試用期間中に「本採用拒否」をする際、法的に必要な手続きと注意点は?【解雇権濫用のリスク】
【結論】試用期間中の社員を本採用拒否することは、法的には「解雇」として扱われます。したがって、企業は「①客観的に合理的な理由(能力不足、勤務態度不良など)」「②解雇権濫用とならない相当性」が求められます。特に、試用期間開始後14日を超えて本採用拒否をする場合は、30日前の解雇予告または解雇予告手当の支払いが必要です。
「試用期間だから自由に辞めさせられる」という誤解は、重大な労務リスクにつながります。試用期間の法的性質と、本採用拒否を行う際の正しい手続きと注意点を解説します。
試用期間中の本採用拒否の法的性質とハードル
1. 本採用拒否は「解雇」である
試用期間は、企業が社員の適格性を最終的に判断するための期間ですが、この期間中の本採用拒否は、「解約権の行使」と解釈され、実質的には「解雇」と同じ扱いを受けます。そのため、本採用拒否の要件は非常に厳しくなります。
2. 解雇予告が必要なケース
試用期間中でも、以下の場合は30日前の解雇予告または解雇予告手当の支払いが必要です。
- 試用期間開始から14日を超えて本採用拒否をする場合
- 試用期間が満了し、期間終了後に本採用拒否をする場合
本採用拒否を有効にするための手順
手順1: 試用期間中の指導記録を徹底する
本採用拒否が争いになった場合、企業は「社員が能力不足であることを示す客観的な証拠」を提示する義務があります。
- 指導・警告記録: 業務上のミスや勤務態度について、具体的な日時、内容、改善を促した事実、その後の改善が見られなかった事実を記録に残します。
- 改善の機会の付与: 試用期間中に、能力不足を改善するためのOJTや研修の機会を適切に与えたという証拠が必要です。
手順2: 本採用拒否の通知と手続きの遵守
- 通知: 本採用拒否の理由を記載した書面を作成し、社員に交付します。
- 解雇予告手当: 試用期間開始から14日を超えている場合は、解雇予告手当を支払います。
- 理由の提示: 社員から求められた場合、解雇理由証明書を遅滞なく交付します。
\試用期間中の労務リスクを最小化する手続きをサポートします/
本採用拒否は裁判になりやすい領域です。試用期間中の指導記録の整備、解雇予告手続き、およびリスクの有無の診断について、専門的な支援を提供します。

