【2025年12月】賞与は二極化?「カスハラ対策」義務化/通勤手当の非課税枠拡大など5選

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【2025年12月】賞与は二極化?「カスハラ対策」義務化/通勤手当の非課税枠拡大など5選

2025年も残すところあとわずかとなりました。10月の改正育児・介護休業法の施行を乗り越えたのも束の間、12月は年末調整の実務に加え、来年度(2026年4月)に向けた法改正情報が次々と公表される重要な時期です。

今回は、2025年11月から12月中旬までに公表されたニュースの中から、中小企業の経営・人材戦略に直結する5つのトピックを厳選し、実務的な対策を解説します。

この記事でわかること

  • 中小企業の冬のボーナスは「据え置き」と「増額」の二極化。脱・一律支給のポイントとは。
  • ついに義務化される「カスタマーハラスメント(カスハラ)対策」のガイドラインと現場を守る準備。
  • 外国人の「転籍」が可能になる新制度「育成就労」に向けて、選ばれる企業になるための条件。
  • 2026年度税制改正で「通勤手当の非課税限度額」が拡大。従業員の手取りを増やすチャンス。
  • 従業員50人未満の事業場にも「ストレスチェック」が義務化される方針とその対策。

目次

1. 2025年冬のボーナス調査、中小企業の「支給額」と「二極化」の実態

  • 公表日時: 2025年11月15日(民間調査機関発表)
  • ニュース概要の抜粋:

    大手民間調査機関および経団連が発表した「2025年冬季賞与・一時金妥結状況調査」によると、大手企業の平均妥結額は昨年を上回る高水準となりました。一方で、中小企業を対象とした調査では、物価高騰による原材料費の増加が利益を圧迫し、「支給額を据え置き」または「微減」とする企業と、人材確保のために「無理をしてでも増額」する企業との間で二極化が進んでいることが明らかになりました。

    特に注目すべきは、支給基準の変更です。「一律支給」を廃止し、個人の成果や会社の業績により連動した「変動賞与」の割合を高める中小企業が前年比で約15%増加しています。人件費の固定化を防ぎつつ、優秀な人材には手厚く報いたいという経営者の苦渋の決断が数字に表れています。

  • 中小企業向け・3つのポイントと解説
    • ポイント1: 「世間相場」情報の収集と説明責任
      • 解説: 自社の支給額が高いか低いかに関わらず、従業員は「世間一般と比べてどうか」を気にしています。まずは同業種・同規模の企業の平均支給月数を把握しましょう。その上で、もし自社の支給額が相場より低い、あるいは前年より下がる場合は、その理由(原材料高騰の影響など)と、今後の回復に向けたビジョンを経営者自身の言葉で誠実に説明することが、不信感を防ぐ第一歩です。
    • ポイント2: 「一律支給」からの脱却と評価連動
      • 解説: 原資が限られる中小企業こそ、全員一律の「生活給」的な賞与から、貢献度に応じた「メリハリある配分」へシフトすべきです。ただし、いきなり差をつけると混乱を招きます。「今回は賞与原資の20%を成果配分枠にする」など、段階的な導入が鍵です。頑張った人が報われる仕組みを見せることは、優秀層の離職防止に直結します。
    • ポイント3: 支給できない場合の「非金銭的報酬」
      • 解説: どうしても十分な賞与が出せない場合でも、「金銭以外」で報いる方法はあります。例えば、特別休暇の付与、希望する研修への参加支援、副業の解禁など、従業員が求めている「働きやすさ」や「キャリア支援」を提供することで、エンゲージメントの低下を最小限に抑える工夫が必要です。

2. ついに決定!「カスタマーハラスメント(カスハラ)」対策の義務化とガイドライン

  • 公表日時: 2025年11月28日(厚生労働省発表)
  • ニュース概要の抜粋:

    厚生労働省は、深刻化する「カスタマーハラスメント(顧客による著しい迷惑行為)」に関し、企業に従業員を守るための体制整備を義務付ける改正法の詳細ガイドライン案を公表しました。これまで努力義務であった対策が、明確に「義務」へと格上げされる見通しです。

    ガイドラインでは、何がカスハラに該当するかの判断基準(暴言、長時間拘束、過度な要求など)の明示に加え、相談窓口の設置、被害に遭った従業員のメンタルケア、そして悪質な顧客に対する「対応打ち切り(取引停止)」の方針策定などが盛り込まれています。特にBtoC(消費者向け)ビジネスを行う飲食、小売、サービス業の中小企業にとっては、現場を守るための具体的かつ早急な対応が迫られます。

  • 中小企業向け・3つのポイントと解説
    • ポイント1: 現場任せにしない「組織的対応」の宣言
      • 解説: 最大のポイントは「現場の担当者一人に抱え込ませない」ことです。社長名で「不当な要求には組織として毅然と対応する」という基本方針を策定し、社内外に公表してください。これだけで従業員の安心感は劇的に高まります。「お客様は神様」という古い価値観を捨て、従業員の尊厳を守る姿勢を示すことが経営者の責務となります。
    • ポイント2: 具体的な「切り上げ基準」のマニュアル化
      • 解説: 現場が最も困るのは「どこまで我慢すればいいか」の判断です。「大声を上げられたら録音する」「対応が30分を超えて同じ主張が続く場合は上長に交代する」など、具体的な行動基準(トリガー)をマニュアル化しましょう。判断基準が明確であれば、従業員は迷いなく対応でき、精神的な負担も軽減されます。
    • ポイント3: 録音・録画環境の整備と周知
      • 解説: カスハラの抑止と事実確認のために、電話の自動録音機能やウェアラブルカメラ(接客業の場合)の導入は非常に有効です。これらは高価なシステムでなくとも導入可能です。また、「品質向上のため録音しています」とアナウンスすることは、顧客側への牽制にもなり、トラブルを未然に防ぐ効果があります。

3. 外国人材新制度「育成就労」の基本方針決定、2027年本格始動へ

  • 公表日時: 2025年12月5日(政府関係閣僚会議)
  • ニュース概要の抜粋:

    従来の「技能実習制度」に代わる新たな外国人材受け入れ制度である「育成就労制度」の運用に関する基本方針が閣議決定されました。新制度は「人材育成」と「人材確保」を目的とし、原則3年の就労を通じて特定技能1号水準の人材を育成することを目指します。

    最大の変更点は、これまで原則認められていなかった「本人意向による転籍(転職)」が、一定の要件下(就労1〜2年経過後など)で可能になる点です。これにより、労働環境や賃金水準が低い企業からは人材が流出するリスクが高まります。中小企業は、単に「安価な労働力」として受け入れるのではなく、日本人従業員と同様に「選ばれる職場」になるための努力が不可欠となります。

  • 中小企業向け・3つのポイントと解説
    • ポイント1: 「転籍リスク」への備えと処遇改善
      • 解説: 「嫌なら辞めて他社へ行ける」ようになるため、最低賃金ギリギリの給与や劣悪な住環境では、採用コストをかけて呼んだ人材がすぐに流出してしまいます。近隣の同業他社の賃金相場や待遇を調査し、競争力のある処遇を設定する必要があります。外国人も日本人と同様、「長く働きたい」と思える環境かどうかが問われます。
    • ポイント2: キャリアパスの提示と日本語教育支援
      • 解説: 新制度は「特定技能」への移行を前提としています。「3年働けばどのようなスキルが身につき、給与がどう上がるか」というキャリアパスを明確に示しましょう。また、日本語能力の向上は業務効率だけでなく、地域社会での孤立を防ぐためにも重要です。就業時間内の学習時間を設けるなどの支援は、定着率向上に直結します。
    • ポイント3: 日本人社員との融和とマネジメント
      • 解説: 外国人受け入れの失敗事例の多くは、日本人現場社員との摩擦です。日本人社員向けに「異文化理解研修」を行ったり、わかりやすい「やさしい日本語」でのマニュアルを作成したりするなど、受け入れ側の意識改革もセットで行う必要があります。彼らを「戦力」としてリスペクトする風土作りが成功の鍵です。

4. 2026年度税制改正大綱発表、「年収の壁」と「通勤手当」の見直し

  • 公表日時: 2025年12月12日(与党税制調査会)
  • ニュース概要の抜粋:

    与党は2026年度の税制改正大綱を決定しました。注目された「年収の壁」については、10月の改正に続き、さらに「配偶者控除の見直し」や「第3号被保険者制度の縮小」に向けたロードマップが示唆されました。パート従業員の就労調整を根本から解消しようとする動きが加速しています。

    また、中小企業にとって即効性があるのが「通勤手当の非課税限度額」の大幅引き上げです。近年の運賃値上げやガソリン高騰を受け、非課税枠が拡大されます。これにより、従業員の手取りを減らさずに交通費の実費上昇分をカバーしやすくなります。企業は給与規定(通勤手当規定)の改定準備が必要になります。

  • 中小企業向け・3つのポイントと解説
    • ポイント1: 通勤手当規定の緊急点検と改定
      • 解説: 非課税限度額の引き上げに対応し、自社の「通勤手当」の上限規定を見直しましょう。もし古い規定のままで「上限1.5万円」などと低く設定している場合、実費支給に切り替えるだけで従業員の手取りが増え(課税対象が減るため)、満足度向上につながります。これはコスト増を最小限に抑えた実質的な賃上げ効果があります。
    • ポイント2: パート従業員との「働き方」再交渉
      • 解説: 制度が目まぐるしく変わる中、パート従業員は「結局いくらまで働いていいのかわからない」と不安を感じています。最新の情報を会社側が整理して伝え、「扶養内にとどまりたいか」「社会保険に入ってしっかり稼ぎたいか」を個別に面談してください。会社として社会保険加入を推奨するなら、手取り減少分を補填する手当(キャリアアップ助成金の活用など)の提示も有効です。
    • ポイント3: 定額減税事務の最終確認(年末調整)
      • 解説: 今年の年末調整は「定額減税」の精算が行われる初めての年であり、実務が非常に複雑です。給与ソフトのアップデート確認はもちろんですが、従業員への明細への記載方法(減税額の明記)など、問い合わせが増えることが予想されます。担当者がパンクしないよう、早めの周知と外部専門家の活用を検討してください。

5. ストレスチェック制度、「従業員50人未満」の事業場にも義務化へ

  • 公表日時: 2025年12月10日(労働政策審議会報告書)
  • ニュース概要の抜粋:

    労働政策審議会は、現在「従業員50人以上」の事業場に義務付けられているストレスチェック制度について、「50人未満」の全事業場にも義務拡大する方針を固めました。2026年度中を目処に法改正が行われる見通しです。

    小規模事業場ほどメンタルヘルス不調による休職や離職が経営に与えるダメージは甚大です。一方で、実施体制の負担(医師との契約や事務負担)が懸念されています。報告書では、小規模企業向けの助成金拡充や、地域産業保健センターによる支援強化もセットで提言されています。「うちは人数が少ないから関係ない」とは言っていられない時代が目前に迫っています。

  • 中小企業向け・3つのポイントと解説
    • ポイント1: 「義務化待ち」ではなく早期導入の検討
      • 解説: 義務化されてから慌てて導入するのではなく、今のうちから準備を始めましょう。現在は50人未満でも利用できる助成金(ストレスチェック助成金など)が存在します。これらはチェック実施だけでなく、高ストレス者へのカウンセリング窓口もセットになっているものが多く、リスク管理として非常に有効です。
    • ポイント2: 外部リソース(EAP等)の活用
      • 解説: 小規模企業で社内に実施事務従事者を置くのは大変です。外部のEAP(従業員支援プログラム)サービスや、クラウド型の安価なストレスチェックサービスの活用が現実的です。これらはコストを抑えて実施可能であり、従業員の健康を大切にする会社という採用ブランディングにもなります。
    • ポイント3: 「集団分析」で職場の本音を知る
      • 解説: ストレスチェックの真価は、個人の結果だけでなく、部署や会社全体の傾向を見る「集団分析」にあります。「上司の支援が低い」「仕事の量的負担が高い」といったデータは、経営者が気づかない職場の問題を客観的に示してくれます。この結果を基に、会議の削減や1on1の導入など、具体的な職場改善につなげることが目的です。

まとめ:2025年末、「守り」と「攻め」の人事戦略を同時に進める

2025年12月は、賞与の二極化や「カスハラ対策」義務化、通勤手当の税制改正など、中小企業の経営に直結するニュースが相次ぎました。これらに共通するのは「従業員を守る体制」と「選ばれるための処遇」の重要性です。

法改正への対応は待ったなしですが、ストレスチェックの早期導入や通勤手当の改定など、能動的に動く企業こそが人材獲得競争を勝ち抜けます。年末年始は、最新動向を踏まえて自社の就業規則や賃金制度を点検する絶好の機会です。変化をチャンスに変え、来期の安定経営につなげましょう。

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