【2026年1月後半】「賃上げ原資」確保へ公取委が本腰/26卒「オヤカク」激化など5選
2026年1月後半は、春闘や新卒採用に向けた「攻防」が激化する時期となりました。賃上げ原資を確保するための価格転嫁交渉や、内定者を守るための「オヤカク」対策など、中小企業経営者には具体的な行動が求められています。
この記事では、2026年1月後半に公表された人事関連の重要ニュースの中から、特に中小企業の経営者・人事担当者の皆様が押さえるべき5つのトピックを厳選。実務で役立つ3つのポイントと併せて詳しく解説します。
この記事でわかること
- 賃上げ原資確保のために公正取引委員会が強化する「労務費転嫁」の監視体制と、中小企業が行うべき価格交渉術。
- 大手との初任給格差で激化する「オヤカク(親の承諾)」問題と、内定辞退を防ぐための保護者向け施策。
- 女性管理職の離職防止に向けた「更年期障害」支援の重要性と、中小企業でも導入できる柔軟な制度。
- 2026年7月の障害者法定雇用率引き上げに向けた採用活動の早期化と、ターゲット拡大の必要性。
- 退職引き留め交渉「カウンターオファー」のメリット・デメリットと、組織崩壊を防ぐリスク管理。
1. 公取委、労務費転嫁の指針強化。「賃上げ原資」確保へ下請法運用を厳格化
- 公表日時: 2026年1月23日 (公正取引委員会 発表)
- ニュース概要の抜粋:
2026年春闘(春季労使交渉)が本格化する中、公正取引委員会は1月23日、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」の運用をさらに厳格化すると発表しました。
中小企業が賃上げを行うためには、その原資を取引価格(納入価格)に転嫁することが不可欠ですが、発注側の大手企業がこれを拒否する事例が後を絶ちません。公取委は、「労務費上昇分を理由とした値上げ要請に応じないこと」を下請法上の「買いたたき」として重点的に監視する方針を改めて示し、違反の恐れがある親事業者への立入調査を強化します。これにより、中小企業が「賃上げのために値上げをお願いする」ための法的・環境的な後ろ盾が強化された形です。
- 中小企業向け・3つのポイントと解説
- ポイント1:値上げ交渉は「権利」ではなく「経営義務」
- 解説:経営者の中には「取引を切られるのが怖くて値上げを言えない」という方も多いですが、政府・公取委がここまで強力にバックアップしている今は、交渉の絶好の機会です。賃上げ原資がないまま雇用を維持すれば、いずれ経営が破綻します。「政府の指針に基づき、労務費上昇分の転嫁をお願いしたい」と、堂々と交渉のテーブルに着くことが経営者の義務となりつつあります。
- ポイント2:具体的な「根拠データ」の準備
- 解説:交渉を成功させる鍵は、「なんとなく苦しい」ではなく「客観的な数字」です。「最低賃金の改定でこれだけ人件費が上がった」「同業他社の賃上げ率は〇%で、人材確保には当社も〇%のアップが必要」といった具体的なデータを提示しましょう。公取委が公開している「交渉用フォーマット」を活用するのも有効です。
- ポイント3:従業員への「交渉姿勢」のアピール
- 解説:賃上げが厳しい場合でも、「社長が取引先と必死に戦っている(値上げ交渉している)」姿を見せることは重要です。「会社はただ手をこまねいているわけではない」と伝わるだけで、従業員の不信感は軽減されます。交渉の経緯や会社の努力を(守秘義務に反しない範囲で)社内に共有し、一体感を醸成しましょう。
- ポイント1:値上げ交渉は「権利」ではなく「経営義務」
2. 26卒採用、「オヤカク(親の承諾)」が激化。初任給格差で親の反対増える
- 公表日時: 2026年1月19日 (就職情報会社 調査レポート)
- ニュース概要の抜粋:
2026年卒の就職活動において、企業が内定者の親に承諾を確認する「オヤカク」の動きが例年以上に激化しています。1月19日の調査レポートによると、中小企業の内定辞退理由として「親に反対された」という回答が急増しています。
背景には、12月に報じられた「大手企業の初任給30万円」などのニュースにより、親世代が「中小企業の給与水準」に敏感になっていることがあります。「あの大手なら安心だが、その知らない中小企業で本当に大丈夫なのか?」という親の不安を払拭できず、内定辞退に至るケースが増えており、企業側は学生だけでなく「親」への広報活動(PR)を迫られています。
- 中小企業向け・3つのポイントと解説
- ポイント1:「親向けパンフレット」や「手紙」の送付
- 解説:内定を出した段階で、社長名での「預かり状(手紙)」や、会社の財務安定性・福利厚生・教育制度をまとめた「保護者向けパンフレット」を実家に送付する企業が増えています。親は「ブラック企業ではないか」「すぐ倒産しないか」を最も心配しています。数字や制度で「安心」を届けることが、最大のリテンション(引き留め)になります。
- ポイント2:給与以外の「生涯設計」の提示
- 解説:初任給の額面だけで反対される場合、「生涯年収」や「生活コスト」の視点を提供することが有効です。「うちは転勤がないので、将来設計が立てやすい」「住宅手当や家族手当を含めると、実質的な可処分所得は大手に引けを取らない」といった、親世代が重視する「生活の安定」に関する情報を具体的に提供しましょう。
- ポイント3:内定者懇親会への「親の招待」
- 解説:一部の中小企業では、内定式や懇親会に「親」を招待するケースも出てきました。実際に社長や先輩社員と顔を合わせ、職場の雰囲気を見てもらうことで、「ここなら息子(娘)を任せられる」という信頼を得る作戦です。手間はかかりますが、内定辞退を1名防ぐコストと考えれば、決して高くはありません。
- ポイント1:「親向けパンフレット」や「手紙」の送付
3. 女性管理職比率向上へ、「更年期障害」支援を制度化する動き
- 公表日時: 2026年1月21日 (関連報道)
- ニュース概要の抜粋:
女性活躍推進法に基づく行動計画の目標達成に向け、企業が新たな健康課題への支援に乗り出しています。1月21日、健康経営銘柄を目指す企業を中心に、「更年期障害」による体調不良をサポートする休暇制度や相談窓口を導入する動きが報じられました。
女性管理職候補となる40代・50代の女性社員が、昇進の打診時期と更年期の体調変化が重なり、キャリアを断念したり離職したりする「更年期ロス」が課題となっています。これを個人の問題とせず、企業が制度として支援することで、ベテラン女性社員の定着と管理職登用を後押しする狙いです。
- 中小企業向け・3つのポイントと解説
- ポイント1:管理職候補の「離職防止」に直結
- 解説:中小企業において、実務の中核を担うベテラン女性社員の離職は痛手です。「最近体調が悪そうだが、触れてはいけない」と放置した結果、ある日突然退職届が出るケースが少なくありません。「更年期特有の体調不良は誰にでも起こりうる」という認識を会社が持ち、相談しやすい環境を作るだけで、離職を食い止められる可能性があります。
- ポイント2:高コストな制度は不要、まずは「理解」から
- 解説:いきなり専用の有給休暇を作るのが難しければ、「時間単位有休」や「当日朝のテレワーク変更」を認めるといった柔軟な運用から始めましょう。重要なのは「更年期による不調を会社が理解している」という姿勢です。管理職向けに「更年期やPMS(月経前症候群)に関する基礎知識」の研修(動画視聴など)を行うだけでも、職場の心理的安全性は高まります。
- ポイント3:「フェムテック」サービスの活用検討
- 解説:社内で相談しにくい場合、外部の「オンライン医療相談サービス(フェムテック)」を福利厚生として導入するのも手です。月額数千円~数万円で、従業員がチャットで医師に相談できるサービスが増えています。「会社には言えない悩み」をプロに相談できる窓口を用意することは、女性社員への強力なメッセージになります。
- ポイント1:管理職候補の「離職防止」に直結
4. 障害者法定雇用率「2.7%」へ。7月改定に向けた採用活動が早期化
- 公表日時: 2026年1月27日 (人材サービス会社 動向レポート)
- ニュース概要の抜粋:
2026年7月に予定されている障害者法定雇用率の引き上げ(2.5%→2.7%)を見据え、企業の採用活動が例年になく早期化しています。1月27日のレポートによると、多くの企業が4月入社をターゲットに採用を強化しており、特に身体障害者などの「採用しやすい層」の争奪戦が激化しています。
従業員数37.5人以上の企業には雇用義務が発生するため、これまで対象外だった小規模事業者も対応を迫られています。未達成企業への行政指導も厳格化しており、納付金(罰金)を払えば済むという考え方からの脱却が求められています。
- 中小企業向け・3つのポイントと解説
- ポイント1:採用基準の緩和と「切り出し業務」の再考
- 解説:身体障害者の採用倍率は高騰しています。採用を成功させるには、精神・発達障害者へターゲットを広げることが不可欠です。11月号でも触れた「フルリモート」に加え、「短時間勤務(週20時間など)」での採用も検討しましょう。特定の時間を切り出して、集中して作業してもらうスタイルであれば、精神・発達障害の方の能力を活かしやすくなります。
- ポイント2:「定着支援」における外部リソース活用
- 解説:採用してもすぐに辞めてしまっては意味がありません。中小企業には専任の支援担当者を置く余裕がないことが多いため、ハローワークや地域障害者職業センターが提供する「ジョブコーチ(職場適応援助者)」の派遣制度を積極的に活用しましょう。専門家が職場に入り、本人と企業の間の調整を行ってくれるため、定着率が大幅に向上します。
- ポイント3:除外率設定や特例の確認
- 解説:建設業や運送業など一部の業種には、障害者の雇用が困難であるとして雇用率を緩和する「除外率」が設定されています。また、週20時間未満の雇用でも雇用率に算定できる特例なども存在します。自社がどの基準に当てはまるのか、最新の法令を正しく把握し、無理のない採用計画を立てることが重要です。
- ポイント1:採用基準の緩和と「切り出し業務」の再考
5. 優秀人材の流出阻止へ、「カウンターオファー(引き留め交渉)」が一般化
- 公表日時: 2026年1月30日 (HR Tech企業 調査結果)
- ニュース概要の抜粋:
人材の流動性が高まる中、退職を申し出た社員に対し、企業側が好条件を提示して引き留めを図る「カウンターオファー」が、外資系だけでなく日本の中小企業でも一般化していることが明らかになりました。1月30日の調査によると、退職意向を示した社員に対し「給与アップ」「希望部署への異動」「昇進」などを提示して引き留めを行った企業は過半数に達しました。
新たに採用するコスト(紹介料+教育費)よりも、既存の優秀層の給与を上げて引き留める方が合理的であるという判断が進んでいます。一方で、安易な引き留めは組織の規律を乱すリスクもあり、慎重な運用が求められます。
- 中小企業向け・3つのポイントと解説
- ポイント1:退職届が出てからでは遅い、予兆の検知
- 解説:カウンターオファーはあくまで「最終手段」です。退職を決意した社員の心を覆すのは容易ではありません。重要なのは、1on1ミーティングなどを通じて「最近元気がない」「不満を持っていそう」という予兆を早期に検知することです。不満が爆発する前に「昇給」や「異動」を先手で提案できれば、信頼関係を壊さずにリテンションできます。
- ポイント2:「なぜ辞めたいのか」の本音を聞き出す
- 解説:退職理由が「給与」であればカウンターオファーは有効ですが、「人間関係」や「会社の将来性」への不安であれば、給与を上げても一時的な延命にしかなりません。引き留め交渉をする際は、腹を割って本音を聞き出し、その原因を根本的に解決できる提案ができるかどうかが勝負です。解決できないなら、快く送り出す方が賢明です。
- ポイント3:残った社員への影響(不公平感)に注意
- 解説:「辞めると言えば給料が上がる」という噂が広がると、組織は崩壊します。カウンターオファーで給与を上げて引き留める場合は、その社員がそれに見合う成果を出していることを前提とし、他言無用を徹底させるなどのリスク管理が必要です。基本的には、個別の引き留め交渉に頼らなくて済むよう、評価制度全体の水準を上げていく努力が王道です。
- ポイント1:退職届が出てからでは遅い、予兆の検知
まとめ:春に向けた「交渉」と「守り」の戦略を
2026年1月後半は、取引先への「価格転嫁交渉」という攻めの戦略と、内定者や既存社員、女性管理職を繋ぎ止める「守りの戦略」が同時に求められる時期となりました。
特に「オヤカク」や「カウンターオファー」といった新しいキーワードは、人材獲得競争の激化を象徴しています。これらの変化に対応し、選ばれ続ける企業になるために、本記事のポイントをご活用ください。
変化の激しい時代、人事戦略の「正解」を一緒に探しませんか?
今回ご紹介した「労務費の転嫁交渉」や「内定者の親への対応(オヤカク)」、「更年期障害への支援」といったテーマは、いずれも専門的な知識や、自社の実情に合わせた繊細な制度設計が求められるものばかりです。
「必要性は理解できたが、社内にノウハウがない」
「何から手を付ければ最短で成果が出るのか知りたい」
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