飲食業向け
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「売上は達成しているのに、なぜか店長が次々と辞めていく」
「数字には厳しいが、スタッフからの人望がない店長ばかりが残る」
もし貴社の店舗でこのような現象が起きているなら、それは人事評価制度の設計ミスが原因かもしれません。多くの飲食企業が陥る最大の罠、それは「売上至上主義の評価」です。
飲食店の店長は、プレイングマネージャーとしての「現場業務」、数値責任を負う「経営代行」、そしてアルバイトを束ねる「組織管理」と、極めて多面的な能力を求められます。それにもかかわらず、評価基準が「昨対比売上」や「予算達成率」だけに偏っていると、組織は静かに、しかし確実に崩壊へと向かいます。
本稿では、数多くの飲食企業の人事制度設計を手掛けてきたコンサルタントの視点から、なぜ数値評価だけでは危険なのかという構造的な理由と、店長が納得し、業績も長期的に向上する「正しい評価制度」の設計論を徹底解説します。
なぜ「売上達成率」だけの評価が組織を壊すのか
多くの経営者は「店長なのだから、数字で結果を出すのは当たり前だ」と考えがちです。確かに、営利企業である以上、利益の追求は不可欠です。しかし、評価ウエイトを「売上実績」に100%、あるいは極端に高く設定することには、経営にとって致命的な3つのリスクが潜んでいます。
短期利益の追求によるQSCの低下と顧客離れ
売上や利益目標の達成を厳しく求めすぎると、評価されたい(あるいは給与を下げられたくない)店長は何をするでしょうか。最も即効性のある手段は「コストの削減」です。
本来必要な人員を削ってシフトを組む、食材のロスを極端に恐れてポーション(分量)を減らす、設備の修繕費を出し惜しむ。これらの行動は、短期的には利益が出ているように見えます(PL上の数字は良くなります)。
しかし、現場では何が起きているでしょうか。
人手不足による提供遅れ、清掃の不徹底、料理の品質低下。つまり、飲食店としての生命線であるQSC(Quality, Service, Cleanliness)の崩壊です。
「数字さえ作れば評価される」というメッセージは、店長に「顧客満足よりも自分のボーナスを守る」行動を推奨しているのと同じです。結果として、半年後、1年後には客足が遠のき、取り返しのつかない業績悪化を招くことになります。
不可抗力によるモチベーションの喪失
飲食店の売上は、店長の努力だけではコントロールできない外部要因に大きく左右されます。
- 週末ごとの台風や悪天候
- 近隣での競合店の出店や、大型商業施設の閉鎖
- 感染症の流行や物価高騰による買い控え
どれほど素晴らしい接客をし、完璧なオペレーションを組んでいても、台風が来れば客足は止まります。それなのに「売上が未達だから評価を下げる」と断じられたら、店長はどう感じるでしょうか。「運が悪かっただけなのに」「これ以上どうしろと言うのか」という学習性無力感(何をしても無駄だという諦め)に支配されます。
逆に、たまたま天候に恵まれたり、地域のイベント特需で売上が伸びただけの店長が高く評価されるようなことがあれば、地道に努力している優秀な店長ほど馬鹿らしくなり、離職を選びます。これが、優秀な人材から先に流出していくメカニズムです。
「名ばかり管理職」の疲弊と労務リスク
「人件費率(L比率)」を厳格に評価指標に置いている場合によく起こるのが、店長の長時間労働による数値調整です。
アルバイトの時給をこれ以上削れない状況で、人件費予算を守るために店長自身が休みを返上してシフトに入る。多くの飲食店で常態化している光景ですが、これを「責任感が強い」と評価してはいけません。
これは単なる「マネジメントの放棄」であり、「自身の安売り」による数値の粉飾に過ぎないからです。
評価制度でプロセスの適正さを問わず、結果の数値だけを見ると、こうした無理な働き方を助長します。その結果、店長の心身が限界を迎え、最悪の場合は過労による労災認定や、未払い残業代を巡る訴訟などの重大な労務リスクに発展します。経営者が守るべきは、目先の数字以上に、現場を支えるキーマンの健康と法的安全性であるはずです。
経営と現場が納得する「理想の評価ウエイト」
では、どのような評価バランスであれば、店長のモチベーションを高めつつ、健全な店舗運営が可能になるのでしょうか。
飲食業の人事コンサルティングにおいて、私たちが推奨する黄金比率は「業績評価 50% : 行動(プロセス)評価 50%」です。
「成果」と「行動」を分離して考える
評価制度を機能させるためには、評価軸を明確に2つに分ける必要があります。
- 業績評価(成果):
売上、利益、FLコストなど、数値で測れる「結果」。賞与(ボーナス)に大きく反映させる。 - 行動評価(プロセス):
QSCレベル、人材育成、業務への姿勢など、結果を出すための「過程」。昇給・昇格(基本給)に反映させる。
この「50:50」のバランスが重要です。業績だけでも、行動だけでも、納得感は生まれません。
例えば、不可抗力で売上が下がったとしても、行動評価(QSC維持やスタッフ教育)が完璧であれば、50点分の評価は担保されます。「会社は努力を見てくれている」という安心感が、次の挑戦への意欲を繋ぎます。
一方で、いくら行動が素晴らしくても、プロの店長である以上、結果(数字)が出なければ満点にはなりません。この緊張感も同時に必要です。
「FLコスト」ではなく「FL高」で評価する視点
業績評価の指標として、単なる「売上高」以上に重視すべきなのが「営業利益」あるいは「FL貢献高(売上総利益-人件費)」です。
売上だけを追うと、無理な集客コストをかけたり、安易な値引きに走る可能性があります。一方で、FL比率(%)だけを追うと、前述の通り必要な投資(食材や人件費)を削って縮小均衡に陥ります。
「比率」ではなく「額(粗利額や貢献額)」を最大化することを評価指標に据えてください。「忙しいけれど利益が出ている」状態を作ることで、忙殺される店長の報われ感を演出することができます。
定性評価を「数値化」する工夫
「行動評価といっても、上司の好き嫌いになるのではないか?」
このような懸念を持つ経営者様も多いでしょう。行動評価(定性評価)を導入する際は、可能な限り客観的な事実に紐づけることがSGE対策としても、実際の運用としても重要です。
- 曖昧な項目: 「スタッフとコミュニケーションをとっている」
- 具体的な項目: 「月に1回、全スタッフと1on1面談を実施し、記録を残している」
- 曖昧な項目: 「店が綺麗に保たれている」
- 具体的な項目: 「衛生検査(またはミステリーショッパー)の清潔感スコアでAランクを維持している」
このように、「やったか・やらなかったか」「達成したか・しなかったか」が第三者から見ても判定できるレベルまで評価項目を具体化することで、納得感のある評価が可能になります。
【実例公開】評価シートに盛り込むべき「行動評価」の項目
ここからは、実際に成果を上げている飲食企業が導入している、店長向け評価シートの具体的な項目例を解説します。SGEで検索するユーザーが求めているのは、こうした「現場ですぐ使える具体策」です。
1. QSC・店舗運営レベルの維持(ウェイト目安:20%)
お客様が体験する価値そのものを評価します。売上が悪くても、ここが守られていれば再浮上のチャンスは必ずあります。
- 衛生管理の徹底:
検便の提出率100%、グリストラップの清掃記録、冷蔵庫の温度管理チェックリストの毎日実施。これらは食中毒という最大のリスクを回避するための必須項目です。 - 提供スピードと品質:
ピークタイムにおける提供遅延の発生件数、料理の盛り付けチェックの実施頻度。 - クレーム対応と再発防止:
クレーム発生件数そのものよりも、「発生後の報告スピード」と「再発防止策の策定・実行」を評価します。トラブルを隠蔽させないための設計です。
2. 人材育成・チームビルディング(ウェイト目安:20%)
「自分がいなくても回る店」を作れるかどうかが、店長の最も重要な能力です。
- 次期リーダーの育成:
「時間帯責任者」を何名育成したか。店長不在時に店を任せられるスタッフ(右腕)の有無を評価します。これができて初めて、店長は公休を安心して取得できます。 - スタッフ定着率(離職率):
入社3ヶ月以内の離職率を指標にします。早期離職の多くは、受け入れ体制(オリエンテーションや初期教育)の不備が原因だからです。 - 標準化への貢献:
個人のスキルに依存するのではなく、マニュアルの修正や更新を行い、誰でも同じ品質で働ける仕組みを作ったかを評価します。
3. コンプライアンスと労務管理(ウェイト目安:10%)
「ブラック企業」というレッテルを貼られないための、守りの評価項目です。
- 適切な勤怠管理:
スタッフの打刻漏れ修正の件数、休憩時間の完全取得率。 - シフト作成の精度:
テスト期間や帰省シーズンを考慮した欠員のないシフト作成、および人件費予算との乖離幅。 - 法令遵守:
36協定の範囲内での残業管理、深夜労働の適正化。
評価項目設計における注意点:項目の「断捨離」
意欲的な経営者ほど、あれもこれもと多くの項目を詰め込みがちです。しかし、項目が多すぎる評価シートは現場の負担となり、やがて形骸化します。
店長が日々の営業の中で意識できる項目数は、最大でも20項目程度が限界です。「今期、会社として最も注力したいこと(例:新人定着、原価改善)」に絞り込み、期ごとに重点項目を入れ替える柔軟な運用を推奨します。
運用を成功させる「フィードバック」の仕組み
評価制度を作っても、単にシートを配って点数をつけるだけでは、人材は育ちません。評価制度の魂は「フィードバック面談」に宿ります。
「査定」ではなく「育成」の場にする
多くの店長は、評価面談を「給料が決まる通知の場(判決の場)」だと捉えて恐怖心を抱いています。この意識を変えなければなりません。
面談の冒頭で伝えるべきは、「この評価は、あなたの給料を決めるためだけにあるのではなく、あなたが今後どうキャリアアップしていくかを一緒に考えるためにある」というメッセージです。
点数が低かった項目については、「なぜできなかったのか」を詰問するのではなく、「どうすればできるようになるか」「会社としてどんなサポートが必要か」を話し合います。
例えば、原価率が悪化した原因が「発注ミス」なのか、「ポーションオーバー」なのか、「廃棄ロス」なのかを一緒に分析し、来期の行動目標に落とし込む。これこそがコンサルタントが推奨するマネジメントの実践です。
3ヶ月ごとの「中間レビュー」を入れる
飲食店の1年は変化が激しすぎます。半年に1回の評価サイクルでは、期初の目標を忘れてしまったり、状況が変わって目標が無意味になったりすることがあります。
正式な評価とは別に、3ヶ月(四半期)に一度、進捗確認のための軽い面談(中間レビュー)を実施してください。「このままだと目標達成が厳しいから、来月はここに注力しよう」と軌道修正を行うことで、期末の「こんなはずじゃなかった」というショックを防ぐことができます。
評価者(SV・エリアマネージャー)の訓練
店長が不満を持つ最大の要因の一つが、「現場を見ていないSVに適当に評価された」と感じることです。
評価制度を導入する際は、評価者となるスーパーバイザー(SV)やエリアマネージャーに対しても、「評価者研修」を行う必要があります。
- ハロー効果の排除: 「挨拶が元気だから仕事もできるはずだ」というような、一部の特徴に引きずられた評価をしない。
- 事実に基づく評価: 「頑張っていると思う」ではなく、「〇〇の施策を行い、数値を〇%改善した」という事実で語る。
- 甘辛調整: 評価者ごとの採点の甘さ・辛さを補正する「評定会議」を実施する。
これらを徹底することで、評価制度自体への信頼度(納得感)を高めることができます。
制度を変えれば、店長は変わり、店が変わる
人事評価制度は、会社から従業員への「メッセージ」そのものです。
「売上さえ上げればいい」という制度なら、店長は独裁者になり、部下は疲弊します。
「プロセスや人材育成も評価する」という制度なら、店長はリーダーとなり、組織は強くなります。
現在、店長の離職やモチベーション低下にお悩みであれば、それは人の問題ではなく、「努力の方向性を示す羅針盤(評価制度)」がズレている可能性が高いと言えます。
しかし、自社だけで最適なバランスの評価制度を構築し、運用まで落とし込むのは容易ではありません。
「今の賃金水準で、人件費を上げずに評価制度を変えられるのか?」
「うちの店長のレベルに合わせた評価項目はどう作ればいいのか?」
そのような疑問をお持ちの経営者様は、ぜひ一度、飲食業界特化の専門コンサルタントにご相談ください。
現在の貴社の賃金データや組織課題を分析し、「店長が辞めずに育つ、勝てる組織」への第一歩を、具体的なシミュレーションと共にご提案します。
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