職員20名以下のクリニックこそ「人事評価制度」が必要な理由|院長の負担を減らす組織づくり

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    「毎年、昇給の時期が来るのが憂鬱で仕方がない」
    「ボーナスの金額を渡した時、スタッフが一瞬見せる不満そうな顔が怖い」
    「古株の事務員と、新しく入った看護師の間で給与の逆転が起きてしまい、どう説明すればいいか分からない」

    開業から数年が経ち、患者数も安定してきたクリニックの院長先生から、このようなご相談を頻繁にいただきます。
    診療においてはプロフェッショナルである先生方も、こと「人事・労務」に関しては、明確な正解を持たずに悩み続けているケースがほとんどです。

    「うちはスタッフも10人程度だし、大病院のような堅苦しい評価制度なんて必要ない」
    開業当初はそう思われるのが自然です。しかし、組織の規模が小さく、人間関係が濃密なクリニックだからこそ、「院長を守るためのルール(人事評価制度)」が不可欠であると、私は断言します。

    本稿では、数多くの診療所・クリニックの人事制度構築に携わってきたコンサルタントの視点から、なぜ小規模組織にこそ制度が必要なのか、そして院長の業務負担を増やさずに運用できる「簡易版・評価制度」の作り方について解説します。

    目次

    1. 【悩み】なぜクリニックの院長は「昇給・賞与」の時期に憂鬱になるのか

    多くの院長先生が抱えるストレスの正体。それは「明確な基準がない中で、お金というデリケートな決定を独断で下さなければならない」という重圧です。

    💡 コンサルタントの視点:院長を襲う3つのストレス

    • どんぶり勘定の限界:「なぜあの人の方が高いのか」という説明がつかない。
    • えこひいき疑惑:距離が近いため、少しの会話量の差が「贔屓」と取られる。
    • 終わりのない賃上げ要求:ゴールのない昇給マラソンによる経営圧迫。

    1-1. どんぶり勘定の限界と「言った言わない」のトラブル

    開業時は、縁故採用や紹介会社経由の採用が多く、給与設定は「前職考慮」や「相場より少し高め」といった個別対応で決まりがちです。
    最初のうちはそれでも回ります。しかし、数年経つと必ず歪みが生じます。

    「先生、なぜ後から入ったBさんの方が、私より基本給が高いんですか?」
    「開業時から手伝っているのに、私の昇給額が月1,000円なのは納得できません」

    スタッフは、院長が思っている以上に、互いの給与事情に敏感です。休憩室での何気ない会話から情報は筒抜けになります。
    この時、院長の中に「明確な賃金テーブル」や「評価基準」が存在しないと、論理的な説明ができません。
    しどろもどろな弁明は、スタッフの不信感を増幅させます。結果、「先生は私を評価してくれていない」という感情的なしこりを残すことになります。

    1-2. スタッフとの距離が近すぎるがゆえの「えこひいき」疑惑

    クリニックの最大の特徴は、院長とスタッフの距離の近さです。これはチームワークの良さにつながる反面、評価においてはリスクとなります。

    例えば、院長が特定のスタッフ(例えば、手際の良い看護師や、愛想の良い受付)と楽しそうに話しているだけで、他のスタッフからどう見られるでしょうか。
    「先生は〇〇さんばかり贔屓している」「どうせボーナスも〇〇さんの方が多いんでしょ」

    評価基準がブラックボックス(院長の頭の中だけ)にある限り、どのような決定を下しても、それは「院長の好き嫌い」と受け取られてしまいます。
    客観的な物差しがない組織では、公平性への疑念が常に渦巻き、それが派閥争いや、最悪の場合「スタッフ一斉退職」という診療停止リスクへと発展するのです。

    1-3. 終わりのない「賃上げ要求」への恐怖

    「周りのクリニックはもっと出しているらしい」「物価も上がっているし、ベースアップしてほしい」

    スタッフからの要求は年々強くなります。基準がなければ、院長はその都度、頭を悩ませ、離職を恐れて防衛的に給与を上げざるを得なくなります。
    しかし、診療報酬は公定価格であり、売上には限界があります。無計画な昇給を繰り返せば、いずれ経営を圧迫し、利益が出ない体質になってしまいます。
    「どこまで上げればいいのか」というゴールが見えないマラソンを走らされているような感覚。これが、院長を疲弊させる元凶です。

    2. 【メリット】人事評価制度はスタッフを縛るものではなく、院長を守る「最強の鎧」

    人事評価制度というと、「スタッフを細かく管理し、順位をつけるためのもの」というイメージがあるかもしれません。
    しかし、クリニックにおける導入目的は全く異なります。それは、「院長が個人的な感情で決めているわけではない」という客観性を担保し、院長自身を精神的な負担から解放することにあります。

    2-1. 客観的なルールブックがあれば、院長が悪者にならない

    評価制度(賃金規定と評価シート)を導入すれば、昇給や賞与の決定プロセスが変わります。

    • Before: 「あなたの給料は私が決めた」
    • After: 「当院のルール(評価制度)に照らし合わせた結果、あなたの今の等級と評価はここになり、それに基づくと給与はこうなる」

    主語が「私(院長)」から「制度(ルール)」に変わるだけで、スタッフの納得感は劇的に高まります。仮に低い評価になったとしても、それは「院長に嫌われているから」ではなく、「基準を満たしていないから」という課題認識に変わります。
    院長は「査定する人」から、「スタッフが目標を達成できるよう支援する人(コーチ)」へとポジションを変えることができるのです。

    2-2. 採用難・離職対策としての「安心感」の醸成

    昨今の求職者、特に若い世代の医療従事者は、給与の高さ以上に「制度の透明性」を重視する傾向があります。

    「当院には明確なキャリアパスと評価制度があります。頑張ればここまで昇給します」
    採用面接でこの一言が言えるだけで、他のクリニックとの圧倒的な差別化になります。
    「ここは院長の気分で振り回されることはなさそうだ」「長く安心して働けそうだ」という安心感が、優秀な人材の確保と定着につながります。

    2-3. 「仲良しクラブ」から「医療チーム」への脱皮

    小規模組織にありがちな「なあなあ」の雰囲気を引き締め、プロフェッショナルな組織へと変える効果もあります。

    評価項目の中に、院長が大切にしている理念(例:「患者様を待たせない工夫」「笑顔での挨拶」など)を盛り込むことで、スタッフに「当院では何が重要視されるのか」を明確にメッセージとして伝えることができます。
    ただの仲良し集団ではなく、共通の目標に向かって自律的に動くチームを作るための「舵取り」の役割を、評価制度が果たしてくれます。

    3. 【ポイント】大病院の真似はNG!クリニック専用「簡易版評価制度」の設計図

    ここで最も重要な注意点をお伝えします。
    絶対に、大病院や一般企業の評価制度をそのまま真似してはいけません。

    何百床もある病院の複雑な「クリニカルラダー」や、緻密な「目標管理制度(MBO)」を、20名以下のクリニックに導入すれば、運用コスト(手間)がかかりすぎて1年で破綻します。
    クリニックには、クリニックに適した「軽くて、シンプルな制度」が必要です。

    3-1. A4用紙1枚で完結する「シンプル評価シート」

    評価シートは、A4用紙1枚、項目数は15〜20個程度で十分です。
    事務長がいないクリニックでは、集計や管理の手間を極限まで減らす必要があります。

    構成案:
    情意評価(スタンス) 50%: 挨拶、協調性、ルール遵守、報告連絡相談など。
    能力・行動評価(スキル) 40%: 職種ごとの具体的業務スキル。
    業績評価(貢献度) 10%: クリニック全体の目標達成への寄与など(個人のノルマは課さない)。

    これくらいシンプルな構成で始め、運用が定着してから徐々に項目を精査していく「スモールスタート」が成功の秘訣です。

    3-2. 職種別に見るべきポイント(具体的な項目例)

    シンプルといっても、職種ごとの専門性は反映させる必要があります。以下に、クリニックで導入しやすい具体的な評価項目の例を挙げます。

    【医療事務・受付】正確性と接遇

    • 受付対応: 患者様に対し、目を見て明るい笑顔で挨拶し、丁寧な言葉遣いができているか。
    • 会計業務: 金銭授受のミスがなく、正確かつ迅速に処理できているか。
    • レセプト業務: 月末月初の請求業務において、点検漏れや返戻を防ぐための確認を徹底しているか。
    • 環境整備: 待合室やトイレの清掃を自発的に行い、患者様が快適に過ごせる環境を保っているか。

    【看護師】技術と診療補助の先回り

    • 診療補助: 院長の診療手順を理解し、指示される前に必要な器具や薬品を準備できているか(タイムラグの短縮)。
    • 採血・処置: 患者様に苦痛を与えないよう、安全かつスムーズに手技を実施できているか。
    • 患者説明: 検査や処置の内容について、患者様の不安を取り除くような分かりやすい説明ができているか。
    • 情報共有: 患者様の些細な体調変化や訴えを、見逃さずに院長へ報告できているか。

    3-3. 「昇給」と「賞与」の使い分け戦略

    評価結果をどう給与に反映させるかも、シンプルに設計します。

    • 基本給の昇給: 「能力・行動評価」の結果で決めます。スキルが上がり、できることが増えれば、翌年の基本給が月額1,000円〜3,000円上がる、といった固定昇給です。
    • 賞与(ボーナス): 「業績」と連動させます。クリニックの医業収益が良い時は多めに、悪い時は少なめに調整するための「バッファ(調整弁)」として機能させます。

    評価点数に応じて「S評価は×1.2倍」「B評価は×1.0倍」といった係数をかけ、頑張った人に報いる仕組みにします。
    このように色分けすることで、経営のリスクヘッジを行いつつ、スタッフのモチベーションを高めることが可能になります。

    4. 【運用】忙しい院長でも回せる「15分面談」の極意

    制度を作っても、「忙しくて面談をする時間がない」という院長先生は多いです。しかし、面談こそがスタッフの心を繋ぎ止める最大のチャンスです。

    4-1. 面談は「査定の通知」ではなく「感謝を伝える場」

    評価面談を「成績発表の場」と捉えると重荷になります。そうではなく、「日頃の感謝を伝え、相手の話を聞く場」と定義し直してください。

    スタッフ1人あたり15分で構いません。
    「いつも受付での笑顔がいいね、患者さんも安心しているよ」「採血が上手くなったね、安心して任せられるよ」

    具体的な評価項目に基づいた「承認」の言葉をかけること。これだけで、スタッフのモチベーションは半年間維持されます。給与アップ以上の効果が、院長の言葉にはあります。

    4-2. チーフ・リーダー(古株スタッフ)を味方につける

    スタッフが10名を超えてきたら、院長一人ですべて評価するのは限界です。
    信頼できる古株の看護師や事務リーダーに「一次評価者」になってもらいましょう。

    「あなたの視点で、後輩たちの働きぶりを評価してみてほしい」と任せることで、リーダー自身の責任感が育ちます。また、院長が見えていない現場の頑張りを吸い上げることができ、評価の納得性が増します。
    院長は、リーダーがつけた評価を確認し、最終調整を行う「二次評価者」の立場に回ることで、負担を大幅に減らすことができます。

    4-3. 運用サイクルは年2回で十分

    毎月面談をする必要はありません。賞与支給月(夏・冬)に合わせて年2回実施するのが一般的で、負担も少ないです。
    診療時間を少し短縮してでも、この時間を確保することは、将来的な求人コストや教育コストの削減を考えれば、極めて投資対効果の高い時間となります。

    5. 小規模だからこそプロの手を。HRCが提案する「院長の右腕」としての制度

    「理屈は分かったけれど、自分で一からシートや規定を作る時間はない」
    「今のスタッフの給与水準を下げずに、どう新制度に移行すればいいか分からない」

    そのような院長先生のために、私たちヒューマンリソースコンサルタント(HRC)は、小規模医療機関に特化した導入支援を行っています。

    クリニック特化型パッケージ「HRCメソッド」

    大病院向けの制度をダウンサイジングするのではなく、最初から「クリニックでの運用」を前提に設計されたパッケージをご用意しています。

    • ひな形の提供: 看護師、医療事務、リハビリ職など、職種別の標準的な評価シート(クリニック版)を完備。貴院に合わせて微調整するだけで即導入可能です。
    • 賃金シミュレーション: 現在の収益構造と人件費率を分析し、院長の手残り(利益)を確保しつつ、スタッフに還元できる適正な昇給額を算出します。
    • 導入説明会の代行: 「急に制度を入れるとスタッフが反発しないか心配」という先生に代わり、私たちが第三者の立場から、スタッフ向けに制度導入のメリット(頑張りが正当に評価されること)を分かりやすく説明します。

    私たちは、制度という名の「院長を守る武器」を提供します。
    面倒な計算や規定の整備はすべてお任せください。先生は、スタッフへの「感謝の言葉(フィードバック)」だけに集中できる環境を整えます。

    「スタッフの顔色を伺う経営から卒業したい」「安心して長く働けるクリニックを作りたい」
    そうお考えの院長先生、まずは現状のお悩みをお聞かせください。規模や課題に合わせた、最適なプランをご提案いたします。

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