固定残業代制度と年俸制を同時に導入する際の、最も安全な設計方法は?
【結論】固定残業代制度と年俸制を併用する際は、「①年俸額を基本給と固定残業代に明確に区分すること」「②固定残業代の金額と対象時間数を契約書に明示すること」「③固定時間を超えた超過分の残業代を確実に支払うこと」の3点が必須要件です。これらの要件を遵守しないと、年俸全額が基本給と見なされ、過去3年分の未払い残業代を請求される重大なリスクがあります。
成果連動型の賃金制度を導入する際、最もトラブルになりやすい設計です。法的リスクを回避するための、最も安全で明確な設計方法を解説します。
併用時の法的リスクと判例の傾向
リスク: 「年俸=残業代なし」の誤解
年俸制であっても、労働基準法上の残業代支払い義務は免除されません。「年俸に全て含まれている」という曖昧な説明は通用せず、固定残業代として認められるには、明確な合意と区分が必要です。
判例の傾向:明確区分性の厳格な要求
最高裁は、年俸総額に固定残業代が含まれていると主張する場合、「通常の労働時間に対する賃金」と「時間外労働に対する賃金」が明確に区別できることを厳格に求めています。
最も安全な設計のための3つのステップ
ステップ1: 年俸の構成要素の明確化
年俸総額を以下のように分解し、賃金規程と労働契約書に明記します。
- 年俸総額 = (年間基本給) + (年間固定残業代) + (年間賞与)
- 毎月の支払い額 = (月額基本給) + (月額固定残業手当)
ステップ2: 固定残業代の計算根拠の明示
労働契約書(または労働条件通知書)に、以下の情報を過不足なく記載します。
- 固定残業代の金額: 月額〇〇円
- 対象となる時間数: 月〇〇時間分の時間外労働(および深夜・休日労働)に相当する。
ステップ3: 超過分の計算と支払いルールの徹底
固定時間を1分でも超えた場合は、その分の残業代を固定残業代とは別に、割増賃金率で算出して支払います。年俸制であっても、勤怠管理は厳格に行い、超過分の支払いを証明できる記録を残します。
\固定残業代制度と年俸制を法的に安全に併用する設計を支援します/
賃金規程、労働契約書の規定内容を詳細にチェックし、未払い残業代リスクを回避するための給与計算のルールと体制を構築します。

