広島の最低賃金1,085円時代を生き抜く!賃上げを「戦略的投資」に変える人事評価制度の作り方

【2026年版】広島の最低賃金1,085円時代を生き抜く!賃上げを「戦略的投資」に変える人事評価制度の作り方

広島県内で事業を営む中小企業経営者の皆様にとって、2026年現在、最も避けて通れない重い経営課題は「賃金と評価」のバランス、すなわち人件費の高騰といかに向き合うかという問題です。

2025年11月に改定された広島県の最低賃金は「時間額1,085円」となりました。過去最大の引き上げ幅を記録し、わずか10年間で300円近い驚異的な上昇を見せています。この歴史的な賃上げの動きは、物価高に苦しむ従業員にとっては生活を支える不可欠な追い風です。しかし、価格転嫁が容易ではない中小企業、とりわけ多重下請け構造の中で利益を削られている製造業や、人件費率が高いサービス業・小売業の経営者にとっては、収益の根幹を揺るがしかねない極めて深刻な事態です。

「このままでは利益が吹き飛んでしまう」「これ以上人件費が上がれば、事業の存続すら危うい」。そんな悲鳴が県内のあちこちから聞こえてきます。しかし、労働基準法という絶対的なルールの中で、単に「コストが増える」と嘆き、防戦一方でいるだけではこの危機は決して解決しません。労働人口の減少が後戻りできないスピードで加速する中、広島の企業が未来に向かって生き残るためには、他社よりも「選ばれる会社」へと進化する必要があります。

従業員の給与を上げることは、もはや「法律を守るための受動的で嫌々行う対応」ではありません。優秀な人材を惹きつけ、定着させ、生産性を極限まで高めるための「戦略的投資」であると、経営のパラダイム(捉え方)を根本から転換すべき時期に来ているのです。

本稿では、戦後の復興から「ものづくり県」として力強く発展してきた広島の経済背景を冷静に分析し、中小企業がこの賃上げの荒波をどう乗り越えるべきか。そして、重くのしかかる賃上げを「単なる負担」から「組織強化の最大のチャンス」へと変貌させるための人事評価制度のあり方について、専門的な知見から徹底的に解説します。

1. 広島県の最低賃金と経済背景:過去から未来への激しい潮流

まずは、自社を取り巻くマクロな環境と、賃金上昇の歴史的なスピードを正確に把握することから始めましょう。

激動の「最低賃金」推移。10年で起きた地殻変動

広島県の最低賃金の歴史を振り返ると、ここ数年の上昇カーブがいかに異常なスピードであるかが浮き彫りになります。

  • 2016年(平成28年):793円(まだ800円を切る水準でした)
  • 2021年(令和3年):899円
  • 2024年(令和6年):1,020円(ついに初の大台を突破)
  • 2025年(令和7年)11月:1,085円(過去最大の65円の大幅引き上げ)

わずか10年前は「時給800円」でパートタイム従業員を採用できていたものが、いまや「1,100円」の背中がはっきりと見えています。2026年現在の厳しい視点で見れば、時給1,000円以下の求人は県内の労働市場にほぼ存在せず、最低賃金ギリギリの1,085円での募集を出しても「応募の電話が半年間ゼロ」という状況も、もはや珍しいことではありません。

広島経済の歩みと2026年の現状

広島県は、マツダを中心とした自動車産業の巨大なサプライチェーン、呉の歴史ある造船業、そして福山の鉄鋼業など、重厚長大な「ものづくり」を軸に発展してきました。2023年のG7広島サミット以降は国際的な知名度も一気に高まり、宮島や平和記念公園を中心としたインバウンド(訪日外国人)需要も力強く復活しています。

しかし、2025年から2026年にかけて、広島経済は未曾有の転換期を迎えています。世界的な地政学リスクによる物価高騰とエネルギーコストの異常な上昇に加え、自動車産業の急速な「EV(電気自動車)シフト」による部品構造の激変、さらに東広島市等における半導体関連(Micron等)の巨額投資による人材のブラックホール化など、産業構造そのものが音を立てて変化しています。
このような中、資金力に勝る大企業は労働組合の要求に応えて高水準の賃上げ(ベースアップ)を継続していますが、そのしわ寄せが「下請け」や「地場の中小企業」のシビアな採算悪化として現れているのが、紛れもない現場の現実なのです。

2. 中小企業が直面する具体的な課題:なぜ「賃上げ」だけでは人が辞めるのか

最低賃金の上昇に合わせて、多くの経営者が「とりあえず基本給や手当を少しずつ上げて対応しよう。給与さえ上げれば、従業員は不満を持たずに辞めないはずだ」と考えがちです。しかし、実はそこに経営を揺るがす恐ろしい落とし穴が存在します。

採用と定着の致命的なミスマッチ

無理をして会社の利益を削り、給与水準を他社並みに引き上げたとしても、その支給額の基準が「なぜその金額なのか」という論理的な説明がなければ、従業員の真の納得感は決して得られません。
「とりあえず給料が高いから」という理由だけで入社してきた人材は、隣の会社が「時給をあと10円、月給をあと5,000円高くします」と求人を出せば、いとも簡単にそちらへ乗り換えてしまいます。お金だけで釣った人材は、必ずお金で去っていくのです。この不毛な離職のサイクルを断ち切るには、給与の額面以外の「働きがいの実感」や「評価に対する深い納得感」を組織に埋め込む必要があります。

評価の「ブラックボックス化」が組織を腐らせる

広島の歴史ある中小企業の多くは、依然として「社長の長年の勘」や「年齢・勤続年数」という曖昧な基準だけで昇給や賞与を決定しています。この「どんぶり勘定」が限界を迎えています。

現場で渦巻く3つの不満:
・「人の倍以上効率よく仕事をこなし、利益に貢献しているのに、全く評価されない」という若手エースの不満。
・「何を基準に、どこまで頑張れば次の役職に上がれるのかが全くわからない」という中堅社員の深い不安。
・「結局、社長とよく飲みに行く人や、会議で声の大きい人だけが得をしている」という組織全体に蔓延する不公平感。

最低賃金アップに伴い「何もしなくても給料が上がった社員」がいる一方で、スキルを持つ中堅社員の給料が据え置きになれば、給与の逆転現象や格差の縮小が起こり、優秀な社員の不満は爆発します。これらの不満は、経営者がせっかく身を切って投下した賃上げ効果(コスト投下)を完全に無効化し、組織の士気をどん底まで低下させる最大の要因となります。

3. 固定残業代(みなし残業)の罠:2026年に急増する法的リスク

最低賃金の急激な上昇において、広島の中小企業が見落としがちな、極めて危険な法的リスクがあります。それが「固定残業代(みなし残業代)」制度の崩壊です。

多くの企業では、基本給を低く抑える代わりに「営業手当」や「業務手当」といった名目で、月20時間〜40時間分の固定残業代を支給しています。しかし、最低賃金が1,085円に上がったことで、「基本給を所定労働時間で割った時給換算額」が最低賃金を下回ってしまうケースが続出しています。

最低賃金をクリアするために、慌てて基本給を上げ、その分固定残業代を減らして「総支給額を同じ」にする操作(賃金の付け替え)を行う企業がありますが、これは労働条件の「不利益変更」に該当し、労働基準監督署の是正勧告や、退職した従業員からの未払い残業代請求訴訟などの重大な労使トラブルに直結します。2026年、賃金テーブルの構造そのものを合法かつ合理的に見直すことは、もはや待ったなしの経営課題なのです。

4. 賃上げを「投資」に変える:人事評価制度の再構築ステップ

賃上げを単なる利益の圧迫(コストアップ)に終わらせず、生産性向上に直結する「投資」に変えるためには、ブラックボックス化した「評価制度」と「給与体系」の完全な連動が不可欠です。

期待される「役割」の言語化と等級制度

中小企業に強くおすすめするのは、大企業が使うような難解で複雑な評価シートの導入ではありません。「誰が・何を・どこまでできれば、会社から評価され給与が上がるのか」というルールを、誰が読んでもわかるようにシンプルに書き出すことです(等級制度の構築)。

評価の軸は、以下の3つに絞り込みます。

評価の軸 対象となる内容 現場での具体例
能力(スキル)評価 その業務を遂行するために必要な専門知識や技術力。 JIS溶接資格の取得、最新の3D-CADの操作スキル、接客・クレーム対応マニュアルの完全習得など。
情意(姿勢)評価 仕事に対する向き合い方や、組織への貢献姿勢(コンピテンシー)。 職場の5S(整理・整頓など)の徹底、若手後輩への積極的な技術指導、月1回の業務改善提案の提出など。
成果(業績)評価 生み出した具体的な結果や、会社への直接的な利益貢献。 製造ラインの不良品・ミスの削減率、顧客への納期遵守率、個人の売上・粗利目標の達成度など。

これらを明文化して全社員に公開し、半年に一度の定期的な「1on1面談」で上司から直接フィードバックを行うことで、従業員は初めて「自分の努力の方向性が間違っていないか」「どうすれば自分の賃金が上がるのか」という明確な道筋(キャリアパス)を見出すことができます。この納得感こそが、定着率を高める最大の接着剤となります。

5. 生産性向上と連動した「業務改善助成金」等による原資の確保

「評価制度を作って給与を上げる仕組みはわかったが、肝心の『無い袖は振れない(原資がない)』」というのが経営者の本音でしょう。そこで2026年、広島県内の中小企業が絶対に、そして積極的に活用すべきなのが国の支援策です。

業務改善助成金の戦略的活用

事業場内の最低賃金を引き上げ、かつ生産性を高めるための設備投資等を行った場合に、その設備投資費用の一部が国から強力に助成されるのが「業務改善助成金」です。

「人手が足りないから、利益を削って泣く泣く給与を上げる」という発想を捨ててください。正解は、「助成金を活用して最新のITツール(受発注システムやAIソフトウェア)や自動化機械を導入して業務効率を劇的に上げ、その結果として浮いた時間とコスト(利益)を、社員の大幅な賃上げに回す」という好循環のモデルです。この国の支援スキームを経営戦略の中心に据え、助成金で設備投資の痛みを和らげながら、合法的に賃金テーブルを一段上のステージへと押し上げるのです。

賃上げ促進税制によるバックアップ

さらに、前年度より従業員の給与総額(雇用者給与等支給額)を一定割合以上増やした企業に対しては、法人税からその増加額の一部を直接控除できる「賃上げ促進税制」という強力な優遇措置も用意されています。顧問税理士や社会保険労務士と連携し、これらの制度をフル活用することで、持ち出しのコストを極限まで抑えながら組織改革を断行することが可能です。

6. 広島県での実践事例:製造業A社(従業員25名)の劇的V字回復

ここで、私たちが実際に支援に入り、最低賃金引き上げの危機を見事に乗り越えた広島の地元企業の事例をご紹介します。

【背景と課題】
広島市内で自動車の精密部品を製造するA社(従業員25名)。2024年の最低賃金1,000円突破時に、他社への人材流出が相次ぎ、深刻な人手不足に陥りました。特に、手塩にかけて育てた20代の若手が「3年以内に半数以上離職する」という異常事態でした。ヒアリングの結果、評価が完全に「社長のさじ加減」であり、どんなに技術を覚えても「お前はまだ若いから」と時給が上がらないことに、若手のモチベーションが完全に底をついていたことが判明しました。

【HRCによる対策と実行】
私たちは直ちに現場に入り、各工程のベテラン職人と対話を重ねながら、A社独自の「スキルマップ(技能習熟度表)」を作成しました。プレス加工、検査、保守メンテナンスなどの各工程において「何ができれば一人前か」を5段階のレベルで細かく定義し、それが出来るようになれば(レベルが1段階上がるごとに)、基本時給に「+50円」が明確にプラスされる評価ルールを構築・公開しました。同時に、管理職には「部下をどう育成し、面談でどうフィードバックするか」の徹底した評価者研修を行いました。

【結果と現在】
効果は絶大でした。若手社員自身が「自分がどの機械の操作スキルを身につければ、時給が1,100円、1,200円になるのか」をゲーム感覚で明確に把握できるようになり、休憩時間にも自主的に先輩に技術を教わろうとする前向きな文化が現場に定着しました。生産効率は目に見えて向上し、離職率は劇的に低下。
そして迎えた2025年11月の「1,085円」への大改定時も、A社はパニックに陥ることなく、向上した生産性(利益)を原資として、計画通りに全社員の賃上げを笑顔で実施することができました。今ではハローワークの求人票に「明確なスキルアップ昇給制度あり」と堂々と記載し、採用競争力でも他社を圧倒しています。

7. 制度導入のメリット・デメリットと運用における注意点

専門家として、人事評価制度を導入する際のリアルな「光と影」をお伝えしておきます。

メリット(もたらされる果実)

  • 離職率の劇的な低下: 評価の透明性と昇給のルールが高まることで、社員は「この会社で長く働き続ける明確なメリットと安心感」を感じやすくなります。
  • マネジメント層の強化: 制度を運用することで、管理職が「プレイングマネージャー」から脱却し、部下をしっかりと「見て、育てる」習慣が強制的に身につき、組織全体に活気が生まれます。
  • 圧倒的な採用競争力: 売り手市場の広島において、求職者は「入社後のリアルな待遇と成長プロセス」を最も重視します。明確な制度の存在は、採用活動における最強の武器となります。

デメリット(注意点と覚悟)

  • 導入初期の運用負担: 制度を回し始める最初の1年間は、目標設定や面談時間の確保など、現場の管理職に一定の負担がかかります。ここで「面倒だから」と形だけの運用になると、逆に社員の不信感を招き制度は崩壊します。
  • 制度の硬直化リスク: 一度決めた賃金ルールに縛られすぎると、急な事業環境の変化に柔軟に対応できなくなる場合があります。外部専門家を交えながら、最低でも2年に1回は制度をチューニング(見直し)していくメンテナンス作業が不可欠です。

用語集

  • 最低賃金(広島県): 労働基準法に基づき、国が法的に定める「使用者が労働者に支払わなければならない最低限の時給額」。広島県では2025年11月より1,085円が適用。これを1円でも下回ると、経営者は罰則(罰金)の対象となります。
  • 業務改善助成金: 生産性向上に資する設備投資(ITツール、POSレジ、リフト等)を行い、事業場内の最低賃金を一定額以上引き上げた中小企業に対して、その投資費用の一部(最大600万円等、引き上げ額や要件により変動)を国が助成する極めて強力な支援制度。
  • 賃上げ促進税制: 前年度より従業員の給与総額(ベースアップや賞与増)を一定割合以上増やした企業に対し、法人税(個人事業主は所得税)からその増加額の一部を直接控除(減税)する優遇税制。
  • 情意評価(コンピテンシー評価): 売上のような数値化しやすい結果ではなく、「意欲」「仕事への態度」「協調性」「規律性」といった行動特性を対象とする評価手法。中小企業において、会社の経営理念を現場に浸透させるために非常に有効。
  • 固定残業代(みなし残業): 実際の残業時間に関わらず、あらかじめ一定時間分の残業代を固定額として毎月支払う仕組み。最低賃金が上昇すると、この「固定額」の土台となる基本給の単価も再計算が必要になるため、意図せぬ最低賃金割れを起こしやすく、2026年は特に緻密な計算と注意が必要。

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