「管理監督者」の定義を誤解した場合、未払い残業代はいくらになりますか?

人事労務に関するFAQ

「管理監督者」の定義を誤解した場合、未払い残業代はいくらになりますか?【中小企業の労務リスク算出】

【結論】「管理監督者」の定義を誤解して適用した場合、一般社員と同様に過去2〜3年分(現在は3年)の残業代、休日労働手当、深夜労働手当(割増賃金)の全額が未払いとなり、その金額は数百万〜1,000万円を超える重大な労務リスクとなります。管理監督者は、役職名ではなく、権限や待遇の実態に基づいて厳格に判断されます。

中小企業で特に発生しやすい、管理監督者の誤用による未払い残業代リスクは、企業の財務に深刻な影響を与えます。具体的な定義と、リスクを回避するためのポイントを解説します。


管理監督者の定義と誤解による未払い残業代リスク

1. 管理監督者と認められるための3つの要件

管理監督者は、労働基準法上の労働時間・休憩・休日の規定が適用されないため(深夜労働は適用される)、以下の要件をすべて満たす必要があります。役職名(例:「部長」「工場長」)だけでは認められません。

  • 経営者との一体性: 経営方針の決定に参画するなど、経営に関する重要事項への関与度が高いこと。
  • 出退勤の自由裁量: 厳格な時間管理を受けず、自身の出退勤時間を自由に決められること。
  • 地位に見合う待遇: 一般社員と比較して、基本給や賞与などでその地位に見合う十分な待遇(高い役職手当など)を受けていること。

2. 未払い残業代のリスク算出

上記要件を満たさない社員を管理監督者として扱っていた場合、その社員は一般社員と見なされます。未払いとなる主な費用は以下の通りです。

未払いとなる項目 割増率(法令) 備考
時間外労働(残業代) 125%以上 月60時間超は150%以上
休日労働手当 135%以上 法定休日(原則日曜日)の労働
深夜労働手当 25%以上(管理監督者でも適用) 22時〜翌5時の労働

これらを過去3年分(または社員が請求すれば2年分)さかのぼって支払う義務が生じるため、一人あたり数百万円の費用が発生するケースが少なくありません。


中小企業が取るべきリスク回避策

  1. 管理監督者への時間管理の徹底: 出退勤の自由裁量を認める一方で、深夜労働時間だけは正確に把握し、深夜割増賃金を支払います。
  2. 役職手当の適正化: 役職手当が、一般社員の残業代に満たない水準である場合、管理監督者としての待遇が不十分と判断されるリスクが高まります。待遇水準の見直しが必要です。
  3. 労務監査の実施: 外部の社会保険労務士などの専門家による「労務監査(管理監督者の実態調査)」を実施し、法的リスクの有無を客観的に診断することが最も重要です。

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