【2025年9月度】カスハラ・ストレスチェックも義務化へ!経営者が押さえるべき重要人事ニュース5選

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【2025年9月度】カスハラ・ストレスチェックも義務化へ!経営者が押さえるべき重要人事ニュース5選

2025年9月は、人事労務の「守り」に関する重要な法改正の動向が明らかになりました。特に「ストレスチェック」の対象拡大や「カスタマーハラスメント(カスハラ)」対策の義務化は、企業の規模を問わず全ての事業主に関わる内容です。

この記事では、2025年9月に公表された人事制度関連のニュースから、特に中小企業の経営者・人事担当者の皆様が押さえるべき5つの重要トピックを厳選し、実務的なポイントと併せて詳しく解説します。

この記事でわかること

  • 従業員50人未満の事業場にも「ストレスチェック」が義務化される背景と、企業が今から準備すべきこと。
  • 「カスタマーハラスメント(カスハラ)」対策の義務化に伴い、中小企業が具体的に講じるべき3つの措置。
  • 2026年卒採用の「早期化」の実態と、中小企業が採用競争を勝ち抜くための戦略。
  • 従業員の「静かな退職(Quiet Quitting)」の背景と、エンゲージメントを高めるための「非金銭的報酬」。
  • 人事DX(システム導入)を成功させる鍵となる「定着」フェーズの重要性と、社内育成のポイント。

目次

1. ストレスチェック、従業員50人未満の事業場も「義務化」へ

公表日時: 2025年9月30日 (関連報道) ※労働安全衛生法の改正動向

ニュース概要の抜粋:
これまで従業員50人以上の事業場にのみ義務付けられていた「ストレスチェック制度」について、労働安全衛生法の改正により、今後は従業員50人未満の事業場(現在は努力義務)についても「義務化」する方針が固まりました。公布から3年以内に施行される見通しです。

背景には、事業場の規模によって労働者のメンタルヘルスケアに格差が生じている現状があります。小規模事業場で働く従業員にも平等に心の健康を保つ機会を提供する必要性が高まっていました。この動きを受け、2025年9月30日には、産業医サービスなどを展開するMIRAERA株式会社が「3年以内の義務化に先駆け」として、50人未満の企業に向けた安価な産業医専任・ストレスチェックプランの提供を開始するなど、民間サービスも義務化を見据えた動きを加速させています。

中小企業向け・3つのポイントと解説

  • ポイント1:目前に迫る「義務化」への早期準備

    解説:現在は「努力義務」ですが、数年以内(早ければ2027~2028年頃)には「完全義務化」されます。義務化されると、①ストレスチェックの実施、②(本人の同意に基づき)医師による面接指導、③(必要に応じた)就業上の措置、④労働基準監督署への報告が必須となります。間際になって慌てないよう、今のうちから低コストで実施できる外部サービスを探し始めるなど、情報収集と体制準備を進めておくことが賢明です。

  • ポイント2:メンタル不調による「隠れコスト」の削減

    解説:中小企業では、一人の従業員がメンタル不調で休職・離職するインパクトは甚大です。ストレスチェックは、その「サイン」を早期に発見するための重要なツールです。従業員の不調を放置することで生じる生産性の低下、周囲の従業員の業務負荷増大、採用・再教育コストといった「隠れコスト」を防ぐための「投資」と捉える視点が重要です。努力義務の今から導入し、ノウハウを蓄積しましょう。

  • ポイント3:集団分析による「職場環境改善」への活用

    解説:ストレスチェックの目的は、個人の不調発見だけではありません。部署ごと、チームごとのストレス傾向を(個人が特定できない形で)分析する「集団分析」が可能です。「A部署は人間関係のストレスが高い」「B部署は業務量の負担が大きい」といった職場ごとの課題が可視化されるため、具体的な職場環境の改善アクション(業務分担の見直しや管理職研修など)に繋げることができます。


2. カスタマーハラスメント(カスハラ)対策、全事業主に「義務化」

公表日時: 2025年9月 (関連報道) ※2025年施行の改正労働施策総合推進法

ニュース概要の抜粋:
2025年に改正・施行された労働施策総合推進法(パワハラ防止法)の枠組みにおいて、顧客や取引先からの著しい迷惑行為、いわゆる「カスタマーハラスメント(カスハラ)」から従業員を守るための対策を講じることが、企業の規模を問わず、すべての事業主の「義務」**となりました。

具体的には、①事業主(企業)がカスハラ防止の方針を明確にし、従業員に周知・啓発すること、②相談窓口を整備し、適切に対応できる体制を整えること、③被害に遭った従業員への配慮(メンタルケアや配置転換など)を行うこと、が求められます。特に中小企業においては、専門部署の設置は困難な場合でも、「経営者が朝礼で方針を伝える」「特定の役員や従業員を相談担当者として指名する」など、企業規模に応じた現実的な対応が必須となります。

中小企業向け・3つのポイントと解説

  • ポイント1:「安全配慮義務」としての明確な方針宣言

    解説:今回の義務化は、企業が従業員を危険から守る「安全配慮義務」の一環です。まずは経営トップが「当社は理不尽な要求や暴言から従業員を守る」という明確な方針を内外に示すことが第一歩です。社内にはポスター掲示や朝礼での宣言、社外(店頭やWebサイト)には「不当な要求には応じかねます」といった毅然とした態度を明記することが、悪質なクレームへの抑止力となります。

  • ポイント2:現場任せにしない「相談・報告ルール」の確立

    解説:最も危険なのは、従業員が「自分が我慢すればいい」と問題を抱え込み、現場だけで対応しようとすることです。中小企業だからこそ、「少しでも対応に困ったら、すぐに特定の管理職(または社長)に報告・相談する」というシンプルなルールを徹底させましょう。誰がエスカレーション先なのかを明確にするだけで、従業員の心理的安全性は大きく向上します。

  • ポイント3:対応マニュアルの整備と「従業員教育」

    解説:「お客様は神様です」という古い価値観をアップデートする必要があります。「丁重にお断りする対応」と「理不尽な要求」の線引きを定め、簡単な対応マニュアル(例:暴言や脅迫があった場合は即座に会話を打ち切り、上司に報告する等)を整備しましょう。ロールプレイング研修などを実施し、従業員が一人で矢面に立たないための訓練を行うことも有効です。


3. 2026年卒採用、「9月までに業界決定5割超」早期化が鮮明に

公表日時: 2025年9月9日 (リクナビ 調査発表)

ニュース概要の抜粋:
リクルートが2025年9月9日に発表した「2026年卒 就職プロセス調査」によると、26年卒学生の9月1日時点での就職志望率は88.6%と高い水準を維持しています。また、別調査(HRプロ)では、26年卒学生の55.5%が「9月までに志望業界を決定している」と回答しており、就職活動の早期化が一段と鮮明になりました。

早期に活動する理由としては「早期に内定を得るため」(49.1%)が最多であり、学生側が早期選考・早期内定を強く志向していることが伺えます。この傾向は、大手企業がインターンシップ経由の早期選考を加速させていることが背景にあります。中小企業においては、大手企業の選考が本格化する前に、いかに学生と接点を持ち、自社の魅力を伝えるかという「採用広報の早期化・通年化」がこれまで以上に求められています。

中小企業向け・3つのポイントと解説

  • ポイント1:採用活動の「前倒し」と「通年化」へのシフト

    解説:従来の「大学3年の3月に広報解禁、6月に選考開始」というスケジュール感では、優秀な学生はすでに他社の内定を保有しています。中小企業こそ、大学3年の夏・秋のインターンシップ(1day含む)や、大学と連携したキャリアイベントなどを活用し、早期から学生との接点を持つ必要があります。採用活動は「通年で行うもの」として意識改革が求められます。

  • ポイント2:インターンシップの「質」の向上

    解説:単なる会社説明会や簡単なグループワークを「インターンシップ」と称しても、学生は見抜いています。自社の仕事の面白さや、働く社員の魅力が伝わるような「本物の職業体験」を提供することが重要です。例えば、「実際のプロジェクトの一部を体験してもらう」「若手のエース社員と本音で語る座談会を設ける」など、中小企業ならではの距離の近さを活かしたプログラムを設計しましょう。

  • ポイント3:採用ターゲットの明確化と「絞り込み」

    解説:大手企業と同じ土俵で「漠然と優秀な学生」を狙っても、採用競争には勝てません。「自社の理念に強く共感してくれる学生」「特定の技術や分野に強い関心を持つ学生」など、採用ターゲットを明確に絞り込むことが重要です。ターゲットを絞れば、大学の研究室への直接アプローチや、専門性の高い小規模な就活イベントへの出展など、採るべき戦略が明確になります。


4. 日本の社会人「仕事の重要度が低下」背景にWLB重視と賃金への不満

公表日時: 2025年9月2日 (Indeed 調査発表)

ニュース概要の抜粋:
Indeed(インディード)が2025年9月2日に発表した調査によると、「あなたの人生において、仕事はどの程度重要ですか」という問いに対し、日本の社会人で「5年前と比べて重要度が上がった」と回答した割合はわずか20.2%に留まり、調査対象となった主要国の中で最低となりました。

この背景として、同調査では「ワークライフバランスを重視する傾向の強まり」と「成果が賃金に反映されないことへの不満」が指摘されています。これは、従業員が仕事そのものに情熱を失い、必要最低限の業務しかこなさなくなる「静かな退職(Quiet Quitting)」とも関連する現象です。単なる賃上げだけでなく、働きがいや公正な評価の仕組みが、従業員のエンゲージメントを維持する上で不可欠となっています。

中小企業向け・3つのポイントと解説

  • ポイント1:ワークライフバランス(WLB)の再定義

    解説:「残業を減らす」ことだけがWLBではありません。従業員が重視しているのは「働き方の裁量」です。例えば、10月に義務化された「柔軟な働き方の措置」(フレックス、時差出勤、時間単位有給など)を、子育て世代以外にも適用を拡大するなど、従業員が私生活と仕事を両立しやすい「選択肢」を提供することが、エンゲージメント維持に繋がります。

  • ポイント2:「成果が報われる」評価・賃金制度の見直し

    解説:「頑張っても給与が上がらない」という不満は、モチベーション低下に直結します。中小企業こそ、年功序列的な運用を見直し、成果や貢献度を適正に評価し、昇給や賞与に反映させる仕組みが必要です。10月のニュース(人事評価への不満)とも関連しますが、評価の透明性と公平性を担保し、「やったら報われる」という実感を持たせることが重要です。

  • ポイント3:「非金銭的報酬」による動機づけ

    解説:賃金(金銭的報酬)の引き上げには限界があります。そこで重要になるのが「非金銭的報酬」です。例えば、「成長の機会(新しいプロジェクトへの抜擢、研修参加支援)」「承認(経営者からの直接の感謝や表彰)」「良好な人間関係」などです。自社の従業員が何を求めているかを把握し、金銭以外の面でも働きがいを提供できる職場環境づくりが求められます。


5. DXの成否を分ける「定着」フェーズ。人事システム刷新の動き

公表日時: 2025年9月4日・9日 (関連報道)

ニュース概要の抜粋:
いわゆる「2025年の崖」問題を背景に多くの企業でDX(デジタルトランスフォーメーション)が進められてきましたが、現在、その軸足はシステムの「導入」から、いかに「定着させ、使いこなすか」というフェーズに移行しています。

2025年9月には、ダイハツ工業(9月9日)や信越化学工業(9月4日)といった大手企業が、相次いで人事関連システム(DAP=デジタル・アダプション・プラットフォーム)を導入したことが報じられました。これは、導入した勤怠管理システムや人事評価システムを、従業員や管理職が正しく入力・活用できなければ、DXの成果(業務効率化やデータ活用)が得られないという課題認識の表れです。

中小企業向け・3つのポイントと解説

  • ポイント1:システム導入を「ゴール」にしない

    解説:中小企業において、勤怠システムや給与計算ソフトを導入したものの、「一部の人しか使えない」「結局Excelで二重管理している」といったケースは非常に多いです。システム導入は「スタート」に過ぎません。導入の目的(例:残業時間の正確な把握、評価データの蓄積)を明確にし、全従業員が正しく使えるようになるまで伴走支援することが人事担当者の重要な役割です。

  • ポイント2:「使いこなす」ための徹底したマニュアル化と教育

    解説:高機能なシステムも、使い方が分からなければ宝の持ち腐れです。中小企業では、教育担当者が不足しがちだからこそ、「誰が読んでも分かる」シンプルな操作マニュアル(スクリーンショット付きなど)の整備が不可欠です。また、新入社員研修や管理職研修の際に、システム操作の時間を必ず組み込み、繰り返し教育することで「定着」を図りましょう。

  • ポイント3:DX人材は「外部採用」より「内部育成」

    解説:高度なDX人材を中小企業が外部から採用するのは困難です。それよりも、現場の業務を熟知している既存の従業員に、新しいITツールの知識を学んでもらう(リスキリング)方が現実的かつ効果的です。「ITに少し詳しい」というレベルの従業員をキーパーソンに任命し、外部の安価な研修に参加させるなど、「内部育成」に投資する視点を持ちましょう。


まとめ:法改正とトレンドを捉え、選ばれる企業へ

2025年9月は、メンタルヘルスやハラスメント対策といった「守り」の義務化と、採用の早期化やエンゲージメント低下といった「攻め」の課題が同時に浮き彫りとなった1ヶ月でした。これからの時代、従業員が安心して働ける環境を整備し、公正に報いる仕組みを持つ企業こそが、人材獲得競争を勝ち抜くことができます。

法改正への具体的な対応(就業規則の改定やマニュアル作成)や、自社の採用戦略・評価制度の見直しでお悩みの経営者・人事担当者様は、ぜひ一度専門家にご相談ください。

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この記事を書いた人

中小企業の経営者に向けて、人事制度に関する役立つ記事を発信しています。

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