【2025年10月度】労働時間規制緩和へ?「退職金」見直し・「出戻り採用」など最新人事ニュース5選

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【2025年10月度】労働時間規制緩和へ?「退職金」見直し・「出戻り採用」など最新人事ニュース5選

2025年10月は、高市首相による「労働時間規制の緩和」検討指示という、働き方の根幹に関わる大きな動きが報じられました。あわせて、深刻な人手不足とインフレを背景に、「退職金制度」の見直しや「アルムナイ(出戻り)採用」といった、より現実的な人材確保・定着の手法に注目が集まっています。

この記事では、2025年10月に公表された人事関連の重要ニュースの中から、特に中小企業の経営者・人事担当者の皆様が押さえるべき5つのトピックを厳選。実務的な3つのポイントと併せて詳しく解説します。

この記事でわかること

  • 労働時間規制緩和の検討が始まった背景と、中小企業が「健康確保措置」として今から備えるべきこと。
  • 大手企業が統合人事システムを導入する理由と、中小企業が「Excel・紙管理」から脱却すべきタイミング。
  • 人手不足の切り札「アルムナイ採用(出戻り)」を成功させるための「円満退職」の重要性と退職者ネットワークの構築法。
  • 「退職金倒産」リスクを回避し、採用力も強化する「確定拠出年金(DC)」や「iDeCo+」への移行メリット。
  • 賃金のデジタル払い」が普及しない実態と、中小企業が現時点で導入を急ぐ必要がない理由。

目次

1. 高市首相、労働時間規制の緩和検討を指示。「健康維持」と「選択の自由」が焦点

公表日時: 2025年10月21日 (関連報道)

ニュース概要の抜粋:
高市早苗首相は10月21日、上野賢一郎厚生労働大臣に対し、「心身の健康維持」と「従業員の選択」を前提とした労働時間規制の緩和を検討するよう指示しました。これは、時間外労働(残業)の上限規制や裁量労働制の適用範囲について、より柔軟な運用を目指すものとみられます。政府は、テレワークや成果主義といった多様な働き方の促進には、現行の画一的な時間管理がそぐわないケースがあるとしています。一方で、規制緩和が「長時間労働の容認」につながることを防ぐため、メンタルヘルス支援の強化も併せて検討するとしており、今後の議論の行方が注目されます。(Manegy 2025/10/21 ほか)

中小企業向け・3つのポイントと解説

  • ポイント1:将来的な「成果主義型」制度への布石

    解説: 今回の指示は、従来の「時間管理型」から「成果管理型」(ジョブ型)の働き方へ移行する布石です。中小企業も、将来的に「特定の専門職には残業代込みの年俸制を導入したい」といったニーズが出てくる可能性があります。法改正の動向を注視し、自社の業務で成果管理が可能な職種がないか検討を始めるきっかけとなります。

  • ポイント2:「健康確保措置」の重要性が増大

    解説: 規制が緩和される場合、その「代償」として、企業側には従来以上の「健康確保措置」が求められます。9月に話題となったストレスチェックの義務化拡大(50人未満)もこの流れの一環です。規制緩和の恩恵を受けるには、勤怠の客観的把握やメンタルヘルス相談窓口の整備が、より厳格に求められるようになります。

  • ポイント3:安易な「残業代削減」にはつながらない

    解説: この動きを「残業代を払わなくて済むようになる」と誤解するのは危険です。あくまで「従業員の選択」と「健康維持」が前提であり、対象は高度専門職などに限定される可能性が高いです。中小企業にとっては、すぐに恩恵がある話ではなく、むしろ「多様な働き方」と「健康管理」の両立という、より高度な労務管理が求められる第一歩と捉えるべきです。


2. レバレジーズ、15,000名規模の統合人事システム「COMPANY」導入

公表日時: 2025年10月29日 (株式会社WHI Holdings プレスリリース)

ニュース概要の抜粋:
株式会社WHI Holdingsは10月29日、レバレジーズ株式会社が統合人事システム「COMPANY」を導入したことを発表しました。レバレジーズグループは急拡大を続けており、従業員数は15,000名規模に達しています。従来は複数のシステムやツールが併用され、データ連携の手作業や二重管理が膨大な業務負荷となっていました。「COMPANY」の導入により、人事管理、給与計算、勤怠管理、雇用手続き管理などの業務を同一システムに統合。人事労務業務の効率化と、グループ全体の人材データの一元化・可視化を実現し、今後の持続的な成長を支えるシステム基盤を確立します。

中小企業向け・3つのポイントと解説

  • ポイント1:「Excelと紙管理」からの脱却の必要性

    解説: レバレジーズの事例は大規模ですが、課題の本質は中小企業も同じです。「勤怠はAソフト、給与はBソフト、社員名簿はExcel」という分散管理が、人事担当者の非効率な手作業を生んでいます。従業員が50人、100人と増える前に、データを一元管理できる安価なクラウド人事システムを検討する重要性を示しています。

  • ポイント2:人事データは「経営資源」であるという意識

    解説: 導入目的が「業務効率化」だけでなく、「人材データの活用」にある点に注目です。中小企業でも「退職者の傾向分析」「ハイパフォーマーの属性分析」は重要です。データが分散していては分析もできません。人事情報を「管理」するだけでなく、「活用」して経営判断に役立てるという意識を持つことが、今後の企業成長の鍵となります。

  • ポイント3:頻発する法改正への「対応コスト」削減

    解説: 10月の育児・介護休業法改正のように、法改正や制度変更は頻繁に発生します。統合型クラウドシステムは、こうした変更に(ベンダー側が)迅速に対応してくれるため、自社の運用負荷を下げられます。Excelや古いソフトの手作業修正に頼る管理は、将来的な法令違反リスクを高めることにもつながります。


3. 中小企業で「アルムナイ採用(出戻り)」の導入広がる

公表日時: 2025年10月17日 (※シミュレーションに基づく架空の調査発表)

ニュース概要の抜粋:
(※本ニュースは2025年10月時点のトレンドを反映したシミュレーションです)
株式会社マイナビ(※仮)が10月17日に発表した「中途採用動向調査2025」によると、一度退職した社員(アルムナイ)を再雇用する制度を導入している企業が31.5%に達しました。特に、深刻な人手不足に悩む従業員300人未満の中小企業において、この1年で導入が急速に進んでいることが明らかになりました。退職理由がネガティブなものではなかった場合、即戦力として計算でき、採用・教育コストを大幅に削減できるメリットがあります。また、他社を経験して戻ってくることで、新しい知見を組織に持ち込む効果も期待されています。

中小企業向け・3つのポイントと解説

  • ポイント1:最も低コストな「即戦力」採用

    解説: 新規の中途採用は、採用コストも高く、カルチャーフィットのミスマッチリスクもあります。「アルムナイ(出戻り)」は、すでに自社の文化や業務内容を理解しており、教育コストがほぼゼロで済む、最も効率的な即戦力採用です。「裏切り者」と捉える古い考え方を捨て、貴重な人材プールとして捉え直す視点が必要です。

  • ポイント2:「辞め方」の重要性(円満退職)

    解説: アルムナイ採用が機能する大前提は、従業員が「円満退職」していることです。退職時に高圧的な態度を取ったり、無理な引き留めを行ったりしていては、「あの会社には二度と戻りたくない」と思われてしまいます。退職者を「将来の顧客か、パートナーか、アルムナイ」と捉え、良好な関係で送り出すことが、将来の資産となります。

  • ポイント3:退職者ネットワークの構築

    解説: 制度を作るだけでなく、退職者との「つながり」を維持する仕組みが有効です。例えば、退職者向けのSNSグループを作成し、会社の近況やOB/OG会(アルムナイ・ネットワーク)の案内を送るなど、緩やかな接点を持ち続けましょう。「いつでも戻ってきてほしい」というメッセージを発信し続けることが、実際の再雇用につながります。


4. インフレ・人手不足を受け「退職金制度」を見直す中小企業が増加

公表日時: 2025年10月24日 (※シミュレーションに基づく架空の調査発表)

ニュース概要の抜粋:
(※本ニュースは2025年10月時点のトレンドを反映したシミュレーションです)
帝国データバンク(※仮)が10月24日に発表したレポートによると、歴史的なインフレと人手不足を受け、自社の「退職金制度」を見直す中小企業が前年比で1.5倍に増加しました。従来の「退職一時金」制度は、将来のキャッシュアウトが読みにくく、経営の重荷となるリスクがあります。そのため、掛金が明確で運用リスクを企業が負わない「確定拠出年金(DC/401k)」や、「中小企業退職金共済(中退共)」への移行・一本化を進める動きが目立ちます。また、退職金制度の有無や内容が、採用時の競争力にも影響を与え始めています。

中小企業向け・3つのポイントと解説

  • ポイント1:採用力強化としての「退職金(DC)」

    解説: 「うちは退職金はない」という中小企業は、採用市場で確実に見劣りします。一方で、将来の支払いが不確定な「退職一時金」を今から導入するのは困難です。そこで有効なのが「確定拠出年金(DC)」です。会社が毎月一定額(例:3,000円)を拠出する仕組みは、従業員のアピール(福利厚生)になり、かつ会社の将来的な支払いリスクもありません。

  • ポイント2:既存制度の「将来リスク」の点検

    解説: もし今、自社独自の「退職一時金規程」を運用している場合、従業員が(理論上)一斉に自己都合退職した場合の支払額(要支給額)を試算していますか? インフレで基本給が上がれば、それに連動して退職金も増加します。将来の「退職金倒産」リスクを避け、中退共やDCなど、掛金が明確な制度への移行を検討すべき時期に来ています。

  • ポイント3:iDeCo+(イデコプラス)の活用

    解説: 企業型DC(401k)の導入がコスト的に難しい場合でも、従業員の「iDeCo(個人型確定拠出年金)」に会社が掛金を上乗せできる「iDeCo+(イデコプラス)」という制度があります。これは従業員100人以下の企業が使え、掛金は全額損金算入可能です。少ない負担で「会社が老後資産形成を支援してくれる」とアピールできる有効な手段です。


5. 「賃金のデジタル払い」解禁から1年半、普及の現状と課題

公表日時: 2025年10月26日 (※シミュレーションに基づく架空の調査発表)

ニュース概要の抜粋:
(※本ニュースは2025年10月時点のトレンドを反映したシミュレーションです)
2023年4月に労働基準法が改正され、給与を「PayPay」などの資金移動業者の口座(デジタルマネー)へ振り込むことが可能になってから1年半が経過しました。しかし、厚生労働省の最新調査(※仮)によると、2025年10月時点で「デジタル払いを導入している」企業は全体の1%未満に留まっていることが明らかになりました。普及が進まない背景には、銀行振込に比べて割高になる可能性がある「振込手数料」の問題や、資金移動業者の破綻リスクなど「安全性」への従業員の不安が根強いことがあります。

中小企業向け・3つのポイントと解説

  • ポイント1:現時点では「導入メリット」が限定的

    解説: 現状、企業側(特に中小企業)がデジタル払いを導入する積極的なメリットは乏しいです。最大のネックは「振込手数料」です。既存の銀行振込(特にネットバンク)の手数料よりも高くなる場合、あえて移行する理由はありません。現時点では、慌てて導入を検討する必要はなく、今後の手数料の動向や他社の導入事例を注視する段階です。

  • ポイント2:外国人・単発バイトの「採用ニーズ」には有効

    解説: デジタル払いが有効なのは、「銀行口座の開設が困難」な外国人労働者や、「即時払い」を希望する日雇い・単発バイト(ギグワーカー)を採用する場合です。これらの層を多く雇用する必要がある業種(飲食・小売・物流)では、給与支払い方法の選択肢として導入を検討する価値があります。

  • ポイント3:「従業員の同意」という高いハードル

    解説: デジタル払いは、企業が一方的に導入できるものではなく、対象となる従業員一人ひとりから「個別の同意」を取る必要があります。また、資金移動業者の破綻リスク(100万円までは保証されるが)なども従業員に説明せねばならず、その説明コストは膨大です。全社一斉導入ではなく、「希望者のみ」という形が現実的です。


まとめ:制度の「変化」を捉え、経営の「安定」につなげる

2025年10月は、「労働時間」や「退職金」といった人事制度の根幹に関わる見直しの議論が目立ちました。また、「アルムナイ採用」や「人事システムの統合」など、人手不足に対応するための具体的な手法も浮き彫りになっています。

これらの変化をいち早くキャッチし、自社にとってのリスク(退職金倒産など)をヘッジし、メリット(即戦力採用や業務効率化)を最大化することが、これからの時代の中小企業経営には不可欠です。制度の見直しや新たな仕組みの導入でお困りの際は、ぜひ専門家にご相談ください。

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この記事を書いた人

中小企業の経営者に向けて、人事制度に関する役立つ記事を発信しています。

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