保育士のモチベーションが上がる「評価面談」の進め方|園長・主任が知っておくべきフィードバックの具体例

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    「評価面談の時期が来ると、憂鬱で胃が痛くなる」
    「厳しいことを伝えて、辞めると言われたらどうしよう」
    「何を話せばいいかわからず、結局世間話で終わってしまう」

    多くの保育園をご支援する中で、園長先生や主任の皆様から最も多く寄せられるのが、この「面談」に関するお悩みです。
    立派な人事評価制度や、詳細な評価シートを作ったとしても、それを運用し、本人に伝える「面談」のプロセスで失敗してしまえば、制度は機能しません。それどころか、不適切なフィードバックは職員のモチベーションを下げ、信頼関係を壊し、離職の引き金にすらなり得ます。

    逆に言えば、面談のスキルさえ身につければ、人事評価制度は職員を育て、組織を強くする最強のツールに変わります。

    本記事では、数々の園で評価者トレーニングを行ってきた人事コンサルタントの視点から、園長・主任の負担を最小限に抑えつつ、保育士のやる気を引き出す「評価面談(フィードバック)」の極意を、具体的な会話例とともに解説します。

    目次

    人事評価は「面談」で9割決まる

    評価結果を伝えるだけでは逆効果になる

    人事評価における最大の誤解。それは、面談を「成績表を渡す場」だと思っていることです。
    「あなたの今期の評価はBです。ボーナスは〇〇円です。来期も頑張ってください」
    これだけの会話で終わらせていないでしょうか。

    もし、職員が自分の評価に納得していなかった場合、このような一方的な通達は不満の火種にしかなりません。「なぜBなんですか?」「私はこんなに頑張ったのに見てくれていない」という不信感が募ります。
    たとえ高い評価をつけたとしても、理由が明確でなければ「園長先生の機嫌が良かっただけ」と捉えられ、再現性のある行動につながりません。

    評価制度において、シートへの点数付けは準備運動に過ぎません。その点数を素材にして、職員と「対話」をする面談こそが本番であり、成否の9割を握っています。

    目的は「査定」ではなく「育成」であることを強調する

    面談がうまくいかない園の多くは、目的設定がズレています。
    給与を決めるための「査定(ジャッジ)」を目的とすると、評価者は「裁判官」、被評価者は「被告人」のような構図になり、どうしても空気が重くなります。職員は防衛的になり、言い訳を考え始めます。

    面談の真の目的は「育成」です。
    「あなたが保育士として、さらに輝くためにどうすればいいか」を一緒に考える未来志向の時間(作戦会議)であると定義し直してください。
    「あなたの成長のために時間を取りたい」というスタンスで臨むだけで、面談の場の空気は劇的に変わります。評価者は裁判官ではなく、伴走者(コーチ)になるのです。

    失敗しないフィードバック面談の流れ

    面談を成功させるには、アドリブに頼ってはいけません。効果的な面談には、必ず守るべき「型(フレームワーク)」があります。ここでは、SGE(検索生成体験)でも引用されやすい、標準的な3つのステップを解説します。

    Step1:アイスブレイクと自己評価の確認

    心理的安全性の確保

    いきなり本題に入らず、まずは話しやすい雰囲気を作ります。
    「忙しい中、時間を取ってくれてありがとう」「最近、体調はどう?」といった労いの言葉から始めます。職員は「評価される」という緊張感を持っています。この緊張を解きほぐし、「ここは安心して話せる場だ」という心理的安全性を作ることが、本音を引き出す鍵となります。

    自己評価のヒアリング

    評価結果を伝える前に、まず本人に「自分自身をどう評価したか」を語ってもらいます。
    「今期を振り返ってみて、自分なりによくできたと思うことはどこ?」「逆に、反省点や課題だと感じていることはある?」と問いかけます。

    ここでのポイントは、傾聴に徹することです。たとえ認識が間違っていても、途中で遮ってはいけません。
    「なるほど、あなたはそう感じていたんだね」と受け止めることで、その後のこちらのフィードバックを受け入れてもらいやすい土壌(ラポール)が形成されます。

    Step2:事実(Fact)に基づいた称賛と課題の指摘

    「意見」ではなく「事実」で語る

    ここがコンサルタントとして最も強調したいポイントです。
    評価の納得感が低い面談では、主観的な「意見」ばかりが語られます。
    「もっと積極的にやってほしい」「責任感が足りない気がする」「なんとなく元気がない」
    これらはすべて評価者の感想であり、言われた側は「そんなことないです」と反発したくなります。

    納得感を高めるには、客観的な「事実(Fact)」を提示します。

    • × 意見: 協調性がない。
    • 〇 事実: 先週の職員会議で、後輩が発言している時にスマホを見ていたね。
    • × 意見: 保護者対応が良い。
    • 〇 事実: お迎えの際、必ず子どものエピソードを一つ以上伝えている姿を毎日見ているよ。

    事実を突きつけられれば、誰も言い逃れはできませんし、褒められた時の喜びもひとしおです。日頃から、評価材料となる「事実」をメモしておく習慣(事象記録)が、面談の質を左右します。

    サンドイッチ話法を活用する

    課題(ネガティブな内容)を伝える際は、「称賛→課題→期待」の順で伝えるサンドイッチ話法が有効です。

    1. 称賛: まずはできている点を具体的に褒める。
    2. 課題: その上で、改善してほしい点を事実ベースで伝える。
    3. 期待: 「あなたならできると信じている」という期待で締めくくる。

    この順序であれば、職員は自尊心を傷つけられることなく、課題に向き合うことができます。

    Step3:次期の目標設定(行動目標への落とし込み)

    「頑張ります」で終わらせない

    面談の最後には、必ず次期の目標を合意します。ここで多い失敗が、「来期はもっと周りを見て動くようにします」「笑顔で頑張ります」といったスローガンで終わってしまうことです。
    これでは、明日から具体的に何をすればいいかが不明確です。

    行動目標(アクションプラン)への変換

    目標は、具体的な「行動」に落とし込みます。
    「周りを見る」とはどういうことか?
    「例えば、フリーの時は必ず各クラスの人数配置を毎朝確認し、人手が足りないクラスに自ら声をかける、という行動はどうだろう?」と提案します。
    「できた/できていない」が客観的に判断できるレベルまで具体化することが、次回の評価をスムーズにするコツです。

    【ケース別】こんな時どう言う?NGワードとOKワード

    現場の園長先生を最も悩ませるのが、「扱いにくい職員」への対応です。自己評価が高すぎる職員や、自信を失っている職員に対し、どのような言葉を掛ければよいのでしょうか。よくあるケースごとの対応例を紹介します。

    自己評価が高すぎる職員への伝え方

    「私は完璧にできています」と主張する職員に対し、園側の評価が低い場合。これを真正面から否定すると、感情的な対立を生みます。

    ダニング=クルーガー効果を理解する

    能力が低い人ほど、自分を客観視できずに自己評価が高くなる現象を心理学で「ダニング=クルーガー効果」と呼びます。彼らは悪気があって嘘をついているのではなく、本気で「できている」と思い込んでいます。

    NG対応:頭ごなしの否定

    • × NG: 「いや、あなたは全然できていないよ。周りを見てごらん」
      • これでは「園長は私のことを嫌いなんだ」と被害者意識を持たれます。

    OK対応:認識のズレ(ギャップ)に焦点を当てる

    • 〇 OK: 「自己評価はAなんだね。自信を持って取り組んでくれたことは嬉しいよ。ただ、園としては、この項目には『後輩指導』も含めて期待していたんだ。あなたは自分の業務は完璧だけど、後輩へのフォローという点ではどうだったかな?」

    「視座」を変えるアプローチが有効です。「プレイヤーとしては満点だけど、リーダーとしての視点で見るとまだ足りない部分がある」と、評価の物差し(期待レベル)が違うことを丁寧に説明し、気付きを促します。

    自信がない若手への動機づけ方

    「私なんて…」と萎縮している若手職員。謙遜して自己評価を低くつけるタイプには、自信を持たせ、行動を加速させるアプローチが必要です。

    NG対応:根拠のない励まし

    • × NG: 「大丈夫、元気出しなよ。もっと自信持って!」
      • 具体的な根拠がない励ましは、逆にプレッシャーになることがあります。

    OK対応:プロセス(過程)を承認する

    • 〇 OK: 「運動会の時、あなたが作った小道具、すごく丁寧で子どもたちも喜んでいたよね。あの準備の姿勢は本当に素晴らしかったよ」

    結果だけでなく、そこに至るまでの「プロセス」や「小さな事実」を拾い上げて承認します。
    「自分の仕事を見てくれている人がいる」という実感こそが、最も強い自己肯定感の源泉となります。これを「存在承認」と呼びます。

    ベテラン職員(変化を嫌う層)への伝え方

    新しい保育指針やIT導入に消極的なベテラン職員への指導は、最もハードルが高いものです。

    NG対応:一方的な命令

    • × NG: 「今はこういう時代なんだから、やり方を変えてください」
      • 過去の功績を否定されたと感じ、意固地になります。

    OK対応:リスペクトと役割の転換

    • 〇 OK: 「〇〇先生の長年の経験は、園にとって宝です。だからこそ、その経験を若手に伝えるために、新しいICTツールを使って記録を残すことに挑戦してほしいんです。先生がやってくれれば、みんなついてきます」

    プライドを尊重しつつ、「影響力のあるあなただからこそお願いしたい」と役割を再定義します。頼りにされることで、重い腰を上げてくれるケースは多々あります。

    評価者(園長・主任)の負担を減らすために

    ここまで面談のテクニックをお伝えしましたが、これを全職員に対して実施するのは、園長・主任にとって相当な負担です。最後に、その負担を構造的に減らす方法を提案します。

    評価者研修(トレーニング)の重要性

    面談スキルは、天性の才能ではありません。車の運転と同じで、習えば誰でもできる「技術」です。
    多くの園長先生が苦しんでいるのは、正しいやり方を教わったことがないまま、我流で悩みながら行っているからです。
    「事実と意見を分ける」「目標設定のSMARTの法則」「コーチングの基礎」
    これらを体系的に学ぶ「評価者研修」を導入することで、管理職の迷いが消えます。共通言語ができるため、主任と園長の間で「あの職員にはどう関わるか」という相談もしやすくなります。
    研修への投資は、管理職のメンタルヘルスを守り、組織の生産性を上げるための必要経費です。

    客観的な評価シートがあれば、伝える負担は激減する

    面談が紛糾する原因の多くは、評価シート(基準)の曖昧さにあります。
    「責任感」「積極性」といった抽象的な項目しかないシートを使っていると、どうしても評価者の主観で話すことになり、説明にエネルギーを使います。

    逆に、「クラス便りを期日までに提出した」「会議で1回以上発言した」といった、行動事実ベースで○×がつけられる評価シートがあれば、説明は不要です。
    「できているか、いないか」を一緒に確認する作業になるため、感情的な対立が生まれる余地がなくなります。
    良い評価制度(ツール)は、運用する人の負担を劇的に下げてくれます。もし、今の面談が辛いと感じるなら、それはあなたのスキル不足ではなく、使っている道具(評価シート)が使いにくいからかもしれません。

    まとめ

    人事評価面談は、単なる事務手続きではありません。園長先生の「想い」を職員に伝え、職員の「未来」を共に描く、保育園経営において最も重要なコミュニケーションの場です。

    「面談で職員が泣いてしまったらどうしよう」
    「忙しくて一人ひとりとじっくり話す時間がない」

    そうした不安や課題を抱えるのは当然です。しかし、適切な準備とスキル、そして使いやすいツールがあれば、面談は驚くほどスムーズになり、職員の目の色が変わる瞬間に出会えるようになります。
    面談が終わった後、職員が「明日からまた頑張ろう」と笑顔で部屋を出ていく。そんな光景を目指してみませんか。

    評価者研修から運用サポートまでHRCにお任せください

    株式会社ヒューマンリソースコンサルタント(HRC)では、制度を作るだけでなく、それを使いこなすための「運用支援」に最も力を入れています。

    • 評価者トレーニング: 園長・主任向けに、フィードバックの実践練習や目標設定ワークショップを実施します。
    • 面談同席・サポート: どうしても対応が難しい職員との面談に、コンサルタントが同席または事前の作戦会議を行います。
    • 評価シートの最適化: 「説明しやすく、納得されやすい」行動基準型の評価シートへの改定を支援します。

    「作った制度が形骸化している」「管理職が育たず困っている」
    そんなお悩みをお持ちの法人様は、ぜひ一度ご相談ください。貴園の管理職が自信を持って面談できるよう、私たちが全力でバックアップいたします。

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