保育園のM&A・園統合に伴う「人事制度・給与体系の統合」完全マニュアル|職員の連鎖退職を防ぐ4つのステップ

少子化時代の保育園M&Aや園統合において、職員の連鎖退職を防ぎ組織を一つにするための「人事制度・給与体系の一本化」を人事コンサルタントが徹底解説。労働法上の留意点から処遇改善加算の配分統合、激変緩和措置(調整手当)の設計、個別合意面談の進め方まで網羅。

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    保育園のM&A・園統合に伴う人事制度・給与体系の統合マニュアル|職員の連鎖退職を防ぐ労務実務
    保育園経営者・人事担当者向け|M&A・園統合の労務実務

    保育園のM&A・園統合に伴う人事制度・給与体系の統合マニュアル

    給与体系、処遇改善加算、人事評価、就業規則のズレを整理し、職員の不安と連鎖退職を防ぐための実務ポイントを解説します。

    この記事の結論

    • 保育園のM&A・園統合では、給与・手当・処遇改善加算・評価基準の違いを個人別に可視化することが最初の重要課題です。
    • 労働条件が不利になる可能性がある場合は、調整手当や経過措置を設計し、就業規則の変更手続きと個別説明を丁寧に行う必要があります。
    • 統合後の評価制度は、片方の園のルールを押し付けるのではなく、双方の保育観と強みを反映した共通基準にすることで、職員の納得感を高められます。
    保育園M&A 園統合 給与体系統合 処遇改善加算 不利益変更対策 職員の連鎖退職防止

    2024年の出生数が初めて70万人を下回るなど、地域における園児の獲得競争が厳しさを増す中で、保育業界でも「法人の合併」「複数園の統合」「M&A(事業承継)」といった合流の動きが増えています。これらは過酷な少子化時代を生き抜くための戦略的な手段ですが、経営統合の現場では、経営者が予期せぬ「人事の大パニック」が頻発しています。

    最も深刻なのは、統合される側の園と統合する側の園の間で、基本給の水準、各種手当の支給条件、そして何より複雑な処遇改善加算の配分ルールや人事評価の基準が全く異なっているという問題です。これらを性急に、かつ安易に一本化しようとすると、労働契約法上の「不利益変更」に該当して深刻な法的トラブルに発展するばかりか、職員たちが「経営母体が変わったせいで給料のルールがブラックボックスになった」「前の法人のほうが職員を大切にしてくれた」と強い不信感を募らせ、現場の保育士が一斉に職場を去る「連鎖退職」の危機を招きます。

    本コラムでは、M&Aや園統合の際に必ずクリアすべき労働法の基礎知識から、既存職員のモチベーション低下をできる限り防ぐための「給与テーブルと人事評価の滑らかな統合実務」を、ステップを追って解説します。組織の激変期だからこそ強固な土台を固め、経営基盤を真に強靭なものにするための、経営者・人事担当者必読の完全統合マニュアルです。

    1. 保育園のM&A・統廃合における「労務管理」の法的基礎知識

    保育園の経営統合やM&Aを進める際、多くの経営者が財務面のデューデリジェンスや、園舎・土地といった資産の引き継ぎ、あるいは行政に対する設置者変更(認可手続き)に手一杯になってしまいます。しかし、組織統合において最も対応が遅れやすく、かつ一発で致命傷になりやすいのが「労務管理の法的な引き継ぎ」です。実務において絶対に押さえておくべき法的ルールを紐解きます。

    1-1. 労働契約法第9条・第10条に基づく「労働条件の不利益変更禁止の原則」

    経営統合にあたり、最も犯しやすい間違いが「二つの園の給与水準に格差があるから、高い方の園の給料を、低い方の園のテーブルに合わせて一律で引き下げる」という安易なコスト調整・均一化です。

    日本の労働法(労働契約法第9条)では、「労働条件の不利益変更禁止の原則」が厳格に定められています。これは、使用者が労働者と個別の合意を交わすことなく、就業規則を一方的に変更して、基本給や各種手当、休日数などの労働条件を労働者にとって不利な内容に変えてはならないという強力なルールです。

    労働契約法第10条には、就業規則の変更に「高度な合理性」があれば例外的に変更が認められるという規定もあります。しかし、この合理性は裁判等においても極めて厳しく審査されます。「法人が合併したから給与体系を早急に統一したい」「少子化に向けて人件費総額を抑えたい」といった経営側の都合(必要性)だけでは到底認められません。「不利益を相殺するための代償措置(例:基本給は下がるが、賞与の支給月数を増やして年収の総額を維持するなど)が十分に取られているか」「労働者代表や現場の職員との間で、十分な回数の丁寧な協議・説明が行われたか」といった多角的な要素が厳しく総合考慮されます。単なるトップダウンによる一方的な賃金カットは、法的に無効とされるケースがほとんどです。

    仮に強引な引き下げを強行した場合、職員から過去に遡って「未払い賃金の請求訴訟」を起こされるリスクを負うだけでなく、新経営陣に対する不信感は一瞬で頂点に達し、現場を支える中心的な保育士が揃って職場を去るような、経営破綻レベルの事態に直面することになります。

    実務上の注意: M&Aや園統合では、合併・事業譲渡・会社分割などの手法によって、労働契約や有給休暇、勤続年数、就業規則変更の進め方が変わります。制度を一本化する前に、労務デューデリジェンスと個別の移行シミュレーションを行うことが重要です。

    1-2. 吸収合併、新設合併、事業譲渡における「勤続年数」や「有給休暇」の引き継ぎ

    M&Aや統合の手法(法的な枠組み)によって、労働契約が新しい法人にどのように引き継がれるかという法的義務は大きく異なります。この実務上の違いを混同している担当者が非常に多いため、整理が必要です。

    ① 吸収合併・新設合併の場合(包括承継)

    法的な法人格そのものが一つに合一されるため、前の園で結ばれていた労働契約の一切(基本給、手当、勤務時間、職種など)が、法律上、個別の手続きなしに「そのまま自動的に新しい法人に丸ごと承継」されます。

    • 勤続年数・有給休暇: 当然、前の園での勤続年数はそのまま通算され、有給休暇の残り日数もすべて新しい法人へそのまま引き継ぐ法的な義務があります。「法人が変わったから、これまでの有給は一旦リセットしてゼロからスタートね」ということは法律上、絶対に不可能です。

    ② 事業譲渡(運営権の買い取り・設置者変更)の場合(個別承継)

    法人格の合一ではなく、個別の資産や特定の園の運営権のみを買い取る手法であるため、法的には「個別承継」となります。原則として、新しい法人が職員一人ひとりと「新しい雇用契約を結び直す(契約を巻き直す)」形になります。労働契約を承継するには、譲渡会社・譲受会社の合意だけでなく、職員本人の承諾が重要になります。

    • 実務上の落とし穴とトレンド: 法理上は「一度前の法人を退職し、新しい法人に再就職する」という形を取るため、建前としては有給休暇の日数や勤続年数を引き継がずにリセットすることも不可能ではありません。しかし、人手不足が極まる保育現場において「これまでの有給をカットします」「勤続年数はリセットなので全員新卒扱いです」などと冷酷に通告すれば、保育士は100%反発し、新しい園への転園(籍の移行)を拒否してその場で退職します。
    • 2026年現在のスタンダード: そのため、実務上は事業譲渡であっても「有給休暇の残日数や、将来の退職金算定のための勤続年数は、新法人がそのまま全額引き継いで通算する」という条件を法人間の「事業譲渡契約書」に明記し、職員に書面で提示して安心感を与えるのが鉄則となっています。

    2. 園の統合時に発生する「職員の3大不満」と連鎖退職のメカニズム

    どれだけ経営陣が「これからは大きな法人グループになって福利厚生も手厚くなるし、経営が安定するから安心だよ」と綺麗な言葉で説明しても、現場の保育士たちの不安は1ミリも解消されません。なぜなら、彼女たちが直面するのは、毎月の給与袋の中身と、明日からの職員室での居心地という、極めて現実的で生々しい問題だからです。統合時に必ずと言っていいほど発生する「職員の3大不満」をあらかじめ分析しておきましょう。

    2-1. ①【処遇改善加算の配分ギャップ】手取りが変わる不安と基本給・手当のジレンマ

    保育業界の人事制度を日本一複雑にしているのが、国から支給される「処遇改善等加算(I・II・III)」の存在です。この加算の配分ルールは、法令の枠内であれば各法人(園)の裁量に委ねられている部分が大きいため、統合する2つの園の間で、これまで実施してきた配分方法に巨大なギャップが存在することがほとんどです。

    • A園(基本給重視型): 「処遇改善加算の原資を、できる限り基本給や賞与の算定ベース(基本給そのもののベア)に組み込んで支給していた、手堅い園」
    • B園(手当支給型): 「基本給自体の引き上げは低く抑え、毎月の給与明細に『処遇改善手当』として別建ての固定手当で上乗せ支給していた、実利重視の園」

    この2つの園が統合した際、新しい経営者が深く考えずに「これからは事務処理が楽なB園の手当支給ルールに統一します」と発表したとします。年収の総額(トータル)ベースでは同じ計算になるよう設計したつもりでも、A園から来た職員は猛反発します。なぜなら、「基本給の額面が下がった=夏冬の賞与(ボーナス)の計算ベースが下がるのではないか」「将来の退職金の算定額が減るのではないか」という強烈な不審と不安を抱くからです。

    逆に、不満を恐れて「A園の基本給ルール」に一気に合わせようとすると、今度はB園から来た職員の基本給を大幅に引き上げなければならなくなり、法人の人件費総額(固定費)が暴騰して経営の首を絞めるというジレンマに陥ります。この加算の配分ルールのブラックボックス化こそが、離職を招く最大の引き金です。

    2-2. ②【評価基準のズレ】「年功序列」と「成果主義」の衝突、ベテランの反発

    歴史のある地域密着型の個人立保育園と、新興の広域展開法人がM&A等で統合する際などに多発するのが、人事評価に対する価値観の致命的なズレです。

    • 旧園の文化(年功序列): 「特に明確な評価シートや評価面談はなく、大きな問題を起こさず長く勤めていれば、毎年少しずつお給料が上がっていく、アットホームな家族主義」
    • 新法人の文化(能力・成果主義): 「細かなコンピテンシー(行動特性)に基づく多面的な評価シートが用意されており、自己評価と上司評価の点数によって、昇給額や賞与の支給倍率が変動する実力主義」

    統合に伴い、旧園の保育を長年支えてきたベテラン職員に対して、急に何枚もの細かい評価シートが配られ、「これからはあなたの保育の質を行動レベルで点数化して測ります」と無機質に通告すると、彼女たちはプライドを深く傷つけられます。「今までの私たちの貢献を否定された」「新しい経営陣は、自分たちのお気に入りだけを優遇して、好き嫌いで給料を決めようとしている」と被害妄想的に受け止め、へそを曲げてしまいます。結果として、旧園の信頼の核であったベテラン保育士が一斉に退職届を出し、それに憧れていた若手も追随するという大惨事へ繋がります。

    2-3. ③【企業文化の衝突】書類フォーマットや保育方針のローカルルール争い

    給与や評価といった制度面の格差だけでなく、日々の現場における「当たり前」の微細な違いが、職員の精神を確実に摩耗させます。

    • 指導案や日誌、連絡帳の書き方の細かさの違い(手書きの温かみ重視か、ICTツールの文字数制限による効率重視か)
    • 行事(運動会や発表会)の規模や見栄えへのこだわり、準備にかける時間の価値観の違い
    • おもちゃの片付けのルール、子どもの適切な叱り方といった、根底にある「保育観」そのもののズレ

    多くの場合、統合を主導する側(買い手側・大きい規模の法人)が「これからは当法人の先進的なルールにすべて従ってください」と高圧的にローカルルールを押し付けます。すると、統合される側の職員は「私たちは植民地にされたわけではない」と防衛本能的な反発を強め、職員室の中に二つの法人の派閥ができ、ギクシャクした最悪の空気(心理的安全性の崩壊)が生まれます。この蓄積された日々の小さなストレスが、ある日「もうこの園にはいられない」という職員のドミノ的な連鎖退職を引き起こすのです。

    3. 失敗しない!人事制度・給与体系を一本化する「4つの実務ステップ」

    二つの異なる人事・給与システムを、労働法を踏まえつつ、現場の感情的な反発を抑えながら滑らかに一本化するための「HRC式・4つの実務ステップ」を公開します。この手順通りに実務を進めることこそが、連鎖退職を防ぐうえで有効な経営防衛策です。

    【給与・人事体系一本化の4ステップ】
    ① 現状棚卸し(ギャップ分析) ──> ② 激変緩和措置(調整手当)の設計 ──> ③ 就業規則の適正手続き ──> ④ 個別合意面談の実施

    【ステップ1】現状の「賃金規定」と「加算算定方法」の徹底的な棚卸しとギャップ分析

    まずは、統合対象となる両法人の「就業規則」「賃金規定」「過去3年分の賃金台帳(賃金明細の履歴)」、そして「処遇改善等加算の配分計画書・実績報告書」をすべて机の上に並べ、精密な棚卸しを行います。経営者が感覚で「だいたい同じくらいだろう」と思っている部分を、すべて数値化・言語化します。

    • 基本給の構造: 年齢給、勤続給、職能給などの内訳と、毎年の昇給ピッチ(金額)の違い。
    • 各種手当の支給条件: 「資格手当」「担任手当」「主任手当」などの金額の差。特に「住宅手当(家賃補助の金額や上限)」や「扶養手当」など、個人の生活に直結する生活手当の有無。
    • 労働条件の差異: 年間休日数(土曜出勤の回数や振替休日の有無)、夏季休暇や年末年始休暇の日数の違い。

    これらを1つのエクセルシートに徹底的にマッピングし、「A園の職員をそのまま新法人の規定に機械的に当てはめた場合、誰の給料が毎月何円下がるのか(不利益変更の発生ポイント)」を個人別に1円単位で可視化(ギャップ分析)します。この冷徹で精緻なデータ収集がなければ、次の防衛戦略は立てられません。

    【ステップ2】激変緩和措置(不利益変更を回避するための「調整手当」)の設計

    ギャップ分析の結果、新しい統一規定に移行することで、支給額が下がってしまう職員(主に旧園のベテラン層など)が必ず出てきます。この労働条件の低下を合法的に、かつ感情的な反発を招かずに処理する仕組みが「激変緩和措置(げきへんかんわそち)」です。

    調整手当の具体的な設計図

    新しい統一の基本給テーブルに移行したことで、基本給や固定手当の合計が「月額2万円」下がってしまうベテラン職員のC先生がいるとします。この場合、園は一方的に基本給を引き下げるのではなく、給与明細に「調整手当(または不利益緩和手当)」という名目の個人別手当を新設し、移行前の総額(手取り額)を維持(保障)します。

    【C先生の激変緩和措置シミュレーション】
    移行前(旧園の規定): 基本給 24万円 + 役職手当 2万円 = 総額 26万円
    移行後(新園の規定): 基本給 22万円 + 役職手当 2万円 + 【調整手当 2万円】総額 26万円
    結果: 毎月の支給総額は1円も下がらないため、法的な不利益変更にあたらず、本人の安心感を担保しやすくなります。

    調整手当の「消去(スライド)ルール」の規定化

    この調整手当を一生支給し続けるのは法人の経営を圧迫します。そのため、新しい賃金規定の附則に、以下のような「スライド消去のルール」をあらかじめ明記し、適法に規定化しておきます。

    【賃金規定附則・記載例】
    「本制度への移行に伴い個別に発生した『調整手当』については、新制度への移行後の定期昇給や役職昇格(キャリアアップ加算の適用など)によって基本給または他の固定手当が増額された場合、その増額分の金額と同額を『調整手当』の支給額から自動的に減額(相殺)していくものとする」

    これにより、例えば翌年にC先生が定期昇給で基本給が5,000円上がった場合、基本給は22万5,000円になり、調整手当は1万5,000円に自動的に減額されますが、支給総額26万円は完全に維持されます。数年かけてゆっくりと、法人の持ち出し(人件費の暴増)を増やすことなく、新しい統一賃金テーブルへ完全な統合を果たしていく。これが、人事コンサルティングにおける最も洗練された実務テクニックです。

    【ステップ3】就業規則の変更手続き(労働者代表からの意見書取得、労基署への届出)の適正な実務

    給与テーブルや激変緩和措置のルールが固まったら、それを「就業規則(賃金規定)」という法的な書類に正式に落とし込み、労働基準法第89条、第90条に定められた適正な変更手続きを踏まなければなりません。この手続きのプロセスを怠ると、せっかく作った新制度自体が法的に「無効」となる重大なリスクがあります。

    • 就業規則(変更案)の作成: 調整手当の算出根拠や新しい評価ルールの適法な文面化。
    • 労働者代表からの意見書取得(労基法第90条): 園内の職員の中から、過半数の支持を得た「労働者代表(園長や施設長などの管理監督者を除く)」を適正に選出します(経営側が勝手に指名するのは絶対にNGです)。その代表者に対して新規定を提示し、内容に対する「意見書」へ署名・捺印をもらいます。
    • 労働基準監督署への届出: 「就業規則変更届」「労働者代表の意見書」「新しい就業規則・賃金規定」をセットにして、管轄の労働基準監督署へ提出し、受付印をもらいます。

    これらの書類一式は、今後の行政の指導監査や労基署の調査において「正規の手続きを経て労務規定が適法に改定されているか」を証明する最重要エビデンスとなりますので、厳重に保管してください。

    【ステップ4】全職員を対象とした、新しい評価・賃金制度の「個別合意面談」の実施

    就業規則を労基署に通したからといって、職員への説明を「紙を1枚配っておしまい」にする園は、現場の離職リスクを高めます。最後の、そして最も重要なステップが、職員一人ひとりとの「個別合意面談」の実施です。

    面談での推奨トークスクリプト(園長・経営者用)

    「〇〇先生、今回の法人統合に伴い、今年の10月から新しい給与と評価の仕組みに移行します。新しい環境になることで、不安なこともたくさんあったよね。」

    「まず一番に〇〇先生に伝えたいのは、『〇〇先生の今のお給料(総額)は、新しい制度になっても1円も下げないように、園が責任を持って調整手当で全額保障する』ということです。だから、生活の面は何も心配しないで安心してね。」

    「その上で、これが新しい〇〇先生の給与シミュレーションシートです。基本給の額面の計算方法は変わりますが、総額はこれまで通りです。そしてここからが大事な話なのですが、新しい園の評価制度(キャリアパス)では、〇〇先生が【具体的な保育スキルや後輩の育成】を頑張ってくれたら、この調整手当が消えるだけでなく、さらに上のランクに昇格して、『前の園にいた時よりも、もっと高いお給料(年収)を目指せるクリアなチャンス』が新しく生まれます。」

    「園が変わることで大変な部分もあると思うけれど、私は〇〇先生がこれまでに培ってきた豊かな経験を本当に頼りにしているし、新しい法人で一緒にもっと素晴らしい園を創っていきたいと考えています。この内容で納得してもらえたら、こちらの合意書にサインをお願いできますか?」

    このように、「現状の総額保障(絶対的な安心)」と「未来の年収アップの可能性(明確な希望)」をセットで提示し、一人ひとりと丁寧に握り合う(個別合意書を交わす)こと。この誠実で泥臭いコミュニケーションのプロセスこそが、職員の不信感を和らげ、連鎖退職を防ぐための最後の鍵となります。

    4. 統合後の組織を一つにする「共通人事評価制度」の導入手法

    給与の額面が守られたら、次は「心の統合(企業文化の融合)」です。どちらか一方の法人の評価制度をそのまま力勝負で強硬に押し付けると、統合される側の職員に「負け組感(植民地化されたような疎外感)」が生まれ、組織が完全に分断されます。二つの組織を本当の意味で一つにするための手法を提示します。

    4-1. 双方の「良い保育観」を融合させた新しい行動特性(コンピテンシー)の策定

    人事評価制度の核である「コンピテンシー(行動特性)」の項目を作る際、新経営陣だけで勝手に決めるのではなく、両方の園の主任や中堅職員を集めた「評価項目策定ワークショップ」を経営者が企画することをお勧めします。

    【実践的なやり方】
    「旧A園の書類の正確さや丁寧さ」と「旧B園のダイナミックで自由な子ども主体の遊び」、それぞれの強みをリスペクトしながら出し合い、「これからの新しい園が目指すべき、理想の保育士像とは何か」を職員自らの言葉で議論させます。

    • 【融合型コンピテンシーの項目策定例】
      旧A園の強み(丁寧な書類) + 旧B園の強み(子ども主体の遊び)の融合
      新設された評価項目: 「子どもの主体的な遊びの様子を深く観察・分析し、その成長のプロセスが保護者や他の職員に一目で伝わるよう、ICTツールを活用して『簡潔かつ本質を突いたエピソード記述(日誌・連絡帳)』を行うことができているか」

    自分たちの意見やこれまでのプライドが反映されて作られた評価制度であれば、職員側も「上から押し付けられた冷酷なルール」ではなく「自分たちの新しいルール」として前向きに受け入れるため、導入時の心理的抵抗が驚くほど少なくなります。

    4-2. 統合後に「新しい方針に前向きに適応し、チームをまとめようとした行動」を高く評価する

    組織が激しく融合する激変期において、経営陣が最も価値を置くべきなのは、個人の保育スキルそのものよりも、「組織の変化に対して前向きに協力してくれる姿勢(チェンジエージェントとしての行動)」です。これを評価シートの重要項目として期間限定(統合後1〜2年間)で明確に組み込みます。

    【期間限定:組織統合貢献度(特別加点項目)】
    最高評価(Sランク)の行動基準:

    • 法人の統合に伴う保育方針の変更や新しい書類フォーマットの導入に対し、現場で不平不満を周囲に撒き散らすことなく、自ら率先して新しい手法(ICTツールの操作など)を学び、習得しようと努力している。
    • 異なる旧園から来た同僚に対して、自ら積極的に挨拶や声掛けを行い、お互いの保育の良い部分を認め合うような肯定的なコミュニケーション(ポジティブフィードバック)を実践し、職員室の新しいチームビルディングに多大なる貢献をした。

    経営者が「二つの文化を融和させようと泥臭く努力してくれている人を、私は誰よりも高く評価し、賞与(ボーナス)や昇格で優遇する」という強いメッセージを評価軸として明示すること。これにより、裏で陰口を叩いて現状維持にしがみつき、組織の足を引っ張る旧勢力の力を自然に削ぎ、組織全体のベクトルを「未来」へと一気に加速させることができます。

    5. メリット・デメリット(統合時に人事制度を一新することの影響)

    M&Aや園の統合という激変期において、あえて手間とエネルギーのかかる「人事制度の大刷新・一本化」へ踏み切ることの、経営的な費用対効果を客観的に比較します。

    経営的メリット(得られる莫大な果実) 実務上のハードル(乗り越えるべき壁)
    バックオフィスの共通化・コストの大幅削減: 給料の計算ルールや社会保険の手続き、複雑な処遇改善加算の申請フォーマットが完全に一本化されるため、複数園を運営する法人の総務・事務負担(事務員の固定費)が劇的に減少します。経営効率が最大化されます。 制度設計および職員への個別説明にかかる莫大な労力: 2つの園の給与データの細かい分析、調整手当の計算、全員分の個別合意面談を日々の多忙な園運営と並行して行うのは、園長や理事長にとって精神的・物理的な限界を遥かに超えます。
    古い因習の完全清算と「クリーンな組織」への脱皮: 「昔からあのベテラン先生だけ特別扱いで謎の手当が出ていた」「前園長の個人的な好き嫌いでお給料が決まっていた」といった、旧園が抱えていた古い膿を、「法人が変わったから」という公明正大な理由で、一気に合法的かつクリーンにリセットすることができます。 【HRCによる解決策】 だからこそ、私たちの「完全請負コンパイルパック」があります。経営者の皆様は「どういう園にしたいか」というビジョンを語っていただくだけで、面倒なデータ分析、就業規則の改訂、シミュレーションシートの構築から、個別面談のシナリオ作成まで、実務のすべてを当社が丸抱えで代行します。
    強力な法人シナジーによる採用力の向上: 「2つの園が統合したことで、グループ内でのキャリアパスが広がった(複数園での経験や、主任・エリアマネージャーなどの新しいポストが生まれた)」ことを求人票でアピールできるため、スケールメリットを活かした高い採用力を手に入れることができます。 初期の心理的アレルギー: ルールが変わることへの恐怖から、現場に一時的な緊張感が走ります。これを解消するための丁寧な説明会の開催(当社が代行可能)が必須となります。

    6. 人事コンサルタントがズバリ回答!よくあるFAQ(5選)

    Q1. 吸収合併をしましたが、旧園の職員の給与水準が当法人の既存職員より遥かに高く、新しい賃金テーブルに当てはめると、既存職員から「後から合流した人たちのほうが給料が高いのは不公平だ」と苦情が出そうです。既存職員の給料も引き上げるべきですか?

    A1. 既存職員の給与を感情に流されて一気に引き上げるのは、人件費の暴騰を招き経営を圧迫するため絶対に避けるべきです。 この場合は、引き継いだ高給職員の給与のうち、当法人の基準テーブルを超える部分をすべてステップ2で解説した「個人の『調整手当』」として別建てにして支給します。そして既存職員に対しては、「あの人たちは前法人での契約を引き継いで承継しているため、特例として調整手当がついているけれど、基本給のテーブルや評価のルールは全員共通。今後は評価・昇格の基準を共通化し、誰にとっても処遇向上を目指せる仕組みにしていく」と説明し、ルールの公平性と将来の可能性をアピールして納得を促すのが正しい実務です。

    Q2. 事業譲渡によって園を譲り受けました。職員と面談をしたところ、全員が「新しい法人の就業規則には従いたくない、前の園のルールのままで雇用契約を結べ」と強く主張し、合意書にサインしてくれません。強引に新規定を適用しても法的に大丈夫ですか?

    A2. 事業譲渡の場合であっても、職員が団結してサインを拒否している状態での「新規定の強硬適用」は、事実上の労働条件の一方的な引き下げ(不利益変更)とみなされ、法的に無効になるリスクが極めて高いです。 強引に進めるのは絶対にやめてください。サインをもらえない根本的な原因は、「ルールが変わることで、具体的に自分の給料の何が損をするのかわからない」というブラックボックスへの恐怖心です。ステップ1のギャップ分析に戻り、一人ひとりの「移行前後の手取り額」を並べた比較シートを見せ、「総額は1円も下がらないこと(調整手当による保障)」をビジュアルで証明し、誤解を解くプロセスをもう一度丁寧に行う必要があります。HRCでは、こうした難航する個別面談の交渉アドバイスや同席サポートも請け負っています。

    Q3. 合併に伴い、就業規則を一本化する際、労働者代表の意見書に「この統合・賃金規定の改定には絶対に反対である」と激しい拒絶意見を書かれてしまいました。この意見書をそのまま労基署に提出しても、就業規則の変更届は受理されるのでしょうか?

    A3. 届出書類としては受理される可能性がありますが、制度変更の有効性や現場の納得性とは別問題です。 労働基準法第90条が求めているのは、労働者代表の「同意」ではなく、あくまで「意見を聴いたという事実(意見書の添付)」だからです。たとえ中身が「大反対」であっても、手続きとしては適法に完了します。しかし、法的に受理されることと、現場が回ることは別問題です。反対意見が書かれた状態のまま新制度を強行すれば、現場のモチベーションは地に落ち、離職の嵐が吹き荒れます。意見書に書かれた「反対の具体的な理由(例:退職金の引き継ぎ計算が不安、など)」を真摯に受け止め、賃金規定の附則にその不安を解消する補償文言を追加するなど、現場への歩み寄りの姿勢を見せた上で、最終的な個別合意(ステップ4)へ繋げるのが名門園の経営者の賢明な進め方です。

    Q4. 二つの法人が合併した際、それぞれの園で取得していた「処遇改善等加算I・II・III」の認定やキャリアパス要件の実績は、合併後の新法人にそのまま引き継がれるのでしょうか?行政への再申請は必要ですか?

    A4. 法人格が変わる場合(新設合併や事業譲渡に伴う設置者変更など)は、原則として新法人の名義で、各自治体に対して「処遇改善等加算の新規申請・変更届」をすべて一から出し直す(再申請する)必要があります。 前法人の実績が当然に引き継がれると過信していると、統合初月の加算が丸々算定されず、大きな加算の算定漏れにつながる可能性に繋がります。自治体によって提出期限や読み替えのローカルルールが非常に厳しいため、経営統合の少なくとも統合前の早い段階で、行政の保育担当部署との事前協議を開始することが重要です。HRCではこの行政手続きの計画書作成も完全代行しています。

    Q5. 園の統合を機に、どうしても新しい方針に協力してくれず、周囲の職員に「前の法人のほうが良かった、新しい経営陣は現場の何もわかっていない」と愚痴を言い続けて現場を煽る、旧園のベテラン主任を対応したいのですが、適切な対応方法はありますか?

    A5. 統合期における「旧勢力のリーダーによる抵抗」は、組織開発において最も頻発するトラブルです。「方針に従わないから退職してもらう」と感情的に解雇すると、不当解雇として労働組合(ユニオン)が介入するなどの泥沼の訴訟沙汰になり、園の運営がストップします。 プロの解決策としては、排除を急ぐのではなく、ステップ4-2で解説した「組織統合貢献度」の評価軸を厳格に適用します。彼女の「新しい方針を拒絶し、組織の融和を妨害する言動」を客観的な事実としてすべて面談記録に取ります。そのうえで、「あなたの保育技術は認めますが、この法人の新しい評価基準である『組織の融和・チェンジエージェント行動』において、あなたの言動は最低ランクの評価となります。このままでは規定通り下がりますが、当法人のビジョンに沿って行動を改善する意思はありますか?」と、評価制度という客観的な物差しを使って冷静に業務改善命令を行います。ルールに基づいたロジカルなアプローチを重ねることで、本人に期待行動を明確に伝え、改善の機会を与えます。それでも改善が見られない場合は、就業規則と労働法に沿って、配置転換、役割変更、懲戒手続き、退職勧奨の可否などを専門家と慎重に検討することが必要です。

    7. 専門人事コンサルタントからの総合アドバイス:激変期こそ「最大のチャンス」

    法人の合併や園の統合という一大イベントは、多くの経営者や園長先生にとって、一生に一度あるかないかの「最大の試練」です。異なる歴史、異なる給与、異なるプライドを持った人間たちが、ある日突然一つの職員室に集まるのですから、そこで起きる摩擦やエネルギーは凄まじいものがあります。

    現場の顔色を伺うあまり、「めんどくさいトラブルになりたくないから、給料のルールは当分の間、それぞれの園のままでバラバラに払っておこう」と、制度の一本化を先送りする経営者がいますが、これは最悪の選択です。同じ職場で全く同じ仕事(保育)をしているのに、出身の園が違うという理由だけで給料の計算方法や評価の基準が違う状態を放置すれば、職員室の中に一生消えない「特権階級」と「格差への不満」を生み出すことになり、組織の融和は永遠に達成されません。人事を一本化する覚悟がないなら、M&Aや園の統合など最初から取り組むべきではないのです。

    しかし、視点を180度変えてみてください。この激変期は、平時には職員の反発が怖くて絶対に手をつけられなかった「古い就業規則の改定」や「不透明な手当の整理」「最新のコンピテンシー評価への移行」を、『法人が変わるから、これからの未来のために新しくしよう』という圧倒的な正当性を持って、一気にやり遂げることができる「千載一遇の大チャンス」でもあるのです。

    人件費の計算という数字から逃げてはいけません。そして、職員の感情という本音からも逃げてはいけません。「あなたたちのこれまでの努力(給与総額)は、園が責任を持って100%守る。その代わり、これからは新しい一つの理念に向かって、みんなで手を取り合って地域で一番の新しい保育園を創ろう!」経営者がこの二つの覚悟を「激変緩和手当」と「共通人事評価制度」という形にして力強く提示したとき、職員たちの不安は消え去り、二つの異なる流れが一つに融和した、地域で圧倒的な輝きを放つ「新時代の名門保育法人」が誕生するのです。その新しい歴史の幕開けを、私たちHRCが全力で支えます。

    8. 採用・人事用語集(M&A・組織統合編)

    経営統合を推進する上で、経営陣や実務担当者が正確に理解しておくべき重要用語の解説です。

    • 不利益変更禁止の原則: 労働契約法第9条に基づき、労働者との合意なしに、使用者が就業規則を労働者にとって不利な内容(減給、手当の廃止、休日減など)に変更することを原則として禁止する法律上の大原則。
    • 激変緩和措置(げきへんかんわそち): 給与制度の改定や統合によって給与が下がってしまう職員に対し、一定期間「調整手当」などを支給して手取り額を保障し、生活の安定とモチベーションを維持するための猶予期間の仕組み。
    • 調整手当(ちょうせいてあて): 給与体系の一本化の際、新しい統一の基本給テーブルに移行したことで生じる旧給与との「差額」を埋め、支給総額を維持するために個別に支給する固定手当。昇給等とスライドさせて相殺していくことが可能。
    • 包括承継(ほうかつしょうけい): 吸収合併などの際、前法人の権利や義務(労働契約の一切、債務、資産含む)が、個別の同意手続きなしに、新しい法人へそのまま丸ごと一括して引き継がれる法的な仕組み。
    • デューデリジェンス(労務DD): M&Aや法人統合の前に、対象となる園の就業規則や賃金台帳、処遇改善加算の申請状況を詳細に調査し、未払い残業代や配置基準違反などの法的な隠れたリスク(債務)を事前に洗い出す実務。
    • チェンジエージェント: 組織の変革期において、経営陣の新しい方針やビジョンを深く理解し、現場の最前線でその変化を肯定的に推進・周囲に波及させる役割を担う改革推進派の職員のこと。

    9. まとめ:誰もが納得して歩み出せる新しい園の未来へ

    2026年、激化する少子化の荒波を乗り越えるために保育園のM&Aや園の統合を決断された経営者の皆様。組織を真に一つにし、職員の連鎖退職を防ぐためのルートは極めて明確です。

    1. 「労働条件の不利益変更」を完全に回避するため、個人別の給与ギャップを1円単位で可視化する。
    2. 「調整手当」を用いた激変緩和措置を精緻に設計し、職員に「総額保障の安心」を100%与える。
    3. 双方の強みを融合した「共通人事評価制度」を作り、変化に協力的な行動を高く評価して心の統合を果たす。

    この3つの戦略がカチッと噛み合ったとき、貴園は統合に伴う離職リスクを大きく抑え、複数園運営による経営のスケールメリットを最大限に活かした「強靭な保育法人」へと大躍進を遂げることができます。

    しかし、日々の膨大な園務と統合実務をこなしながら、二つの法人の賃金規定を精緻に分析し、行政への処遇改善加算に関する複雑な変更届・申請書類を大きなミスなく作り上げるのは、容易なことではありません。人事を一歩間違えれば、地域の信頼も職員もすべてを失うリスクと隣り合わせだからです。決して属人的な判断だけで進めないことが重要です。

    そんな時こそ、私たち有限会社ヒューマンリソースコンサルタント(HRC)にご相談ください。私たちは、保育業界に特化した人事労務コンサルティングのプロフェッショナル集団として、面倒な給与データの分析、就業規則・賃金規定の一本化、行政への加算申請手続きのすべてを【完全請負】で実施いたします。さらに、制度の構築だけでなく、導入後「2年間の無償サポート期間」を通じて、最も緊迫する職員への「個別合意面談」のシナリオ作成や同席、新制度移行後の実際の給与計算のチェック、指導監査対策まで、貴園の理事長先生や園長先生のすぐ隣で伴走し続けます。

    経営統合という大激変期を、貴園の組織基盤をクリーンで強靭なものへと生まれ変わらせる最高の追い風に変えていきましょう。まずは、現在の両法人の規定の状況や、統合に向けた小さなお悩みをお聞かせいただく「園の統合・人事労務リスク無料診断相談」から始めてみませんか?皆様からの温かいお問い合わせを、心よりお待ちしております。

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