医療機関向け
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「数年前に導入した人事評価制度ですが、今はもう誰も真面目にやっていませんよ」
初めて訪問する医療機関の理事長や事務長から、このような嘆きを聞くことは一度や二度ではありません。立派なファイルに綴じられた評価シート、分厚い運用マニュアル。導入当時は「これで職員のモチベーションが上がり、組織が活性化するはずだ」と期待に胸を膨らませたはずです。
しかし、現実はどうでしょうか。
年に2回、賞与前の時期になると看護師長が「またこの時期が来たか」とため息をつきながら、深夜まで残業して部下の評価シートを埋める。書かれている内容は前回とほぼ同じコピペ。
評価結果が本人にフィードバックされることもなく、賞与明細を見ても、なぜその金額になったのか誰も説明できない。
これは制度が「形骸化」し、組織にとってプラスになるどころか、無駄な工数を奪うだけの「負債」と化している状態です。
なぜ、多くの医療機関で人事評価制度は失敗するのでしょうか。
本稿では、数多くの「制度立て直し(リプレイス)」案件を手掛けてきた人事コンサルタントの視点から、失敗の根本原因を3つのパターンに分類し、そこから脱却するための再生プロセスを徹底解説します。
⚠ 形骸化の3大サイン
- 評価シートの記入が「コピペ」や「全て標準点」になっている。
- 評価結果が本人に通知されていない(フィードバック面談がない)。
- 頑張っても頑張らなくても、賞与や昇給に差がつかない。
1. 【原因1】現場を無視した「細かすぎる評価シート」の罪
失敗する人事制度の最大の特徴。それは「完璧主義」です。
コンサルタントや人事担当者が、机上で作り上げた「理想の職員像」を詰め込みすぎた結果、運用不能なモンスター評価シートが誕生します。
1-1. 「100項目のチェックリスト」が現場を疲弊させる
ある400床規模の病院の事例です。そこでは、看護師の評価項目が100項目近くありました。
「感染対策マニュアルを遵守しているか」「患者への接遇は丁寧か」「委員会活動に積極的か」……。一つ一つは確かに重要です。しかし、師長が1人で30人の部下を見る現場において、1人につき100項目、合計3000箇所のチェックを短期間で行うことは物理的に不可能です。
結果、何が起きるか。
「鉛筆なめなめ(適当な評価)」の横行です。
師長は深く考えず、全ての項目に「3(標準)」をつけるようになります。あるいは、直近の印象だけで全ての項目を高くつけたり、低くつけたりする。これでは、職員の強みや課題を浮き彫りにする本来の目的は果たせません。
現場の忙しさを(時間的コストを)見積もれていない制度設計は、導入した瞬間に破綻が約束されています。
1-2. 専門用語の羅列による「理解不能」な基準
「組織市民行動を発揮しているか」「コンプライアンス意識を高く持っているか」
評価シートにこのような抽象的なビジネス用語や専門用語が並んでいるケースも散見されます。一般企業の人事部なら通じる言葉かもしれませんが、現場の医療従事者にとっては「具体的に何をすればいいのか分からない」言葉です。
定義が曖昧な項目は、評価者(上司)の主観が入る余地を広げます。
「あの子は挨拶が元気だからコンプライアンスも大丈夫だろう」といった、論理的飛躍による評価ミスを誘発します。職員側も、何を頑張れば評価されるのか理解できないため、行動変容(成長)につながりません。
1-3. リンクしない「ラダー」と「人事考課」の二重苦
看護部ではクリニカルラダー(能力開発用)、事務部では人事考課シート(査定用)。この2つがバラバラに存在し、現場が「二重管理」に苦しんでいるケースも典型的です。
「ラダーの認定審査のためにポートフォリオを出し、その翌週には賞与のための自己評価シートを出す」
現場からすれば「同じようなことを2回も書かせるな」という不満が爆発します。目的が違うとはいえ、統合・連動されていない制度設計は、現場への配慮(愛)が欠落していると言わざるをえません。
2. 【原因2】評価結果と処遇の「ブラックボックス化」
職員が評価制度に不信感を抱く最大の理由。それは「評価された結果、自分にとってどんないいことがあるのか(あるいは悪いことがあるのか)」が見えないことです。
2-1. 「評価結果」が本人に通知されない異常事態
驚くべきことに、自分がどのような評価(S〜Dなどのランク)を受けたのか、本人に知らされていない病院が未だに多く存在します。
「点数をつけるとギスギスするから」「説明するのが面倒だから」という理由で、評価結果をブラックボックスに入れたまま、賞与だけが振り込まれます。
職員の心理:
「頑張って自己評価シートを書いたのに、それがどう判断されたのか分からない」
「サボっているあの人とボーナスが数万円しか違わないなら、頑張るだけ損だ」
フィードバック(結果の通知と対話)がない評価制度は、テストを返却しない学校と同じです。どこが間違っていたのか、次はどうすればいいのかが分からないため、成長しようがありません。単なる「査定(値踏み)」としてしか機能しない制度は、職員のエンゲージメントを著しく低下させます。
2-2. 昇給・賞与への反映ロジック(計算式)の不明瞭さ
評価結果を通知していたとしても、それが「お金」にどう反映されているかが不透明なケースも問題です。
「評価Aだったから、賞与が5万円増えたよ」と口頭で言われても、根拠がなければ納得感は生まれません。
「基本給×係数1.2」なのか、「ポイント単価×評価点数」なのか。計算式(アルゴリズム)が公開されていなければ、職員は経営者の「鉛筆なめなめ(恣意的な決定)」を疑います。
特に、医師やコメディカルなどの専門職は論理的な説明を求めます。「総合的に判断して」という言葉は、彼らにとって最も不誠実な回答です。透明性の欠如は、組織への不信感(ディストラスト)を醸成します。
2-3. 「マイナス査定」を恐れるあまりの機能不全
「評価を厳しくつけると辞めてしまうのではないか」
この恐怖心から、全員に「標準以上」の評価をつけてしまう事象(中心化傾向の極み)もよく見られます。
S評価(最高)とC評価(要改善)の差が、賞与額にしてわずか数千円〜1万円程度しかつかない設計になっている場合もあります。これでは、ハイパフォーマー(優秀層)のやる気を削ぐだけです。
「辞めさせないこと」を優先するあまり、組織全体が「ぬるま湯」化し、結果として優秀な人材から見切りをつけて辞めていくという皮肉な結果を招きます。
3. 【原因3】評価者(管理職)のスキル不足と甘辛のバラツキ
制度という「ハードウェア」が完璧でも、それを動かす評価者という「OS」が古ければバグが起きます。
医療現場における最大のボトルネックは、この「評価者スキル」の問題です。
3-1. 「名ばかり管理職」による評価の限界
医療機関の管理職(師長、技師長、事務長など)の多くは、プレイヤーとして優秀だった人が年功序列で昇進したケースが大半です。「マネジメント」や「評価」について、体系的な教育を受けた経験がほとんどありません。
彼らに突然、評価シートを渡して「部下を公平に評価しろ」と言うのは酷です。
「部下のことが好きか嫌いか(ハロー効果)」「自分と同じやり方をしているか(自己投影)」といったバイアス(偏見)だらけの評価になるのは当然です。
3-2. 部署間・評価者間の「甘辛」格差
「A病棟の師長は優しいから、みんなA評価」
「B病棟の師長は厳しいから、どんなに頑張ってもB評価止まり」
このような不公平が放置されていると、職員の不満は制度そのものではなく、「運」や「上司ガチャ」に向かいます。
「厳しい上司の下に配属されたら損だ」という空気が蔓延すると、人事異動そのものが罰ゲームのように捉えられ、組織の活性化が阻害されます。
3-3. 面談スキルの欠如による「言いっ放し」
評価制度の核心は、期末に行う「評価面談」にあります。ここで、上司が部下の承認欲求を満たし、次の目標を握手して合意できるかがすべてです。
しかし、多くの管理職は「説教」や「一方的な通告」で面談を終わらせてしまいます。
「ここが出来ていない」「もっと頑張れ」
これでは部下の心は離れます。コーチング的なアプローチ(傾聴と質問)で部下の気づきを促すスキルがなければ、面談は単なる「苦痛な時間」になり下がります。
4. 【対策】死に体の制度を蘇らせる「再生ロードマップ」
では、形骸化した制度をどう立て直せばよいのでしょうか。
「全部捨てて作り直す」のも一つの手ですが、現場の混乱を避けるため、既存の枠組みを活かしつつ「運用可能なレベル」までチューニングする手法(リノベーション)を推奨します。
💡 コンサルタントの視点:再生の3ステップ
- 捨てる勇気:評価項目を「運用できる20項目」まで絞り込む。
- 透明化:評価ランクごとの昇給額・賞与額のシミュレーションを開示する。
- 補正:「評価者調整会議」を導入し、上司の甘辛を組織として正す。
4-1. 【捨てる勇気】項目のシンプル化と行動基準の明確化
まずやるべきは、評価シートのダイエットです。
「運用できない100項目」より「運用できる20項目」の方が、遥かに価値があります。
- 項目の精選: 本当に重要な(病院の理念や経営目標に直結する)項目だけに絞り込みます。重複している項目は統合します。
- 行動レベルへの翻訳: 「責任感」という抽象的な項目を、「自分のミスを隠さず、直ちに報告している」といった観察可能な行動事実に書き換えます。
- 4段階評価の導入: 日本人は真ん中の「3(普通)」をつけたがるため、あえて「4段階(S/A/B/C)」にして、「良い(A)」か「課題あり(B)」かを判断させる(強制選択法)のも有効です。
4-2. 【透明化】評価と報酬の連動シミュレーションの公開
「A評価を取れば、具体的にいくら上がるのか」を見える化します。
- 号俸表(賃金テーブル)の開示: 自分が今どこの位置にいて、評価によってどう階段を登っていくのかを地図として示します。
- モデル賃金の提示: 「このペースで昇格すれば、10年後には年収〇〇万円になる」というビジョンを見せます。
ただし、これを実現するには、財務的な裏付け(人件費シミュレーション)が必須です。原資が枯渇しないよう、昇給額と病院収益のバランスを計算し尽くした設計が求められます。
4-3. 【重要】評価者調整会議(キャリブレーション)の導入
評価者のバラツキを補正する最強の仕組みが「評価者調整会議」です。
一次評価者が点数をつけた後、すぐに確定させるのではなく、各部署の管理職が一堂に会し、全職員の評価結果をプロジェクターで映し出して議論します。
「なぜ、この新人がS評価なのか? 具体的なエピソードはあるか?」「B病棟の評価平均が高すぎるのではないか?」
このように衆人環視の中で評価根拠を問うことで、評価者の「適当な評価」や「贔屓」を牽制します。また、他の管理職の視点を聞くことが、最高の実践的トレーニング(OJT)になります。
この会議を経ることで、評価結果は「師長個人の主観」から「病院組織としての決定」へと昇華され、職員への説明責任を果たせるようになります。
5. 作って終わりではない。HRCが提供する「運用保証」という価値
人事評価制度の成否は、設計が2割、運用が8割です。
しかし、多くのコンサルティング会社は「納品して終わり」です。分厚いマニュアルを置いて去っていき、あとは現場任せ。これでは失敗するのは当然です。
私たちヒューマンリソースコンサルタント(HRC)のアプローチは全く異なります。
私たちは「制度が定着し、成果が出るまで伴走する」ことを約束します。
HRC独自の「2年間運用保証」と「修正回数無制限」
私たちは、制度導入後2年間を「運用定着期間」と定義し、契約に含めています。
実際に運用してみて初めて分かる不具合(項目のズレ、ウェイトの違和感など)があれば、回数無制限で制度(評価シートや賃金規定)を修正します。
「一度決めたことだから」と現場に無理強いすることは絶対にありません。使いやすい道具になるまで、何度でも磨き上げます。
「評価者調整会議」への同席・ファシリテーション
前述した「評価者調整会議(キャリブレーション)」に、私たちコンサルタントも同席します。
院内の人間関係しがらみがない第三者の立場から、客観的な指摘を行います。
「師長、この評価には甘さが見られます。他のスタッフとの公平性が保てません」「この素晴らしい行動は、もっと高く評価すべきです」
このように、実際の会議の中で評価者を指導・育成します。座学の研修を何回やるよりも、この「実戦指導」こそが管理職の評価スキルを劇的に向上させます。
過去の失敗を、未来の資産へ。
形骸化した制度を放置することは、組織の腐敗を招くだけです。今こそ、メスを入れる時です。
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