現状分析・賃金シミュレーション
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サービス詳細を見る「年収の壁」178万円への引き上げで、家族手当・扶養控除の実務はどう変わる?
この記事でわかること
- 2026年分から所得税の「年収の壁」が178万円に引き上げられる制度の全体像
- 「税金の壁(178万円・136万円)」と「社会保険の壁(106万円・130万円)」の違い
- 家族手当・扶養手当の規程を見直す具体的な4ステップ
- 年末調整実務・従業員への説明で注意すべきポイント
結論:所得税の「年収の壁」は2026年分から178万円に、配偶者控除・扶養控除の判定基準も引き上げられるため、家族手当の支給基準や年末調整の運用を見直す必要があります
令和8年度税制改正により、給与所得控除の最低保障額と基礎控除が物価上昇に連動して引き上げられる恒久的な仕組みが導入されるとともに、2026年・2027年分については時限的な上乗せ措置が講じられます。この結果、所得税がかからない年収の上限(いわゆる「年収の壁」)は、2025年分の160万円から2026年分は178万円まで引き上げられます。あわせて、配偶者控除・扶養控除の対象となる配偶者・扶養親族の「合計所得金額要件」も58万円以下から62万円以下に引き上げられ、給与収入ベースでは123万円程度から136万円程度まで拡大します。
一方で、社会保険の「年収の壁」(106万円・130万円)は税制とは別の制度であり、2026年10月に106万円の壁の賃金要件(月額8.8万円以上)が撤廃され、週20時間以上働くかどうかが社会保険加入の基準になる予定です。130万円の壁についても、2026年4月以降は年間収入見込みではなく労働契約書に基づく判定に変更されます。「税金の壁」と「社会保険の壁」が別々に動くため、企業の実務対応はより複雑になります。
なぜ今、家族手当・扶養手当の見直しが必要なのか
家族手当の支給基準が「税法上の扶養」に連動している企業が多い
多くの中小企業では、家族手当・扶養手当の支給要件を「配偶者控除の対象であること(年収103万円または130万円以下)」のように税法・社会保険の基準に連動させて設計しています。年収の壁が178万円・136万円へと変わることで、これまで手当の支給対象外だった従業員が新たに対象に含まれる可能性があり、放置すると規程と実態が食い違ったまま運用されるリスクがあります。
年末調整・給与計算の様式が変わる
基礎控除額・給与所得控除額の引き上げに伴い、源泉徴収税額表や年末調整の計算方法、扶養控除等申告書の記載内容が改定されます。月次の源泉徴収への反映は2027年1月以降となる見込みで、年末調整(2026年12月)で精算されるタイミングにズレが生じるため、従業員への説明を誤ると「なぜ今月の手取りが変わらないのか」といった問い合わせが増える可能性があります。
「働き控え」の心理的ハードルが変わり、シフト調整の希望が変化する
パート・アルバイト従業員の「年収を抑えたい」という就業調整意識は、税法上の壁より社会保険上の壁(106万円・130万円)の影響が大きいとされています。所得税の壁が178万円に広がっても、社会保険料負担が発生する106万円・130万円のラインを意識する従業員が引き続き多いため、採用計画やシフト設計は社会保険の壁を軸に検討する必要があります。
実務対応ステップ
ステップ1:自社の家族手当・扶養手当の支給規程を確認する
就業規則(賃金規程)で家族手当の支給基準がどのように定義されているか(「税法上の扶養親族であること」「年収103万円以下」等、具体的な金額が明記されているか)を確認します。金額が明記されている場合は、税制改正に自動連動しないため、規程改定が必要です。
ステップ2:支給対象者の増減による人件費影響を試算する
配偶者控除・扶養控除の判定基準拡大により、新たに家族手当の対象となる可能性がある従業員をリストアップし、年間の追加人件費を試算します。
ステップ3:規程改定を行う(不利益変更に注意)
支給基準の金額を引き上げる分には基本的に従業員に有利な変更のため、比較的スムーズに改定できます。ただし、財源確保のために家族手当自体を縮小・廃止する方向で見直す場合は、労働条件の不利益変更にあたるため、労働者の同意取得や合理的な代替措置(基本給への振替等)の検討が必要です。
ステップ4:従業員への周知・説明資料の準備
「年収の壁は178万円になったが、社会保険の壁(106万円・130万円)は別に存在する」という点は従業員にとって非常に分かりにくいポイントです。壁ごとの一覧表や、扶養の範囲内で働きたい従業員向けのシミュレーション資料を用意し、年末調整前に周知することをおすすめします。
注意点・リスク
- 「178万円まで完全非課税」という誤解が広がりやすい点に注意してください。178万円は所得税の非課税ラインであり、住民税や社会保険料は別途発生します。
- 基礎控除の上乗せ部分(178万円のうち一部)は2026年・2027年の2年間限定の時限措置です。2028年以降は制度が変わる可能性があるため、恒久的な前提で規程を作り込みすぎないよう留意してください。
- 配偶者手当(家族手当)のあり方そのものについて、厚生労働省は「就業調整の要因になりうる」として企業に見直しの検討を促しています。単に金額基準を税制に合わせるだけでなく、将来的には「配偶者の収入にかかわらず一定額を支給する」「子の人数に応じた手当に切り替える」といった制度設計そのものの見直しも選択肢として検討する価値があります。
中小企業ならではの工夫
社労士・税理士との連携が薄い中小企業では、税制改正の情報が給与計算実務に反映されるまでにタイムラグが生じがちです。年末調整の時期(毎年11〜12月)に慌てないよう、6〜9月のタイミングで顧問社労士・税理士と規程・様式の確認を行うスケジュールをあらかじめ組んでおくことをおすすめします。
まとめ
「年収の壁」の178万円への引き上げは、パート従業員だけでなく、家族手当を受給する正社員にも影響する全社的なテーマです。税制上の壁と社会保険上の壁は別の制度である点を正しく理解したうえで、自社の手当規程・年末調整実務を早めに点検し、従業員への説明体制を整えておきましょう。
よくある質問
Q. 「年収の壁」は結局いくらになるのですか?
A. 所得税がかからない年収の上限(課税最低限)は、2026年分から178万円になります。あわせて配偶者控除・扶養控除の判定基準(合計所得金額要件)も引き上げられ、給与収入ベースではおおむね136万円程度まで拡大します。ただし住民税や社会保険料は別の基準で判定されるため、「178万円まで一切負担が発生しない」わけではない点にご注意ください。
Q. 社会保険の「106万円の壁」「130万円の壁」はどうなりますか?
A. 税制上の年収の壁とは別の制度です。106万円の壁(賃金要件)は2026年10月に撤廃され、週20時間以上勤務するかどうかが社会保険加入の基準になる予定です。130万円の壁は2026年4月以降、年間収入見込みではなく労働契約書に基づく判定に変わります。税金の壁と社会保険の壁は別々のタイミング・基準で動く点を従業員にも正しく説明する必要があります。
Q. 家族手当の支給基準は自動的に新しい基準に変わりますか?
A. 自動的には変わりません。就業規則・賃金規程に「年収103万円以下」等の具体的な金額が明記されている場合、税制改正に連動して自動的に基準が変わるわけではないため、企業側で規程の確認・改定を行う必要があります。
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