【2026年前半・予測】労基法「14日連続休暇」義務化?/賃上げ継続の行方など5選
2026年がスタートしました。昨年は「育休法改正」や「最低賃金」といった確定事項への対応に追われた1年でしたが、今年は労働法の根幹である「労働基準法」そのものの抜本的な改正議論がピークを迎える年になると予測されます。
また、2年連続で高騰した「賃金」が、中小企業の経営をどう変えていくのか、その真価が問われる半年間となるでしょう。この記事では、2026年前半(1月~6月)に動きがあると見込まれる人事労務関連の重要トピック・予測を5つピックアップし、経営者が今のうちから備えるべきポイントを解説します。
この記事でわかること(2026年前半の予測)
- ついに本格議論へ。「労働基準法改正(14日連続休暇・つながる権利)」の行方。
- 初任給高騰の次は「既存社員」。2026年春闘における「賃金逆転現象」の解消圧力。
- 企業規模要件の完全撤廃へ。「社会保険適用拡大」の最終ロードマップ決定。
- AI面接に規制?「採用AIの倫理ガイドライン」策定と透明性の確保。
- 定年延長のその先。「70歳現役社会」に向けた給与設計と助成金再編。
1. 【労基法】歴史的転換点、「14日連続休暇」と「つながる権利」の法制化議論
- 予測される時期: 2026年 通常国会〜夏頃
- 予測概要:
数年前から研究会で議論されてきた「新しい時代の働き方」について、いよいよ労働基準法の改正案としての骨子が固まる見通しです。最大の焦点は、労働者のリフレッシュを目的とした「14日連続休暇の取得義務化(または強力な推奨)」と、勤務時間外の連絡を拒否できる「つながらない権利(勤務間インターバル)」の法制化です。
欧州並みの休息を義務付けるこの改正が実現すれば、日本企業の「働き方」は根底から覆ります。2026年前半は、この法案の行方を注視し、業務の属人化解消を急ぐ必要があります。
- 中小企業向け・3つのポイントと解説
- ポイント1: 「長期不在」を前提とした業務設計
- 解説: もし「2週間誰かがいない」ことが義務化されれば、特定の担当者しかできない業務(属人化)は最大のリスクになります。マニュアル化、多能工化(ローテーション)を今のうちから進め、「誰がいつ休んでも回る組織」を作ることが、最大の法改正対策となります。
- ポイント2: デジタルデトックスのルール化
- 解説: 「休日にスマホでメールチェック」が当たり前の社風は、将来的に違法となる可能性があります。「休日は社内チャットの通知をオフにする」「緊急時以外の連絡を禁止する」といった社内ルールを、法改正に先駆けて試験運用してみることをお勧めします。
- ポイント3: インターバル制度の助成金活用
- 解説: 勤務終了から翌日の始業までに一定時間を空ける「勤務間インターバル制度」は、既に導入企業への助成金(働き方改革推進支援助成金)が存在します。義務化される前に導入し、助成金を受けながら体制を整えるのが賢い戦略です。
- ポイント1: 「長期不在」を前提とした業務設計
2. 【賃金】2026年春闘、焦点は「初任給」から「既存社員のベースアップ」へ
- 予測される時期: 2026年3月〜4月
- 予測概要:
2025年は「大卒初任給30万円」が話題をさらいましたが、2026年の賃上げトレンドは変化します。新入社員の給与だけ上げた結果、入社数年の若手・中堅社員の給与と並んでしまう(あるいは抜かれる)「賃金の逆転現象(歪み)」の解消が最大のテーマとなります。
物価高が続く中、既存社員の不満は限界に達しつつあります。中小企業においては、新卒採用よりも「今いるエース級社員」の流出防止のための、原資を集中させたベースアップ(ベア)が求められます。
- 中小企業向け・3つのポイントと解説
- ポイント1: 賃金テーブルの「歪み」是正
- 解説: 自社の賃金台帳を確認してください。新人と3年目社員の基本給差が数千円しかない、といった現象は起きていませんか? この歪みを放置すると、育成コストをかけた社員から辞めていきます。今年は「初任給据え置き、中堅層大幅アップ」といった傾斜配分が必要です。
- ポイント2: インフレ手当の「本給化」
- 解説: 一時的な「インフレ手当」でお茶を濁していた企業も、物価高の長期化に伴い、それを「基本給」に組み込む決断が迫られます。賞与や退職金の算定基礎となるためコストは増えますが、採用競争力を維持するためには避けて通れない道です。
- ポイント3: 労働分配率の見直し
- 解説: 「利益が出たら還元する」ではなく、「還元するために利益を出す(値上げする)」という逆算の経営計画が必要です。人件費率(労働分配率)の目標値を再設定し、それに見合う粗利を確保するための価格戦略をセットで考える半年になります。
- ポイント1: 賃金テーブルの「歪み」是正
3. 【社保】適用拡大の最終章、「企業規模要件の撤廃」決定へ
- 予測される時期: 2026年 通常国会
- 予測概要:
現在「従業員51人以上」となっている社会保険の適用対象要件について、政府は「企業規模要件の完全撤廃」に向けた法改正案を提出する見通しです。これにより、数年以内(早ければ2027年〜2028年)に、従業員数名の小規模事業所であっても、週20時間以上働くパートタイマーは全員社会保険加入となる未来が確定します。
2026年前半は、この「Xデー」がいつになるのか、具体的な施行スケジュールが明らかになる重要な時期です。
- 中小企業向け・3つのポイントと解説
- ポイント1: 法定福利費の増加シミュレーション
- 解説: 全てのパートスタッフが加入対象となった場合、会社の保険料負担(法定福利費)が年間いくら増えるのか、今のうちに試算してください。そのコスト増を吸収するためには、売上をいくら伸ばす必要があるのか、具体的な数値目標を持つことが重要です。
- ポイント2: パートの「正社員化」促進
- 解説: どうせ社会保険料を払うなら、短時間勤務ではなくフルタイム(正社員)として働いてもらった方が生産性は上がります。キャリアアップ助成金(正社員化コース)などを活用し、優秀なパートスタッフを正社員へと登用する動きを加速させましょう。
- ポイント3: 「週20時間未満」雇用の検討
- 解説: 逆に、どうしてもコスト負担が難しい業務については、学生アルバイトや副業人材など、「週20時間未満」で働くスポットワーカーへの切り替えを検討する必要があります。業務の細分化(切り出し)がその前提となります。
- ポイント1: 法定福利費の増加シミュレーション
4. 【HR Tech】「AI採用」に規制? 透明性確保のガイドライン策定
- 予測される時期: 2026年4月頃
- 予測概要:
採用活動におけるエントリーシートの選考やWeb面接の解析にAI(人工知能)を導入する企業が急増しています。これに伴い、「AIだけで不採用を決めることの是非」や「判定ロジックのブラックボックス化」が問題視されており、政府は「AI採用に関する倫理ガイドライン」を策定する動きを見せています。
EUでは既にAI規制法が施行されていますが、日本でも2026年は「人間による最終判断の担保」や「AI使用の明示」が企業に求められるようになるでしょう。
- 中小企業向け・3つのポイントと解説
- ポイント1: 「AIまかせ」にしない選考フロー
- 解説: 効率化のためにAIツールを導入する場合でも、「AIはあくまで参考値」「最終的な合否は必ず人間が判断する」というルールを徹底してください。AIのみで不採用通知を出す運用は、求職者からの訴訟リスクや炎上リスクを高めます。
- ポイント2: 求職者への「AI利用」の開示
- 解説: 「この面接動画はAIが解析します」と事前に伝える透明性が求められます。隠して使用していたことが発覚した場合、企業の信頼は失墜します。プライバシーポリシー(個人情報保護方針)の改定も必要になるでしょう。
- ポイント3: 中小企業こそ「アナログ」の価値
- 解説: 大手がAI選考を進める中、中小企業が「ウチは社長が全員の履歴書を読みます」「一人ひとり丁寧に面接します」と打ち出すことは、逆に強力な差別化になります。効率化と人間味のバランスを見極めることが大切です。
- ポイント1: 「AIまかせ」にしない選考フロー
5. 【高齢者】「70歳現役」が標準に、雇用確保措置と助成金の再編
- 予測される時期: 2026年度開始時
- 予測概要:
人手不足が構造化する中、70歳までの就業機会確保(努力義務)の実効性を高めるため、高齢者雇用に関する助成金(特定求職者雇用開発助成金など)の要件見直しや拡充が予測されます。2026年は、65歳定年後の再雇用において、現役時代と変わらない待遇や役割を求める「同一労働同一賃金」の適用がシニア層にも厳格化されるフェーズに入ります。
- 中小企業向け・3つのポイントと解説
- ポイント1: 再雇用時の「大幅減額」は見直しへ
- 解説: 「定年再雇用だから給与は一律半分」という慣習は、業務内容が変わらない場合、違法(長澤運輸事件などの判例)となるリスクが高いです。職務内容(ジョブ)を明確にし、それに基づいた納得感のある賃金設定を行わなければ、シニア社員のモチベーションは維持できません。
- ポイント2: ミドルシニア(40-50代)のリスキリング
- 解説: 70歳まで働いてもらうためには、50代のうちに最新のデジタルスキルやマネジメント以外の専門スキルを身につけてもらう必要があります。教育訓練給付などを活用し、社内での「学び直し」を制度化することが、将来の人件費の無駄を防ぎます。
- ポイント3: 健康経営への投資
- 解説: 高齢社員が増えれば、病気による離脱リスクも増えます。定期健康診断のオプション追加や、産業医による健康相談の強化など、「長く健康に働ける環境」への投資は、結果的に採用コストや休職コストの削減につながります。
- ポイント1: 再雇用時の「大幅減額」は見直しへ
まとめ:2026年前半は「制度の先読み」が勝負
2026年前半は、労基法改正議論や社会保険の適用拡大決定など、数年後の経営環境を決定づける大きな動きが予測されます。「決まってから動く」のではなく、「議論の方向性」をいち早く掴み、採用計画や賃金制度に反映させた企業だけが、人材不足の時代を生き抜くことができます。
未来の法改正に強い組織づくり、お手伝いします
「自社の賃金テーブルが法改正に耐えられるか診断したい」
「属人化を解消するための業務フロー見直しを相談したい」
予測される変化に対して、今からできる手はたくさんあります。
貴社の現状をヒアリングし、最適な「先読み対策」をご提案いたします。

