妊娠・出産の申出を受けたら、個別の制度説明と取得意向確認を確実に行う。
- 人員対応: 産後パパ育休の取得時期を事前調整し、代替職員・パート職員・シフト調整を組み合わせる。
- 評価対応: 育休取得者を不利益に扱わず、カバーした職員の貢献を評価・手当で見える化する。
近年、保育業界において男性保育士の比率が確実に高まっています。子どもたちにとって多様な大人と関わる機会が増えることは非常に喜ばしい変化ですが、それに伴い、経営陣が直面している新たなマネジメント課題が「男性の育児休業(産後パパ育休)」への対応です。
度重なる法改正により、現在では小規模な園であっても職員に対する「個別の意向確認」が厳格に義務化され、国を挙げて男性育休の取得が強力に推進されています。法律上は正しい権利の行使であっても、常にギリギリの配置基準で日々のシフトを回している保育現場においては、突然の男性職員の育休取得は「現場への急激な負担増」という重い現実を突きつけます。適切な労務管理と評価の仕組みが整備されていない園では、残されてカバーに入る女性職員から「なぜ男性が育休を取るの?私たちの負担ばかり増えてずるい」といった深刻な不満が噴出します。これは単なる愚痴に留まらず、職場の雰囲気を悪化させるパタハラ(パタニティハラスメント)の温床となり、最悪の場合は組織の分断と連鎖的な離職を招きかねません。
本コラムでは、最新の育児介護休業法を正しく解説した上で、育休代替要員を確保するための公的補助金の賢い活用法や、残された職員の業務負担を正当に評価し報いる人事システムの構築法を解説します。法改正を単なる「義務」として片付けるのではなく、男性も女性もライフイベントを乗り越え安心して働ける「先進的な園」としてのブランドを確立し、採用力を高めるHRC(ヒューマンリソースコンサルタント)ならではの実践的手法をお届けします。経営者や人事担当者の皆様が、制度の本質を理解し、現場に笑顔をもたらすための具体的な処方箋です。
目次
- この記事の結論
- 1. 【2026年対応】育児・介護休業法の改正点と保育園が行うべき実務
- 2. 男性保育士の育休取得で起きやすい現場リスク
- 3. 経営者が取るべき代替職員確保とコスト管理の実務
- 4. 【HRC流】育休取得者とカバー職員の双方を守る人事評価制度
- 5. メリット・デメリット比較(先進園 vs 形式園)
- 6. 【事例】男性育休の導入を機に「イクメン推奨園」として大躍進したケース
- 7. 保育園の男性育休・産後パパ育休に関するFAQ
- 8. 人事コンサルタントからの専門的アドバイス:経営者の「器」が試される時
- 9. 採用・人事用語集(育児介護休業法編)
- 10. まとめ:誰もが安心して命を育める園へ
1. 【2026年対応】育児・介護休業法の改正点と保育園が行うべき実務
2025年4月に大きな節目を迎えた育児介護休業法の改正は、2026年現在、すべての保育法人の運営において「完全に無視できない最重要ルール」として定着しています。人事に詳しくない園長先生や主任先生でもしっかりと実務に落とし込めるよう、まずは法改正の正確な中身と、男性保育士の育休を巡るリアルな数字を整理します。
1-1. 従業員数300人超法人の公表義務化と、全園で必要な個別周知・意向確認
今回の法改正における最大の変更点は、これまで大企業(従業員数1,000人超)だけに義務付けられていた「育児休業取得率の公表」が、常時雇用する労働者数が300人を超える事業主(法人)にまで拡大された点です。
複数の園を展開している中規模以上の保育法人であれば、この「300人」というラインにはすぐに到達します。自法人のウェブサイトなどで、男性・女性それぞれの育休取得実績を毎年公表しなければならず、もし取得率が著しく低い場合や「ゼロ」が何年も続いている場合は、求職者から「あの法人は古い体質だ」「子育て支援の場なのに、自らの職員の育休には冷たい」という厳しい評価を下される重大な採用リスクを負うことになります。
さらに、法人の規模に関わらず、すべての保育園に厳格に義務付けられているのが「個別周知・意向確認」の実務です。職員(またはその配偶者)が妊娠・出産することを知った場合、園側は以下の対応を「必ず」個別に実施しなければなりません。
- 育休制度に関する情報提供: 産後パパ育休などの仕組み、休業中の社会保険料免除、育児休業給付金について、書面や面談で正確に説明する。
- 取得意向の確認: 「いつから、どのくらいの期間、育休を取得しますか?」という意思を明確に確認する。
「うちの園は人手が足りないから、本人から言い出さない限り泳がせておこう」という消極的な対応は、明確な法律違反として行政指導の対象となります。園長や主任の側から、対象となる男性保育士に対して積極的にアプローチする義務があるのです。
1-2. 産後パパ育休(出生時育児休業)の基本構造を押さえる
男性の育休取得のハードルを劇的に下げ、柔軟な取得を可能にしたのが「産後パパ育休」という制度です。従来の育休とは全く別の枠組みで取得できるもので、その特徴は以下の通りです。
- 取得期間: 子どもの出生後8週間以内に、最大4週間(28日間)まで取得可能。
- 分割取得: 事前にまとめて園に申請すれば、4週間の枠を2回に分割して取得できる。
- 申請期限: 原則として、休業を開始する日の2週間前まで(通常の育休は1ヶ月前)。
【産後パパ育休の分割取得スケジュール例】
- 1回目(出生直後): 退院後の最も大変な1週間(7日間)を取得し、妻の回復と沐浴などをサポート。(その後、一度園の勤務に復帰し、シフトの穴埋め期間を設ける)
- 2回目(生後1ヶ月頃): 里帰り出産から自宅に戻るタイミングで、残りの3週間(21日間)を取得し、本格的な生活リズムを整える。
このように、園の行事予定(運動会や発表会など)や、他の職員のシフトの都合を考慮しながら、「この週とこの週だけ休む」という緻密な調整が可能です。経営者としては、「1ヶ月間丸々いなくなる」という従来の育休よりも、事前のシフト調整が非常にしやすい制度設計になっています。
1-3. 男性保育士の育休取得に備えて園が把握すべき実務データ
「男性保育士は本当に育休を取るのか」と疑問を持つ園もありますが、重要なのは業界平均の数字だけではありません。採用市場では、求職者が「育休制度の有無」だけでなく、男性職員の取得実績、休業中の代替体制、復帰後の評価ルールまで確認する傾向が強まっています。
そのため、園としては「取得率が高いか低いか」を受け身で見るのではなく、自園の過去実績、対象者数、取得希望者の有無、平均取得日数を毎年把握し、採用ページや求人票で説明できる状態にしておくことが重要です。特に、複数園を運営する法人では、男性育休の取得実績が採用広報・職員定着・行政対応のすべてに関わる経営指標になります。
【男性育休の実務上のポイント】
経営者として注目すべきは、取得率だけでなく「取得時期」と「取得期間」です。産後パパ育休は、子の出生後8週間以内に最大4週間まで取得でき、2回に分割して取得することも可能です。
つまり、園としては「長期間の代替要員を常に確保する」という発想だけでなく、「数日から数週間単位のシフト調整を、いかに計画的に、現場に不満を抱かせずに乗り切るか」という実務設計が重要になります。ここを正しく理解すれば、男性育休は決して恐れるものではありません。
2. 男性保育士の育休取得で起きやすい現場リスク
事前の準備やルール作りなしに男性職員から「育休を取りたいです」と言われ、慌てて制度だけを適用すると、園の人間関係と労働環境には致命的なひずみが生じます。
2-1. ①【パタハラとハラスメントリスク】無意識の一言が命取りに
園長先生や主任先生の中に、「男が育休なんて取るもんじゃない」「昔はみんな育休なしで働きながら育てた」「女の先生たちに迷惑がかかると思わないの?」という古い価値観が1ミリでも残っていると、それが言葉や態度に漏れ出します。これがパタハラ(パタニティハラスメント)の正体です。
【現場で実際に起きたパタハラの事例】
男性保育士のA先生が、園長に「産後パパ育休を2週間いただきたいです」と相談した際、園長が困った顔をしてこう言いました。
「取るのは法律で認められているから勝手だけどさ、A先生が抜けた2週間、誰が代わりに遅番をやると思って正社員のシフトを組めばいいの?みんなに申し訳ないと思わない?」
園長側としては「ただの愚痴」「シフトを心配する独り言」のつもりかもしれませんが、これは立派なハラスメントに該当します。法律上、育休の取得を理由とする「不利益な取り扱いや精神的な嫌がらせ」は厳格に禁止されています。もしA先生がこの発言を録音していた場合、園側は労働局から是正指導を受け、最悪の場合はハラスメントによる損害賠償請求をされる法的リスクを負います。また、A先生のような貴重な男性人材は、その瞬間に園への帰属意識を失い、育休復帰後に即座に退職してしまうでしょう。
2-2. ②【残された職員のエンゲージメント低下】「ずるい」という感情の暴発
男性保育士がスマートに育休を取得したとしても、残された女性職員へのフォローを怠ると、別の角度から組織が崩壊します。多くの保育園は、常にギリギリの人員(最低配置基準プラスアルファ)で日々の早番・遅番、担任業務、行事の実行委員会を回しています。そこに「常勤の男性保育士が1名、2週間抜ける」となると、そのシワ寄せは残された職員にダイレクトにのしかかります。
- 「A先生が休んでいる間、私の遅番の回数が週1回から週3回に急増して体がきつい」
- 「A先生のクラスの指導案のチェックや保護者対応を、隣のクラスの私がサービスで代わりにやっているけれど、私の給料は1円も上がらない」
このような状態が続くと、現場には「男だから育休が取れて、世間からイクメンって褒められていいよね。その裏でボロボロになって残業している私たちの犠牲の上に成り立っているのに、園長先生は私たちの頑張りを何も見てくれない」という猛烈な不満と嫉妬が渦巻きます。これが、男性育休推進の裏で起きる残された職員のエンゲージメント(愛着・やる気)の著しい低下です。この感情のケアを人事システムとして仕組化していない園は、男性育休の取得と引き換えに、複数名の優秀なベテラン女性職員を失うという大損害を被ることになります。
3. 経営者が取るべき代替職員確保とコスト管理の実務
現場の負担を物理的に減らし、園の金銭的負担(人件費)を最小限に抑えるための、人事コンサルタントが実践している3つの具体的労務実務を解説します。
【ステップ1】「育休代替職員確保加算」など公的補助金の正しい算定
「人が休むのに、代わりの人を雇うお金なんてない」と諦める必要はありません。認可保育園などの施設給付費(公定価格)には、職員の育休取得に伴う強力な補助金が用意されています。代表的なものが「育休代替職員確保加算(またはそれに準ずる自治体の独自加算)」です。
- 補助金の仕組み: 常勤の職員が育児休業(産後パパ育休を含む)を取得し、その休業期間中に、代替として非常勤保育士(パート等)を雇い入れた場合、その人件費相当額が園の保育報酬に上乗せして支給されます。
- 算定のポイント: この加算を確実に適用するためには、行政(市区町村の保育課)に対して「賃金改善計画書」や「代替職員の雇用契約書」「常勤職員の育休申請書」をズレなく期日通りに提出する必要があります。期間が「2週間」といった短期であっても、日割りや月割りで適正に補助金が支給されるケースが多いため、まずは「短期だから無理」と決めつけずに、自治体の最新の読み替え規定を確認することが重要です。
【ステップ2】派遣会社やパートを活用した、期間限定の「スポット代替シフト」
男性育休の多くが「2週間〜1ヶ月」という短期であるため、ハローワークで「期間:2週間」の正社員を募集しても、応募はまず来ません。ここでは以下の2つのアプローチでスポットの穴埋めを行います。
- アプローチA(派遣職員のピンポイント利用): 多少割高(地域・時期により単価は変動するものの、通常のパート採用より高めの時給)であっても、登録型の保育士派遣会社から「即戦力」となるフリーの有資格者を2週間限定で調達します。一時的に人件費は上がりますが、前述の「育休代替加算」の入金や、休む男性職員の分の人件費が浮いていることを考慮すれば、トータルの収支はほぼトントン(赤字にはならない)に収まります。
- アプローチB(既存パート職員の労働時間一時延長): 現在、園で週20時間働いている信頼できるパートの先生に事前に相談し、「A先生が育休を取る2週間だけ、特例として週30時間に勤務時間を延ばして、遅番の補助に入ってもらえませんか?」と依頼します。慣れ親しんだ先生がカバーしてくれるため、子どもたちや保護者への影響も最小限に抑えられます。
【ステップ3】育休中の「社会保険料免除」と「育児休業給付金」の正しい説明
お金の面で、経営者と休む本人の双方に莫大なメリットをもたらすのが、国の社会保険制度です。この仕組みを正しく職員に説明できるだけで、「物知りな頼れる園長先生」として求心力が一気に高まります。
① 社会保険料の「ダブル免除」のルール
職員が育休に入ると、その月の「健康保険料」と「厚生年金保険料」が、本人負担分・会社負担分の双方ともに全額免除されます。
- 経営者側のメリット: 休んでいる期間、園が毎月支払うべき多額の法定福利費(社保の半分負担)が「ゼロ」になります。これにより、代替職員を雇うための資金的な余裕が生まれます。
- 期間の注意点(2026年現行法): 産後パパ育休などで「同月内に14日以上」育休を取得した場合、その月の社会保険料が全額免除となります。そのため、男性保育士が育休を取る際は、「月をまたがずに、同じ月の中で14日間以上の休みを設定する」ようにシフトをアドバイスしてあげると、本人も園も最も手取り(キャッシュ)が残る賢い選択となります。
② 「育児休業給付金」で手取りの最大8割が保障される仕組み
「育休を取ると、その間の給料がなくなるから家のローンが払えない」と不安に思う男性保育士が非常に多いです。園からの給与は出ませんが、雇用保険から「育児休業給付金」が支給されることを丁寧に説明します。
- 支給額の基準: 産後パパ育休中は、一定の要件を満たすことで休業開始時賃金日額の67%相当額が出生時育児休業給付金として支給されます。
- 2025年以降の重要ポイント: 子の出生直後の一定期間に、本人と配偶者の双方が14日以上の育児休業を取得するなどの要件を満たす場合、最大28日間、13%相当額の出生後休業支援給付金が上乗せされ、給付率が80%となる場合があります。
- 手取りベースの考え方: 給付金は非課税であり、要件を満たせば社会保険料も免除されるため、給与額面だけでなく「実際の手取り」で説明することが大切です。
【給与と育休給付金の手取り比較シミュレーション】
- 通常勤務時:総支給額 25万円 ──(税金・社保引き)── 実際の天引き手取り:約20万円
- 育休取得時:園からの給与 0円 ── 出生時育児休業給付金(67%):16.75万円。要件を満たす場合は、出生後休業支援給付金の上乗せ対象となる可能性がある。
- ★結果:税金・社会保険料・給付金の要件を踏まえ、本人ごとに手取りシミュレーションを行うことが重要となる。
このように、制度の名称だけでなく「休んだ場合の手取り」「園側の社会保険料負担」「代替職員に使える予算」をセットで示すことが、男性保育士の不安を軽減し、園内の理解を得るうえで重要です。
※給付金・社会保険料免除・自治体加算は、取得時期、休業日数、就業の有無、法人・施設の状況によって取扱いが変わります。実際の申請前には、所轄の労働局、年金事務所、自治体担当課、社会保険労務士等への確認をおすすめします。
4. 【HRC流】育休取得者とカバー職員の双方を守る人事評価制度
どれだけ物理的な代替要員を確保しても、現場の職員が感じる「心理的な負担(引き継ぎの面倒さや、イレギュラーな動きへのストレス)」はゼロにはなりません。だからこそ、人事評価制度を使って、「仲間を送り出し、その穴をチームで守った職員」を誰よりも高く評価して報いる仕組みを導入します。
4-1. 評価の公平性:育休を取得したこと自体を評価でマイナスにしない
まず大前提として、育休を取得した男性保育士自身の評価ルールを整備します。「長期で休んで迷惑をかけたから、今期の評価は一律で最低ランクの『C』ね」といった運用は、育児介護休業法が禁じる不利益取扱いに該当する可能性が非常に高く、極めて危険です。
【HRCが推奨する期間比例計算(分母の調整)】
評価期間(半年間=6ヶ月)のうち、1ヶ月間育休を取得した場合、評価シートの「出勤率」や「成果項目」の算定期間を「5ヶ月分の分母」に縮小して計算します。5ヶ月間働いた中で、求められる役割(クラス運営や書類の提出)をしっかり果たしていれば、通常通り「A」や「B」の正当な評価をつけます。そして、賞与(ボーナス)の「算定月数(支給倍率)」だけを、休んだ期間(1/6)分だけ案分(按分)して支給するのが、法的に最も安全で、かつ既存職員の納得感も高い標準的なルールです。
4-2. 「他者サポート評価(コンピテンシー)」の新設でフォロワーを主役に変える
残された職員の不満を「感謝とモチベーション」に変える一撃が、この項目の新設です。評価シートの行動特性(コンピテンシー)の欄に、以下の項目を追加します。
【新設項目:チームレジリエンス・相互扶助(フォローアップ)】
S評価(極めて優秀):
同僚の育休取得や突発的な欠員に際し、自ら進んで担当外のクラスの引き継ぎや遅番のシフト調整を快く引き受け、園全体の運営の穴埋めに多大なる貢献をした。また、代替職員(パートや派遣)に対して自園の保育方針や一日の流れを優しく丁寧に指導し、園の保育の質が低下しないよう主体的にマネジメントした。
A評価(標準):
同僚の育休取得に伴う業務の割り振りに従い、自分の持ち分以上の業務(指導案の相互チェック、合同保育時の見守りなど)を文句を言わずに正確に遂行し、チームのピンチを支えた。
手当による即時還元(処遇改善等加算IIIの活用)
点数を上げて賞与に反映させるだけでなく、男性保育士が休んでいる2週間の間、代わりに遅番や主担任のバックアップに入ってくれた女性職員たちに対し、「チームサポート手当(または特別職務手当)」として、処遇改善等加算IIIから一時金(例:2週間で1万円〜2万円、またはシフト1回につき2,000円)をダイレクトに支給します。
これにより、現場の空気は以下のように180度変わります。
- 変更前の空気: 「またA先生のせいで私の仕事が増える。キツい、ずるい……」
- 変更後の空気: 「A先生、安心して赤ちゃんのお世話をしてきてね!その間は私たちがガッチリ園を守るし、頑張った分は園長先生が評価と手当でちゃんと報いてくれるから、やりがいがあるよ!」
「誰かが休むこと」を「誰かのチャンスと臨時の収入増」に変換する。この鮮やかな制度設計こそが、HRCが数々の保育現場で離職率を引き下げてきた、生きた人事制度のノウハウです。
5. 男性育休を仕組み化する園と形式対応の園の比較
男性育休に対して、法人として本気で推進・仕組み化する園(先進園)と、法律で義務付けられたからと形だけ、嫌々対応する園(形式園)の今後の費用対効果を、経営的視点からリアルに比較します。
| 比較項目 | ① 本気で推進・仕組み化する園(先進園) | ② 形式だけ、嫌々対応する園(形式園) |
|---|---|---|
| 採用力への影響 (求人票の武器) |
【絶大】 求人票に「男性育休取得実績あり(手取り補填・フォロー制度完備)」と堂々と記載可能。新卒・若手の保育士に対して、働きやすい園であることを具体的に伝えやすくなる。 | 【皆無】 求人票には「育休あり」としか書けず、他園に埋もれる。面接で「男性の取得実績は?」と聞かれて言葉に詰まり、意識の高い求職者から見限られる。 |
| 職員の定着率 (離職防止効果) |
【極めて高い】 「ライフイベントを迎えても、この園ならお互い様で守り合える」という強い安心感が生まれ、男女問わず20代〜30代のコア層の離職率が劇的に低下する。 | 【危険】 男性はパタハラで辞め、残された女性職員は過重労働と不公平感で辞めるという、最悪の「離職のドミノ倒し」が発生するリスクがある。 |
| 指導監査・ 法的リスク |
【リスクを抑えやすい】 個別意向確認の記録や、代替職員の常勤換算、加算の申請書類が完全に整備されているため、行政の監査を指導監査時にも説明しやすくなる。 | 【ハイリスク】 面談の不備や、ハラスメント発言、残された職員のサービス残業(不適切管理)が発覚し、労基署からの是正勧告や加算の返還命令を受ける恐怖が常につきまとう。 |
| 短期的な事務コスト | 代替職員の手配、就業規則の改訂、評価基準のチューニングなど、導入初期の労務エネルギーが必要(※HRCが完全請負可能)。 | 目先の事務作業は増えないが、突発的な欠員が出た際のシフト修正に、毎日園長や主任が頭を抱えて時間を奪われ続ける。 |
6. 【事例】男性育休の導入を機に「イクメン推奨園」として大躍進したF保育園のケース
私たちが実際に人事制度の刷新をお手伝いした、定員120名の私立認可保育園(男性保育士3名在籍)の実話です。
【導入前の課題】
20代後半の男性保育士(クラス担任・体育指導リーダー)の奥様が妊娠。本人は「本当は2週間くらい休んで妻を助けたいけれど、自分が抜けたら運動会の練習が進まなくなるし、先輩の女性の先生たちに『男のくせに楽して』と後ろ指を指されるのが怖くて、言い出せません」と、HRCの個別ヒアリングで涙ながらに本音を漏らしていました。園長も「気持ちは分かってあげたいが、残された職員が怒り出すのが目に見えている」と、対応を先送りにしていました。
【HRCが実施したコンサルティング内容】
- 「産後パパ育休・2週間完全分割シフト」の設計: 運動会のピークを避けた「出生直後(5日間)」と「里帰り復帰後(9日間)」の2回に分けた、園務に支障の出ないピンポイントの育休スケジュールを本人の合意のもと策定。
- チームサポート手当の支給ルールの新設: 彼が休む計14日間の間、代わりに遅番や合同保育のリーダーを引き受けてくれた他の職員(計4名)に対し、処遇改善等加算IIIを原資として、一律「2万円」の臨時の職務手当を支給することを事前に職員会議で発表。
- 園長による「ハラスメント・ゼロ宣言」説明会の開催: 「当園は子育てを支援するプロの集団。仲間の育児を全員で応援できない園に、地域の保護者を幸せにすることはできない。その代わり、応援してくれた先生たちの頑張りは、園が責任を持ってお金と評価で100%報いる」と園長自らが力強くプレゼン。
【結果】
周囲の女性職員たちの態度は一変。「手当が出るなら私が喜んで遅番代わるよ!」「今のうちに引き継ぎノート作っておこうね」と、職員室が信じられないほどの活気と温かさに包まれました。男性保育士は2週間、完璧に家族をサポートして満面の笑顔で復帰。保育へのモチベーションが爆発的に高まり、主任へのキャリアアップを目指して今も大活躍しています。さらに、この実績を求職者向けの採用サイトで「男性育休取得率100%・応援手当完備の園」として発信したところ、翌年度の新卒採用で、他園が苦戦する中で4名もの優秀な有資格者の採用に大成功。離職率は、この大改革以降、「3年連続0%」を更新し続けています。
7. 保育園の男性育休・産後パパ育休に関するFAQ
Q1. 男性保育士が「たった3日間だけ育休を取りたい」と言ってきました。こんなに短い期間でも、個別意向確認の書類を作ったり、社会保険料の免除の手続きをしなければならないのですか?
A1. はい、期間の長さに関わらず、法律で定められた「個別周知・意向確認」の実務は必ず行わなければなりません。 「3日だから口頭で済ませよう」は違法です。ただし、社会保険料の免除については注意が必要です。現行法上、同月内で「14日以上」育休を取得するか、もしくは「月末日に育休を取得しているか」が免除の条件となります。そのため、たった3日間の取得(かつ月末を含まない)の場合は、残念ながら社会保険料の免除は適用されません。本人と園のメリットを最大化するためにも、「せっかく取るなら、産後パパ育休を使って分割で計14日以上に延ばして、社保免除の恩恵を受けない?」と手取りシミュレーションを見せながら提案してあげるのが賢い視点です。
Q2. 男性保育士が育休中、園の行事(例えばどうしても外せない発表会の日など)に、1日だけ「臨時に出勤して手伝ってもらう」ことは法律上可能ですか? 給与はどうなりますか?
A2. 「産後パパ育休(出生時育児休業)」の期間中に限っては、労使が事前に合意した範囲内で部分的に就業することが法的に認められています。 これが従来の育休との大きな違いです。あらかじめ「この日の発表会の4時間だけ、時給○○円で働く」という労使協定を結んでおけば、出勤させることができます。その時間分の給与を園から支払い、育休給付金の額も、就業日数が一定枠内(休業期間中の4分の1以下など)であれば減額されずに満額支給されます。通常の育児休業期間中については、原則就業禁止ですので厳格な管理が必要です。
Q3. 定員19名の小規模園です。常勤の男性保育士が1名しかおらず、彼が抜けると「最低配置基準」を割ってしまいます。法律(育休の権利)と配置基準(児童福祉法)、どちらを優先すべきですか?
A3. 法的な結論から言えば、「どちらも100%満たさなければならない」というのが国のスタンスです。 「育休をあげるから配置基準割れは仕方ない」という言い訳は通用しませんし、「配置基準が割れるから育休は認めない」と突っぱねれば育児介護休業法違反で処分されます。このような極限状態の小規模園こそ、「育休代替職員確保加算」をフル活用し、地元のシルバー人材センターや小規模園向けの共同常勤保育士(巡回保育士)の仕組みを使って、1分1秒の配置の穴も空けない契約を「事前に」結んでおく(オンコール契約)必要があります。
Q4. 女性職員から「私は独身だから育休を取る予定もないのに、男性が休む分の穴埋めばかりさせられて不公平だ。基本給を上げてほしい」と直談判されました。基本給を上げるべきですか?
A4. 感情に流されて安易に「全員の基本給」を上げてはいけません。 一度上げた基本給を下げることは不利益変更禁止の原則により極めて困難であり、園の固定費を永久に圧迫します。正しい対応は、「基本給のベースアップ」ではなく、「期間限定の手当での明確な還元」です。「基本給を一律に上げることは約束できないけれど、仲間を助けてシフトをカバーしてくれた実績を、新しい人事評価の項目でしっかり最高点として評価し、今月の『チームサポート手当』として目に見える現金で100%還元するよ」と説明し、制度として提示することで不満を解消します。
Q5. 2025年4月からの法改正(育休取得率の公表義務化)を忘れており、ウェブサイト等への掲載をまだ行っていません。過去の実績が「ゼロ」の場合はどう書けばいいですか?
A5. 従業員数300人超の法人において、公表を怠っている場合は労働局からの「是正勧告」の対象となります。 今すぐ掲載すれば遅れに対するペナルティはありません。実績がゼロの場合、「男性育休取得率:0%」と正直に書くしかありませんが、その下に「【園の取り組み】当園では2026年より、男性保育士のライフイベントを応援するため、代替職員確保の手順をマニュアル化し、残された職員への『チームサポート手当』を新設しました。対象者が出た際は取得率100%を達成できるよう環境整備を進めています」という前向きな注釈を添えてください。これにより、求職者にポジティブな印象を与えることができます。
8. 人事コンサルタントからの専門的アドバイス:経営者の「器」が試される時
「男性保育士の育休なんて、うちのようなギリギリの経営をしている園では絵空事だ」――。そう思われる園長先生のお気持ちは、本当によく分かります。毎月のシフトを組むだけでもパズルのように大変なのに、そこに「男性の育休」という新しい不確定要素が加わるのですから、頭を抱えたくなるのが本音でしょう。しかし、あえて業界特化の人事コンサルタントとして、冷徹な経営の現実を真摯にお伝えさせていただきます。
2026年現在、少子化が限界突破し、出生数が70万人を割り込んでいるこの時代において、「職員のライフイベント(結婚・出産・育児)を犠牲にしなければ回らない経営モデル」を持つ園は、これからの5年間で間違いなく地域から選ばれにくくなります。なぜなら、いまの若い世代の保育士たちは、信じられないほど冷静に、そして横のつながり(SNSや口コミ)を使って、園の「本質」を見抜いているからです。
「あの園は、子どもを育てる場所なのに、自分の職員が子どもを産んだら嫌な顔をするらしいよ」。そんな噂がひとつ流れただけで、貴園の専門学校からの新卒推薦ルートは永遠に閉ざされます。男性育休を「押し付けられた義務」として嫌々対応するか、それとも「組織を近代化し、他園から優秀な人材を根こそぎ惹きつけるための最強の投資チャンス」として笑って迎え入れるか。これは、経営者であるあなたの「器(うつわ)」ひとつにかかっています。
現場の女性職員に「我慢してね」と丸投げしてはいけません。園長先生が先頭に立って、「国からのお金(加算・助成金)をガッチリ取ってきたから、カバーしてくれたみんなにはしっかりボーナスや手当で報いるよ。だから、安心して仲間を送り出してあげよう!」と、論理的で温かい「ルール(人事制度)」を見せてあげてください。経営者が職員を本気で守る姿勢(正義)を見せたとき、現場の不平不満は消え失せ、職員同士が家族のように支え合う、地域で圧倒的に選ばれる「最強の名門保育園」への扉が開かれるのです。
9. 採用・人事用語集(育児介護休業法編)
経営陣が共通言語として押さえておくべき重要用語を解説します。
- 産後パパ育休(出生時育児休業): 子の出生後8週間以内に4週間(28日間)まで取得できる、男性のための柔軟な育児休業制度。2回に分割して取得することが可能。
- パタハラ(パタニティハラスメント): 男性職員が育児休業などの制度を利用することに対して、上司や同僚が行う嫌がらせや不利益な扱い。法律で厳格に禁止されている。
- 個別意向確認・働きかけ: 職員やその配偶者の妊娠・出産を知った際、園側から個別に育休制度の案内と取得の意向を確認することが法律で義務付けられた実務。
- 育休代替職員確保加算: 職員が育休を取得した際、その代替となる保育士を配置した園に対して国や自治体から支払われる補助金(保育報酬の上乗せ)。
- 育児休業給付金: 育休期間中、雇用保険から休業前の賃金の67%(手取りベースで約8割)が職員本人に支給される公的給付金。非課税かつ社会保険料免除。
- コンピテンシー(行動特性): 高い成果(質の高い保育やチーム貢献)を上げている職員に共通して見られる、具体的な行動のパターンや特性。
10. まとめ:誰もが安心して命を育める園へ
2026年の少子化荒波を乗り越え、職員からも保護者からも愛される名門保育園を創るための「男性育休攻略ルート」は極めて明快です。
- 法改正のスケジュール(300人超法人の公表義務、個別意向確認)を適正に遵守する。
- 社会保険料の「14日以上免除ルール」を活用し、本人と園の金銭的メリットを最大化する。
- 「他者サポート評価」と「臨時手当」を新設し、残された職員を主役に変えて不満をゼロにする。
この3つの戦略がカチッと噛み合ったとき、貴園の男性育休は「お荷物」ではなく、他園との差別化につながる「採用ブランディングの武器」へと昇華します。
しかし、「自法人の従業員数のカウント方法や公表の文面がわからない」「就業規則の改訂や、育休代替加算の申請実務が複雑で間違えそう」「残された職員向けの評価項目をどう言葉にすればいいかわからない」と一人で悩まれる必要はありません。人事労務の専門的な法律知識と、保育現場の切実なシフト事情の両方を完全に理解していなければ、「生きた制度」にはならないからです。
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