社員数50名の壁と事業承継の危機を救う!新旧社員の対立を解消する「オープン人事制度」の作り方
会社が順調に成長し、「30人の壁」をなんとか乗り越え、社員数が50名の大台に近づく頃。経営者の多くは、社内に得体の知れない「不協和音」や目に見えない「亀裂」が生じ始めていることに気づきます。
これまでは社長の圧倒的なカリスマ性と、創業期から泥水をすするようにして会社を支えてきた古参社員たちの「あうんの呼吸」で、すべてが上手く回っていました。しかし、組織の規模が拡大するにつれて、社内の空気が急にギスギスし始め、部署間の連携が悪くなり、社長の号令が現場の末端まで届かなくなります。特に、先代社長から後継者へとバトンが渡される「事業承継」のタイミングがこの規模拡大の時期と重なると、組織内部に蓄積されていた歪みは一気に臨界点に達し、爆発します。
この得体の知れない歪みの正体。それは、会社を創り上げてきた古参社員が絶対的に信奉する「忠誠心と経験」という価値観と、組織をさらにスケールさせるために新しく入ってきた若手社員や中途採用の専門人材が強く求める「合理性と公平性」という価値観の、真っ向からの激突です。
古参社員は「自分たちが休みを削って苦労したからこそ、今の会社がある」という強烈な自負を抱いています。対する若手は「結果を出して生産性を上げている自分がなぜ、ダラダラと残業しているだけの年功序列の先輩より給料が低いのか」という強烈な不満を抱えています。この価値観の対立を「そのうち馴染むだろう」と放置すれば、市場価値の高い優秀な若手から順に見切りをつけて辞めていき、組織には「社長に逆らわない、変化を嫌う古参社員」だけが残るという、企業衰退の最悪のシナリオを辿ることになります。
50名の壁を完全に突破し、次の100名、そして次世代へと力強くバトンを繋ぐために絶対に必要なこと。それは、社長個人の「さじ加減」や「どんぶり勘定」のマネジメントを完全に卒業し、年齢や社歴に関わらず全員が納得できる「オープンな人事ルール」を確立することです。
本記事では、広島の地元企業が必ず直面する新旧社員の対立メカニズムを組織論の観点から解明し、ブラックボックス化した評価をどのように「見える化」し、全社員のベクトルを再び一つに合わせるのか。その具体的なステップと、第三者であるプロのコンサルタントが介入する真の価値について、徹底的に解説します。
1. 組織の歪みは30〜50名で爆発する。新旧社員の価値観の違い
なぜ「50名」という数字が、多くの中小企業にとって越えがたい鬼門となるのでしょうか。
社長の「目」が届かなくなる限界点と中間管理職の不在
社員数が30名程度までの組織は、良くも悪くも「大家族」です。社長の目が現場の隅々にまで届き、誰が朝早く来て準備をし、誰が誰のミスをカバーしているかが、感覚として正確に把握できています。この規模であれば、社長の直感に基づく人事評価も大きなエラーを起こしません。
しかし、50名を超えると、人間の認知能力の限界により、社長一人では全社員の働きを直接把握することが物理的に不可能になります。ここで組織には「中間管理職(課長や部長)」という結節点が必要不可欠になります。ところが、多くの中小企業では、能力や適性を考慮するのではなく、「創業期から長くいるから」「現場の仕事が一番できるから」という理由だけで、古参社員をそのまま役職に据えてしまいます。
ここに組織崩壊の最初の落とし穴があります。現場の叩き上げである古参社員は、他者を育成し、組織の目標を管理する「マネジメント」の訓練を一切受けていません。彼らが部下を評価する基準は、客観的な会社のルールではなく、往々にして「自分たちの若かった時代の苦労や美徳」に基づいています。
モノサシ(価値観)の決定的なズレ
現場では、以下のような「評価のモノサシ」の深刻なズレが日常的に発生しています。
| 比較軸 | 古参社員(上司)のモノサシ | 若手・中途採用組(部下)のモノサシ |
|---|---|---|
| 仕事への姿勢 | 「早く出社すること」「遅くまで残業して背中を見せること」「社長への絶対的な忠誠心」 | 「時間当たりの生産性(タイパ)」「無駄な残業をしないワークライフバランス」「スキルへの投資」 |
| 評価への期待 | 「過去に会社が苦しい時に支えた貢献」を、今も評価し続けてほしい。 | 「現在の専門性」と「直近で生み出した成果」を、客観的かつスピーディに評価してほしい。 |
| 情報の扱い | 「会社の重要なことは、社長と自分たち一部の人間だけで決めるのが当然」 | 「なぜその決定になったのか、プロセスと評価の透明性を公開してほしい」 |
このモノサシのズレが、日常の些細な業務指示や会議での発言の中で「どうも話が通じない」「評価に納得がいかない」という不信感として積み重なり、50名を境に明確な「派閥」や「水面下の対立」として表面化するのです。
広島特有の「義理人情」が裏目に出る瞬間
広島の地元企業には、古くから社員を家族のように大切にする、義理人情に厚い温かい文化が根付いています。これは平常時には強い結束力を生みますが、事業拡大期や事業承継期においては、この「情」が逆に組織改革の重い足枷となることがあります。
例えば、先代社長と共に会社の危機を何度も乗り越えてきた古参社員に対し、合理的な思考を持つ後継者が「これからは成果に基づいた実力主義の人事制度に切り替えます」とトップダウンで言い出すのは、心理的に極めて高いハードルが存在します。古参社員側も、頭では時代の変化を理解していても、感情として「現場の苦労も知らない坊ちゃん(後継者)に、俺たちの何が分かるんだ」と反発し、無意識のうちに強力な抵抗勢力と化してしまいます。この新旧の感情的な対立が、組織全体の生産性を著しく低下させ、優秀な若手から見た「極めて居心地の悪い空間」を作り出しているのです。
2. 「なぜアイツが自分より給料が高いのか?」ブラックボックス化がもたらす組織崩壊
新旧の対立を決定的な決裂へと追いやる最大の要因が、給与や賞与の決定プロセスが一切公開されていない「ブラックボックス評価」です。
疑心暗鬼を生む「社長のさじ加減」
多くの中小企業において、経営者は「社員の給与は社長である自分が全責任を持って決めているのだから、不満は出ないはずだ」と思い込んでいます。しかし、これは経営陣の完全な錯覚です。
社員からすれば、自分の給料がどのようなプロセスで、何の基準に基づいて決められたのかが全く見えません。情報が隠されていると、人間は必ず最悪のシナリオを想像します。
「結局、休日に社長とゴルフに行く人間や、お酒の席で機嫌をとるのが上手い人間だけが昇進しているのではないか?」
こうした根拠のない噂や憶測は、社内で光の速さで拡散します。評価基準がブラックボックスである以上、社員は「自分がどう成長するか」ではなく「自分は他人と比べて損をしていないか」という内向きな比較に膨大なエネルギーを使い始めます。これが、組織を内側から腐らせる「疑心暗鬼」の正体です。
「相対的剥奪感」という恐怖の心理メカニズム
人間は、自分の絶対的な給与額(年収がいくらか)よりも、周囲の人間との「比較における不公平感」に対して極めて強く、そしてネガティブに反応する生き物です。これを心理学・社会学の用語で「相対的剥奪感(Relative Deprivation)」と呼びます。
特に広島のような地方都市では、社員同士のプライベートな繋がりも深く、給与や待遇の情報が飲み会の席などを通じて意図せず漏れやすい傾向にあります。明確な基準がないまま、社長の個人的な感情で特定の個人を優遇(あるいは冷遇)することは、組織全体の士気を根こそぎ奪い去ります。さらに現代においては、「同一労働同一賃金」の原則が中小企業にも厳格に適用されており、根拠のない待遇差は明確な法的・コンプライアンス上のリスクにも直結します。
3. 事業承継を阻む「見えない負債」:先代のどんぶり勘定をどうリセットするか
事業を継ぐ後継者にとって、先代社長が長年の感覚と情で作り上げてきた「どんぶり勘定の給与体系」は、いつ爆発するとも知れない時限爆弾のようなものです。
後継者が会社の財務を整理し、「なぜ、この役職にも就いていない古参社員の基本給がこんなに異常に高いのか?」と先代に尋ねても、「昔、会社が倒産しかけた時に、あいつだけは辞めずに助けてくれたからな。その時の恩返しだ」という、情に根ざした答えしか返ってきません。
先代の気持ちは痛いほど分かります。しかし、これでは後継者は、市場価値に基づいた公正な経営判断や、次世代への投資配分を行うことができません。後継者が自信を持って采配を振るい、50名の壁を突破するためには、過去の経緯を一度勇気を持ってリセットし、現在の「役割の大きさ」と「会社への貢献度」に基づいたオープンな賃金テーブルを再構築しなければなりません。ブラックボックスを完全に解体することは、後継者の新たなリーダーシップを確立するための、避けては通れない通過儀礼なのです。
4. 【解決策】全員が納得する評価シートの設計と給与テーブルの公開
新旧の価値観の対立を解消し、50名の壁を突破するための具体的な処方箋。それは、精神論での説得ではなく、「客観的な評価シートの導入」と「給与テーブルの公開(オープン化)」という仕組みの構築です。
① 「広島・自社・現場」に根ざした評価シートの設計
インターネットで拾ってきた大企業の評価テンプレートをそのまま持ち込んでも、絶対に機能しません。貴社の現場で「何が本当に利益を生んでいるか」「どんな行動が尊いのか」を、自社の言葉で言語化する必要があります。ここでのポイントは、新旧双方の価値観をブレンドすることです。
- 古参社員の強み・誇りを認める項目: 「若手への暗黙知(技術)の継承」「突発的なイレギュラートラブルへの即応力」「顧客との長年の信頼関係維持」「社内文化の体現」など。
- 若手・中途の意欲を惹きつける項目: 「業務効率化の改善提案件数」「新しいデジタルツール(IT・AI)の積極的な活用」「新たな資格やスキル習得への挑戦」「時間当たりの生産性向上」など。
このように、どちらかの価値観を否定するのではなく、双方が「自分の強みが会社に正当に評価されている」と感じられる項目をバランスよく配合します。これにより、評価シートが「相手を裁くための対立の道具」から、「お互いの強みを認め合う対話の道具」へと劇的に変わります。
② 給与テーブルの公開(ルールのオープン化)
評価基準が決まったら、次は「どの等級(レベル)になれば、基本給がいくらになり、賞与の基準額がいくらになるのか」という賃金テーブルを全社員に堂々と公開します。
勘違いしてはならないのは、個人の給与額面を晒し上げるわけではありません。「ルールと構造」を公開するのです。これにより、若手社員は「今の等級ではこの給料だが、3年後にあのスキルを身につけて等級が上がれば、これだけ昇給する」という明確な将来設計(キャリアパス)を自ら描けるようになり、離職率が劇的に低下します。
5. 最大の難関を突破する「第三者のプロ」による社員説明会の魔法
制度が完成しても、最大の難関が待ち受けています。それが「全社員への説明と導入」です。
新しいルールを、社長や後継者が直接マイクを握って説明すると、どれだけ言葉を尽くしても、社員からは「結局、会社(経営陣)に都合の良い、人件費を削るためのルールを作ったのではないか」と勘繰られがちです。特に古参社員は、先代との比較において後継者の言葉に過剰に反発する傾向があります。
そこで絶大な効果を発揮するのが、私たちヒューマンリソースコンサルタント(HRC)が、「第三者の専門家」として全社員の前に立ち、説明会を行うという手法です。
- 客観的な市場データの提示: 「社長の思いつきではなく、広島の同業他社や現在の労働法制と比較して、この基準は極めて客観的かつ合理的です」と、プロの権威をもって説明します。
- 公平性の担保: 「この制度は、社長のお気に入りの誰かを優遇するためのものではありません。皆さんが納得して成長するための透明な海図です」と宣言し、疑心暗鬼を払拭します。
- 不満の吸い上げと悪者引き受け: 社長には直接言えない社員の本音や不満(ガス)を、私たちが「外部の人間」として全て受け止めます。「コンサルタントが作った厳しい仕組みだ」と、あえて私たちが悪者を引き受けることで、社長と社員の間の直接的な対立を回避し、制度をスムーズに着地させます。
2026年、オープンな組織だけが生き残る
SNSの普及などにより、企業情報の透明性がかつてなく高まっている2026年現在において、評価や給与に「隠しごと」がある組織に未来はありません。
50名の壁を越えるということは、会社を社長の「個人の所有物(家業)」から、社会に価値を提供し続ける「社会的な公器(企業)」へと進化させる一大プロジェクトです。人事制度のブラックボックスを開け、全てをオープンにすることは、経営者にとって身を切るような勇気がいります。しかし、その決断と勇気こそが「古参社員のこれまでの労いと安心」と「若手社員の未来への希望」を同時に生み出し、貴社を「広島で一番働きたいと思われる強い企業」へと変貌させていくのです。
用語集
- 50名の壁: 企業の社員数が50名規模に達すると、社長個人の直接的な管理能力が限界を迎え、中間管理職の育成や組織構造・人事評価制度を抜本的にルール化して見直さない限り、組織の成長が止まったり崩壊したりする現象。
- 相対的剥奪感(Relative Deprivation): 自分が得ている利益の絶対量ではなく、周囲の人間(同僚など)と比較して「自分は不当に低く扱われている、損をしている」と主観的に感じることで生じる、強烈な不満や怒りの心理状態。
- 同一労働同一賃金: 職務内容(仕事の種類や責任の重さ)が同じであれば、正社員や非正規雇用などの雇用形態、あるいは年齢や社歴に関わらず、同じ水準の賃金を支払うべきであるという労働法上の大原則。不透明な評価はこの原則に抵触するリスクが高い。
- キャリアパス: 社員が社内でどのような業務経験を積み、どの程度のスキルや能力を身につければ、将来どのような役職や給与水準に到達できるかを示す、具体的な道筋・ロードマップのこと。
- 社員説明会(第三者実施): 新しい人事制度を導入する際、社長ではなく、外部の人事コンサルタント等の専門家が制度の趣旨や詳細を説明する手法。社内の感情的なバイアスを排除し、客観性と納得感を高める強い効果がある。
組織の「ギスギス」を放置せず、次世代へ繋ぐ強い会社を創りませんか?
「古参社員のこれまでの貢献も分かるが、彼らの顔色ばかり伺っていては会社が変わらない」
「優秀な若手から辞めていき、事業承継の未来が不安でたまらない」
そんな孤独なジレンマに、経営者様がたった一人で立ち向かう必要はありません。
私たちヒューマンリソースコンサルタント(HRC)は、これまで広島の数多くの中小企業において、時に激しくぶつかり合う「新旧の融和」を、血の通った人事制度の構築を通じて実現してきました。社長のこれまでの想いとこれからのビジョンを深く汲み取りつつ、古参社員の誇りを守り、若手が希望を持てる「全員が納得する着地点」を必ず見つけ出します。
組織の歪みが限界を迎え、致命的な人材流出が起きる前に、まずは貴社の現在の状況を客観的に把握する「組織の健康診断」から始めてみませんか?私たちが、貴社を支えてきた古参社員と、未来を創る若手の強固な架け橋となります。
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