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IT業界の平均離職率は10〜15%程度で推移していますが、この数字以上に深刻なのが「優秀な層から順に辞めていく」という実態です。人事コンサルタントとして多くの現場を見てきた経験から言えば、この離職は「突発的な不満」ではなく、数ヶ月、あるいは数年にわたる「会社への不信感」が積もり積もった結果です。
1. IT業界の離職率と「評価への不満」の深い相関性
エンジニアの転職理由第1位は「正当な評価」への渇望
厚生労働省や民間調査機関のデータによると、ITエンジニアが転職を決意する最大の要因は「給与への不満」と並び、「正当な評価が得られないこと」が常に上位にランクインします。
エンジニアという職種は、学習コストが極めて高い職業です。日進月歩の技術を習得するために、彼らは業務外の時間も惜しんでキャッチアップを続けています。その努力や、難易度の高いプロジェクトを完遂したという実質的な貢献度が、数値や役職に反映されない状態を彼らは「プロフェッショナルとしての尊厳の侵害」と受け取ります。
なぜ「不透明な評価」が即、離職につながるのか
ITスキルの市場価値はリアルタイムで変動します。例えば、ある技術スタック(モダンなフロントエンドフレームワークやクラウドネイティブなインフラ技術など)の需要が急騰した場合、市場では1,000万円の価値があるエンジニアが、社内の旧態依然とした制度によって600万円で据え置かれているケースは珍しくありません。
このとき、エンジニアが感じるのは単なる「損をしている」という感覚ではありません。
- キャリアの機会損失: 「この会社にいても自分の市場価値は上がらない」という恐怖。
- 経営への不信: 「経営陣は技術の価値を理解していない」という失望。
評価の不透明さは、エンジニアにとって「自身の市場価値を毀損させるリスク」と直結します。そのため、彼らは会社を去ることで自分たちの市場価値を守ろうとする「防衛本能」としての転職を選択するのです。
2. 【失敗パターン】技術力を軽視した年功序列的運用の末路
多くのIT企業、特に歴史のあるSIerや保守・運用をメインとする受託開発企業が陥りやすいのが、旧来の日本型雇用に基づいた年功序列の評価です。これが現代のエンジニア文化と衝突すると、組織は急速に硬直化します。
マネジメント職しか昇給ルートがない「詰み」の構造
日本企業の多くは、給与テーブルが「課長」「部長」といった役職と紐付いています。しかし、技術を極めたいスペシャリストに対し、「これ以上給料を上げたければ、マネージャーになるしかない」と告げることは、彼らのキャリアを否定することと同義です。
- 適材適所の崩壊: 最高のコードを書くエンジニアが、最悪のマネジメントを行う上司になる(ピーターの法則)。
- モチベーションの低下: 現場の技術追求が評価されないため、優秀な若手が「ここでは技術を磨いても無駄だ」と判断する。
マネジメント能力と技術能力は全くの別物です。無理に管理職に引き上げられた結果、本人の幸福度は下がり、現場の技術指導も疎かになるという、組織全体にとっての「ルーズ・ルーズの関係」が発生します。
「声の大きい人」や「定性的な印象」が優先される弊害
明確な技術評価基準がない職場では、どうしてもプロジェクトリーダーとの相性や、会議での発言量、あるいは「遅くまで頑張っている」といった情緒的な印象で評価が決まりがちです。
しかし、システム開発の本質は「安定稼働」や「効率的な実装」にあります。黙々とリファクタリング(コードの改善)を行い、将来のバグを防いでいる「縁の下の力持ち」が評価されず、トラブルが発生してからバタバタと対応して「頑張った」と見える人が評価される仕組みは、技術者集団としての信頼関係を根底から破壊します。
3. 【成功パターン】現場が納得する「テクニカル」と「ビヘイビア」の分離
エンジニアが定着し、かつ成長し続ける企業では、評価の軸を「何ができるか(テクニカル/技術能力)」と「どう動いたか(ビヘイビア/行動特性)」の二階建て構造で明確に定義しています。
テクニカルスキル評価:言語化とレベル分けの徹底
技術スキルを「見える化」するために、使用言語、フレームワーク、インフラ構築能力、設計能力などをマトリックス化(スキルマップ)します。重要なのは、抽象的な表現を避け、具体的な行動レベルで定義することです。
| グレード | 技術的到達点の定義(例) |
|---|---|
| グレード1 | 上位者の設計に基づき、指示通りの実装・単体テストができる。 |
| グレード2 | 最適なライブラリを選定し、コードレビューを通じて品質担保に貢献できる。 |
| グレード3 | アーキテクチャ全体の設計、非機能要件(セキュリティ・負荷)の定義ができる。 |
| グレード4 | 技術選定の意思決定を行い、社外への技術発信や新技術の導入を主導できる。 |
このように客観的な指標を置くことで、「何を習得すれば給与がいくら上がるか」という学習のロードマップを本人に提示できます。これはエンジニアにとっての「キャリアの見通し(キャリア・ビリティ)」となり、会社への定着率を大きく高めます。
ビヘイビア(行動)評価:チームへの貢献を可視化
一方で、技術力さえ高ければ何をしても良いわけではありません。「凄腕だが周囲を威圧するエンジニア」は、チーム全体の生産性を著しく低下させます。そこで、組織へのプラスの影響力を評価する項目を設けます。
- ナレッジ共有: Qiita TeamやNotionなどに、役立つ情報をどれだけアウトプットしたか。
- メンタリング: 後輩のコードレビューや技術指導を丁寧に行い、育成に貢献したか。
- 当事者意識: 自分の担当範囲外であっても、障害発生時に主体的にサポートへ回ったか。
これにより、「孤高の天才」ではなく「チームを強くするプロフェッショナル」を正しく称賛する文化が醸成されます。
4. コンサルタントの視点:制度は「箱」ではなく「運用」で決まる
人事コンサルタントとして強調したいのは、「制度は作ってからがスタートである」ということです。立派な評価基準書を作成しても、運用が伴わなければただの形骸化した「紙屑」になります。
評価エラーを排除する「キャリブレーション(すり合わせ)」
評価において最も危険なのは、上司による「甘辛(評価の偏り)」です。これを防ぐために、全マネージャーが集まり、特定の個人の評価に対して「なぜその点数なのか」を議論するキャリブレーション会議は必須です。
「Aさんは技術力が高いが、今期は共有が少なかったのではないか?」といった議論を通じて、全社的な基準の統一を図ります。また、この会議自体が、評価者であるマネージャーたちの「評価スキル」を底上げするトレーニングの場にもなります。
リアルタイム・フィードバックの重要性
IT業界の変化のスピードは速く、半年に一度の面談だけで評価を完結させるのは無理があります。
- 1on1ミーティング: 隔週、あるいは月次で、現在の進捗と課題をすり合わせる。
- ピアボーナス/称賛文化: Slackなどのツールを使い、日常的な「感謝」や「技術的貢献」をリアルタイムで可視化する。
「今やっていることが正しく認められている」という実感を日常的に与えることが、エンジニアの心理的安全性を高め、帰属意識(エンゲージメント)を劇的に向上させます。
5. 中小IT企業が直面する「評価の壁」をどう乗り越えるか
中小企業において、大企業のような複雑な人事制度を導入するのは現実的ではありません。リソースが限られている中で、いかに効率的かつ効果的に運用するかが鍵となります。
評価コストの削減と「納得感」の両立
多くの現場リーダーは「開発で忙しいのに、評価シートを書く時間なんてない」と本音では思っています。そのため、我々コンサルタントが支援する際は、以下の工夫を提案します。
- 入力項目の極小化: 記述量を絞り、選択式や箇条書きを多用したフォーマット。
- GitHub/Jira等との連携: 実際の成果物(プルリクエストやチケットの消化数)をエビデンスとして活用し、記憶に頼らない評価を行う。
評価者(マネージャー)教育の徹底
制度を動かすのは「人」です。マネージャーが「なぜこの制度が必要なのか」「どう伝えればメンバーのモチベーションが上がるのか」を理解していなければ、逆効果になります。
フィードバック面談での「伝え方(コーチングスキル)」を強化するためのワークショップを行い、評価の場を「ダメ出しの場」ではなく「成長を支援する場」に変えていきます。
6. HRC(ヒューマンリソースコンサルタント)流:伴走型支援の価値
我々HRCでは、単なるコンサルティングファームとして「理想の制度案」を納品するだけでは不十分だと考えています。中小IT企業のリアルな現場に寄り添い、制度が血肉化するまで徹底してサポートします。
現場の負荷を最小限にするカスタマイズ
御社の開発手法(アジャイルなのかウォーターフォールなのか)や、使用しているコミュニケーションツールに合わせて、「最も書くのが楽で、最も納得感が出る」UI/UXの設計を行います。
導入後の最初の1サイクルに「魂を込める」
新制度導入後の最初の評価面談は、社員が「この制度は本物か?」を試す極めて重要な場面です。
- 面談のロールプレイング: 事前にマネージャーと面談のシミュレーションを実施。
- 評価会議への同席: 客観的な第三者として、キャリブレーション会議での交通整理。
- 社員向け説明会の実施: なぜこの制度を導入したのか、経営陣の想いをエンジニアの言葉で翻訳して伝えます。
7. まとめ:エンジニアに選ばれる組織へ
ITエンジニア向けの評価制度改善は、単なる事務的な手続きではありません。それは「会社がどのような技術を尊び、どのような行動を求めているか」という経営メッセージそのものです。
正当な評価がなされる環境には、自然と質の高い人材が集まり、社員が知人を誘う「リファラル採用」も活性化します。結果として離職率が低下すれば、多額の採用広告費や紹介手数料を削減できるだけでなく、社内に知見(ナレッジ)が蓄積され、開発効率が向上するという強力なプラスのサイクルが回り始めます。
「今の制度で、自社のエースエンジニアに『一生この会社で働きたい』と言わせる自信はありますか?」
もし少しでも不安や疑問を感じられたなら、それは組織が成長するための転換点かもしれません。まずは貴社の現状を可視化する「人事制度診断」から始めてみませんか。
人事コンサルタントからの次の一歩
現在、御社で「最も現場のエンジニアから不満が出ている点」や「評価に困っている特定の層(例:技術は高いが協調性がない等)」はございますか?
その具体的なエピソードをお聞かせいただければ、その場で解決に向けたフレームワークや他社事例をご提示することが可能です。ぜひ一度、壁打ち相手としてご活用ください。
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