「人が集まらない」卸売業が採用力を高める人事制度の共通点

卸売業向け

評価シートサンプルが無料でダウンロードができます。

sample





    「求人媒体に高い掲載費を払っても、応募が1件も来ない」
    「やっと採用した若手社員が、わずか半年で『思っていたのと違う』と言って辞めてしまう」
    「ドライバーや倉庫作業員の高齢化が進み、あと数年で物流が回らなくなる未来が見えている」

    もし貴社が今、このような悩みを抱えているとしても、それは貴社だけの問題ではありません。現在、日本の労働市場において卸売業は「採用難易度が極めて高い業種」の一つとなっています。
    少子高齢化による労働人口の減少というマクロな要因に加え、業界全体に染み付いた「古い商習慣」や「不透明な労働環境」のイメージが、求職者にとって高いハードルとなっているのです。

    多くの経営者は、この状況を打開するために「初任給の引き上げ」や「採用サイトのリニューアル」を検討します。もちろん、それらは無駄ではありません。しかし、どれほど入り口(採用広報)を綺麗に見せても、中身(人事制度・働き方)が旧態依然としたままでは、優秀な人材は獲得できませんし、定着もしません。採用とは、企業の「商品力(=働く環境の魅力)」を売る活動だからです。

    本コラムでは、数多くの卸売企業の採用・組織課題に向き合ってきた人事コンサルタントの視点から、なぜ卸売業に人が集まらないのかという根本原因を解剖し、採用力を劇的に高めるために不可欠な「人事制度の再構築」について、具体的かつ実践的なノウハウを解説します。


    目次

    1. なぜ卸売業は求職者に不人気なのか?その構造的背景

    まず直視しなければならないのは、求職者が卸売業に対して抱いているネガティブなイメージと、実際に現場で起きているミスマッチの実態です。ここを理解せずして、有効な対策は打てません。

    「きつい・給料安い・古い」という3Kイメージの払拭

    残念ながら、卸売業、特にルートセールスや物流現場を持つ企業に対して、世間の求職者は「3K(きつい、帰れない、給料が安い)」に近いイメージを抱きがちです。
    早朝からの配送業務、夕方以降の伝票整理、そして顧客都合による突発的な対応。これらが常態化している企業が依然として多いことは否定できません。IT業界やコンサルティング業界のような華やかさや、フレックスタイム制・リモートワークといった柔軟な働き方が浸透しにくい業態であることも、安定志向やワークライフバランスを重視する現代の求職者からは敬遠される要因となっています。

    しかし、求職者が本当に嫌がっているのは「業務の大変さ」そのものではありません。「その大変さが、正当に評価されていない」「報われない努力を強いられる」という構造に対して、強い拒否反応を示しているのです。

    給与体系の不明瞭さが招く「ブラック企業」疑惑

    求人票を見た求職者が、応募をためらう最大の要因の一つが「給与体系の不明瞭さ」です。
    卸売業の求人でよく見かける「月給25万円〜(固定残業代45時間分を含む)」という表記。経営側からすれば、配送中の待機時間などを考慮した合理的な設定かもしれません。しかし、求職者、特に情報感度の高い若手層はこれをどう読み取るでしょうか。

    • 「基本給は実質いくらなんだろう?」
    • 「45時間も残業させられるのが前提なのか?」
    • 「それを超えた分の残業代は本当に支払われるのか?」

    このように、固定残業代(みなし残業)の比率が高い、あるいは手当の内訳が曖昧な給与設計は、それだけで「何かを隠しているのではないか」「長時間労働の温床ではないか」という疑念(ブラック企業疑惑)を抱かせます。透明性の欠如こそが、応募ボタンを押す指を止めさせているのです。

    キャリアの不透明さ:「この会社で10年後どうなっているか」が見えない

    「入社したら、まずは配送からスタートしてもらいます」
    卸売業の面接でよく聞かれるフレーズです。現場を知ることは重要ですが、求職者が知りたいのはその先です。「いつまで配送をやるのか」「その後に営業になれるのか、管理職になれるのか」「その時の年収はいくらなのか」。
    多くの卸売企業では、このキャリアパスが明確に定義されていません。「頑張れば評価する」「適性を見て判断する」といった曖昧な言葉でお茶を濁してしまいます。

    先行きが見えないトンネルを走り続けられる人は多くありません。特に、終身雇用が崩壊した現代において、若手人材は「自分の市場価値が高まるか」をシビアに見ています。成長のロードマップを提示できない企業は、選択肢から外されてしまうのです。


    2. 若手は何を見ているか:「初任給」よりも「将来の昇給イメージ」と「公平性」

    採用難対策として「初任給の引き上げ」を行う企業が増えていますが、それだけで採用競争に勝てるわけではありません。求職者、特にZ世代やミレニアル世代の価値観を深く分析すると、彼らが求めている「条件」の本質が見えてきます。

    初任給競争の限界と「時給換算」の視点

    確かに初任給は重要です。しかし、月給の額面だけで企業を選ぶほど、今の求職者は単純ではありません。彼らは「拘束時間」や「年間休日数」を含めたトータルの条件を冷静に計算しています。
    例えば、月給25万円でも年間休日が105日で残業が多い企業と、月給22万円でも年間休日が125日で残業が少ない企業であれば、後者の「時給換算の実質賃金」や「時間的ゆとり」を選ぶ傾向が強まっています。

    さらに重要なのは「昇給の傾斜」です。
    「初任給は高いけれど、30代、40代になっても給料があまり変わらない」
    これは若手にとって最も避けたいシナリオです。初任給20万円でも、実力次第で30代で年収600万円、40代で800万円を目指せる明確な賃金テーブルがある企業の方が、意欲的な人材を引きつける力は強くなります。「入り口の高さ」よりも「階段の角度」を見せることこそが、優秀層へのアピールになります。

    「好き嫌い人事」への嫌悪感と口コミサイトの影響力

    現代の採用活動において無視できないのが、OpenWorkや転職会議といった「企業口コミサイト」の存在です。求職者は応募前に必ずと言っていいほど、これらのサイトで「退職者の本音」をチェックしています。

    そこで最もネガティブな印象を与えるのが、「評価基準が不明確」「上司のお気に入りが昇進する」といった書き込みです。
    今の若手世代は、学校教育やSNSを通じて「公平性(Fairness)」や「透明性(Transparency)」を極めて重視する価値観を持っています。社長や役員の「鉛筆なめなめ」で決まる、いわゆる「情緒的な人事」や「好き嫌い人事」に対して、強い生理的嫌悪感を抱きます。
    「何をすれば評価されるのか」がルール化されておらず、人間関係に左右される職場環境は、彼らにとって「攻略不可能な理不尽なゲーム」に映ります。これでは、どれほど良い人材を採用しても、早期離職(定着率の低下)を防ぐことはできません。

    心理的安全性と「成長実感」の渇望

    「失敗したら怒鳴られる」「見て覚えろと言われる」
    こうした昭和的な育成スタイルも、若手の定着を阻害します。彼らが求めているのは、心理的安全性が確保された環境での「成長実感」です。
    「今の仕事が、自分のスキルアップにどう繋がっているか」を確認できるフィードバックの仕組みや、定期的な1on1ミーティングなどが制度として組み込まれているか。精神論ではなく、仕組みとして人を育てる姿勢があるかどうかが、企業選びの重要な基準となっています。


    3. 採用に強い人事制度 3つの条件

    求職者のインサイト(深層心理)を踏まえた上で、卸売業が採用力を高めるために整備すべき人事制度の要諦は、以下の3点に集約されます。これらは単なる社内規定ではなく、最強の採用コンテンツとなります。

    1. 評価基準の公開(ブラックボックス化の解消)

    採用活動において、「当社の評価制度」を堂々と見せられるかどうかが勝負の分かれ目となります。

    評価シートを「採用ピッチ資料」にする

    多くの企業で、評価シートは社外秘扱いされています。しかし、採用に強い企業は、会社説明会や面接の場で「うちはこういう基準で社員を評価しています」と、評価シートの現物や抜粋を見せています。
    「挨拶や整理整頓といった基礎行動」から「粗利目標の達成」「チームへの貢献」まで、具体的な評価項目を可視化することで、求職者は「この会社で働くイメージ」を解像度高く描くことができます。「曖昧な評価はしない」という宣言は、求職者に強烈な安心感を与えます。

    「何をすれば給料が上がるか」の言語化

    評価基準の公開とは、すなわち「昇給・昇格要件の明示」です。
    「等級ごとの定義(役割定義書)」を作成し、「等級1から等級2に上がるには、〇〇のスキルを習得し、××の成果を出すこと」と明記します。これにより、入社後の目標設定が明確になり、自律的な成長を促すことができます。
    コンサルタントとして推奨するのは、この「等級定義」を可能な限り具体的かつ平易な言葉で書くことです。「リーダーシップを発揮する」といった抽象的な表現ではなく、「後輩の指導担当として1名を独り立ちさせる」といった具体的な行動事実で定義することで、認識のズレを防ぎます。

    2. 明確なキャリアパスの提示(例:ドライバーから管理職への道)

    「卸売業=体力勝負」というイメージを覆すために、多様なキャリアの選択肢(複線型人事制度)を用意します。

    「一生ドライバー」だけではない選択肢

    物流部門の採用において、「体力があるうちはいいが、歳をとったらどうなるのか」という不安は常につきまといます。
    これに対し、「ドライバーとしての専門職コース(マイスター)」だけでなく、「物流管理・センター長へのマネジメントコース」、あるいは「商品知識を活かした営業職へのキャリアチェンジ(ジョブローテーション)」といった複数のパスを用意します。
    「現場の経験は、将来の幹部候補としての必須スキルである」と位置づけ、実際にドライバー出身の役員や管理職が活躍している事例を制度と共に紹介することで、キャリアの広がりをアピールできます。

    スペシャリストとジェネラリストの分離

    営業職においても同様です。全員が管理職(課長・部長)を目指す必要はありません。「プレイヤーとして現場で売り続けたい」という社員向けに、高い成果に対して高い報酬で報いる「プロフェッショナル職」を設けるのも有効です。
    「管理職になりたくないから辞める」という優秀な営業マンの流出を防ぐと同時に、マネジメント適性のない社員が上司になって組織を壊すリスクも回避できます。多様な価値観を受け入れる「器」としての制度設計が求められます。

    3. 時代に合った手当・インセンティブ(固定残業代依存からの脱却)

    給与の中身(内訳)を時代に合わせてアップデートします。特に「残業代」と「成果給」の設計は、採用力に直結します。

    固定残業代に頼らない基本給設計への転換

    採用難の主因となっている「固定残業代」の見直しに着手します。もちろん、残業代を全額実費支給に切り替えることは、経営にとって人件費の変動リスクを伴います。しかし、長時間労働を前提とした給与体系は、もはや持続可能ではありません。
    業務効率化(DX導入など)とセットで、所定労働時間内での成果を最大化する方向へ舵を切るべきです。例えば、固定残業代を縮小し、その分を「職務手当」や「ベースアップ」に振り替えることで、基本給の比率を高めます。「残業しなくても一定の生活水準が保証される」という安心感は、求職者にとって強力な魅力となります。

    若手が燃える「ゲーム性」のあるインセンティブ設計

    卸売業の醍醐味は、自分が動いた分だけ商流が生まれ、数字に跳ね返ることです。この面白さを制度に組み込みます。
    年功序列的な定期昇給だけでなく、短期的な成果を還元する「インセンティブ(報奨金)」を充実させます。

    • 新規開拓賞: 新規口座開設1件につき〇万円
    • 重点商品販売賞: メーカー協賛キャンペーンと連動した報奨
    • チーム達成賞: 営業所全員で目標達成した場合の食事代支給

    重要なのは、計算式がシンプルで、ゲーム感覚で追えることです。「半期ごとの賞与」まで待たされるよりも、「翌月の給与」や「四半期ごとの表彰」でフィードバックされる方が、特に若手社員のモチベーション維持には効果的です。


    4. まとめ

    制度を変えれば採用が変わる。選ばれる企業になるための人事戦略とは

    「採用難」という現象は、あくまで結果に過ぎません。その原因は、求職者のニーズと自社が提供している環境(制度)のミスマッチにあります。
    小手先の採用テクニックや、見栄えの良い採用サイトを作るだけでは、根本的な解決にはなりません。むしろ、入社後のギャップを生み、早期離職を加速させるだけです。

    本当に必要なのは、経営者が「人材」をどう捉え、どう処遇するかという意思表示、すなわち「人事制度」そのものの変革です。
    透明性の高い評価制度、将来が見えるキャリアパス、そして納得感のある給与体系。これらが整った時、貴社の求人は「条件が良い求人」ではなく、「働きがいのある企業の求人」として、優秀な人材の目に留まるようになります。制度を変えることは、最強の採用ブランディングなのです。

    採用と定着に効く人事制度の構築をサポートします

    しかし、長年の慣習を変え、独自の制度を一から設計するのは容易ではありません。「自社に合ったキャリアパスが描けない」「固定残業代を外すと総額人件費がどうなるか不安だ」といった悩みも尽きないでしょう。

    ヒューマンリソースコンサルタント(HRC)は、卸売業に特化した人事コンサルティングのプロフェッショナルとして、貴社の採用力・定着力を最大化する人事制度の構築を支援します。
    単なる制度設計だけでなく、採用面接での制度のアピール方法や、入社後のオンボーディング(定着支援)の仕組みづくりまで、一気通貫でサポートいたします。
    「人が集まる会社」へと生まれ変わりたい経営者様は、ぜひ一度ご相談ください。

    採用・定着力強化の人事制度に関するご相談

    貴社の採用課題を分析し、求職者に選ばれる制度設計をご提案します。
    まずはお気軽にお問い合わせください。

    ▼ 卸売業向け人事制度構築サービスの詳細を見る
    卸売業特化型人事制度構築サービス | ヒューマンリソースコンサルタント

    卸・小売業向け

    簡易版賃金分析Excelの無料ダウンロードができます。





      卸売業向け

      評価シートサンプルが無料でダウンロードができます。

      sample





        投稿者プロフィール

        スタッフ
        スタッフ
        中小企業の経営者に向けて、人事制度に関する役立つ記事を発信しています。
        目次