退職勧奨と解雇の違いとは?【中小企業が取るべき法的手順と労務リスク】
【定義】退職勧奨(たいしょくかんしょう)とは、企業が社員に対し、退職を促すこと(説得)を指します。あくまで社員の合意に基づき雇用契約を終了させる「合意解約」です。一方、解雇とは、企業が一方的に雇用契約を終了させる行為であり、「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」がなければ不当解雇(解雇権濫用)として無効となります。
社員との雇用契約の終了は、中小企業にとって最も重大な労務リスクです。法的紛争を回避し、円満に解決するための正しい手順と、解雇の厳しい要件を解説します。
解雇の法的リスク(解雇権濫用の法理)
労働契約法第16条により、解雇は「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」は、その権利を濫用したものとして無効となります。
- 普通解雇: 能力不足や勤務態度不良が理由でも、企業が十分な指導・教育を行い、改善の機会を与えたという客観的な証拠がなければ無効となります。
- 懲戒解雇: 就業規則に定める重大な規律違反があった場合に限られ、最もハードルが高い解雇です。
解雇が無効と判断された場合、企業は解雇期間中の賃金全額(バックペイ)を支払う義務が生じ、数百万〜数千万円の金銭的リスクを負います。
安全な「退職勧奨」の進め方
労務リスクを回避するため、企業が取るべき最優先の手段は「退職勧奨」による合意解約です。
1. 威圧的・強制的な勧奨の禁止
退職勧奨は、社員の自由な意思決定を尊重するものでなければなりません。大声を出したり、長時間(例:1時間を超える)拘束したり、何度も執拗に面談を強要したりする行為は、違法な「退職強要」とみなされ、損害賠償の対象となります。
2. 優遇措置の提示と合意書の締結
社員の合意を得るために、退職金の増額、再就職支援(アウトプレースメント)、有給休暇の買取(任意)などの優遇措置を提示することが一般的です。合意に至った場合は、必ず「労働者本人の自由な意思による合意解約である」ことを明記した合意書(退職届)を作成し、双方署名・捺印します。
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