オンデマンド給与(日払い・前払い)とは?

人事制度や労務管理に関する最新トレンドを分かりやすく解説しています。

オンデマンド給与(日払い・前払い)とは?【非正規人材の確保と定着率向上につながる給与受取制度】

【定義】オンデマンド給与(給与前払いサービス)とは、従業員が毎月の給与支払日を待たずに、すでに勤務した分の賃金の範囲内で、会社が定めるルールやサービスの利用条件に基づき、給与の一部を前払いで受け取ることができる仕組みのことです。

パート・アルバイト、短時間勤務者、スポット勤務者など、柔軟な働き方を希望する人材が増える中で、物流、飲食、小売、介護、サービス業などでは、「働いた分を早く受け取れる」仕組みが採用時の訴求材料となる場合があります。ただし、導入にあたっては、労働基準法上の賃金支払ルール、手数料負担、給与計算実務、第三者サービスの法的整理を確認したうえで制度設計することが重要です。


なぜオンデマンド給与が「採用力・定着率」の向上につながるのか?

求人票や求人媒体に「給与前払い制度あり」「日払い・週払い相談可」などと記載できることは、急な出費への対応や柔軟な給与受取を重視する求職者にとって、応募を検討するきっかけとなる場合があります。

また、従業員にとっては、すでに働いた分の賃金を必要なタイミングで受け取れる安心感があり、生活費の一時的な不足や急な支出に対応しやすくなります。結果として、勤務継続への不安を軽減し、早期離職の防止や定着率向上につながる可能性があります。

一方で、オンデマンド給与はあくまで「既に発生した賃金の一部を前払いする制度」であり、会社が賃金制度そのものを変更するものではありません。導入時には、通常の給与支払日、前払い可能額、申請方法、利用回数、手数料の負担、給与明細への表示方法を明確にしておく必要があります。


導入時における「労働基準法」上の注意点

オンデマンド給与を導入する場合は、労働基準法第24条の「賃金支払いの5原則」に反しないよう、制度設計と運用ルールを整備する必要があります。

  • 「既に勤務した分の賃金」の範囲内で運用すること: 前払いの対象は、原則として、従業員がすでに労務を提供し、賃金債権が発生している部分に限定して設計します。まだ勤務していない将来分を支払う仕組みにすると、賃金の前払いではなく、貸付けや立替えに近い性格となるおそれがあります。
  • 通常の給与支払日と残額支払いを明確にすること: 前払いを行う場合でも、会社は通常の給与支払日に、前払い済み額を控除した残額、控除項目、支給総額を明確に計算し、給与明細で確認できるようにする必要があります。前払い制度を導入したからといって、会社の賃金支払義務が免除されるわけではありません。
  • 「直接払・全額払の原則」に注意すること: 給与前払いサービスを利用する場合でも、賃金が従業員本人に確実に支払われる仕組みであることが必要です。また、利用手数料や振込手数料を従業員負担とする場合、賃金から当然に控除できるわけではありません。賃金から控除する場合は、法令に基づく控除または労使協定等の適切な手続きが必要です。
  • 第三者サービスの法的整理を確認すること: HRテック事業者など外部サービスを利用する場合は、そのサービスが賃金支払代行として整理されているのか、実質的に貸付けや立替払いに該当するリスクがないかを確認する必要があります。特に、サービス会社が資金を立て替える仕組み、従業員から手数料を徴収する仕組み、会社への精算時期が遅れる仕組みについては、貸金業法上の論点が生じる可能性があります。
  • 賃金規程・給与前払い規程を整備すること: 前払い可能額、対象者、申請期限、支払方法、手数料負担、利用停止事由、退職時の精算方法などを社内規程に明記しておくことで、誤解やトラブルを防止できます。

非常時払との違い

労働基準法第25条には、労働者が出産、疾病、災害等の非常の場合の費用に充てるために請求した場合、使用者は、支払期日前であっても、すでに行われた労働に対する賃金を支払わなければならないという「非常時払」の制度があります。

これに対し、オンデマンド給与は、災害や疾病などの非常時に限らず、会社が任意に導入する給与前払い制度です。そのため、非常時払とは異なり、対象者、申請方法、前払い上限額、利用回数、手数料負担などを会社の制度として明確に定めて運用することが重要です。

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