【2025年12月前半】赤字でも税優遇?「賃上げ税制」改正/初任給30万円時代の戦い方など5選
2025年12月前半は、来年度の経営戦略を左右する大きなニュースが飛び込みました。政府による「賃上げ促進税制」の拡充(赤字企業への適用)や、大手企業の初任給30万円化など、中小企業も「人への投資」における戦略転換を迫られています。
この記事では、2025年12月前半に公表された人事関連の重要ニュースの中から、特に中小企業の経営者・人事担当者の皆様が押さえるべき5つのトピックを厳選。実務で役立つ3つのポイントと併せて詳しく解説します。
この記事でわかること
- 赤字でも賃上げすれば将来の節税になる「賃上げ促進税制(繰越控除)」の仕組みと活用法。
- 大手の「初任給30万円」に対抗するため、中小企業がアピールすべき「可処分所得」と「成長環境」。
- 年末年始の帰省シーズンを活用した「リファーラル採用(縁故採用)」の具体的なキャンペーン手法。
- テレワーク普及で問題化する「隠れ残業」のリスクと、PCログ監視導入時の注意点。
- 中小企業の9割が実施する「年賀状じまい」と、デジタルを活用した新しい年末年始の挨拶マナー。
1. 2026年度税制改正大綱決定、「賃上げ促進税制」が赤字の中小企業も対象へ
- 公表日時: 2025年12月13日 (与党税制改正大綱発表)
- ニュース概要の抜粋:
自民・公明両党は12月13日、2026年度の与党税制改正大綱を決定しました。人事・労務分野で最大の目玉となったのは、「賃上げ促進税制」の大幅な拡充です。これまで黒字企業でなければ恩恵を受けにくかった本制度について、赤字の中小企業でも賃上げを行った場合、その控除枠を最大5年間「繰り越し」できる新たな仕組みが導入されることになりました。
また、教育訓練費を増やした企業への上乗せ措置も要件が緩和されます。これにより、現在は業績が厳しくとも、将来の黒字化を見据えて先行投資として賃上げや人材育成を行う中小企業を税制面から強力にバックアップする狙いです。
- 中小企業向け・3つのポイントと解説
- ポイント1:「赤字でも賃上げ」が将来の節税になる
- 解説:これまでは「赤字だから税制優遇は関係ない」と諦めていた企業にとって朗報です。今年赤字でも、無理をして行った賃上げ分を「貯金(繰越控除)」しておき、数年後に黒字化した際の法人税から差し引くことが可能になります。「今は苦しいが、人材確保のために賃上げしたい」という経営判断を、将来のキャッシュフロー改善という形で後押しする制度です。
- ポイント2:教育訓練費の要件緩和を活用する
- 解説:賃上げだけでなく、研修や資格取得支援などの「教育訓練費」を増やした場合の税額控除率も、中小企業にとって使いやすい形に見直されます。11月号で紹介した「リスキリング助成金(経費補助)」と、この「税制優遇(減税)」をダブルで活用することで、実質的なコスト負担を極限まで抑えて社員教育を行うことが可能です。
- ポイント3:顧問税理士との早期連携
- 解説:この新制度を活用するには、適切な申告と帳簿の管理が必要です。どの費目が「教育訓練費」に該当するか、繰越控除の手続きはどうするかなど、詳細は複雑です。決定したばかりの大綱に基づき、来期の予算組みや賃上げ幅を検討するためにも、年明け早々に顧問税理士と相談の場を持つことをお勧めします。
- ポイント1:「赤字でも賃上げ」が将来の節税になる
2. 2026年卒初任給、大手で「一律30万円」の衝撃。中小企業の対抗策は
- 公表日時: 2025年12月5日 (就職情報会社 レポート発表)
- ニュース概要の抜粋:
2026年春入社の新卒採用活動が本格化する中、大手企業を中心に初任給を大幅に引き上げる動きが相次いでいます。12月5日に発表された調査レポートによると、金融、商社、IT業界の大手企業で「大卒初任給 30万円」を提示するケースが急増しており、前年の「26~27万円ライン」から基準が一気に切り上がりました。
この急激な高騰により、初任給を22~23万円程度に設定している多くの中小企業は、採用競合において極めて不利な状況に立たされています。単なる金額競争では勝てない中小企業が、どのように自社の魅力を訴求するかが死活問題となっています。
- 中小企業向け・3つのポイントと解説
- ポイント1:「見かけの給与」ではなく「可処分所得」で勝負
- 解説:額面30万円に対抗するのは困難ですが、地方の中小企業や、福利厚生が充実している企業は「手取り(可処分所得)」や「生活コスト」で勝負できます。「家賃補助が手厚い」「寮完備」「物価の安い地域での生活」などを具体的にシミュレーションし、「東京で30万円貰うよりも、ウチで23万円の方が自由に使えるお金は多い」というロジックを提示することが有効です。
- ポイント2:「生涯賃金カーブ」と「昇給スピード」の提示
- 解説:初任給はあくまでスタート地点です。「初任給は高いが、そこから上がらない」企業も存在します。中小企業は、「入社3年でリーダーになれば〇〇万円」「実力次第で20代で管理職になれば〇〇万円」といった、入社後の昇給モデルやキャリアパスを明確に示すことで、成長意欲の高い学生を惹きつけることができます。
- ポイント3:金銭以外の「報酬(成長・裁量)」のアピール
- 解説:給与競争から視点をずらすことも重要です。Z世代は「タイパ(タイムパフォーマンス)」や「成長」を重視します。「大手のような下積み期間がなく、1年目からプロジェクトを任せる」「経営陣と直接働ける」といった、中小企業ならではの「裁量の大きさ」や「成長速度」を具体的なエピソードと共に伝えることが、差別化の鍵となります。
- ポイント1:「見かけの給与」ではなく「可処分所得」で勝負
3. 年末年始の「リファーラル採用」強化、帰省シーズンを狙う企業急増
- 公表日時: 2025年12月3日 (HRメディア 特集記事)
- ニュース概要の抜粋:
採用コストの高騰を受け、社員の紹介による「リファーラル採用(縁故採用)」に力を入れる企業が増えています。特に注目されているのが、年末年始の「帰省シーズン」を活用したキャンペーンです。12月に入り、中小企業の間で「年末年始に地元の友人や親戚と会った際、自社を紹介してくれたら特別ボーナス支給」といった施策を打ち出す動きが活発化しています。
Uターン・Iターン希望者や、現在の職場に不満を持つ潜在層に対し、信頼できる友人(社員)を通じてアプローチすることで、求人広告では出会えない層に低コストでリーチする狙いです。
- 中小企業向け・3つのポイントと解説
- ポイント1:年末年始は「転職の種まき」の最適期
- 解説:年末年始は、旧友と会い「今の仕事どう?」「実は転職考えてて…」という会話が生まれやすい時期です。このタイミングに合わせて、社員に対し「もし転職を考えている友人がいたら、一度カジュアルに話だけでも」と声をかけてもらうよう依頼することは、非常に効果的な採用マーケティングです。
- ポイント2:紹介インセンティブの「期間限定アップ」
- 解説:社員の背中を押すために、この時期限定のキャンペーンを行うのが効果的です。例えば「通常は紹介料10万円のところ、1月末までの紹介なら20万円」といった特別ボーナスを設定したり、「紹介してくれた社員と友人の食事代を会社が負担する」といったユニークな支援策を設けたりすることで、社内の協力を引き出しやすくなります。
- ポイント3:選考ハードルを下げた「カジュアル面談」の用意
- 解説:紹介された友人がいきなり「面接」を受けるのはハードルが高いものです。「社長との食事会」「オンラインでの会社説明」など、履歴書不要で参加できる「カジュアル面談」の場を用意しましょう。「まずは会社を知ってもらう」というスタンスで接することが、優秀な潜在層を囲い込むコツです。
- ポイント1:年末年始は「転職の種まき」の最適期
4. 「隠れ残業(持ち帰り残業)」への指導強化、PCログ監視の導入進む
- 公表日時: 2025年12月8日 (労務管理コンサル レポート)
- ニュース概要の抜粋:
テレワークの定着や残業規制の強化に伴い、退勤打刻後に自宅で仕事をする「隠れ残業(ステルス残業)」が問題視されています。労働基準監督署による是正指導も、従来の「タイムカードの記録」だけでなく、「PCのログオン・ログオフ時間」や「メール送信時間」との乖離(かいり)に重点が置かれるようになっています。
これを受け、12月に入り、中小企業でも安価な「PCログ監視ツール」を導入し、勤務時間外のPC稼働をアラートで検知・強制シャットダウンする動きが進んでいます。企業側には、残業代の未払いリスクを防ぐだけでなく、従業員の健康管理(過重労働防止)を徹底する姿勢が求められています。
- 中小企業向け・3つのポイントと解説
- ポイント1:「黙認」が最大のリスク
- 解説:経営者や管理職が「仕事が終わらないなら家でやるのは仕方ない」と黙認することは、安全配慮義務違反に問われる最大のリスクです。万が一、過労死やメンタル不調が発生した場合、「会社は把握していなかった」という言い訳は通用しません。PCログ等の客観的な記録と申告時間のズレを定期的にチェックし、乖離があれば本人に理由を確認する運用を徹底してください。
- ポイント2:ツールの導入と「業務量の調整」はセット
- 解説:監視ツールでPCを強制終了させるだけでは、根本解決になりません。仕事が終わらない原因(業務過多、スキル不足、非効率なフロー)を解消せずに強制終了すれば、従業員は自分のスマホで仕事をしたり、早朝に出勤したりするだけです。ログ監視は「犯人探し」ではなく、「業務量が適正かを見直すためのデータ収集」として活用すべきです。
- ポイント3:管理職への「残業削減ハラスメント」防止教育
- 解説:上司が部下に「残業はするな、でも成果は出せ(ノルマは変えない)」と一方的に命じることは、「ジタハラ(時短ハラスメント)」に該当します。隠れ残業を生む土壌はこのジタハラにあります。管理職に対し、「労働時間を減らすなら、業務の優先順位をつけて『やらないこと』を決めるのも上司の仕事だ」と教育することが不可欠です。
- ポイント1:「黙認」が最大のリスク
5. 中小企業の「年賀状じまい」が9割に迫る、年末挨拶のDX化
- 公表日時: 2025年12月1日 (ビジネス慣習に関する調査)
- ニュース概要の抜粋:
企業間で新年の挨拶として送られてきた「年賀状」を廃止する動きが、決定的な段階に入りました。12月1日に発表された調査によると、2026年の年賀状送付を「行わない(廃止する)」または「送付先を大幅に絞る」と回答した中小企業は88.5%に達しました。
環境配慮(ペーパーレス)、経費削減、年末の事務負担軽減といった理由に加え、「形式的なハガキよりも、メールやSNS、チャットツールでのタイムリーな挨拶の方がビジネスにつながる」という実利的な判断が背景にあります。今後は「デジタルグリーティング」や「動画メッセージ」など、よりリッチなコンテンツでの挨拶が主流になりそうです。
- 中小企業向け・3つのポイントと解説
- ポイント1:廃止の際は「事前の丁寧な告知」を
- 解説:いきなり年賀状を止めるのではなく、自社サイトや12月のメール署名などで「来年より年賀状によるご挨拶を控えさせていただくことになりました」と事前に告知するのがビジネスマナーです。SDGs(環境配慮)やDX推進を理由に挙げれば、取引先からの理解も得やすく、むしろ「先進的な企業」というポジティブな印象を与えることができます。
- ポイント2:浮いたコストと時間を「関係構築」に再投資
- 解説:年賀状作成にかかっていた印刷代や、宛名管理・一言書きの膨大な時間は、より生産的な活動に充てましょう。例えば、重要顧客には個別にメールや電話で年末の挨拶をする、年始に顔を合わせて訪問する時間を増やすなど、「形式」を減らして「質」を高めるコミュニケーションへの転換を図るチャンスです。
- ポイント3:デジタルならではの「温かみ」の演出
- 解説:メール一斉送信のテンプレート挨拶だけでは味気ありません。例えば、社長の動画メッセージへのリンクを貼る、この1年の自社のトピックをまとめたWebページを案内するなど、デジタルだからこそできる情報発信を工夫しましょう。形式的なハガキよりも、自社の想いや近況が伝わり、取引先との会話のきっかけになります。
- ポイント1:廃止の際は「事前の丁寧な告知」を
まとめ:来期の「人材投資」と「業務効率」を同時に見直す年末に
2025年12月前半は、税制改正や初任給高騰といった「来期の戦略」に関わるニュースと、年賀状廃止や隠れ残業対策といった「目の前の業務効率化」に関するニュースが並びました。
年末の繁忙期ですが、これらの変化は「自社がどこにコスト(お金と時間)をかけるべきか」を見直す絶好の機会でもあります。無駄な慣習は減らし、浮いたリソースを人材確保や定着に投資する。そんな戦略的な年末年始をお過ごしください。

