人事制度の基盤となる「等級制度」について説明します。初心者向けです。

このサイトおよびブログ管理人の藤森です。

今回の記事は前回に引き続き
「人事制度についてこれから勉強する」
「人事評価制度のことはなんとなく知ってるが詳しくは…」
という方を対象に、人事制度を構成する3つの要素のうちの一つ「等級制度」について書きました。
この記事を読むことで、普段の生活ではまず聞くことがないし勉強することもない「等級制度」についての概要を知ることができますので、一読してみてください。

等級制度とは

等級制度とは、人事評価制度を構成する要素の一つであり、企業の根幹部分である経営理念や経営計画を個人レベルの役割に落とし込み、その求められる職務の基準を「等級と定義」として枠組みを設定し、その基準に社員を位置づけることで目標の設定や評価を行うという人事管理の基盤とも言えるものです。

ここで大切なのは、「社員という個人」を基準に仕事の良し悪しの評価方法を設定し、それに準じて他の社員の評価を行っていく(相対評価)のではなく、あくまで最初に等級の定義を設定し、そこに個人個人を位置づける(絶対評価)ということです。

等級制度の大まかな仕組み(例)

等級役職役割定義
5部長部門の統括責任者として経営陣の補佐を行い、管理部門の目標設定・実行ができる。
4課長会社の経営理念を理解し、担当課の責任者として組織目標の設定・実行ができる。
3係長上級者の補佐業務を行いつつ、担当業務の目標設定・実行や、部内全体としての業務目標を共有・実行することができる。
2主任中級的な内容の業務を単独で行うことができ、下級者にアドバイスすることができる。
1一般社員上級者の指示のもと、業務を行うことができる。

※上の表は例なので実際の等級制度の内容とは異なります。

等級制度のメリット

等級制度を定めることで、社員は会社の求めている人材像を等しく明確に知ることができ、自分自身が業務を行う上での目標を定めやすくなります。その結果として具体的な行動目標の設定、達成といった、モチベーション向上に結びつくなどの利点も上げられます。

また、会社にとっては仕事レベルに応じて適切な賃金が支払いやすくなる、社員に求める仕事のレベルを明示できるといった利点があります。

等級制度のメリット
会社・求める職務のレベルを示すことができる
・職務レベルに応じて適正な賃金を支払うことができる
・人事管理の運営が柔軟化する
社員・具体的な仕事内容をイメージしやすくなり、モチベーションアップにつながる
・自身の将来モデルを描きやすくなり、キャリアアップ計画を立てやすい

評価を受ける立場である社員にとって、賃金制度に深く関わっている等級制度や評価制度が「平等」かつ「明確」である、ということは非常に重要です。
つまり、評価や処遇が評価者に左右されるのではなく、基盤となる制度に基づいて評価がなされるということがとても重要であり、その部分をしっかりと説明することで社員に受け入れられやすくなります。

等級制度の種類

等級制度には大きく「能力」「職務」「役割」の3つの軸があり、下の図のように3種類に分けられます。

1.職能資格制度

「職能資格制度」は、日本独自の等級制度として知られており、従業員が持つ能力(職務遂行能力)を基準にして区分・序列化する等級制度です。

評価対象となる職務遂行能力は「企業が社員に期待する能力」のことで、勤続を重ねると能力が向上するという考えに基づくことから、年功序列や終身雇用を前提とした制度になります。
また、評価されるのが「企業が社員に期待する能力」なので、勤務している会社では役に立つ能力ですが、他の会社では通用しない可能性があります。

等級を職務(職種)を超えて設定することから、ジョブローテーションなどを通じてゼネラリストを育成する大企業に向いています

2.職務等級制度

「職務等級制度」は、アメリカや欧米などの海外で発達した制度で、職務を基準として職務の価値に応じて区分する等級制度です。

社員が担当する職務は職務内容記述書に記述された内容に限定され、職務レベルと仕事の市場賃金相場をベースに、その職務の熟練度や資格などの項目で評価して賃金や報酬を決定します。

同一労働同一賃金が原則とされているため、スペシャリストの育成に適していますが、職務レベルの高い仕事をすると大きな成果が出やすいという傾向があるため、職務レベルの低い職務への異動がしにくく、環境変化に柔軟に対応することが難しいという側面があります。

3.役割等級制度

「役割等級制度」は、それぞれの役職や仕事に求められる「役割」を明確にし、その役割の大きさに応じて等級を設定し、区別・序列化する等級制度です。

職務の内容ではなく、役割を果たすためにとるべき行動をシンプルに定義し、役割の内容に応じて待遇を決定します。
定義する役割には定型化された職務だけでなく非定型な業務も含まれます。

役割等級制度は、今まで長らく採用されてきた職能資格制度や、導入されたものの日本企業には馴染まなかった職務等級制度に代わって、新しく人事評価制度のスタンダードになろうとしています。

その仕組みはまだ統一されておらず、明確な基準やフォーマットが存在しない為、初期導入に際して実際に運用する企業の事業内容や組織風土、経営理念等を考慮したすり合わせが必須であり、しかしだからこそ企業の内情に沿った実現可能な評価制度を組み立てることが可能です。

3種類の等級制度の比較

等級制度の種類
職能資格制度職務等級制度役割等キュ制度
評価軸・特定の分野に依らない
・全ての職務に共通する「人の持つ能力(潜在+蓄積)」ベース
・様々な職務(職種)によって異なる評価基準
・職務一つ一つの難易度や内容に対応
・「役職×職種=役割」
・役割(ミッション)基準
特徴・日本企業固有の人事制度
・ジョブローテーション等を通じてゼネラリストを育成してきた大企業に向いている
・海外で発達した制度
・「同一労働同一賃金」が原則
・学歴/年齢/勤続年数といった属人的要素は考慮しない
・「職能資格制度」「職務等級制度」が持つメリットを享受した等級制度
・役割(ミッション)とは、職責を果たすために求められる行動を概略化したもの
・能力があっても役割を果たしていなければ評価は受けられない
・職種ごとに役割等級を設定
メリット・長期的な能力開発が可能
・ゼネラリストの育成に適している
・人材の配置転換が容易
・給与の見通しが立てやすく、社員にとって安心感がある
・コアスキル習得に長い時間がかかり、そのコアスキルが企業競争力となる場合に向いている
・合理的に給与を決定できる
・スペシャリスト育成じ適している
・総人件費が抑制できる
・評価が明確で容易
・不必要な職務は圧縮される
・合理的に給与を決定できる
・個人個人の役割の明示により、社員の自律的な行動を促せる
・組織の経営理念に連動した価値基準が浸透する
・組織や職務の変化に対応しやすい
・総人件費はやや低めになる
デメリット・年功賃金に陥りやすく、総人件費が高騰する恐れがある
・全職務に共通する能力考課なので、基準が抽象的になりがち
・等級と職務内容にずれが生じやすい
・年齢層に偏りのある企業では素子9機がいびつ化しやすい
・職務記述書の作成が煩雑
・運用に一定ノウハウが必要
・生活給への配慮が困難
・組織のチームワークが育ちにくい
・職務が変わらない限り給与も変わらず、社員のモチベーションダウンにつながりやすい
・制度の設計と運用が重要であり、技術を必要とする
・世相に応じて定期的な役割の見直し等運用力が求められる

最後に

いかがだったでしょうか?

今回の記事も前回と同じく、元々「人事用語集」として掲載していたものを一つの記事にまとめたものなのですが、「等級制度」の概要をザザッと把握していただく初心者向け記事としては良いものになったかなと思っています。

等級制度の設計は簡単なようで難しく、特に「役割等級制度」の設計にはノウハウや高い技術が求められるため、等級制度の見直しを検討されている方は、是非お気軽にご相談いただければと思います。

組織と人事に関する問題解決を支援します。

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投稿者プロフィール

Fujimori
Fujimoriヒューマンリソースコンサルタント インハウスWEBマーケター / WEB事業責任者
システム会社に営業として十年程度勤めた後、独立してWeb関連など複数の会社を設立。独学でHTML・CSSを学び自社Webサイトを制作し、実践にてSEOとWebマーケティングの独自ノウハウを得る。十数年の会社経営後、2018年から現職。
現職において、オウンドメディアの制作や運用、販促資料等のデザインや制作、集客や採用などマーケティング全般を担当。