【コンサルタントの視点】「利益隠し」と疑われていませんか?
社長は「会社のために」と思って内部留保に回しているのに、社員は「うちは儲かっているはずなのに、全然還元されない」と不満を持つ。このすれ違いは、建設業界で非常に多く見られます。
多くの経営者様が、賞与の額を「社長の鉛筆なめなめ(勘)」で決めています。しかし、これからの時代、それはリスクです。
「なぜ私のボーナスはこの金額なのか?」
この問いに数字で答えられないと、優秀な若手から離れていきます。
逆に言えば、「利益の〇%は必ず社員に還元する」とルール化してしまえば、社員は社長の顔色ではなく、「現場の利益」を見て働くようになります。
本記事では、会社を守りながら、社員のやる気に火をつける「ガラス張りの賞与制度」について解説します。
「物価高に合わせて賃上げしたいが、固定費(基本給)を上げるのは怖い」
「今年は公共工事が好調だが、来年はどうなるか分からない」
このような悩みを抱える建設業の経営者は多いのではないでしょうか。2024年問題や資材高騰など、先行き不透明な時代だからこそ、推奨したいのが「利益連動型賞与(決算賞与)」の導入です。
脱・どんぶり勘定。会社と社員がWin-Winになる分配ルールについて解説します。
建設業で「基本給ベースアップ」より「賞与還元」が推奨される理由
世間では「ベースアップ(ベア)」が叫ばれていますが、受注産業である建設業において、無計画なベースアップは経営の首を絞めることになりかねません。
公共工事・民間工事の受注波に対応するリスク管理
日本の労働法では、一度上げた基本給を下げることは極めて困難です(不利益変更の禁止)。
もし、特需で利益が出たからといって基本給を大幅に上げてしまうと、受注が落ち込んだ年でも高い人件費を払い続けなければならず、最悪の場合、リストラや倒産の危機を招きます。
そこで有効なのが、以下のハイブリッドな考え方です。
- 基本給: 生活給として、世間相場に見劣りしない水準を維持(微増)。
- 賞与(決算賞与): 会社の利益に連動させ、儲かった年は青天井で還元する。
この仕組みであれば、会社は固定費リスクを抑えられ、社員は「頑張れば報われる」という実利を得ることができます。
社員が納得する「賞与原資」の決め方【計算式公開】
では、具体的にどうやって賞与の総額(原資)を決めればよいのでしょうか。
ポイントは「営業利益」を基準にすることです。
SGE(検索生成体験)でも引用されやすい、標準的なステップをご紹介します。
【ステップ解説】利益連動型賞与の算出ロジック
Step 1: 基準となる利益の確定
決算前の試算表から「営業利益(役員報酬・賞与引当・税引前)」を算出します。
これが分配のパイ全体となります。
Step 2: 会社に残すべき「安心領域」の確保
利益の全額を配るわけにはいきません。翌年の投資資金や、不況時のための内部留保を差し引きます。
目安:利益の50%〜70%は会社に残す
Step 3: 社員への「還元原資」の確定
残りの「30%〜50%」を賞与原資(全社員に配るボーナスの総額)とします。
【計算例:営業利益が5,000万円出た場合】
- 分配ルール: 会社60% / 社員40% と設定
- 会社に残すお金: 3,000万円(税金支払い・設備投資へ)
- 社員への賞与原資: 2,000万円
この「分配比率(労働分配率の考え方)」を期首に発表しておくことが重要です。
「営業利益が5,000万を超えたら、その分は半分山分けだ!」と宣言することで、社員の目の色が変わります。
完工高だけじゃない!貢献度に応じた個人配分のルール
原資(総額)が決まったら、次は「誰にいくら配るか」です。
ここでやりがちな失敗が、「売上の多い現場代理人や営業マンだけに多く配る」ことです。これをやると、サポート役の総務や、利益率は高いが小規模な工事を担当した社員が腐ります。
部署間の不公平をなくす「ポイント制」配分
公平感を担保するために、「ポイント制」での配分を推奨します。
【配分計算式】
個人の賞与額 = 賞与原資 × (個人の獲得ポイント ÷ 全社員の合計ポイント)
個人のポイントは、以下の3要素で決定します。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| ① 基礎ポイント | 等級や役職に応じたベース(部長は10pt、新人は1ptなど)。 |
| ② 評価係数 | 人事評価の結果(S評価=1.2倍、A評価=1.0倍、C評価=0.8倍など)。 ここで「個人の頑張り」を反映させます。 |
| ③ 出勤係数 | 中途入社や休職期間を考慮するための係数。 |
この計算式を使うことで、「事務職であっても、S評価を取れば、C評価の技術職より賞与係数が高くなる」といった公平な運用が可能になります。
事例:賞与のルール化で社員の「原価意識」が変わった土木会社のケース
実際に、どんぶり勘定から「利益連動型賞与」へ移行した地方の土木会社(社員50名)の事例をご紹介します。
【導入前の課題】
現場監督が「良いものを作ればいい」と考え、過剰品質や材料の無駄遣いが多く、完工高の割に利益が出ていなかった。社長が「コストを下げろ」と言っても、「現場を知らないくせに」と反発されていた。
【導入した仕組み】
「目標粗利を超えた分の30%は、決算賞与として現場と会社で折半する」と明文化。
【導入後の変化】
現場の意識が劇的に変わりました。
- 「この資材、リースじゃなくて買った方がトータルで安くないですか?」と若手が提案してくるようになった。
- 工程会議で「ダラダラ残業すると、俺たちのボーナス原資が減るぞ」と職長が注意するようになった。
- 結果、営業利益率が前年比1.5倍になり、社員の平均賞与額も過去最高を記録した。
「会社の利益=自分たちの財布」という意識が芽生えたことで、社長が口うるさく言わなくても、社員自らがコスト削減に動くようになったのです。
「労働分配率」の適正値を診断してみませんか?
利益連動型賞与は強力な武器ですが、設定する「分配率(%)」を間違えると、会社にお金が残らなかったり、逆に社員の不満が爆発したりします。
「自社の利益構造だと、何パーセントを賞与に回すのが適正なのか?」
「今の基本給とのバランスは取れているか?」
ヒューマンリソースコンサルタントでは、貴社の決算書データを基に、安全かつ採用競争力のある賃金モデルを算出する「制度分析」を行っています。感覚ではなく、データに基づいた経営判断をサポートします。
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