卸売業向け
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「営業部門にはインセンティブがあるのに、なぜ私たちは毎日同じ給料で、出荷量が増えるほど残業ばかり増えるのか」
卸売業の物流現場や倉庫内作業に従事するスタッフから、このような不満の声が上がっているとしたら、それは組織にとって危険な兆候です。多くの卸売企業において、売上を作る営業部門が花形とされる一方、商品を届ける物流部門は「コストセンター」とみなされ、評価や待遇において後回しにされがちです。
しかし、2024年問題をはじめとする物流クライシスや、慢性的な労働力不足の中で、この「格差」を放置することは経営リスクそのものと言えます。物流スタッフの離職は、即座に「商品が届かない」事態を招き、営業がどれほど受注しても売上にならない状況を作り出してしまうからです。
本コラムでは、これまで数多くの卸売業の人事制度改革を支援してきたコンサルタントの視点から、物流・倉庫部門特有の評価の難しさを解き明かし、現場のモチベーションを高め、定着率と生産性を同時に向上させるための具体的な評価制度設計のノウハウを解説します。
1. 「営業ばかり優遇される」物流現場の不満と、そこから来る離職リスク
物流現場の不満は、単なる「給料が安い」という点だけに留まりません。そこには、会社の中での「扱われ方」に対する根深い不公平感が存在します。
営業と物流の間に横たわる「構造的な溝」
卸売業のビジネスモデル上、営業担当者は「利益を稼ぐ人(プロフィットセンター)」、物流担当者は「経費を使う人(コストセンター)」という役割分担になりがちです。この構造が、評価制度や風土に色濃く反映されています。
営業担当者が大口契約を取ってくると、社内は沸き立ち、その担当者は賞賛され、ボーナスにも反映されます。一方で、その大量の商品を入荷・検品し、汗だくになってピッキングし、トラックに積み込む物流スタッフには、賞賛の言葉は届きません。むしろ、急な大量出荷によって残業が発生し、疲弊します。
営業の成功が、物流の負担になる。この構造的な利益相反を放置したままでは、物流スタッフは「会社は自分たちを駒としか見ていない」と感じ、エンゲージメント(帰属意識)は低下の一途をたどります。
「サイレント退職」が招く採用コストの増大
物流現場のスタッフ、特に真面目に黙々と作業をこなす優秀な層ほど、不満を口に出さずに辞めていく傾向があります。いわゆる「サイレント退職」です。
彼らが辞めた後、同レベルのスキルを持つ人材を採用しようとすると、昨今の物流業界の賃金高騰により、以前の1.2倍〜1.5倍のコストがかかることも珍しくありません。さらに、新しいスタッフが業務に慣れるまでの間、誤出荷のリスクが高まり、既存スタッフへの教育負担も増すという悪循環に陥ります。
「物流は誰でもできる仕事」という古い認識を捨て、専門性を持った職種として適正に評価・処遇することが、結果として採用コストを抑え、安定した配送品質を維持する最短ルートとなります。
2. 物流・倉庫部門の評価が難しい理由(成果が見えにくい)
営業職であれば「売上目標達成率」という明確な指標がありますが、物流職の評価制度設計において、多くの人事担当者が頭を抱えるのが「何を成果とするか」という問題です。
「加点法」の営業、「減点法」の物流
物流業務の最大の特徴は、「当たり前品質」の要求レベルが高いことです。
指定された商品を、指定された時間に、指定された場所に、破損なく届ける。これは物流にとって「できて当たり前(0点)」の状態です。もし誤出荷や遅延があればマイナス評価(減点)になりますが、完璧にこなしても「プラス」として評価されにくい特性があります。
人間は、減点ばかりされる環境ではモチベーションを維持できません。「ミスをしないように」と萎縮し、新しい提案や効率化へのチャレンジ意欲が失われます。これが、物流部門の評価制度を難しくし、現場の閉塞感を生んでいる最大の要因です。
個人の成果が見えにくい「チーム戦」のジレンマ
倉庫業務は、入荷、棚入れ、ピッキング、検品、梱包、出荷という一連の流れ(フロー)で成り立っています。前工程が遅れれば後工程も遅れ、誰か一人が突出して早くても、全体の出荷完了時間が早まるとは限りません。
そのため、個人の処理能力だけを単純に評価すると、「自分だけ早ければいい」という自分勝手な行動を助長したり、丁寧さを欠いた雑な作業によるミスを誘発したりする恐れがあります。個人の頑張りと、チーム全体の生産性をどうバランスよく評価に組み込むか。ここが設計の腕の見せ所となります。
3. 具体的指標:定量評価と定性評価の組み合わせ方
「減点法」の呪縛から脱却し、納得感のある評価制度を作るためには、数値で測る「定量評価」と、行動やスキルで測る「定性評価」を巧みに組み合わせる必要があります。
定量評価:納得感のある数値目標の設定
数値目標を設定する際は、「個人」と「チーム」の指標を分けることが重要です。
誤出荷率(品質指標)
物流品質の根幹です。ここでは「PPM(Parts Per Million:100万回あたりの発生件数)」などで管理します。
重要なのは、個人のミスを責めるための材料にするのではなく、「なぜミスが起きたか」を分析し、仕組みで解決できたかを評価することです。
例えば、「ピッキングリストの商品コードの文字を大きくしたことで、チーム全体の誤出荷率が0.1%改善した」といった改善成果は、高く評価すべきポイントです。
在庫差異(管理指標)
実在庫とデータ上の在庫のズレ(棚卸差異)は、会社の資産管理に直結します。
これを倉庫スタッフの評価指標に入れることで、「商品を丁寧に扱う」「ロケーション管理を徹底する」という意識が芽生えます。在庫差異を限りなくゼロに近づけることは、営業部門が在庫確認をする際の手間を減らし、会社全体の利益に貢献する立派な成果です。
ピッキング速度・生産性(効率指標)とチーム目標の推奨
「1時間あたりのピッキング行数」などを計測しますが、これを個人目標に設定しすぎると、取りやすい商品ばかり選ぶ「いいとこ取り」が発生しかねません。
そのため、生産性指標については「チーム目標」として設定することを推奨します。「今月はチーム全体で残業時間を10時間削減しつつ、出荷完了時間を30分早める」といった目標を掲げ、メンバー同士が協力してボトルネックを解消する動きを評価します。チーム全員で達成感を共有できる仕組みが、職場の雰囲気を明るくします。
定性評価:多能工化と改善提案
数値に表れにくい貢献を拾い上げるのが定性評価の役割です。ここでは、将来への期待を含めた評価を行います。
多能工化(スキルマップ)への取り組み
物流現場では、特定の人が休むと業務が回らなくなる「属人化」がリスクとなります。これを防ぐために「多能工化」を推進します。
具体的には「スキルマップ(星取表)」を作成し、評価と連動させます。
- レベル1: フォークリフトの運転ができる
- レベル2: 入荷検品と棚入れができる
- レベル3: トラブル時のシステム対応ができる
- レベル4: 新人への指導ができる
このように習熟度を可視化し、「できる業務が増えれば、確実に等級や給与が上がる」という道筋を示します。これにより、スタッフは自発的に新しい業務を覚えようとする意欲を持ちます。
業務改善提案
現場を知り尽くしているのはスタッフ自身です。「この棚の配置を変えれば動線が短くなる」「梱包資材をこう変えればコストが下がる」といった、日々の小さな気づきや提案を評価します。
提案の質だけでなく、「提案した件数」自体を評価対象とすることで、現場から声を上げやすい文化を作ります。採用された提案によってコスト削減が実現した場合は、営業のインセンティブと同様に、少額でも報奨金を出すなどのフィードバックを行うとさらに効果的です。
4. キャリアパス:「作業員」で終わらせない、物流リーダー・センター長への道筋
若手スタッフが辞める大きな理由の一つに「将来が見えない」という不安があります。「10年後も今と同じように、ただひたすら箱を運び続けているのか」と思わせてしまってはいけません。
専門職としてのキャリアラダーを明示する
物流スタッフには、明確なキャリアの階段(ラダー)を用意する必要があります。単なる「作業員」ではなく、「物流のプロフェッショナル」へと成長するストーリーを提示します。
ステップ1:物流オペレーター(一般職)
正確で迅速な作業ができる段階。スキルマップに基づき、担当できる業務範囲を広げていきます。
ステップ2:チームリーダー・現場監督(指導職)
数名のパート・アルバイトスタッフを束ね、シフト管理や作業指示を行う段階。個人の作業能力だけでなく、チームを動かすコミュニケーション能力が求められます。
ステップ3:物流センター長(管理職)
センター全体の収支管理(PL管理)、配送業者との交渉、安全衛生管理を行う段階。経営視点を持ち、物流コストの最適化を担います。
ステップ4:SCM(サプライチェーン・マネジメント)プランナー
現場を離れ、全社的な物流戦略、在庫戦略の立案に関わるポジション。仕入れから販売までの物の流れを俯瞰し、システム導入や拠点戦略を策定します。
賃金制度との連動
これらのキャリアステップに応じた賃金テーブル(給与レンジ)を公開することが重要です。「センター長になれば、これくらいの年収が得られる」というモデルケースが見えていれば、現在の業務に対するモチベーションが変わります。
また、フォークリフト免許、運行管理者資格、物流技術管理士などの資格取得に対して手当を支給することも、専門性を高めるメッセージとして有効です。
5. まとめ
物流部門の活性化が顧客満足度(納期・品質)を決める
「商品はあって当たり前、届いて当たり前」。その当たり前を支えているのは、物流倉庫の現場スタッフたちです。
AmazonなどのEC全盛の時代において、顧客は商品の価格や機能だけでなく、「すぐに届くか」「梱包は丁寧か」という配送品質(UX:顧客体験)で仕入先を選定するようになっています。つまり、物流部門はもはやコストセンターではなく、他社との差別化を生み出す「競争力の源泉」なのです。
営業偏重の評価制度を見直し、物流スタッフに光を当て、彼らが誇りを持って働ける環境を整えること。それは離職を防ぐだけでなく、誤出荷の減少や配送スピードの向上を通じて、結果的に貴社の顧客満足度を高め、売上拡大に寄与します。
部門別評価制度設計のノウハウはこちら
物流・倉庫部門の評価制度を構築するには、現場特有の業務フローへの理解と、きめ細やかな指標設定が不可欠です。営業と同じ物差しでは測れませんし、一般的な事務職の評価シートも流用できません。
ヒューマンリソースコンサルタント(HRC)では、卸売業の物流現場の実情に即した、「運用可能」で「納得感のある」評価制度の構築を支援しています。
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