卸売業向け
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「社歴が長いというだけで、今の仕事に見合わない高給をもらっている社員がいる」
「若手が成果を出しても、働かないおじさん社員より給料が低いことに不満を持って辞めていく」
創業から数十年続く歴史ある卸売企業において、二代目、三代目社長が必ず直面する壁。それが「ベテラン社員の高コスト化」と「組織の硬直化」です。
先代の頃から会社を支えてくれた功労者であることは間違いありません。しかし、時代の変化とともに求められるスキルや役割が変わっているにもかかわらず、給与だけが右肩上がりで増え続ける現状は、利益率の低い卸売業の経営を圧迫します。何より、次世代を担う若手社員のモチベーションを著しく低下させる要因となり得ます。
本コラムでは、多くの経営者が「手をつけたいが、反発が怖くて踏み出せない」と感じている人事制度改革について、コンサルタントの視点から解説します。単なるコストカットではなく、ベテラン社員にも新たな活躍の場を提供し、かつ若手が納得できる「役割等級制度」への移行手順と、痛みを和らげる具体的な激変緩和措置について、実践的なノウハウを公開します。
1. 卸売業に多い「働かないのに高給」なベテラン問題と若手の流出
なぜ卸売業では、他業界に比べて「高給なベテラン社員」の問題が深刻化しやすいのでしょうか。その背景には、業界特有の歴史と構造的な要因が潜んでいます。
「経験」が資産だった時代の終焉
かつての卸売業は、「顔が広い」「顧客の癖を知り尽くしている」「商品の品番を全て暗記している」といった属人的な経験値が、そのまま売上に直結する時代でした。そのため、長く勤めれば勤めるほど能力が高いとみなされ、給与が上がる「年功序列」は合理的なシステムとして機能していました。
現代は違います。受発注はデジタル化され、商品情報はデータベースで管理され、顧客情報もSFA(営業支援システム)で共有されるようになりました。「その人しか知らない」情報は減り、経験年数が必ずしもパフォーマンスに比例しない環境へと変化しています。
入社3年目のデジタルネイティブな若手が、iPadを駆使して効率よく営業成績を上げる一方で、入社30年のベテランがいまだにFAXと電話だけで仕事をこなし、生産性が低いまま高給を得ている。この「給与と貢献度の逆転現象」が、組織内に不協和音を生んでいます。
若手が見切りをつける「未来への絶望感」
優秀な若手社員が退職する際、本当の理由を話してくれることは稀です。「キャリアアップのため」と言って去っていきますが、その本音は「この会社にいても、あの上司のようにはなりたくない」という未来への失望であることが多々あります。
- 「どれだけ頑張っても、給与テーブルの上限が決まっている」
- 「成果を出していないのに、年上というだけで役職についている人がいる」
このような不公平感を放置することは、採用コストの無駄遣いであるだけでなく、会社の将来の収益基盤を崩すことと同義です。若手流出を食い止めるためには、賃金制度の根幹にある「年功的要素」を排除し、「今、何をしているか」で評価される仕組みへと転換する必要があります。
2. 「職能資格制度」から「役割等級制度」への転換が必要な理由
日本の伝統的な企業、特に卸売業で長らく採用されてきたのが「職能資格制度」です。これこそが、現在の諸悪の根源とも言えるシステムであり、これを「役割等級制度」へ変えることが改革の第一歩です。
「職能資格制度」がベテラン高給化を招くカラクリ
職能資格制度とは、「人の能力」を基準に等級を決める制度です。「能力は経験とともに積み上がるもの」という性善説に基づいています。一度上がった等級(能力)は、たとえパフォーマンスが落ちても「能力が下がったわけではない(発揮されていないだけ)」という理屈で、基本的に下がることはありません。
これが卸売業でどう作用するか。
若い頃にバリバリ営業をして部長クラスまで昇進した社員が、50代になり役職定年などで第一線を退き、閑職に就いたとします。仕事の内容(役割)は軽くなっているにもかかわらず、職能資格制度上は「高い能力を持っている人」のままであるため、基本給は高止まりします。これが、仕事と給与のミスマッチを生むメカニズムです。
「役割等級制度(ミッショングレード)」とは何か
対して、現在多くの企業が導入を進めているのが「役割等級制度」です。これは「人」ではなく、「その人が担っている仕事(役割)の大きさ」に値札をつける考え方です。
- 職能資格制度: 「Aさんは部長経験もあるベテランだから、これくらいの給与」
- 役割等級制度: 「Aさんが今担当しているのは若手育成とルート配送のサポートだから、その役割に見合ったこの給与」
役割等級制度の最大のメリットは、年齢や社歴に関係なく、重要な役割を担えば給与が上がり、役割が軽くなれば給与が下がるという「納得感」のある基準を作れることです。
卸売業は「営業」「物流」「仕入」「事務」と職種ごとの役割が明確であるため、実はこの役割等級制度と非常に相性が良い業種です。誰がどの責任を負っているかを明確に定義(役割定義)することで、ベテランも若手も同じ土俵で公平に評価することが可能になります。
3. 移行時のトラブルを防ぐ「調整給」と「経過措置」の設計シミュレーション
制度を変えること自体は難しくありません。最も難しいのは、実際に給与が下がる対象者(主にベテラン層)への対応です。ここを間違えると、モチベーションの低下どころか、労働契約法違反(不利益変更)で訴訟リスクを抱えることになります。
いきなり給与を下げてはいけない
新しい「役割等級制度」を導入した結果、ある50代社員の給与適正額が、現在より10万円低いと算出されたとします。
ここで「来月から10万円カットです」と通告するのは下策です。生活設計を脅かす急激な変更は、法的な合理性を欠くと判断されるリスクが高い上、社員の心情的にも受け入れ難いものです。
ここで必要となるのが、ソフトランディングさせるための「激変緩和措置」です。
具体的なシミュレーション:調整給の活用
給与の差額を「調整給(または経過措置手当)」として一時的に支給し、数年かけて段階的に解消していく方法が一般的かつ安全です。
- 対象者: 55歳 営業職
- 現行給与: 月給45万円
- 新制度での評価額: 月給35万円(役割に見合った金額)
- 差額: 10万円
この10万円の差額を、以下のように「調整給」として支給し、時間をかけて減額していきます。
- 導入1年目: 基本給35万 + 調整給10万 = 支給額45万(現状維持)
- 導入2年目: 基本給35万 + 調整給7.5万 = 支給額42.5万
- 導入3年目: 基本給35万 + 調整給5.0万 = 支給額40.0万
- 導入4年目: 基本給35万 + 調整給2.5万 = 支給額37.5万
- 導入5年目: 基本給35万 + 調整給0円 = 支給額35.0万(移行完了)
このように3年〜5年程度の猶予期間(経過措置期間)を設けます。この期間は単に給与を下げるための時間ではありません。「今の給与に見合う高い役割(マネジメントや新規開拓など)に挑戦して元の給与水準を維持するか、それとも給与が下がることを受け入れて現在の役割を全うするか」を社員自身に選ばせるための猶予期間です。
同意取得とコミュニケーション
法的なリスクを回避するためには、就業規則の変更手続きだけでなく、対象社員一人ひとりとの面談と「同意書」の取得が望ましいです。
「なぜ制度を変える必要があるのか(会社の存続と若手の未来のため)」「あなたには何を期待しているのか」を経営者が誠実に説明し尽くすプロセスそのものが、組織の風土を変える儀式となります。
4. ベテランにも「役割」を再定義し、戦力化(または代謝)を促す効果
人事制度改革は「ベテラン切り」ではありません。むしろ、くすぶっているベテラン社員を再戦力化(リ・スキリング)するための施策です。
「役割」が明確になれば、ベテランは動き出す
これまでの年功序列下では、ベテラン社員に対して「高い給料を払っているんだから、言わなくてもやってくれ」という曖昧な期待しかかけられていませんでした。本人も「何をすれば評価されるのか」が分からず、結果として楽な仕事に流れていただけかもしれません。
役割等級制度では、「あなたの役割は、若手営業の同行指導を月〇回行い、チームの成約率を〇%上げることです」といった具体的なミッションが設定されます。
やるべきことが明確になれば、豊富な経験を持つベテランは力を発揮します。自分の存在意義を再確認し、活き活きと働き始めるケースは、改革を行った現場で頻繁に目にする光景です。
健全な新陳代謝(メタボリズム)の促進
一方で、新しい役割や期待される成果に対して「そこまではやりたくない」「今の楽なポジションがいい」と考える社員も出てきます。
その場合、役割等級制度であれば「役割が軽いのであれば、それに見合った給与(減給)になります」という妥当な着地が可能です。
結果として、給与に見合わない社員は自然と会社を去るか、あるいは適正な給与で雇用が継続される形に落ち着きます。これは冷徹なリストラではなく、会社と個人の関係性を対等なものに再構築する健全な新陳代謝です。
若手社員へのメッセージ効果
厳しくも公正な評価制度が導入されることは、若手社員に対する最強のメッセージになります。
「この会社は、やる気のない上司を放置しない」
「実力があれば、社歴に関係なく正当に評価される」
この安心感こそが、優秀な人材の定着率を高め、次世代リーダーの育成を加速させます。
5. まとめ
痛みを伴わない制度改革はないが、納得感は作れる
長年染み付いた年功序列の風土を変えることは、決して容易ではありません。一時的には社内の空気が重くなったり、反発の声が上がったりすることもあるでしょう。経営者にとっては、胃の痛む決断かもしれません。
しかし、何も変えずに座して死を待つのか、一時的な痛みを乗り越えて筋肉質な組織へと生まれ変わるのか。卸売業が生き残るための選択肢は限られています。
重要なのは、変化を恐れることではなく、変化のプロセスを「公平」かつ「透明」に進めることです。移行期間を設け、丁寧に対話を重ねることで、社員の納得感は必ず醸成できます。
プロが支援する制度移行プロセス
人事制度の変更、特に不利益変更を伴う改革には、労働基準法などの専門知識と、他社事例に基づいた精緻なシミュレーションが不可欠です。自社だけで進めようとすると、感情論が先行し、失敗するリスクが高まります。
ヒューマンリソースコンサルタント(HRC)は、卸売業の人事制度改革に特化したプロフェッショナル集団です。
貴社の歴史や社風を尊重しながら、ベテラン社員のプライドを傷つけず、かつ若手が希望を持てる「役割等級制度」の設計と導入を、実務レベルでサポートします。
激変緩和措置の具体的な設計図や、社員説明会の台本作成まで、二人三脚で改革を完遂させます。
まずは、貴社の抱える人員構成の課題や、賃金バランスの悩みをお聞かせください。
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